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「ねじまき少女」 パオロ・バチガルピ
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ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

パオロ・バチガルピ / 早川書房


堪能しました。エネルギー資源不足と環境汚染にあえぐ近未来都市バンコクの混沌、そこに暮らす人々の悲哀や怒りや欲望を複数POVで緻密に描いていく、亜熱帯ムード満点の群像劇。「最近の小説でギブスンっぽいやつを読みたいんだが」という人には、まずおすすめの一品かと。

記録的な勢いでSF賞をとりまくった米国でのヒットに比べて、日本での反応はやや戸惑いまじりのようにも見えますが、これは宣伝文句(「グレッグ・イーガンとテッド・チャンを超える云々」)に語弊があるのかもしれません。実際に読んでみたら、イーガンやチャンのような論理SF?的な方向性の小説ではまったくありませんでした。ひきあいに出すなら、やはりギブスンあたりがよいでしょう。都市の底辺層を顕微鏡的に観察していく視点や、先端技術と妙な日本観のまじりあったおかしな東洋的エキゾチシズム。いかにもサイバーパンクっぽい香り。

しかし、往時のサイバーパンクを髣髴とさせつつも、描かれている世界は今日的な感覚によるものだと思います。けっこうテクノロジーのすすんだ未来の話なのに、すさまじいばかりのジリ貧感! 石油は枯渇し、工業動力源はゾウや人力でゼンマイにためるエネルギー。もちろんコンピュータも電話も手回し式。政治は腐敗しきり、経済はカロリー企業に牛耳られ、難民はしいたげられ、水位上昇、環境汚染、新種の疫病……明るい要素が何ひとつ、何ひとつない。

世の中はこれからどんどん不便になり、衰退していくのではないか。このご時世に、多くの人が抱えているであろうリアルな危機感を、バチガルピは遠慮なくずけずけと突きつけてきます。彼の短編「第六ポンプ」などを読むと、「ねじまき少女」のバンコクすら天国かと思えるほどグロテスクな、ダメダメすぎる未来風景にぞっとします。こういう下降未来観はバチガルピの芸風なんじゃろか。(「ねじまき少女」についてはキャラクターがみんなタフで、生きるためなら「殺すと思った時には実際に殺っちまっている」的なスタンスのせいか、それほど頽廃的な雰囲気はないですが。)

あと、些細なことながら、エミコの描写などにみられる日本観についての疑問がひとつ。ニューロマンサーやブレードランナーに似たトンデモ日本文化的な面白さが、もちろん「ねじまき少女」にもふくまれています。これはおそらく意図的なパロディだと思うのですが、問題は、トンデモ描写の対象が日本だけなのかどうかです。本作の場合、ほぼ全編がタイの描写であるため、日本描写が明らかにトンデモな感じだと、他のアジア描写の信憑性までちょっと疑わしく思えてきてしまうわけでして。

バチガルピ氏は大学で東アジア学と中国語を専攻し、中国に住んでいたこともあるそうです。でもだからといって、作品で素直に自然なアジア文化を描いてくれる保証はない。もしかしたら僕が気づかなかっただけで、「ねじまき少女」は全編トンデモタイパロディの嵐だったかもしれない。まあそんなことないらしいけど。
もし、タイと中国の描写に不自然さは皆無だとすると、それはそれで別の疑問がわいてきます。なんでわざわざ日本だけトンデモ風にしたの?っていう。やっぱりネタとしておいしいからかなあ。サイバーパンク的な意味で。


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山田風太郎「忍術…デタラメ結構」 直筆手紙見つかる
風太郎は甲賀忍法帖のタイトルをつけるときに「忍術帖」と「忍法帖」のどちらにするか、相当悩んだといいます。当時は「忍術」という語が一般的で、「忍法」は新語っぽい感覚だったらしい。今だとどっちも同じように使いふるされて感じるけど。今後、忍術でも忍法でもない新たな呼び名が生まれて広まることはありうるのだろうか。

「シカに注意」「クマに注意」あたりはわかるけど、流石つくばだわ……... on Twitpic
つくば市民は未来に生きておるな

Togetter - パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』感想について、上田早夕里先生によるtweet、リツイートを中心にまとめ。
ノワール的魅力を力説

防衛省が開発した「空飛ぶ球体」がすごいと話題に
完全に電脳コイルだこれ。

ガイギャックスとトールキン
D&D創始者のぶっちゃけトーク。指輪物語は好きじゃないのに表層的に指輪っぽくしたのはトールキン読者をとりこむためだったとか。なんて正直な。

もしトールキンが指輪物語を書かなかったらファンタジー文学はどうなっていたか
長編シリーズよりもこじんまりした作品が増えるのではないか。SFに従属する形になるのではないか。世界構築は重視されないのではないか。エピックファンタジーよりも剣と魔法もの(マッチョ剣士がヒャッハー的な?)が主流になるのではないか、等々。日本への影響はどうだろう。代わりにダンセイニ-ラヴクラフトの系統が大ブームになってたりして。

「鬼哭街」から「沙耶の唄」「魔法少女まどか☆マギカ」までミッチリ質問攻め! 虚淵玄氏&中央東口氏のロングインタビュー
虚淵玄というペンネームからしてキング作品にあやかってつけたほどのキング好きらしいんだけど、具体的にどこらへんに影響を受けてるんだろう。まだよくわからない。

レッツ乙嫁クッキング! 森薫と作るかんたんおいしい中央アジア料理
岸辺露伴タイプの人だ。「料理も作っておこう」「馬も乗っておこう」「解剖書もみておこう」
# by umi_urimasu | 2011-06-01 20:46 | 本(SF・ミステリ)
荒山先生はいつも楽しそうでいいよな
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石田三成 ソクチョンサムスン

荒山 徹 / 講談社


荒山先生はいつも楽しそうでいいよな_a0030177_0174192.jpgこの写真のくだりとか特に楽しそう。

荒山徹の「石田三成 ソクチョンサムスン」、巷間の評判はいまひとつ振るわなかったようですが、個人的にはなんか意外と気に入っています。ハングギドラとか柳生大宇宙とか、小ネタのひどさもさりながら、飛鳥時代と戦国時代をかわりばんこに描き、日朝関係を背景にした権力争いの構図をぴったり重ね合わせるというでかいアイデアがそれなりにツボったようで。物語の結構の面で整っているとはいいがたく、小説としては行儀のわるい作品かもしれないけど、むしろこれはもう「ネタ帳」みたいなものとわりきってしまえば興もそがれないのではありますまいか。


ソクチョンで笑えた伝奇ネタのことなど。
まさにこの写真の箇所ですが、荒山作品ではもはやおなじみの「作中で人の小説を批評するコーナー」を発動して、「春の坂道」と「伊賀忍法帖」における無刀取りの描写をくらべ、柳生石舟斎が上泉伊勢守に弟子入りしたという定説はじつは逆ではないか、伊勢守のほうこそ石舟斎の前に伏して入門をねがった側ではなかったか、という仮説がでてきます。

いわく、家康をして神業と絶賛させた無刀取りをあみだしたのは石舟斎であり、伊勢守にはなしえなかった。したがって石舟斎のほうがすぐれた剣術者だったはずである。また、伊勢守の弟子にすら一蹴されたといわれる石舟斎に剣をおしえるならば、それこそ弟子の疋田か神後にまかせればすむことなのに、宿願たる新陰流の弘布のほうを弟子にやらせて伊勢守自身はなぜか柳生庄にとどまった。その真相は、石舟斎に弟子入りしたかったからであろう。では、なぜ本来の師弟関係をそのようにカモフラージュしなければならなかったか。それは百済党に柳生一族の正体を知られないための用心だったのだ。日本の権力者に寄生して百済復活をもくろむ百済党を狩るために、高名な剣豪に入門→ときの権力者に接近→世間に不審をいだかれることなく存分に秘剣をふるえるじゃん。という石舟斎の深慮遠謀だったんだよ。

ムリあるだろ! まあ伝奇ネタなので面白ければそれでいいのですが。

あと、柳生一族のルーツを古事記や日本書紀までさかのぼって天日槍(アメノヒボコ - Wikipedia)にこじつけ、田道間守(たじまもり)をたじまのかみと読みかえて但馬守につなげ、新羅と倭国の絆をまもるべく歴史の闇にかくれひそむ異能集団・非時一族こそ柳生の源流だったんだよ。などという話もでてきます。じつに夢があってよろしい。


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ジョージ・R・R・マーティンが A Dance with Dragons を書き終える
まずは祝着

〈自著を語る〉 荒山徹 「朝鮮通信使いま肇まる」: なぜ、朝鮮通信使を書いたのか?
先生は今日も平常運転です。日韓友好のシンボルだと? ククク……笑止!

SFセミナー「上田早夕里インタビュー」のメモ
とりあえず

GWはこじんまりと国内プチ旅行して、あとはずっと実家でゴロゴロして山風や乱歩を読みちらかしたり。例年通りの行動パターンでした。

外道忍法帖―忍法帖シリーズ〈2〉 (河出文庫)

山田 風太郎 / 河出書房新社


総勢45人ものネームド忍者たちによる大忍法合戦。こんなにも忙しい忍法帖は初めてだった。これでやっと山田風太郎自己評価のうち忍法帖のA、Bランク作品はコンプかな。いまは「妖異金瓶梅」と「妖説太閤記」を読みかけ。山風道の終点はまだまだはるか彼方です。

Sympathy for Cthulhu
要約: クトゥルーの立場に立ってみれば、彼の境遇にけっこう同情できると思うんだ。めざわりなゴキどもを駆除して庭をきれいにしても、次に目がさめたときにはまた別のがはびこってる、その際限ないくり返し。クトゥルー「むきーもうやだ、もっかい寝ゆ!」

[ニコニコ] 七六五家蜘蛛の会
いいものみつけた。膨大な埋没動画(失礼)のなかから思いがけず自分好みのノベルシリーズを掘りあてたときの喜び、これに勝るはなし。

アライバル

ショーン・タン / 河出書房新社


いつのまにか日本版が出てる。これ、ちょっとした贈り物としてもかなりよい本だと思います。老若男女、人種、言語によらず楽しく読めて、海外版なら価格も無難。相手がSFやファンタジーを嗜まない人でも、これならまず安心かと。

ねじまき少女の表紙ktkrカッコイイ!! on Twitpic
バチガルピ作品って換気扇が妙に似合うよね。なんとなく

柳生大戦争の文庫版 を本屋で見かけて巻末をぱらぱら。著者あとがきとして柳生封印宣言が載っていて不禁苦笑。ついでにバカネタ掌編「十兵衛断裁」も載っていて不禁噴笑。相もかわらぬ安心のひどさよ。
実際のところ、月之抄とか五輪書とかの江戸時代初期の兵法書みたいなものって、当時どんなふうに流通(?)していたんだろう。そもそも業者を介して出版するような扱われ方はありえたのか。
江戸初期の木版印刷での出版はどの位の部数でていたのでしょうか。 - Yahoo!知恵袋
普通に需要があるだろう実用書ですら、たかだか数百部とすると、兵法書などのマニアックな本はもっとずっと流通量が少なかったはず。やっぱ手書きの写本くらいしかなかったのかな。

【画像あり】地球、宇宙にあるすごい物
こうやって分野横断的にすごいものを見ると、逆に何の変哲もない身近なものも、見る側の立場がちがえば「すごい」と感じられるのではないか、という気がしてくる。不思議

Togetter - 「浮世絵で語る指輪物語」
元の"Hokusai Manga Construction Kit"は今消えてるっぽい

SF小説の金字塔「ニューロマンサー」映画化をヴィンチェンゾ・ナタリが監督、東京で撮影も?
ロケなら千葉でやらんかいという人もいますが。ギブスンの想定していたイメージはやはりおそらく東京、新宿のネオン街の風景であって、それをそのまま東京とせず、かといって架空の街にもせず、あえて千葉というふうに一歩だけずらす、ひねる、というのがギブスンのいけてるところなのではないかしらん。

杜王町が舞台のジョジョ第8部「ジョジョリオン」連載開始
ふぐり×4の衝撃。ごく平凡なものがあったりなかったりする、ただそれだけで劇的に増す異常さとか超現実感とか、そういう目のつけどころがとてもキングっぽいと感じる。

Amazon.co.jp: ねじまき少女 上 : パオロ・バチガルピ
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ついた。読むぞ~

50 Minimalist Movie Posters
うまい
The Science Of The Story: An Interview With Greg Egan
あとで
# by umi_urimasu | 2011-04-27 00:29 | 本(others)
「友を選ばば」 荒山徹/「痩せゆく男」 S・キング/「大暗室」 江戸川乱歩/他
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一ヶ月分の感想文をまとめて。

友を選ばば (100周年書き下ろし)

荒山 徹 / 講談社


三銃士、柳生、クトゥルー神話というオタンチンな組み合わせで笑いをさそう中世冒険活劇。荒山先生あいかわらずですね。しかしあっさりすぎる語り口のせいか、僕は今ひとつ乗りきれませんでした。ケルト伝奇ネタも、自家薬籠中の朝鮮ものの濃さに比べると、若干表層的な印象。やはりヨーロッパが舞台だと、日朝史ほど自由には伝奇れないのでしょうか。いや、あきらめるのはまだ早い。徹ならやってくれるはず。待て、しかして希望せよ!
ちなみに、作中では謎の剣士ウィロウリビング(笑)が日本式の剣術をつかう明確な描写は見あたりません。ということは、普通に西洋剣術をつかっているのか。でもせっかくヨーロッパ柳生をやるなら、日本刀VS西洋剣ならではの立ち合いなども読んでみたいです。そのあたりもふくめて次に期待。


痩せゆく男 (文春文庫)

リチャード・バックマン / 文藝春秋


健康そのものだった大食漢がジプシーの呪いに冒され、どんどん痩せさらばえていく。いかにもキングらしい、シンプルでしつこい恐怖を堪能。ディテールに凝りまくったアメリカ東海岸の行楽地描写もすばらしい。
ところで、リチャード・バックマン名義で発表された本作には「スティーヴン・キングの小説みたいな云々」という会話場面がありましてな。ベストセラー作家としての名を伏せ、別人のふりをして小説を書きながら、そこにぬけぬけと自分の名前を登場させるとき、はたして作者はどんな心境だったのでしょうか。してやったりとほくそえんだか、あるいは覆面のはがれる日の近いことを予感して複雑な思いでいたのか。結局、本作がベストセラーになって追求をかわし切れなくなり、とうとうバックマンの正体はキングだと認めるにいたったのだそうです。まあ、そうと知っていて読むとけっこうバレバレな気もしますが。


大暗室 (創元推理文庫)

江戸川 乱歩 / 東京創元社


怪奇と幻想に毒々しく彩られた、二人の美青年による因縁の対決。連載時の挿絵と宣伝文句も併録されていて、戦前通俗小説の雰囲気にひたりながら読めるのがうれしい。宣伝文というのは、たとえばこんな感じです。
 「見よ! 待望の巨篇、流石は江戸川氏苦心の大作である。その構想の雄大なる、驚くべきこのプロローグ……。満を持したる矢はきつて放れたのである。新年号如何なる場面が飛び出すか? ゼヒ御期待下さい、お知友の江戸川フアンに御吹聴下さい。」
 「奥底知れない悪魔の魂胆! 奇怪! 戦慄! 全く意外だ、全く素晴しい! と『大暗室』は満天下破れるやうな人気です。作者も亦非常なる意気込です。次号更に御期待あれ。」
 「〈読者通信〉 可哀さうな真弓さんを助けろ! 今の彼女は、すでに生死の境界線に起つてゐるのだ、否むしろ死に近いといつていゝ位だ。有村青年何をしてゐるのだ。早く真弓さんを助けろ! 正義のために堂々と戦ひ進め! 超悪人間大曾根竜次を倒せ! 最後に江戸川先生の御熱筆を感謝します。」
このかび臭さがたまらないのだぜ。


忍びの卍 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

山田 風太郎 / 角川書店(角川グループパブリッシング)


神技すぎて脱毛した。これほど凄絶な結末を、なぜこうもさらりと書ける……。 そこそこ馴れたつもりになって、今さら忍法帖でそんなに感動することもあるまいと思っていました。甘かった。やっぱり山風は人類の規格外だ。


奴らは渇いている〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ロバート・R. マキャモン / 扶桑社


初マキャモンです。大都会にはびこる吸血鬼どもを神様がこらしめてくださるよー。という、かなりあからさまにキリスト教っぽいお話。怖さもありがたさも、僕にはいまいちわかりかねました。ハリウッド映画然とした派手な見せ場やテンプレ通りのやられフラグなど、ベッタベタなホラー要素は「あるある」という感じで非常に楽しかったですが。個人的にはこれのお手本である「呪われた町」のほうが、派手さにたよらない重たい迫力を感じるので好き。


天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

小川 一水 / 早川書房


これが噂のハヤカワおちんちんランド。艦長がえろかわいい男の娘だったり、宇宙が舞台なのにやたら大時代的な騎士団がいたりといったラノベっぽい?設定に対して、律儀にひとつひとつSF的な説明を用意してくれるところが小川一水らしい、のかなあ。文体もややラノベ寄りなようです。ハヤカワ文庫でハートマークつきのセリフとか初めて見た。

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[画像] 子供たちにクトゥルー神話の怪物を描いてもらった
これはこれでけっこう怖いような気もする


華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

上田 早夕里 / 早川書房


まだ読みかけですが、手ごたえあり。自然災害につきものの人間同士の醜いいさかい、その仲裁に奔走する誠実な外交官、ドラマのころがし方は小川一水とかに似たものを感じる。ただし、この設定だとどうあがいても人類絶滅する。もうハローワールドなオチしか予想できない。こういう完全滅亡系のSF特有の寂しさって、なんか久しぶりに味わうな。
→ (4/4) 読了。登場人物がみんなやけに善人アピールの激しい、いい人ばかり出てくるような話は、いくら主義主張が立派でもあまり好みでないんですが、そんなことはこのスケールの壮大さとネタの膨大さの前ではもうどうでもよくなった。とにかくSFでお腹いっぱい。ツキソメのデータや擬似人間のことなど、重要そうなネタのわりにスルー気味の扱いになっていた部分を拾う方向で、できればもう一作お願いしたい。


「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」
見てまいりました。すごかった。泣かせ力が半端ねえ。やっぱリルルはええ子やなあ。

[画像] エオウィンの画像貼ってけ
ロヒアリムの乙女の、細づくりながら鋼の刃のように、美しいが凄絶なことよ。

スクライド10周年プロジェクト始動! スクライド オルタレイション
オリジナルに満足してる人が多くて、リメイクの要望はあまりなさそうな気がしてたので意外。カズマの声とか大丈夫なのかな。PVではちょっと無理してる感じ。

ファイアボール チャーミング
これだけは見たい今期アニメ。これがもし年単位でつづく長寿作品だったらどんなにか嬉しいだろう

『ペルソナ4』のTVアニメ化が決定! メインスタッフ&キャスト公開
ひゃっふ! ところでP5発売はまだかのうアトラスさんや。

Hobbitish - Worldwide illustrated Hobbit editions
「ホビットの冒険」の各国版表紙・挿画を紹介しているサイト。コミック版もあるの、初めて知った

[youtube] The Hobbit: Peter Jackson's First Video Blog from the Set
映画ホビットの10分におよぶメイキング映像。To be continued...となってるのでつづきが楽しみ

NHK 青春アドベンチャー : 『魔岩伝説』(全15回)
ウェーイ。荒山作品の他メディア展開は、これが初?

SBR完走!ジョジョ第8部「ジョジョリオン」は杜王町が舞台
ジャンプ誌上でジョジョの新章の導入を読むときの、子供心に味わうわくわく感は異常だったわい…… と懐古にひたりつつ、次は杜王町ものと聞いてまたウヒャホ! 三つ子の魂百まで。

故伊藤計劃さんの小説に特別賞 米P・K・ディック賞
そもそも翻訳されないことには読んですらもらえないわけで、ハイカソルの存在意義はすごく大きい。良質な日本製SFの海外輸出を、コンゴトモヨロシク

[youtube] サイバーパンク武侠片『鬼哭街』PV
これ見て久しぶりにヤザンボイスの網絡蟲毒さんを聴きたくなって家捜しするも、ドラマCD行方不明。しょんぼり。もうリメイク版買おうかな。
# by umi_urimasu | 2011-03-27 22:24 | 本(SF・ミステリ)
日本人はなぜクトゥルーを怖がらないのか
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ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))

H・P・ラヴクラフト / 東京創元社


最近、ちまちまとラヴクラフト全集を再読しているのですが、あらためて強く意識させられるのが、恐怖感についての日米文化の違いです。たとえばラブクラフトがさも自明のごとく使う「冒涜的」という表現の、いったい何がどう冒涜的なのか、まるでぴんとこないこと。また、クトゥルーや南極の〈古きもの〉がさほど怖いとも思えず、それどころか、むしろちょっとかわいいじゃん。などと愛着に近い感情すらおぼえてしまったりすること。こういった反応、恐怖の感じ方がひどく違うことについて、どこまでが個人の感性でどこまでが文化の差異によるものか、きちんと切り分けができたら面白かろうなあ、と思いながら読んでいます。

ラブクラフト作品での「冒涜的」という形容は、宗教上の教義と相容れないものごとだけでなく、普通でない、なじみがない、理解できない、ありえない、と語り手が感じる対象ことごとくに向かってつかわれます。キリスト教文化圏では、何を考えるにも常にキリスト教の神を超越者・絶対的存在としていちばん上に置くというものの見方が根底にあるから、それに合わないものにでくわすと、神の絶対性をおびやかす → 神をないがしろにしている → けしからん → 冒涜だ、となっちゃうんでしょうかね。

ラヴクラフトが描く恐怖の核心、いわゆる「宇宙的恐怖」は、キリスト教的なものの見方をベースにしているといわれます。それは、キリスト教の神が絶対ではなく、はるかに古い強大なものが他にいること、そいつらはもうアホらしくなるほど桁ちがいな存在で、人間など歯牙にもかけない、人類ごときには理解も想像もおよばないものだ、という認識によって喚起される怖さです。この神の絶対性の否定が、キリスト教的世界観になじんだ西洋人をいたく不安にさせるらしい。

ここが、僕には感覚的にどうしてもわからないところです。たぶん大方の日本人は、そこであんまり不安になったりはしないんじゃないかと。日本人の場合、神も仏も混ぜこぜに、かつあいまいに信じていて、絶対的な何かを世界観のよりどころにしていないからでしょうか。八百万の神がいるなら、その中にクトゥルーみたいなのがいたって別におかしくないし、「ああ、そういうどえらいのもいるんだ、そらすげえなあ」で済んでしまう。人智を超える強大な存在に対する恐怖はあっても、それは荒らぶる自然に対する畏怖と同じ性質のもので、崇めたり鎮めたりしつつ付き合っていくものだ、というふうにとらえるでしょう。

ともあれ、そうした文化的理由でクトゥルー神話を本来あるべきように怖く感じられないのだとしたら、やはりちょっと残念です。アメリカ人はほんとうに、日本人よりも怖さを感じているのだろうか。それとも「いや別に、全然怖くねーよ」という感覚なのか。アメリカ人に直接聞いてみないことにはどうにも。

ちなみに、魚介類を食べるのがあたりまえな島国文化圏の人からすると、アメリカ人のタコ嫌いというのは、それこそ冒涜的なまでに理解を絶する感覚ですね。まあ小説みたいにリアルで超巨大タコ人間に襲われたりしたら、どこの国の人だろうと発狂してしまうかもしれませんが。ラヴクラフト自身は知人宛ての書簡で、「海産物は説明できないほどのこのうえない激しさで嫌い」と書いています。なんぞ子供時代にトラウマになる経験でもしたんだろうか。

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[画像] カレッジ・ヒルをさまようもの Part I
ラブクラフトがありったけの愛着を込めて描写したプロヴィデンスの古い街並を、実際におとずれて撮影・紹介した写真のページ。HPL作品の舞台が、風景としていまいち想像しにくいとお困りの方はぜひ参考に。

「氷と炎の歌」第5巻 A DANCE WITH DRAGONS 刊行日発表
GRRM自身により7月12日とアナウンスされました。今度こそは本当に待ったなしの雰囲気。もう端役の登場人物とか完全に忘れてる…… そろそろ読み直すべきときか。

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バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)

スティーヴン キング / 扶桑社


100人の少年が、どこまでも歩くだけ。ただし、歩くのをやめた子はその場で銃殺。生き残りたければ最後の一人になるまで歩きつづけるしかない。徐々に奇妙な友情のようなものでむすばれてゆく子供たちが、死の瞬間に見せる生々しい人間の姿が心をえぐります。この痛み、なんというか虚航船団的な痛み、久しぶりに味わったかも。そしてこんなにえげつない話なのに、少年たちがとばすくだらないジョークやなにげない天気の描写に、一種叙情的なものを感じてしまう。不思議な味わいでした。


[youtube] 映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団~はばたけ 天使たち~ 予告動画
大長編ドラで一番好きな原作だから見に行きたいけど、映画館でちびっ子にまじってアニメ見るのは恥ずかしい。レイトショーとかもなさそうだし。悩ましい

(03/13)
募金情報まとめ - 平成23年東北地方太平洋沖地震
おこづかいレベルの募金程度のことしかできぬ身ですが。

『鬼哭街』全年齢版としてリメイク決定
めでたやな

ピーター・ジャクソン監督「ホビット」ようやく撮影開始
二部構成というと、どこで二つに分けるんだろう。闇の森でクモと戦うあたりか

スティーブン・キング作品を原作とした映画のベスト5&ワースト5
ほとんど未見だった。キングの文章は具体的な映像をとてもイメージしやすくて、それで満足してしまうせいか、あまり切実に「映画で見たい」と感じない。
# by umi_urimasu | 2011-03-03 00:24 | 本(SF・ミステリ)
「異星人の郷」 マイクル・フリン
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異星人の郷 上 (創元SF文庫)

マイクル・フリン / 東京創元社


異星人との交流を「徹底的に中世人の視点から」描く異色のファーストコンタクトSF。ゲームなどにありがちなナンチャッテ中世じゃない、リアル中世の暮らしってどんな感じなのか、SF分を補給しつつその雰囲気だけでも味わえたらと手にとった本が、まさかここまで完璧に期待通りの内容とは。うれしい誤算でした。

マイクル・フリンの紹介や著作歴についてはこちら。↓
嶋田洋一/マイクル・フリン『異星人の郷』訳者あとがき
作者の得意ジャンルはハードSFらしいのですが、「異星人の郷」ではそうした要素はひかえめで、中世ヨーロッパの科学観・宗教観や地道な異文化交流をこつこつ描き込むことに重きがおかれています。ぶっちゃけ、物語の結構としては非常にありきたりなもので、展開もひたすら地味です。

しかし、思うにその点こそがこの作品のいいところではないかと。中世を忠実に再現し、目新しいSFアイデアや派手なドラマを排したおかげで、「リアル中世人がもし宇宙人と出会ったらどう接したか」を当時の人々の日常感覚にすごく近いポジションで読めるようになってる、と思うので。彼らの言うことなすことには、現代人には理解しがたいところもあれば、まったく今と変わらないところもあります。ドラマ性が悪目立ちしないから、そういった差分がとてもはっきり見える。
そして、すべてをまたたく間に滅ぼしてゆくペストのむごさも、気のきいたうまいドラマなどないからこそ、日常性と地つづきの救いがたい絶望感をもって迫ってきます。題材的にウィリスの「ドゥームズデイ・ブック」などを思い起こさせる作品ですが、手法がちがえばこんなにも味わいが変わるんですね。

あと、個人的にたぶん一番おいしかった部分が、膨大な中世描写から受けるプチ・カルチャーショック。「え、これマジ? 中世ってほんとにこうだったの?」っていう小ネタの量がとんでもない。作者のあとがきによれば、「14世紀中期のラインラント地方の状況をできるだけ正確に描くようつとめた」「二つの例外を除いて、作中で言及した歴史的なできごとや人物はすべて実在のもの」とのこと。大きな歴史の動きだけでなく、村のもめごとを解決する裁判はどんなんだったとか、宴会のときに何を食べるか、騎士の叙勲式では何をするのか、冠婚葬祭のようすがどんなふうか、といった実生活のことまでほんとうに細かく書かれていて、一文一文が驚きの連続でした。この本だけで、自分の中の中世ヨーロッパのイメージがずいぶんゆたかになった気がします。中世知識がたまりつつ読み物としても面白いネタ本として、ぜひ本棚に常備しておきたい一品。

とまあ、個人的には大当たりな作品でしたが、万人におすすめとはいいがたいかもしれません。派手なアイデアSFが読みたい and/or 歴史にまったく興味ないという読者にはあんまり向かないかも。


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ここからキング話。
いま読んでいるのは「シャイニング」なんですが、その巻末の出版書籍一行紹介の欄をなにげなく眺めていたら、キングのラインナップが、紹介文からして面白すぎてですね。こんなのとか。
「季節はずれの山中の別荘。妻を緊縛してセックス遊戯にふけるはずだったジェラルドは急死、床に転がっている。バンザイの恰好で両手をベッドポストにつながれたまま取り残されたジェシーを、渇き、寒さ、妄想が襲う」
ジェラルドのゲーム (文春文庫): スティーヴン・キング
うむ。これはひどい。文春文庫のキングのラインナップはこんなんばっかりのようです。じつにひどくてよろしい。年代順に読むならそろそろ「スタンド」や「IT」にも挑戦すべき頃合いだけど、踏ん切りがつくまでこういう一冊ものを読み漁っておくのもありではないか。と思う今日このごろ。あ、ちなみにシャイニング巻末の解説は桜庭一樹でした。でも全然解説してなかった。

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ロシア人科学者による14万語におよぶ指輪物語の「モルドール視点バージョン」がファンの手で英訳公開
なんと、ようやるなあ。1999年に Eskov Kirill により書かれた「The Last Ring-Bearer」は、指輪物語における善悪の位置づけを反転させてモルドール/サウロン視点から語りなおした作品だそうです。英語版全文は こちら。とりあえずなんというか、乙。


シャイニング〈上〉 (文春文庫)

スティーヴン キング / 文藝春秋


読了。記憶にあるキューブリックの映画版とあまりにも印象がちがうんでびっくりしました。原作はこんなにヒューマンな、イイ話っぽい物語だったのか。
シャイニング (映画) - 原作との違い
いろんな意味で恐ろしい逸話集。ヒステリックな演技をさせるために女優を意図的にいじめたっていうのが(事実だとしたら)いちばん怖いっす。

京極堂「サザエ鬼?」タラヲ「です」
無駄に出来のいい京極夏彦パロディ二次創作小説。思わず全部読んでしまった。文体だけでなく民俗学的うんちくや推理=憑き物落としの流れまでしっかり作り込んであり、サザエさんネタを活かしたオチも見事。ストーリーはけっこう陰惨なので苦手な人は要注意です。


シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ


小説がひきがねになって映画の方も久しぶりに見なおしてみました。ウームこわ美しい。キングからは「エンジンを積んでない豪華なキャデラック」と酷評されたそうですが、これはエンジンをとっぱらって美的インパクトを追求した観賞用キャデラックなのだと思えば。

[ニコニコ] 第6回MMD杯本選
あにょわ~

『SFが読みたい! 2011年版』「ベストSF2010」ランキング
「華竜の宮」は読んどこうかな。

質問: あなたが何度も読み返してしまうSF/FT/ホラー小説は?
バチガルピさんの回答はデューン、銀河市民、クリプトノミコンですって。なんでもアリアリな大河小説っぽいのが好きということであろうか。

[画像] ‘Snow monsters’ of Japan
クトゥルーちっく?美しくもどこか不気味な樹氷写真

Togetter - 「SFタイトルをラノベ調にしてみた まとめ」
「ゼロの伯爵」とか「モナリザオーバーラン!」とかそんな感じですか。

「スティーヴン・キングの魅力」:冲方丁さん & 白石朗さん
うぶちんは後期派らしい

Togetter - 「中つ国テーマパークで楽しい一日を!」
個人的にはアトラクションとかより、建物や道具の再現展示をメインとした野外博物館っぽいのがあったらいいなと妄想。明治村やリトルワールドみたいな方向性でしょうかね。

ショーン・タンの「The Lost Thing」 アカデミー賞受賞
おめっとさんでやんす。この評価を追い風に「The Arrival」も映像化されたりするとなおうれしい。
# by umi_urimasu | 2011-02-02 22:32 | 本(SF・ミステリ)