漫画「魁!!男塾」の中で「民明書房刊」などとしてしばしば引用される怪しげな故事伝承。あれは言うまでもなく明らかにフィクションです。しかし、じゃあ100%捏造なのかというと、「そうだ」とも言い切れない部分が意外とあります。たとえば「一文字斬岩剣」の由来については、
世に燈篭切りといふ 江戸時代 剣聖とうたわれし一文字流 神泉正宗がこの神泉正宗というのはもちろん架空の人物ですが、モデルは剣聖と呼ばれた戦国時代の剣豪、上泉(神泉)信綱でしょう。この苗字と、名刀で有名な正宗をミックスしたような名前です。信綱自身は、記録では徳川家康にじかに剣術を披露してはいません。実際に家康に呼ばれたのは、信綱の弟子でもあった柳生宗厳(柳生新陰流の開祖)であり、宗厳が見せたのは灯篭切りではなく「無刀取り」という技でした。ただしこれとは別に宗厳が刀で岩を両断したという伝説もあり、奈良県の天乃石立神社には言い伝えの元になった一刀石が祀られています。あと、「一文字流」は架空の流派ですが、これは鎌倉時代の刀匠・則宗の作になる名刀の呼称「菊一文字」あたりから取ってきたのかも。また「石灯籠をも切った」という評判については、正宗と並び称される名刀・虎徹の切れ味がそうやって派手に喧伝されたりもしていたらしい。 こうしてみると一文字斬岩剣の由来もまったくの捏造ではなく、それなりに関係の深い実在の人や物の情報をつぎはぎして作った一種のコラージュではないか、という見方ができそうに思えてきます。他の民明書房ネタにも、同様の手法がひそかに使われている可能性は十分ありえる。だとすると、「民明書房の本にはウソしか書かれていない」と思っていた少年ジャンプ読者たち(含む僕)は、もしかしたらあまりにも迂闊な読み手だったのではないでしょうか。あの膨大なネタの中にじつはどれだけのホントの情報が隠されていたか、今の僕の乏しい知識では想像もつきませんが。 ちなみに、実際の歴史から借りたパーツを組み合わせて虚実半ばする物語を作り出すというやり方は、「伝奇」の正統的な手法です。つまり男塾は時代を先どりした学園伝奇だったんだよ!まさに先駆け!男塾。誰うま。 なお、上で挙げた新陰流の知識の大半はやる夫柳生シリーズのおかげで仕入れたものです。作者様に感謝。 ───── 「インターネット文学」の可能性について 僕もまったく同じことを考えてまったく同じところで思考停止しましたね。 2chやニコニコ動画のコメントがたまたまストーリー性をもった群集会話文のような感じになることがあって、あの現象をうまく制御できれば小説っぽい何かが作れるんじゃないかなあ、とかちらっと考えたことはある。でもGetNicoNicomentでニコニコのコメントログを書き出してみたらカオスすぎて速攻で断念しました。 『SFが読みたい!2009年度版』と今年度の新刊 SFが読みたい!2009年版今年の出版予定 よさそうなのがいろいろ。そして飛浩隆〈廃園の天使〉3「空の園丁」がついに出る!もうこれだけで今年は勝ち年確定といっても過言ではありますまい。 年間ベストSFランキング 国内篇・海外篇 「ダークナイト」に続くクリストファー・ノーラン監督の最新作はSF映画「インセプション」に決定 SF大いにけっこう。そしてバットマンの続編は2011年になりそうだとか。今から待ちどおしい。 [画像] インド ティルネルベリの巨大な山車 でかっ。寺院のお祭りのためのものらしいです。細部の彫刻もエキゾチック。 [画像] 中世の珍しい甲冑いろいろ (Dark Roasted Blend) 全身鎧って凄まじく蒸れそう。真夏でもしっかりあれを着て戦っていたんだろうか [画像] アカメアマガエルの一族 シュールな動物の画像くれよから。仲むつまじき一家に見えないこともない [ニコニコ] クソゲーオブザイヤー2008 買ったら後悔するだろうけど、ちょっとやってみたくなりました
by umi_urimasu
| 2009-02-11 20:54
| まぞむ
|
最近のエントリ
「ゾンビ・ダイス」のようなものをお手軽に自作して遊ぶ
シルヴァン・ショメの異形の世界 「朝鮮通信使いま肇まる」 荒山徹/「マルドゥック・フラグメンツ」 冲方丁 「ザ・スタンド」 スティーヴン・キング 「ねじまき少女」 パオロ・バチガルピ 荒山先生はいつも楽しそうでいいよな 「友を選ばば」 荒山徹/「痩せゆく男」 S・キング/「大暗室」 江戸川乱歩/他 日本人はなぜクトゥルーを怖がらないのか 「異星人の郷」 マイクル・フリン 路傍のラピュタロボット 「ペット・セマタリー」 スティーヴン・キング すべての美しい木曽馬(?) すべての美しい競走馬 スティーヴン・キングに(ようやく)目覚めた ゲームのリアルリアリティ 中世の料理と風呂について: 司教様ご一行フルコース食い倒れツアー 統計: ファンタジーにおけるドラゴンの流行色 ロシアの伝説に残るユートピアとしての日本国 テッド・チャン インタビュー [2010.07] "On Writing" 時代小説、SF、ボーイズラブ、大食死 あとゾンビ 「テルマエ・ロマエ」 第1巻 ヤマザキマリ 忍法帖の姫キャラ比較 覚悟のススメみたいなノベルゲーム探してます 「天地明察」 冲方丁 映画 「第9地区」 映画 「シャーロック・ホームズ」 一生に一度は行ってみたい空想都市 荒山徹作品の再現コラ画像 「年間日本SF傑作選 超弦領域」/他 「ブラッド・メリディアン」 コーマック・マッカーシー PCが壊れると積読が崩れる トールキン「ホビットの冒険」訳文チェック 「柳生天狗党」 五味康祐 「ユダヤ警官同盟」 マイケル・シェイボン 映画 「ストレンヂア 無皇刃譚」 「あなたのための物語」 長谷敏司 「自生の夢」 飛浩隆 「洋梨形の男」 ジョージ・R・R・マーティン 「息吹」 テッド・チャン 年とるとライトノベルが読めなくなる 「海島の蹄」荒山徹 「煙突の上にハイヒール」小川一水 「柳生武芸帳」五味康祐 Yahoo! 剣豪知名度ランキング 「鳳凰の黙示録」荒山徹 「乙嫁語り」森薫 「すべての美しい馬」コーマック・マッカーシー 「順列都市」グレッグ・イーガン カテゴリ
以前の記事
最新のトラックバック
ライフログ
その他のジャンル
記事ランキング
|
ファン申請 |
||