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「プルートウ PLUTO」第1巻 浦沢直樹
いい!これはいいものだ。

一言でいえば『SF版MONSTER』です。

手塚治虫の「鉄腕アトム」からアイデアを借り受けつつ、その実体は浦沢直樹のもっとも得意とする「MONSTER」ばりのサイコサスペンス。いやー面白い。
舞台はロボットと人間が共存する未来。連続殺人事件の背後に見え隠れする謎の存在の手がかりを求めて事件に踏み込むロボット刑事ゲジヒト。ディテールにこだわったユーロ世界の未来風景は、絵的にはスピルバーグの「マイノリティ・レポート」みたいな感じでしょうか。

手塚作品は、どんなにリアルで重い話であっても、記号的で可愛らしい絵柄のためにどこかしら抽象的な表現に留まっていた感がありました。けれど、その手法ではどうしても描き切れない部分があって、そこがときどき物足りなくもあった。そのあたりを、浦沢直樹はこの「プルートウ」でみごとに補完してくれたという気がします。かゆいところに手が届くんです。
この第1巻では、たとえば「ノース2」の最期の場面などが特に印象的でした。雷鳴が炸裂し、古城から仰ぐ空に爆煙がゆっくりと広がっていく。きわめてSF的であり、同時に詩情あふれる人間ドラマのラストシーンでもあり、さらにサスペンスのきっかけとしての不吉さまで合わせもつという、三重のインパクト。巧すぎ。

ちなみに僕は元ネタの「地上最大のロボット」を知らないので、幸いにも(?)現時点では全く先の展開がわかりません。赤子のように純粋な驚きをもって物語を受けとめられるのは、まあ幸運と言えましょう。バブー。
by umi_urimasu | 2004-10-02 10:43 | アニメ・マンガ


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