ロシアの伝説に残るユートピアとしての日本国
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増補 聖なるロシアを求めて―旧教徒のユートピア伝説 (平凡社ライブラリー)

中村 喜和 / 平凡社


ずっと気になっていたこの奇妙な本を、「夏休みだから」というよくわからない理由で読んでみました。めあては、明治時代に東方の理想郷「白水境」(ベロヴォージエ)をめざしてウラルの奥地から日本までやってきたカザーク(コサック)の旅行者がいた、という驚くべきエピソードを紹介した第三章。いやはや、面白い。ほんとにヤーパンまでエクソダスしちゃったのかよ。

多くの貧農たちを東方へのあてどない探索行に駆り立てた日本=ベロヴォージエ伝説。そこへの行き方を記したガイドブックとして19世紀に旧教徒のあいだで知られた「日本国(オポーニア)への旅案内」なる怪文書は、じつにいかがわしさ爆裂な代物だったようです。いわく、その島々には数百もの教会があり、ロシア人は大歓迎を受け、誰も国に入れずどことも戦争をせず、教会がすべての民を治めている、云々。また、19世紀半ばのアルカージイなる人物はさらにひどく、「日本総主教」叙任証をたずさえて北ロシア各地を巡り、ベロヴォージエには50万のロシア人が住み、教会の数は700、皇帝の名はグリゴーリイ、などとまことしやかに吹聴してまわったそうな。

当然ながら、アルカージイの妄言を真にうけて旅に出たカザークがたどり着いた土地は理想郷などではありませんでした。そこはなんの変哲もないただの日本でした。もう長旅ご苦労様でしたとしかいいようがない。けれど、この話を聞いて不思議と彼らの無知を笑う気にはなれません。知識人でも国家使節でもない無学な農民たちが、理想郷の実在を確かめたいというただそれだけの動機で実際に15000キロの道のりを越えてしまう。結果がどうあれ、そんなとてつもない奇行をしでかしたパワーが単純にすごいと思います。人としてのパワー配分が、もう信仰力一択って感じなんですかね。
ウラル・カザークたちはこの日本行のあともまだあきらめず、文豪トルストイを訪ねてベロヴォージエのありかについて教えを乞うたそうです。トルストイは1904年の知人宛ての手紙にこう書きました。「(カザークたちの来訪の理由を知り、)この驚くべき現象は非常に非常に重要なことを考えさせます。」

古きよき信仰を守る正しきキリスト教徒だけの蜜あふるる約束の地。どこにあるかわからんがそれは絶対にあるんじゃよー。そうした、あいまいなわりに強烈で切迫した実在理想郷への夢につきうごかされ、人々は大挙して東方へと放浪をくりかえしました。当局につかまってシベリア送りにされたケースも多かったとか。では、そのロシア旧教徒とはいったいどういう連中であるのか。Wikipedia では、ギリシャ正教の流れを汲むロシア正教会の中の古儀式派 (分離派)の項で、彼らについてわずかに言及されています。キリスト教の主流派とケンカして以来迫害を受けつづけてきたマイナーで厳格な宗派です。ただし その記述からは、生活感とか日々の苦労みたいなリアルな部分はちっとも伝わってきません。そういうものに触れうるのは、やはり当の人々が世代を重ね伝えてきた伝説や伝承や歌でしょう。
本書で紹介されている多くの文献や口承史料から、その考え方、ライフスタイル、歴史的ないきさつが見えてくるにつれ、驚嘆の念は増すばかりです。あんたらどんだけ厳格主義なんだよ! 迫害と窮乏に耐えて古い信仰を守りぬくため、また信仰による団結なくしては生きていけなかったためとはいえ、宗教面でおおざっぱな日本人には想像もつかないほど過酷な孤立の道を、彼らは凄まじい頑固さで歩んできた(あるいは、21世紀の今もまだ歩みつづけている)らしい。いやもう、ほんとご苦労様としか。

ロシアのユートピア伝説として Wikipedia に載っている例は、スヴェトロヤール湖に沈む見えぬ町 キーテジ だけのようですが、本書にはその他にも、前述の白水境(ベロヴォージエ)、17世紀の司祭アヴァクームの自伝に出てくるバイカル湖上の楽園、オスマントルコ領のカザークが語り伝えたバグダッドの彼方にあるという「イグナートの町」など、さまざまなバリエーションが取り上げられています。特にキーテジに関する考察は徹底的。さすが本職の研究者たちはやりこみ具合が半端ねぇと感心しました。それ単体で読むとわけがわからず戸惑うところの多い日本の遠野物語とかも、ちょうどこんなふうに研究成果といっしょに読めるといいなと思ったり。
『遠野物語』を読み解く (平凡社新書 460): 石井 正己: 本
これなどがよいかの。

著者の中村喜和氏は中世ロシア文化史の泰斗として功績厚い人物だそうで、本書の内容も論文集的な色合いがちょっと濃いめです。僕のようなずぶの素人には敷居が高すぎるところも少なからずありました。が、そこらへんは伝奇愛で押し切った。「もしも柳生が」的な精神で。これさえあれば大抵の歴史本はなんとかなる。

ネット上では、白水境ベロヴォージエやキーテジ伝説、トルコのカザークなどについて日本語で詳しく紹介している場所はほとんどありません。この本にしても、知らなければ永久にそのまんまになる可能性がきわめて高いものでした。僕に読むきっかけを与えてくれたのは魚石庵の紹介記事 読書録「増補 聖なるロシアを求めて」です。かたじけない。足を向けて寝られないです。

以下、関連 Wikipediaリンク。
世界の理想郷伝説 - Wikipedia
アヴァクーム - Wikipedia
キーテジ - Wikipedia
ロシア正教会 - Wikipedia
古儀式派 - Wikipedia

余談ですが、魚石庵主様による 「伝奇ゲームファンのための日本伝奇入門」は、ネットで読める初心者のための伝奇小説ガイドとしては最上級のものでしょう。伝奇道で行き先に迷ったらまずはここ。

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[画像] うち捨てられたホビット庄のセット
さびれた袋小路屋敷に羊が一匹、二匹。なんかいかにも第四期くさい、もの悲しい風景だ……。ただしこれはかなり前の写真で、今は次の映画のために修復作業中だとか。よかった。

Togetter - 「ゲームでプレイヤーを「演じる」こと、演劇で「役を演じる」ことの違いについて」
ゲームデザイン方面っぽい話。演じるというよりは物語を体験するという行為について。欧米と日本でのFPS、TPS嗜好のちがいも興味深い。

[ニコニコ] 第5回MMD杯 本選リスト
始まった。週末をつかってたらふく見よう
[ニコニコ] 【第5回MMD杯本選】ハートキャッチ☆ドワーフ!
ケレブリアンと夕星アルウェンをなさしめられた貴いお方よ、これ以上なんと、えー、なんと申せばよいことか。
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# by umi_urimasu | 2010-08-11 20:01 | 本(others)
テッド・チャン インタビュー [2010.07] "On Writing"
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つい昨日、テッド・チャンの直近のものらしきインタビューが Boing Boing にアップされました。昨年の来日時のインタビューの翻訳 「 「地獄とは神の不在なり」を巡って」の倍近いボリュームがあるようです。以下、特に面白そうな中盤の部分を少しだけ個人的に日本語訳したものを載せてみようかと思いますが。時間と自由意志、最新作 "The Lifecycle of Software Objects" の動機について語っているあたりです。あと、日本での妙なチャン人気の理由とか。


あなたの作品の多くは未来予知に関係するものごとを扱っています。時間の性質の何があなたの心をとらえるのでしょうか?
自由意思の問題。タイムトラベルのすべての面白さの根本にあるのは自由意思だと僕は思っている。 僕のいうタイムトラベルには、未来から情報を受け取ることも含まれる。それは本質的にだれかが未来から旅してくるのと同等のことだから。タイムパラドックスを作り出せるというアイデアは、自由意思の存在を前提としている。複数の時系列をあつかうアイデアの場合であっても、どれをとるかの選択は行えるので自由意志の存在が前提となる。僕たちに自由意思はあるのかどうかという哲学的な議論は昔からあるが、通常それはやや抽象的なものだ。タイムトラベルや未来予知は、この問いをとても具体的にしてくれる。 もし未来に何が起こるか知ることができたとして、あなたはそれを避けることができるだろうか? たとえ「できない」という物語であっても、「できるはずだ」という気持ちからは感情的なインパクトが生じるんだ。

日本にはあなたのファンが多いようですが、なぜでしょう?
わからない。そうと知ったときはとても驚いた。おかげで、ある作品を他の作品よりも翻訳に適したものにする要素は何かということについて考えさせられた。特定の文化的なものの見方に深く根ざした物語を完全に理解するためには、その文化を熟知している必要がある。そういう物語はおそらくうまく翻訳できないんだと思う。僕の作品が哲学的なフィクションであるかぎり、それはアメリカ文化にあまり強く依存しないので、翻訳向きなんじゃないだろうか。これで日本語に翻訳された理由の説明にはなるかもしれない。こちらよりもあちらで人気がある理由の説明にはならないかもしれないが。米国ではグレッグ・イーガンの小説はほとんどが絶版なのに、日本では彼のことは神格化されているようだ。光栄にも僕の仕事をイーガンにたとえてくれる人々もいる。このことは、日本のSF読者がアメリカの読者ときわめて異なった嗜好をもっているという考えを裏付けてくれるだろう。

最新作 'The Lifecycle of Software Objects' を執筆した動機は?
主として、ほとんどのSFにおける人工知能の描かれ方への回答だ。SFでのAIは大抵、忠実で従順な執事として表現される。スイッチを入れれば電源が入ってすぐ命令をきく態勢になる。僕はそこにあるはずの、AIの創造に関する膨大な物語がごまかされてしまっているような気がする。これは人間の脳と同じほど賢いソフトウェアの技術的詳細のことじゃない。大半のSFは奇跡的なテクノロジーの進歩を前提としているけれど、それを説明する必要はない。ただ僕はAIに対して、このソフトウェアに人間の脳並みの賢さをもたせ、執事並みに役立つように育てることのできる誰かがいた、という二番目の奇跡が仮定されているように思う。
現在のコンピュータはいまだ新生児の脳の能力にさえ何光年も及ばない。もしそこにたどりつけたとしても、有能な執事に育てるにはまだ不十分だ。たとえばアーサー・C・クラークの2010年で、HAL9000が起動後に発した最初の言葉はたぶん「おはようございます、チャンドラー博士、授業をはじめてください」だった。これは新生児のセリフじゃない。 その下には、その単純な文章の基礎となった一生涯にわたる経験があるはずだ。その経験はどこからきたのか? もしそれがプログラムされる式のものなら、HALにはまったく授業など不要だったろうに。いったい彼はどうやって英語を学んだのか? 彼は授業のための準備をするということが何を意味するのかを、どのようにして知るのか? 人間を役に立つ使用人にするには何年もかかる。より有能な使用人が欲しければ、それだけ長い時間がかかる。 使いたいすべてのAIについて、それぞれ同じ過程を繰り返す必要はないかもしれない。ひとつのAIを一度訓練すれば、あとはコピーをつくるだけでいいかもしれない。でもやっぱりだれかが最初のひとつを育てなければならず、それは困難でじつに手間がかかるだろう。ほとんどのAI描写は、このステップが不要であるか、容易なものとみなすけれど、僕の考えるAIではこれを技術的な奇跡とは完全に別個の奇跡として仮定している。

その二つのAIの奇跡の実現可能性はどの程度ありうると思いますか?
実際問題としては、AIについてはかなり疑問視している。不可能ではないと思うけれど、きわめて困難で、なぜ皆がかかずらおうとするのかわからない。 今のGoogleはとてつもなく便利だが意識なんてもってないし、そんな方向に向かってもいない。もし50年前にだれかがgoogle並に便利なコンピュータをSF小説の中に出そうと試みたなら、それはある種の意識を持つものとして描かれただろう。でも今は、コンピュータは便利であるために意識をもつ必要などないということがわかっている。普通のソフトウェアで僕たちの目的には十分だ。 僕の予想ではこれはずっとそのままで、今までのソフトウェアは「覚醒」などなしにその利便性を高めていくと思う。
一方で、初歩的なAIソフトの一形態で驚くほどの人気があるのがバーチャルペットだ。「シムズ」が史上最高のベストセラーPCゲームになるとだれが予測したろう? ソフトウェアとの感情的な関係は人々を強く惹きつけるものだということがわかった。だから、意識をもつソフトウェアを進歩させる最もありそうな理由は、便利さよりもその楽しさからではないかと思う。それは実際に意識をもつソフトが、意識をもつ生物のふりをするだけのソフトよりも「楽しいかどうか」のみにかかっているだろう。もしそうなら、次には本当に人々が時間をかけて役に立つAIを訓練しようという気になるかもしれない。


…とりあえず訳したのはここまで。これでも全体からすればほんのわずかです。このあとさらにAIの身体性についての突っ込んだトークがつづくのですが。自分が読めればまあいいかという程度の志の低さゆえ、ヘボ訳なのはご容赦。問題なしだといいんですけど。

(追記)
テッド・チャン・インタビュー 前編 - P.E.S.
テッド・チャン・インタビュー 後編 - P.E.S.
ありがたいことに残りの部分を訳してくれる方登場。お疲れ様でございます。

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「ジェイクをさがして」 (ハヤカワ文庫SF): チャイナ ミエヴィル
日本版の表紙どえりゃーかっこいいがね。絵師はペルディードストリートステーションと同じく鈴木康士氏。
今週の本棚:若島正・評 『ジェイクをさがして』 チャイナ・ミエヴィル著
書評を読んでさらに買いたい度アップ

[ニコニコ] 動画検索 第5回MMD杯予選
回を追うごとに大規模になっていくお祭り。また全部見切れない予感

[ニコニコ] 【第5回MMD杯予選】 BLUE SKY
なんかすごいPVが上がってた。これもMMDなのか

シグルイのススメ
覚悟+シグルイな豪快すぎるネタ漫画。混ぜるな螺旋!ぎゃばらば

[画像] Shorpy Historic Photo Archive
19世紀末~20世紀初頭アメリカの風物を撮影した歴史的な写真を大量に集めているサイト。かなりの高解像度で、芸術的、資料的価値も高そうなもの多数。見てると時間がふっとびます。これのヨーロッパ版がどこかにないものか。
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# by umi_urimasu | 2010-07-23 21:48 | 本(SF・ミステリ)
時代小説、SF、ボーイズラブ、大食死 あとゾンビ
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ちかごろ読んだ本の話。

薄桜記 (新潮文庫)

五味 康祐 / 新潮社


赤穂浪士の討ち入りの陰で、心ならずも敵対する二人の剣士の友情と破滅を描く五味康祐代表作のひとつ。やっぱ五味作品はいいなあ。泣けるし燃えるし笑えるし。隻腕の剣士・丹下典膳、もうありえんぐらいカッコイイです。読んでいるあいだ、僕の脳内典膳イメージは完全に市川雷蔵になってました。で、いま検索してみたら1959年に雷蔵主演で映画化されているというではないですか。ぐぶあ!俺歓喜。落ちつけ。とりあえずレンタル探してこよう。見て気に入ったら、あらためて買い求めよう。

ちなみに文庫新装版の巻末解説は荒山徹です。以前購入時にもちょっと触れたけど、いつも以上にひど……もとい、五味愛あふれる楽しい解説文となっています。だってしょうがないじゃない。徹だし。

この作品の後半で、五味康祐はストーリーを一時中断させ、かなりの分量を割いて、赤穂事件当時の文献の記述をもとに、いわゆる「忠臣蔵」の美談的イメージを排除した吉良上野介や赤穂浪士たちの実像についての考察を披露しています。しっとりと美しく統一された人情劇の中で、このパートは正直かなり浮いてみえます。「これさえなければ最高傑作だったのに」という批判もあるかもしれません。でも、個人的にはこういう横暴(?)な構成はわりと嫌いじゃない。なんでかよくわからんけど。どうもこの「我慢できなくてつい言いたい放題言っちゃった」っぽい感じがですね。大人げなくもかわいげがあるというか、妙な親しみをおぼえるというか。史実と虚構の差異をいじくりまわしてネタ扱いせずにはいられないという、伝奇脳な人種の同族意識みたいなもんでしょうかな。


魚舟・獣舟 (光文社文庫)

上田 早夕里 / 光文社


さまざまな形の「執着心」(が、通じないSF的な事態)を描いた話が多く収められた中短編集。SFとして表題作の世評が高いのは納得です。ただ、僕には「くさびらの道」の方がインパクトでかかったかも。感染すると体が茸に侵食されて死に至る奇病の蔓延により壊滅しつつある日本。その新種の茸は、ヒトの脳に作用する化学物質を出し、家族や恋人を理想化した幻覚を見せ、誘いよせた人間を新たな苗床に……。なんちゅうおぞましい設定。さぶいぼががが。
「魚舟・獣舟」は陸地の大半が水没し、遺伝子操作により生まれた双子は必ず片方が人間に、片方が魚舟になるという未来の物語。設定はやや無理すぎな気もするけど、元・人類な存在とのディスコミュニケーションを描いて人間の定義をゆさぶる系の話はSFの定番で、定番のおいしさ。あと、この短さにこれだけのものを詰めてあるコンパクトネスがすごいと思います。むしろSFよりそっちの技の方が驚き。


月光のイドラ

野阿 梓 / 中央公論社


「バベルの薫り」からSF分と女っ気を抜いて、美少年同士の耽美Hと政治サスペンスに特化したような作品。たぶん、いわゆるボーイズラブ小説の区分に入れてよかろうと思います。しかし意外にも、バベルのときにあれほど笑い転げまくった熱狂が嘘のようにさばさばと読み流してしまった。少なくとも半分の要素はバベルとかぶっているにもかかわらず。やっぱり僕はただのBLには興味ない人間なのかな。エロい描写にしても、バベルの鍼術秘孔レズとか黄泉戸喫ふたなりとかいった変態プレイに比べればてんでノーマル。もはやこの程度では飽き足らぬ。もっともっとむちゃくちゃな野阿作品求む。


あと千回の晩飯 (朝日文庫)

山田 風太郎 / 朝日新聞社


日常、人生、そして独特の闊達な死生観を飄々と語る山風晩年のエッセイ。やはり面白いのは、古今の著名人の死にざまの話ですね。壮絶なのが正岡子規。なんでも余命一年もない重病人にありえざる超大食だったとか。夕食にいわし十八匹とか間食に菓子パン十個とか、文字通り「桁がちがう」メニュー。その鬼気迫る再生への執念をして「やはり子規は一種の魔人であった」と山風は嘆じています。んー。我々凡人から見たら山風先生も娯楽作家として十分魔人レベルですよ。

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グレッグ・イーガン Zendegi - JGeek Log
こんなふうに英語の小説をさくさく読めるようにわしもなりたい。ぼちぼち訓練しよう……指輪と七王国で。ちなみに zendegi はイラン語で「人生」とかそんな意味らしい。読み方は「ゼンデギ」?

筒井康隆「銀齢の果て」映画化 - 笑犬楼大通り 偽文士日碌
お年寄り惨殺シーン特盛りな作品なのですが、やるならR-15指定か。


WORLD WAR Z

マックス・ブルックス / 文藝春秋


マックス・ブルックス 「WORLD WAR Z」にとりかかってみました。おお。噂は本当だった。生理的に怖がらせることを主眼とした普通のホラーじゃなく、パンデミックSFに近いテイストだ。たぶん人生で初めて、「ゾンビものってちょっといいかも」と思えてきた。新しい扉を開きかけてる感がある。期待しつつ先を読みます。
→ やばいおもろい。戦後インタビュー集という形式のメリットが活用されまくってる。世界のゾンビ状況がじわじわ見えてきた。イランとパキスタンは核で消滅。ロシア連邦がいつのまにか神聖ロシア帝国に。日本はどうなってるんだろう。
→ つづき。「世界をめぐり、さらに上空へ」の視点拡大がすばらしすぎる。国際宇宙ステーションから地上のゾンビ群を観測! 原潜ネタはもしかしたら「復活の日」へのオマージュかな。微妙にとんちんかんな日本描写も、いかにも米製エンタメのお約束という感じでほほえましい。
いやあ、ゾンビっていいもんですねえ。
→ 読了。まさに飢えたゾンビのごとくむさぼり読み尽くす。そしてひとりの新たなゾンビファンが誕生した。
ホラー映画はまだ怖い。映像的なグロにはかなり抵抗ある。でも小説なら大丈夫。どこかに「SF好きなゾンビ初心者におすすめのゾンビ小説○冊」というピンポイントな紹介記事などはないもんでしょうか。


SF作家ジェイムズ・P・ホーガン 逝去|お知らせ|東京創元社
ゴッドスピード。もう重鎮の訃報が毎年恒例みたいになってきています
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# by umi_urimasu | 2010-07-04 12:31 | 本(SF・ミステリ)
「テルマエ・ロマエ」 第1巻 ヤマザキマリ
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a0030177_22382426.jpgこれは楽しかった。風呂好きで知られたローマ帝国人が、なんと現代日本の銭湯へタイムスリップしてしまう。2000年の時を越えて東西の「風呂文化」が触れ合ったとき、なぜか生まれる謎の感動。緻密な考証のもと、ユーモアたっぷりに描く異色の比較文化漫画です。

まず冒頭から目をうばわれるのが、とんでもなくにぎやかなローマの公衆浴場シーン。将棋してる!相撲してる!垢すり器具で肌をこすっている人がいる!お菓子の売り子さんがいる!ムダ毛の処理をしてくれるサービスがある! 何なんだこれは。髪結い床ってレベルじゃない。現代人の目から見ても、2000年前のヨーロッパの風景とはにわかに信じがたいような、それは日本人の心の故郷である「風呂」に驚くほど近い情景に見えました。ローマ人たちはこんなにも日々のお風呂を楽しんでいたのか。

そんなローマ人湯客のひとりが突然、現代日本の風呂場にワープしてしまいます。一度ならず何度も。主人公ルシウス・モデストゥスが、ワープのたびに新たなカルチャーショックに打ちのめされ、しかし風呂に関するアイデアだけは貪欲に吸収し、ローマに戻るたびに斬新な風呂を設計する──というのが、この物語の基本的なパターンです。異文化交流の可笑しさ、時代を越えて技術が役に立つキテレツ大百科的(?)な面白さ、「もしローマ帝国に日本の風呂あらば」という一種SF的なくすぐりなど、読みどころは山ほどあるでしょう。そして、温泉たまごや牛乳瓶のフタに子供のように驚き感動する異国人の姿を見ていると、毎日なにげなくつかっているお風呂という文化のゆたかさ、それがもたらす快楽の深さにあらためて気づかされ、「やっぱ風呂はいいよなあ」という幸福感をかみしめずにはいられないのです。日本人でよかった……。

さて、作品中であまりにも高度な文明に接したルシウスは、世界の支配者たるべきローマ帝国民としての自負を砕かれてしまいます。(とはいえ、優れた文明から学べるだけ学ぼうとする謙虚さとたくましさはちゃんとある。)でも、読者の側の視点からみれば、おあいこではないかという気がしないでもありません。彼らローマ人の入浴文化も、現代人にとってかなり衝撃的なものだと思うので。こちらの感覚からすると、2000年もの昔に日本の銭湯にも匹敵する大衆浴場がふつうに存在していたらしいこと、そんなレベルの生活インフラをあたりまえのように築いていたことの方が、むしろ信じがたいのです。古代ローマの繁栄とは、いったいどれほど凄まじいものだったのか。こうして風呂と風呂とが対比されることで、歴史の教科書などを読むよりもずっと身近に、生活上の実感として想像できるというものではないでしょうか。

主人公のルシウスは架空の人物のようですが、作中には皇帝ハドリアヌスや建築家のアポロドロスといった史実上の人物も少なからず登場します。ローマ人の生活描写の描き込みの細かさなどから、歴史考証的なこだわりのほどが感じられます。ローマのトイレのおしりふきシステムにはびっくりしました。あと、キャラの顔の造作も、肖像などが残っている皇帝なんかは写実的に模倣してあったりと、基本的にギャグタッチな話のわりに絵づらはガチ歴史。さらに、一話ごとに「ローマ&風呂、わが愛」という風呂歴史エッセイが付いて、これまた面白い。なんとなく、森薫のヴィクトリア朝文化に対する偏愛に似た方向の情熱を感じます。そういうの大好き。

テルマエ・ロマエ 第一話 ためし読み
こちらでためし読みができるようです。興味をもたれた方はぜひ。

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グレッグ・イーガン インタビュー (Aurealis #42, 2009)
たぶん最新のやつ。気力のあるときに読む

『人喰いの大鷲トリコ』上田文人氏インタビュー
動物の表現について力説。あーもう待ち遠しい

20代女子の「オススメしたい有名海外ファンタジー・SF小説」ランキング
●第1位/J・K・ローリング著、「ハリー・ポッター」シリーズ ……33.0%
○第2位/ミヒャエル・エンデ著、「モモ」……20.4%
●第3位/ダニエル・キイス著、「アルジャーノンに花束を」 ……19.1%
○第4位/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、「ハウルの動く城」シリーズ ……13.0%
●第5位/C.S.ルイス著、「ナルニア国ものがたり」シリーズ ……11.4%
○第6位/J・R・R・トールキン著、「指輪物語」 ……10.5%
●第7位/ミヒャエル・エンデ著、「はてしない物語」 ……8.3%
○第8位/ダレン・シャン著、「ダレン・シャン」シリーズ ……5.9%
●第9位/アーシュラ・K・ル=グウィン著、「ゲド戦記」 ……5.2%
○第10位/グレッグ・イーガン著、「しあわせの理由」 ……4.9%
10位だけどうにも場違いな感が否めない。統計のいたずら?

族長の秋 [著]G・ガルシア・マルケス - 漂流 本から本へ (筒井康隆)
ものすごく読み疲れする本。読み返すなら20年に1回ぐらいのサイクルで。

[youtube] Gandalf Goes to the World Cup
ブブゼラでした。ブブゼラです。ブブゼラなのです。
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# by umi_urimasu | 2010-06-16 22:53 | アニメ・マンガ
忍法帖の姫キャラ比較
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山田風太郎 其の十五 から抜粋
668 名前:名無しのオプ[sage] 投稿日:2010/06/04(金) 05:26:27 ID:WhQfTlIb
忍法帖に出てくる姫の性格はどれも違ってるような気がするんだが
誰か確かめてくれ。

670 名前:名無しのオプ[sage] 投稿日:2010/06/04(金) 05:51:20 ID:0oYKzbob
初期~中期作の個人的な印象

甲賀→弦ノ介様以外目に入らないの!恋する乙女症候群
江戸→好き好き大好き悠太郎様はあと
飛騨→知らん
くノ一→最強ヒロイン丸橋、漢の生き様
外道→伽羅可愛いよ伽羅うわあああ
月影抄→むねつなきゅん・・・ハァハァ
忍法忠臣蔵→さしみ
信玄→勝頼の嫁は俺の嫁
風来→麻也様の勝気かわゆさは異常、僕も足蹴にされたいです
柳生→堀の女ってだれだっけ?えろかわおゆら様
忍法八犬伝→無垢な幼な妻ときいちゃだまってられねえ!
相伝→復刊してください
自来也→べ、別に石五郎殿のことを心配していたんじゃないんだからねっ!
魔天→そんなのもあったなあ
魔界→堀の女とどちらが影が薄いでしょうか
伊賀→1人で3度美味しい、美人薄命、ザ・悪女、不倫妻!

672 名前:名無しのオプ[sage] 投稿日:2010/06/04(金) 06:56:28 ID:pAOklcKi
創世記の牢姫もいたな。恐ろしい、何考えてんのかよくわかんないって意味で
天然ボケの姫様だがw
上にない分、ちょっと補足。
銀河 → 朱鷺…無視デレ。大久保長安愛妾ズ…としまえん各種。
海鳴り → 夕子の方…清楚系定番姫。昼顔の方…悪知恵おしかけ女房。とりあえず昼顔無双。
十兵衛死す → ついに天皇にまで粉をかけはじめる十兵衛さん
けっこうばらけてる。やはりキャラがかぶらないよう意識して書かれていたんだろうか。傾向としては、悪女系の姫はおしとやかな正妻と対になっているパターンが多いようです。「伊賀」の篝火&漁火、「海鳴り」の夕子&昼顔など。
あと、いわゆる典型的なツンデレは意外と少なめかも。自来也の鞠姫ぐらいでは。

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[youtube] The Lost Thing Trailer
これはすばらしい。幻想絵本作家、ショーン・タン原作アニメの予告編です。名状しがたき触手生物と心なごむ交流をしたい方々、必見。原作の詳細はShaun TanのHPに。

[ニコニコ] 【MAD】ソードマスターミナト【装甲悪鬼村正】
いろいろ合いすぎてる

コラム: 『ワンダと巨像』から学べること
ワンダ信者の教授による「なんでワンダみたいなゲームがもっと出ないんだ」という愚痴。気持ちはわからんでもないけど。好きな作品を誉めるために他の作品を貶すのはいただけんな。

Haikasoru in Scotland!
マルドゥックスクランブルの英訳版もハイカソルが出すみたいですよ

野阿梓 「バベルの薫り」
めちゃ面白かったっす。もう笑いすぎて腹痛い。BLってすげーなー……。天皇制と免疫システムのアイデアも興味深かった。これよりもっとブッ飛んでる野阿作品はあるんだろうか。ぜひとも探さねば。

ハヤカワ・オンライン|ブランドン・サンダースン
3巻出そろったミストスピリットの書影を見て、ふと不安にかられる。なんか、ミストボーンから巻を追うにつれて表紙絵の出来が微妙になってきてるような。気のせいと思いたいですが。

HBOドラマ版「氷と炎の歌 七王国の玉座」 公式サイト
このエダードさんかっこええ。わが咆哮を聞け!
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# by umi_urimasu | 2010-06-05 13:31 | 本(others)
覚悟のススメみたいなノベルゲーム探してます
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久方ぶりにひとつノベルゲームでもやってみよっかなあ、という気を起こしまして、よきソフトはあるまいかと物色中。虚淵風かデモンベイン風か、いずれにせよ初期ニトロのような燃えに特化した娯楽大作がいい。理想としては「覚悟のススメを彷彿とさせる」ような作品が見つかるとうれしいのですが。あそこまで破天荒なものがそうそうあるかどうか。
装甲悪鬼村正 -公式サイト
これとかどうなんだろう。歴史改変された架空の日本で、意志をもつ鎧を装着したサムライがチャンバラ空中戦をやらかすといった内容だとか。なんかちょっと覚悟っぽいかも。ただ、ストーリーはかなり重苦しくて外道な感じらしいので多少躊躇するところもなくはない。まあニトロ10周年記念作品というふれ込みだし、ダークな話でもやたらにめそめそうじうじしてなければ大丈夫かも。思いきって買ってみようかのお。

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「WORLD WAR Z」マックス・ブルックス
これまでの人生、ゾンビものは完全に守備範囲外でした。しかしホラーというよりむしろ災害SF小説的な観点から傑作と褒めている人も多くて、読みたくなりかけている一冊。たとえば小松左京みたいな感じなのでしょうかね。

今、読んでる本は「遠野物語」。
どこかなつかしく、またほのかに恐ろしげな、古い香りのする東北民話がぎっしり。これは手ごわい。年月をへて元の事件の前後関係とかディテールはとうに失われ、なにもかも曖昧模糊として、「どうしてこうなった」と途方にくれてしまう奇譚の数々。でもこれらが「実際に聞いた話をそのまま記録」したものならば、そのような逸話が生まれ、伝わり、変形しつつ生き残ってきた、そうなるべくしてなった理由が必ずあるはずだ。お~い誰か、京極堂呼んできて……。

[画像] 召喚師の浮世絵画像を貼ってみる
すご!なにこの江戸画像天国。一枚ずつじっくり眺めてるとあっというまに時間がすぎてしまう。これとかこれとか、絵に対する文章配置の無頓着ぶりが面白い。

江戸読本に見る造本意識
客は物語の内容よりもまず表紙や挿絵で本を選んでいた。作家の中には絵のモチーフ、デザイン、レイアウトなどまで病的なほど細かく指定する馬琴のようなこだわり屋もいた。あんまり現代と事情は変わらない。それにしてもさすが北斎は発想が自由すぎるな

著者インタビュー:長山靖夫先生 『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』
日本近代SFの黎明についての話。トリビアいっぱいで楽しい。こんな話もある↓
『偽史冒険世界』によると、明治41年に「冒険世界」を読んで刺激を受けた愛知県の中学生数名が、仲間とボートで冒険旅行に出かける計画を立てたが、親にばれて未遂に終わったエピソードが紹介されてますね。その計画の首謀者が、なんとあの江戸川乱歩(平井太郎少年)だったとは。
大乱歩自重。大事にいたらなくてほんとによかったね

Togetter - まとめ「ダークエルフの起源」
「ホビットの冒険」における闇の森のエルフはちょっとイジワルなほのぼのドジキャラ集団にすぎないんで、日本の一般的なダークエルフのイメージ(邪悪で高性能?とか)のルーツ候補としてはやや弱いんじゃなかろうか。

[画像] 京都大学にすごい寮があるらしい(画像21枚):デジログ!
現存する日本最古の大学寄宿舎。探検してみたい。でも住むのは遠慮したい

続編の構想もあった――Xbox 360版『ファントム』虚淵玄さんインタビュー
「クロウディアルートは『ToHeart』長岡志保EDに背中を押されて作った」 な、なんだってー

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今週は「装甲悪鬼村正」にかかりきってます。おかげでネットしてるヒマがない。今、ようやく一条ルートと糸目ルートを消化し終えたとこ。当面のお気に入りキャラは六波羅四天王(?)のみなさんですな。特に童心坊の外道すぎる破戒僧ぶりには拍手を惜しまない。もっとやれ。
小説は 野阿梓「バベルの薫り」 のさわりを読みかけ。鬼哭街ばりのサイバー中華伝奇、やりすぎなルビ芸、未来SFなのに征夷大将軍など、笑いどころ多し。これは先が楽しみだ。

『少女外道』 (皆川博子) | 文藝春秋
これも読みたい。皆川先生ラブ。

ウィリアム・ギブスンによるおすすめSF小説10選
既読はベスターの虎とバラードの結晶世界だけでした
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# by umi_urimasu | 2010-05-15 19:36 | まぞむ
「天地明察」 冲方丁
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a0030177_0223532.jpgなんという爽やかさ! これが本当にあの“皆殺しの冲方”の作かと、にわかには信じがたいほど清涼感にあふれた小説でした。マルドゥックヴェロシティみたいな暗黒系が好きな人にはかえって猛毒だろ、これは。プロジェクトX的な意味で、感動的な「いい話」ではあるのですが、思わず修造動画が脳裏をかすめてしまった。がんばれ絶対やればできる。そんなスーパーがんばり学者侍のお話。

僕は杉浦日向子効果で江戸風俗に少し興味があるので、江戸期の天文学や数学についての描写をたいへん楽しく読みました。「算額奉納」や算術をおしえる塾、天体観測装置、絵暦など、江戸時代のいろいろな学問・娯楽・文化が物語に絡んで出てきます。ある意味、チャンバラよりもはるかにリアリティを感じさせてくれる部分です。チャンバラがない代わりに、将軍上覧の囲碁勝負(争碁)がちょっと熱いのですが、それはまあ余禄。

ストーリー自体は、よくある理想化補正入りまくりの歴史偉人伝です。生きがいを見つけられずにいた算術好きの若者・渋川春海が、さまざまな分野の天才たちに出会い、成長し、やがて貞享の改暦という国家的事業に人生をかけて挑んでいく。ただし、その仕事は渋川ひとりの学問上の目標にとどまらず、武断主義から文治主義への移行という武士社会の大転換を象徴するひとつのエポックでもあって(という解釈を作中では採っていて)、「そのとき歴史が動いた」的な大きな視点も描かれています。なかなか壮大な歴史的視野の広がりを楽しめて、よい感じです。

ひとつ、個人的な不満としては、関孝和、水戸光圀、酒井忠清、保科正之ら、登場人物のほぼ全員に強烈な名君・好人物補正がかかっていて、話全体がやたら美談くさくなっていること。そこまできれいごとにせんでもええがね。

文体について。冲方丁の小説はおおむねいつもそうだと思うんですが、この作品も言い回しに凝ったりせず、常に主人公の感情にぴったりくっついた、なんというか、非常に「気持ちがそのまんま」出る文章で書かれています。読みやすく、よく伝わる文章です。美文家とはいえないかもしれないけど、こういうのもある種の達文なのかな。いまいち時代小説っぽくはないけど。あと、冲方丁には一度ヴェロシティ文体でも時代小説を書いてみてほしい。すごくユニークな代物ができそう。

最後に、各所で指摘されていることで、当時すでに地動説が天文学者の間では常識だったとか、渋川春海がケプラーの法則を独自に発見したとか、その他史実に即していない記述がちょこちょこあるらしいです。いわれなければなんとなくそのまま納得してしまうところでした。気をつけよう。小説は意図的か否かを問わずウソの塊なのだという認識は常にもっておきたい。特に歴史伝奇とSFでは、考証の失敗で作品全体が台なしになってしまうこともありうるから。

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Time Traveler Caught in Museum Photo?
1940年ごろにカナダ?で撮影されたという古い写真の中に、現代人っぽいファッションの男性が写っていて「タイムトラベラー発見www」と話題に。加工でないとしたらいったい何者だろう。

a0030177_2137169.jpg「歪み真珠」 山尾悠子
ゴールデンウィーク中に読めた本これだけ。でもすばらしかった。彫刻じみた文章美と絶望的なまでの意味不明感。クセになります。夢ってのはこう、理不尽だけど妙なふうにロジカルなことが多いな。全部大好きですが、特に好きな作品をあえて選ぶとしたら「美神の通過」「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」「ドロテアの首と銀の皿」あたり。

ゴラムをゴクリ、アラゴルンを馳夫さんと訳した指輪物語の翻訳は糞
「馳夫なら、めったに人の通わぬ小道を通って、あなた方の道案内を勤めることができる。あなた方はかれを連れていくか?」 踊る子馬亭でアラゴルンがみずからを三人称で呼んだ、あの態度がふしぎと印象に残っています。本来は蔑称なのに、さりげなく誇りをもって自称しているようにも思える態度でした。馳夫さんかっこいい。王朝名にまで採用しちゃったくらいだから、じつはアラゴルン本人も相当気に入ってたのではあるまいか。

パオロ・バチガルピ "Small Offerings" 翻訳 - 送信完了。:読書系小日記
バチガルピと聞いて俺様が釣られクマー。読む。うへあ。出産グロ注意

[ニコニコ] マイリスト「人類は組織的抵抗を諦めました」
発売から十年。いまだに時々、無性にガンパレードマーチをやりたくなるときがある。もちろんこんな神プレイはとてもできないのですが。バグ潰し&22人プレイモード付きの完全版発売は見果てぬ夢か。
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# by umi_urimasu | 2010-04-30 00:33 | 本(others)
映画 「第9地区」
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a0030177_17122516.jpgネットで評判になってて、SF系のブログでも注目度が高そうで、「じゃあわしもわしも」と見に行ってしまいました。あーなるほど。これはえげつないな。人種差別と格差社会を皮肉ったブラックな風刺SFなのですが、風刺対象を笑うんじゃなくて、あたかも美徳であるかのように描ききるといういやらしいタイプです。オーウェルとかスターシップ・トゥルーパーズ的ないやらしさですね。これは疲れるわ。反差別をうたうストーリーなのに描写が差別意識まるだしで、胸糞わるい話のくせにどこまでもいい話のふりしてる。無自覚な差別主義者のウザすぎる主人公が家族思いの友情ヒーロー扱いされてて、「ここはオレにまかせてお前だけでも生き延びろ!」と感動で押し流そうとしてくる。じつに意地がわるいです。超げんなりできます。(「げんなりできる」は一応褒め言葉的な意味で)
たぶん、みんなでよってたかってツッコミ入れながら見るほうが精神衛生上よさそうです。

【ネタバレ】「第9地区」をようやく観ました/ヨハネスブルグからの不敵な挑戦状 - 万来堂日記2nd
げんなりできるポイントを広く細かく拾ってまとめてくれている記事。

風刺SFとしては非常にいやらしい、もとい、よくできた作品ではないかと思います。ただ、「特定の社会問題に対する風刺のための寓話」としてみごとにブレがない反面、おそるおそる未知のなにものかに触れるようなSF的な驚きとかいったものは皆無であって、そうした要素をわずかでも期待して見にいった僕としては忍耐が報われない映画でもありました。この映画のエイリアンって姿形がエビなだけで、中身はただの人間だもんな。

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バチガルピ・ショートインタビュー - 送信完了。:読書系小日記
フィクションをほとんど読まないというのはちょっと意外かも。好きな短篇作家はテッド・チャンとケリー・リンク。

[ニコニコ] 【アイマス】『アイドルinエルシア』 【D&D】
すいませんTRPGナメてました……。遮蔽とか間合いとか、位置取りがものすごく重視される戦闘をやってるらしい。TRPGときいて思い浮かぶイメージと全然ちがってた。あとホブゴブリン軍団がかっこよすぎて惚れた。

チャールズ・ストロスさん日本で足止め中
なぜか秋葉原の格安ホテルに泊まることにしたという。せっかくだからアキバ見物でもいかが

手塚治虫文化賞大賞は「へうげもの」
祝。これからの柳生描写にも期待しております。また柳生の里いきたいな

[画像] ミナス・ティリス by Rizo
うほっいい城砦都市。でも普通に人が生活する場所としては、あまりに不便で非現実的な気がしてきた。最上部の白の塔の高さは地上300メートルぐらい。東京タワーとほぼ同じ。心臓破りの町だ。

[画像] Magic the Gathering ラヴニカ by Richard Wright
コメント欄で教えてもらいました。グラッツェ。こんなふうな架空都市が3Dモデルデータ化されて、VR環境上でぶらぶら散策できるように……なる日がくるといいなあ

「天地明察」にとりかかる。殺戮も陵辱もないきれいな冲方作品を読むのは初めて。まぶしい。目が、目が~
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# by umi_urimasu | 2010-04-17 16:36 | 映画
映画 「シャーロック・ホームズ」
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a0030177_21175122.jpg目指したのは「とにかく今までのホームズらしくないホームズ」か。推理よりも暴力で敵をなぎ倒す戦闘探偵とその相棒の戦闘軍医、怒れる筋肉紳士コンビの鉄拳が今日もベーカー街の石畳を朱に染める。いや染めないけど。古典のイメージからの、粗暴ともいえるほどの逸脱ぶりが面白おかしい(と笑ってすませられる人向きの)にぎやかな冒険アクション映画でした。

僕はガイ・リッチー作品というと「スナッチ」と「ロック、ストック~」しか見たことないのですが、ダーティなケンカ描写、短いカットをつないで時間をスキップする演出、それに強烈な訛り言葉のセリフ回しが印象に残っています。今回もそういった要素はあちこちに見られました。スナッチばりの痛そうなボクシングシーンもあるよ。これはあれですかね、ジョジョでいうところの「ゴロツキどもがやる貧民街ブース・ボクシングの技巧」というやつですかね。親指を目につっこんで殴りぬける的な。
主人公がほんとにそこまでしたら正義のヒーローとしては失格だろうけど、このホームズもなかなかえげつない戦法を使います。欧米の作品はどちらかというと、ヒーローのやりすぎ攻撃に対して日本より寛大なイメージがある。民族性の差かなあ。

ストーリーは単純明快、世界征服(笑)をもくろむ怪しげなカルト教団をやっつけてやるぜ。みたいなノリ。僕はヴィクトリア朝ロンドンで冒険活劇というだけですでに上機嫌で、ストーリーよりも背景やセットにばかり見入ってました。煤煙にうす汚れた街、水晶宮にタワーブリッジ、どろり濃厚なテムズ河、謎の中国人。おいしいヴィクトリア朝おいしい。

主演のロバート・ダウニー・Jr(アイアンマンの中の人)については、イメージがちがいすぎる、ミスキャストではないかという声もあるようです。確かにちょっとな。むしろ悪役側のブラックウッド卿の方がずっとホームズらしく見える。みんな頭にジェレミー・ブレットのイメージがあって、なおさら「配役逆だろ」感が強いのかも。
あとこっちのワトソン高性能すぎて吹いた。あんたもう同格の主役でいいよ。

もしこの映画の狙いが既存のホームズ像からの脱却にあるのなら、確かに今までとはちがう方向に進んではいるようです。でもそれならそれで、何かもっと、客が心底唖然とするような無茶な要素を加えてもらえると嬉しかった。キャラ造形のアレンジがメインなのは、パロディとしては少しおとなしいように思えました。まあ、その分格闘やチャンバラをめいっぱいがんばってるから、基本そっちで楽しんでくれということでしょうか。

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日本の人気ライトノベル、桜坂洋「All You Need Is Kill」をハリウッドでワーナーが映画化
先んじて英訳出版していたHaikasoruに隙はなかった

イギリスの大学で吸血鬼を学ぶ修士課程が開始予定
就職面接とかで「ご専攻は?」「吸血鬼学です」って答えることになったらけっこう恥ずかしいかも

フィクションモチーフとしての吸血鬼 - Wikipedia
従来ホラーやエロ・グロの文脈で扱われてきた吸血鬼に対して、悲劇のイメージが加えられたのは、萩尾望都「ポーの一族」やアン・ライス「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」以降のこと
あれ?そんな最近のことだったとは。意外だなあ。

[youtube] Pixels by patrick Jean - Invasion pixels
ドット絵のレトロゲームキャラに現実世界が侵食されていくショートフィルム。滅亡SFは好物です
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# by umi_urimasu | 2010-04-05 21:24 | 映画