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「ハーモニー」伊藤計劃
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a0030177_291754.jpg21世紀後半のある日、全世界でまったく同時刻に、互いになんの関係もない6582人の人間が突如自殺をはかった。人類の大半が接続している医療ネットワークを通じ、不可解な方法で大量自殺を引き起こした謎の存在――その目的はいったい何なのか。WHOの生命監察官・霧慧トァンは、かつて自分と共に自殺をこころみて死んだはずの親友・御冷ミァハが事件にかかわっていると睨み、捜査に乗り出すが……。

虐殺器官」につづく伊藤計劃のオリジナル長編第二作。内容は「虐殺器官」をセルフリメイクして、「From the Nothing, with Love」の意識ネタを応用、ついでに百合成分5%配合、といった感じでした。内省的スパイサスペンス風の構成は「虐殺器官」から一貫したこの人の芸風(?)のよう。

人間の意識や意志や感情は、それが生存のために有利だったから獲得された機能にすぎない。だったら、生存上必要のない環境下では意識なんかなくたってかまわない。いや、むしろないほうがしあわせになれる。その環境とは、全人類がただひとつの絶対的な価値観――生命至上主義――を共有し、互いに協調しあい、他人を思いやり、誰と争うこともなく、あらゆる病気も根絶された、究極の健康社会である。そんな社会を実現させる、もとい、人間の方を理想の社会に合わせてチューニングするプログラムがついに書けたよ。これでもう意識なんて必要ないね。じゃあ消しちゃおう。ぽちっとな!

と、あらましを書いてしまえばわりとシンプルな話なのですが、作中ではそれを補強するもろもろの理屈、未来の医療社会やヒトの意識の仕組みについての説明・問答にかなりのリソースが割かれていて、そこが読みどころでもあります。「虐殺器官」同様、いかにも「理屈を楽しむ小説」という印象です。
ただし、ロジック重視な姿勢が強くあらわれている反面、ドラマの方はおざなりというか、劇的な場面でも人物の喜怒哀楽の反応など妙にテンプレ的な気が。なにやらゲームのイベントでも見ているような白々しさがありました。これは作者が人間ドラマを「らしく」描くのが苦手なのか、それともわざと擬似イベントっぽくしているのか、ちょっとわかんない。ときどきハルヒとかナウシカとかオタネタの寒いパロディを入れてくるのも、ひょっとするとあれでキャラクターやストーリーへの感情移入を意図的に阻害しようとしてるのかもしれない。理由は想像もつかないけど。

以下、小ネタや気づいたことなど。多少ネタバレしてるかもです。

文体で特徴的な、文中にはさまれているHTML風のタグ。あれはもちろん単なる飾りではなくて、ちゃんとSF的な仕掛けにもなっています。意外なトリックというよりは、その結末ならば当然あってしかるべき自明なものとして。ところどころ微妙に不統一のような気がしたけど、そういうのも何か意味があるんだろうか。

疑問文に疑問符を使わず「……」であらわすのは明らかに黒丸ギブスン文体の模倣。でも正直、あんまりかっこいい感じにはなってないと思います。ただ純粋に好きだからマネしただけなのか、それともなにか他に狙いがあってのことなのかは不明。あれはやっぱり、ギブスンの文体だからこそあれだけ映えるんだと思うなあ。

ミァハ、ヌァザ/トァン、キアンなど、日本系の名前らしからぬ登場人物のネーミングはケルト神話が元ネタらしい。何か作品についての暗示的な符号になっていたとしてもケルト神話の知識がないので「へー」としか反応できないけど。

バラードの「未来は一言で『退屈』だ」は、Andrea Juno and Vale “J. G. Ballard Interview” Re/Search #8/9 (1984) を引用した山形浩生「バラード:欲望の磁場」からの又引きみたい。

伊藤計劃の作風として、人物描写にあまり注意をはらわない傾向はもともとあったと思うけど、ガブリエル・エーディンの性格なり容姿なりについての描写がただの一語もなかったのにはちょっと驚いた。キャラに人間としての最低限の特徴を付与する労すら省いたのかと。ほんとうに理屈だけに徹していて他はどうでもいいっていう主義なのかな。個人的には、もう少しうるおいのある方が小説としては好きですが。

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[画像] 機械仕掛けの巨大蜘蛛
フランスのグループによる野外人形劇。なんかSF的だ。「スルタンの象」とは別のところ?

[画像] ヴァイキングの炎の祭典 ウップヘリーアー
イギリス・シェトランド諸島のお祭り。千年ほどタイムスリップした気分になれそう

[画像] concept ships
架空の飛行機や宇宙船の画像いろいろ。重いので注意。未来的なのもいいけど少々緑が足りないか。あとで探索してみよう

a0030177_1456735.jpg「バットマン ダークナイト」のDVD、レンタルで再見。劇場公開時にも見たけどやっぱり好きでした。バットマンムカつく。いらいら。これはもう買わざるをえない。同じ監督の前作「バットマンビギンズ」も、未見だけど楽しみ。一回借りてみて、気に入ったらいっしょに買おう。
あと、本は津原泰水「奇譚集」と荒山徹「十兵衛両断」とジェフリー・フォード「白い果実」。それでも足りねば皆川博子かダン・シモンズあたりの積本崩し。年末年始はそんな感じです。

「やる夫家康」シリーズ読了@大晦日。お、おもしろかった……。

[画像] Cool Creative Architectural Designs for the Future
未来都市の想像図いろいろ

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新年あけおめ。
バットマンビギンズもダークナイトほどではないですが非常に楽しんで観ました。バットマンの映画はみんなこうなんだろか?それともクリストファー・ノーラン監督だから?このシリーズ以前にティム・バートンが監督したシリーズもあるらしい。そっちもチェックせねば。

↑このあと風邪でぶっ倒れて三日三晩正体なし。1/5、ようやく蘇生。ひどい正月休みでした。

a0030177_231755.jpg1/7。かぜの治りが悪い……。ぐったりしたままティム・バートン版のバットマンを鑑賞。ノーラン版に比べると、いわゆる能天気なアメコミのイメージにより近い感じですかね。ファンシーホラーっぽい美術はなかなか印象的。ジャック・ニコルソン演じるジョーカーも、ノーラン版のようなリアルな迫力はないものの、ピエロ的な気持ち悪さがよく出ていてこれはこれで面白い。ただ、ストーリーは退屈でした。勧善懲悪としてのお約束以上でも以下でもないって感じ。あと、シンボルとして蝙蝠を選んだ理由が説明されないとか、ヒロインがいらない子だとか、ガンアクションがショボいとか、いろいろと物足りなく思うところも多く。個人的にはノーラン版バットマンのほうが好きです。
またダークナイトが見たくなってきた。
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by umi_urimasu | 2008-12-26 02:43 | 本(SF・ミステリ) | Comments(4)
「山尾悠子作品集成」(途中)
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a0030177_21303166.jpgかれこれ2ヶ月近くも小刻みに読んでは休みをくり返し、ようやく半分消化。もうなんかいろいろだめになるほど美しいです。この世界に浸りきっていると、現実に戻るのが異様に億劫になってしまいます。これは癖になっちゃいけない気がする。だから一度に少量ずつ、付かずはなれずの間合いで読む。そうこうしているうちに月日は過ぎて、ふと気がつけば新作が出版されていてヒャッハー!という寸法である。

とはいえ、その新作も今年の夏には出ているはずだったのが、だいぶ怪しくなっています。折からの出版不況という事情も考えるとまったく楽観はできない。で、しかたなく似た感じの小説を他で探そうともしているのですが、「山尾悠子みたい」と評判になるような最近の小説家の噂というのは、これまたさっぱり見当たりません。これほどまでにいないものかな。というより、幻想小説というジャンルそのものが人気ないのかな。うーん。

備忘録。収録作品の初出リストをTomePage 平成12年6月の記事から転載。

 「夢の棲む街」(SFマガジン, 昭和51年7月号) (a)(b)
 「月蝕」(SFマガジン, 昭和51年10月号) (a)
 「ムーンゲイト」(SFマガジン, 昭和51年12月号) (a)
 「堕天使」(カッパまがじん, 昭和52年早春号) (c)
 「遠近法」(別冊新評, 昭和52年7月号) (a)(b)
 「シメールの領地」(SFマガジン, 昭和53年2月号) (a)
 「ファンタジア領」(SFマガジン, 昭和52年7月号) (a)
 「耶路庭国異聞」(SFマガジン, 昭和53年7月号)
 「街の人名簿」(SFマガジン, 昭和53年10月臨時増刊号)
 「巨人」(SFマガジン, 昭和54年1月号)
 「蝕」(小説怪物, 昭和54年1月号)
 「スターストーン」(スターログ, 昭和55年6月号)
 「黒金」(SFアドベンチャー, 昭和55年12月号)
 「童話・支那風小夜曲集」(奇想天外, 昭和55年4月号)
 「透明族に関するエスキス」(奇想天外, 昭和55年10月号)
 「私はその男にハンザ街で出会った」(奇想天外, 昭和56年10月号)
 「遠近法・補遺」 (b)
 「パラス・アテナ」(奇想天外, 昭和55年1月号)
 「火焔圖」(奇想天外, 昭和55年3月号)
 「夜半楽」(奇想天外, 昭和55年5月号)
 「繭」 (b)
 「支那の禽」(ソフトマシーン, 2号, 昭和55年)
 「秋宵」(ショートショートランド, 昭和56年夏号)
 「菊」(ソムニウム, 3号, 昭和55年)
 「眠れる美女」(綺譚, 5号, 昭和58年)
 「傳説」(小説現代, 昭和57年2月号) (b)
 「月齢」(NW-SF, 昭和57年12月号)
 「蝉丸」(小説現代, 昭和59年1月号)
 「赤い糸」(ショートショートランド, 昭和59年9月号)
 「塔」(小説現代, 昭和59年春季別冊)
 「天使論」(ショートショートランド, 昭和60年3&4月号)
 「ゴーレム」
(a) ハヤカワ文庫JA『夢の棲む街』に収録
(b) 三一書房『夢の棲む街 遠近法』に収録
(c) コバルト文庫『オットーと魔術師』に収録
余談。
「作品集成」の最初には佐藤亜紀、野阿梓、小谷真理による推薦文が載っています。そして本の最後の後記を読むと、山尾悠子からも、特に名指しで野阿梓へのメッセージが書いてあります。「もしも言葉が力を持つものならば、あなたの名が星月夜の砂漠を越えて届く百合の香の如くありますように。幸運が暖かい雨のように降りそそぎますように。新鮮な酸素を湧かす舟路がいつも共にありますよう、花降る巷をゆく時の足拍子がいつも軽やかでありますように。」だって。どんだけファンなんだよ。

余談2。
「童話・支那風小夜曲集」の中の小編「支那の吸血鬼(ヴァンピール・シノワ)」は、中国の吸血鬼のけだるい恋物語。この吸血鬼はキョンシー映画みたいなやつじゃなくて、むしろドラキュラ伯爵のような貴族的なイメージで、とてもいい感じです。中華吸血鬼いいなあ。でも日本ではあまりフィクションの題材にもされてないような。ちょっともったいない気がする。伝奇的にもおいしそうなんだが。実際にやってるのって菊地秀行ぐらい?

備忘録2。山尾悠子スレからサルベージ。
648 :名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/18(水) 17:30:42
★山尾悠子が選ぶ〈異界〉小説十選
ミヒャエル・エンデ「鏡のなかの鏡」
ウィンザー・マッケイ「夢の国のリトル・ニモ」
スティーヴン・ミルハウザー「イン・ザ・ペニーアーケード」「バーナム博物館」
ジュリアン・グラック「シルトの岸辺」
マルグリット・ユルスナール「東方綺譚」
ホルヘ・ルイス・ボルヘス「ボルヘスとわたし」
澁澤龍彦「高丘親王航海記」
マーヴィン・ピーク「ゴーメンガースト」三部作
イタロ・カルヴィーノ「見えない都市」
ソースは昔のbk1の特集ページで、山尾悠子のエッセイも載っていたらしい。読んでみたかった。

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『Phantom』アニメ化に際して
「ニトロプラスはホワイトベースだった」 by 虚淵玄。また虚淵監督でノベルゲーム作ってほしいです。ダークナイトみたいなやつ。

伊藤計劃「ハーモニー」ゲットしてぱらぱら。なんか文章にtexとかhtmlみたいなタグが入ってる。難読苗字の御冷ミァハは「みひえ」、霧慧トァンは「きりえ」でした。しかしなんともはや、ゆりゆりだな。

自分用: やる夫柳生@やる夫観察日記のまとめリスト
やる夫で学ぶ柳生一族 まとめ
やる夫で学ぶ柳生一族(その2)
やる夫で学ぶ柳生一族(その8・続)
やる夫で学ぶ柳生一族(その9)
やる夫で学ぶ柳生一族(その10)
キャラAAのチョイスも毎回楽しみにしています。春日局=ハルヒはいわれて納得
やる夫で学ぶ柳生一族(その11)
やる夫で学ぶ柳生一族 ~幕間~
柳生一族史おもしれえ。「十兵衛両断」に進む前の予習にもちょうどよさげ。
追加
やる夫で学ぶ柳生一族 外伝「新陰流の剣士たち」
やる夫で学ぶ柳生一族 外伝「新陰流の剣士たち」・続
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その12)
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その13)
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その14)
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その15)

[ニコニコ] 日本ののワばなし2
まっすぐとAnd You! さえ出せば何やっても許されると思ったら……だいたい許される

「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」6巻 重大発表
なにやら声優がどうとか。アニメ化?

太陽は資源のかたまり、技術さえあれば
いい感じで話が始まったのに……じ、自暴自棄になっちゃいけない

物語という嘘で真実に近づく 『電脳コイル』で日本SF大賞 磯光雄さん(アニメ監督)
>「物語を作るとは、いわば嘘をつくこと。しかしその嘘が、人が真実に近づくために機能すれば、それは真実を含んだ嘘。むしろ嘘が交じってないと、人間は世界を面白く認識できないのではないか。そんな物語の力を、私は信じています」
いいことを言う。12話がまた見たくなる。

Amazon.co.jp: ホアズブレスの龍追い人 (創元推理文庫): パトリシア・A. マキリップ
これは気になるなあ
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by umi_urimasu | 2008-12-18 22:31 | 本(others) | Comments(0)
「エンジン・サマー」ジョン・クロウリー
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a0030177_13225561.jpgいつも思うのですが、廃墟というやつはなぜあんなにもSF的なのだろう。

「何か大きなものが終わった後、人のいない風景を描くのにSFほどふさわしいジャンルはない」とは飛浩隆氏の言ですが、確かにSFには、人類滅亡や文明崩壊後の世界を描いた作品が山ほどあります。その中に出てくる朽ち果てたビルやハイウェイやショッピングモールを想像するとき、僕はいつも、寂しさや切なさや懐かしさや、いろんな感情をひっくるめたなんとも言いがたい気持ちになります。いつの日か人類が黄昏の時代を迎えたとき、かつての栄光をしのぶモニュメントとなる物たち。それらに対する、奇妙に厳粛な祈りにも似たあの感じ。現実の廃墟の写真や絵に惹かれるのも、その感じをできるだけリアルに味わいたいからなのかな、と思うことがあります。あれはいったいどういう心理なんだろう。

ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』特設ページ (大森望)

作品のタイトルでもある「エンジン・サマー」は当然ながら、インディアン・サマーのもじりのようです。しかし、はるか未来に小春日和のことがそう呼ばれるようになったいきさつは作中では明らかにされません。冬のはじめにささやかな夏がしばらく戻ってくることを、だれも知らない理由で「機械の夏」と呼ぶ――もしかしたらそれは、大昔に文明を滅ぼしたという大災厄となにか関係があったのかもしれない。自然現象ではなくて、放棄された気候制御システムの故障とかそういったようなことから「機械」のつく呼び名が生まれたのかもしれない。登場人物にも読者にも真相はわからない。わからないけれども、むしろわからないからこそ、失われたものへの郷愁と想像はかきたてられます。この作品にはそういう、本来の意味を失ったかわりに魔法のような響きを得た言葉がたくさん出てきます。長い年月のためにいびつに変型してしまった、どこかなつかしく、悲しげでもある言葉。まるで廃墟を描写するために自らも廃墟的な美しさをそなえるに至ったかのような言葉。人類の黄昏の時代を語るのに、これほどふさわしい言葉が他にあるものでしょうか。まあ、訳文ではその雰囲気をなんとなく察することぐらいしかできないんですが、それですらかくも美しい……。

独特のリリカルな文体のほかにも読みどころはいっぱいあって、たとえば少年が少女の愛を「二重の意味で、永遠に」失う成長と喪失の物語としても美しいです。また、文明崩壊時代の神話やアメリカインディアンとエンジン(インディアン)・サマーというタイトルの符合など、暗示的に示されるものも多いし、猫とか箱とか、婉曲にしか語られないSF設定もいろいろあります。いろいろありすぎて、一読しただけではとても咀嚼しきれない。いずれ二度三度と読み返して、とことんまで浸ってみたいものです。

追記:「Hello, world」 ニトロプラス のころから廃墟好きについては折にふれこねくりまわしてました。むしろ昔のほうがよく把握してるかも。劣化した?

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津原泰水 『綺譚集』、文庫化
ママ、マジッすかー!うおおおん!やったよー

専門家「?」、考古学調査で「スイス製腕時計」出土―広西 (Ak
わろた。誰だよ埋めたの

[画像] 廃棄されたパラボラアンテナ (アメリカ海軍研究所)
SF的な廃墟の好例。もとはハイテクの粋だったであろう物体だけに、よりいっそうの哀愁が。

[画像] 超巨大雲 by Karen Titchener
これは全力で逃げていいクラス
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by umi_urimasu | 2008-12-13 13:43 | 本(SF・ミステリ) | Comments(2)
文体の好き嫌いも「脳内の幽霊」の仕業?
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教えられた「ルール」が小説の「書き方」のみならず「読み方」にまで絶対的に君臨してしまうパターンというのもやっぱりあります。(中略)昔刷り込まれた小説作法に反する表現が出てきただけで"生理的に"気持ちが萎えてしまう
「メモリ」と「メモリー」の表記を統一したくない - 文章表現の難儀なところについて
読み手の実感としてこれはあります。教えられた作法というより、手の届く範囲内で好きな本ばかり読んでたらいつのまにか好みのパターンが固まってたっていう感じだけど。

若い時期に形成された文章の好みを後から大幅に変えるのはとても難しいです。これってもしかしたら、ラマチャンドランの「脳内の幽霊」みたいな作用が文章に対してもはたらくためではないかしらん。人それぞれが自分の精神にもっともしっくり合うような文体の「型」をもっていて、その型にはまった文章を読むと快く感じ、型から外れた文章を読むと違和感を、場合によっては苦痛すらおぼえる。みたいな。
成長期に読んで強い印象を受けた文章がそうした文体嗜好の型をつくるとすると、雑多なタイプの文体をまんべんなく読んでいればかたよりは少なくなるのかもしれない。でも一度できてしまった型はそうそう変形してはくれない。というわけで僕もいろいろ不自由しています。特にライトノベル的な文体に対する抵抗感がひどいです。この頑固な型をどうにかして柔らかくする方法はないものだろうか。このラノベすごいよー!と思えるような小説を見つけて読めば少しは柔らかくなるだろうか。

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エンジン・サマー」にとりかかる。あがが。美しすぎます。これは飛浩隆好きに絶対受ける。

病院から宣伝です - 伊藤計劃:第弐位相
「ハーモニー」詳細きたー。ディストピアSFのようでもあり、今どき珍しい百合心中ものみたいでもあり、人類滅亡もののようでもあり。ギブスンのスプーク・カントリーともども発売日は12/18に早まった模様。

『虚構機関 年刊日本SF傑作選』序文 (大森望)
2007年発表の16作品が入ったイヤーズベスト本。なんで今までなかったんだろ。海外翻訳SFでもこういうの毎年出してほしい

D&D:アルファルファモザイク
東京の地下鉄網、それはまさに現代のダンジョン。案内標示なかったら普通に迷い死ぬ。

やる夫で学ぶ柳生一族 まとめ
魚石庵経由で。柳生って山風と「柳生一族の陰謀」ぐらいでしか知らないんだった。興味ありありです。あとで読もう。ミルチャ・エリアーデも面白そうだ
ブシドーMMO/柳生 - Woshare Wiki
コメント欄で教えてもらった。民明書房的柳生史。ウェールズ柳生からエジプト柳生まで、世界の柳生について詳説されてます。ようやるわ。
剣鬼喇嘛仏で頭がフットーしそうだよおっっ
風太郎先生はやはり不世出の天才であられた

沙村広明の描いた涼宮ハルヒ
まんぐりヘソじわヒザのウラ。一般誌でも安心の沙村クオリティ

夢を映像化!?脳内画像を脳活動から再現
これなんてパプリカ
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by umi_urimasu | 2008-12-09 20:01 | まぞむ | Comments(15)
「聖家族」古川日出男
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a0030177_1946359.jpgごろり。どすん。メメタァ。擬音であらわすならそんな本。書き言葉よりも肉声の語りに近い倒置文体はまるで弾丸のよう。枉げぬ、倣わぬ、まつろわぬ、これが俺の言葉だ文句あるか、と言わんばかりの熱い文章が、ニ段組730ページにぎっしりと刻まれています。物語は時系列や人物の視点が錯綜していて全貌の把握は困難なのですが、それでも読み終えたときの「途方もなくでかい世界に立ち会った」という満腹感はすさまじいものがありました。

この作品を、作者自身がキャリアの集大成にしようと意図して書いたかどうかはわかりません。でも実際のところ、わりと素直な「古川日出男総まとめ」になってるんじゃないかと思います。たとえばここには「13」のような、幻想にしては現実的な(マジックリアリズム的?)異能者たちがいるし。「ベルカ、吠えないのか?」のような異族の目線からみた歴史、動物たちの怒りもあるし。「アラビアの夜の種族」のようなどぎつさ、滑稽さもあるし。「サウンドトラック」」のような都市型アウトサイダーの描写もあるし。僕が買っておいてきちんと読み終えていない本の中からも、「沈黙/アビシニアン」のように大河サスペンスっぽい話やロマンスっぽい話、「gift」のように攻撃的でシュールで妙に笑える(?)話、「ハル、ハル、ハル」のようにスピード感あふれる文体――「ハル、ハル、ハル」の文体はもうほとんど「聖家族」そのままといってもいいかな。そんなふうに、それぞれの作品から何かしら「聖家族」に取り込まれている要素があるように思えます。やっぱり最初から、一切合財ぶち込んだらー!というつもりで書かれたのかもしれない。もっと細かく各作品と比較してみたらなんか面白い発見があるかも。

「聖家族」は伝奇・異聞集的な物語の性格上、各エピソードが断片的で、人物の総入れ替えや作中時間の前後が頻繁におこります。なのでぼんやり読んでいると何日もしてから「これ誰だっけ」「今どこだっけ」と混乱してしまうおそれが少なからずあります。そういうときは適宜公式サイトなどを活用して情報を整理するとよいのではないかな。と読み終わったあとで思ったが遅きに失した。とりあえず公式の人物相関図はけっこう役に立ちそうです。

読了後、作家の読書道: 古川日出男などをまた見ていたら、「言葉って体からできてくるから、体を鍛えたらどんな文体になるのかと思って格闘技をはじめてみた」という発言がありました。本当にやってたんかい。「聖家族」で異彩を放っていた戦闘描写も、あるいはそういう実体験が下敷きになってるんだろうか。

余談。将棋まめちしき。
「聖家族」の作中には、山奥の断崖の岩の上で将棋を指す場面が出てきます。そこでは「麒麟」「鳳凰」「猛豹」など、普段あまり聞かない駒が使われています。はじめは作者の創作かと思ったんですが、そうじゃなかった。昔の将棋には中将棋とか大将棋とかいろいろな種類があって、麒麟や鳳凰の駒も実際に使われていたらしいのですね。日本将棋のルーツは、もともと中国から朝鮮を経由して伝わったと長いこと考えられていたのが、最近では東南アジアにもっとよく似たゲームがあることがわかってきて、こちらの方が先に日本に伝わり広まったという説が有力である、という話も出てきました。
参考:
   山形県天童市 将棋資料館
   江戸時代以前の将棋
   盤上遊戯の世界

むむむ。ゲームの歴史も奥が深いのお。と感心したことである。
古代ゲーム史の研究ってのもなんか楽しそうですね。将棋やチェスは現代までほぼ原型を残したまま伝わっていて、文献もたくさんありそうだけど、歴史の闇に埋もれて忘れられてしまった幻のゲームとかがじつはたくさんあったりして。例の古代ローマのサイコロだって、祭祀用でないとすれば何かのギャンブルゲーム用のものだろう、ということまでは容易に想像できても、詳細なルールとなると専門家でもわからないらしいですしね。

余談の余談。サイコロ - Wikipedia を読んだら100面体ダイスとか球面ダイスとか何それってのがいっぱいあってびっくりした。奥が深い。

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「エンジン・サマー」ジョン・クロウリー 復刊
飛浩隆氏もおすすめのようなので読んでみる。TAPはあとまわしにしよう。

上橋菜穂子原作・アニメ「獣の奏者 エリン」(NHK教育)
1月10日~放送予定 全50回 制作:Production I.G。見るかもしんない

続々・桜庭一樹 読書日記【第8回】(2/3)
>皆川博子先生が先月、新作の取材旅行でアラン島に行かれたらしい
もうそろそろ80歳ぐらい?なのに。タフだ。アイルランドもので聖女の島みたいなガールズバトルで中世史っぽい話とか読んでみたいです

[画像] Trouble in Paradise
ちょっとグラン・ヴァカンス風?

アニメ映画「サマーウォーズ」2009年夏公開予定
時かけスタッフ。夏休み公開の青春アニメは夏休みの話にしないといけない決まりってやっぱりあるのかな

ニトロプラス原作「ファントム」TVアニメ化決定
監督・真下耕一。ノワールでヤンマーニなアニメができあがりそうな予感

スウェーデンの研究者、「人体入れ替わり」の錯覚実験に成功
電脳化しなくてもシムステイムみたいなものは実現できるってことか。
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by umi_urimasu | 2008-12-04 20:11 | 本(others) | Comments(2)