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「乱鴉の饗宴」、固有名詞大改変の件
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とりあえず変更対照リストを作れ。いや作りましょう。もとい、誰か作ってあげて。

発売日ということで、〈氷と炎の歌〉4「乱鴉の饗宴」の人名表や地図などをぱらぱらと偵察してきたんですが、固有名詞の変更があまりに多くてちょっと呆然としてしまった。いくらなんでも多すぎるだろ。粥村がブリー村になったとか、そういうレベルの話じゃないですよこれは。ほとんど全改変に近い。
とりあえずさっさとやるべきは、既訳分の本文・索引・地図などに登場する人名・地名・その他訳語全般について、翻訳者の交代にともなって表記が変更されたもののリストを作成・公開(・頒布?)することではないでしょうか。(誰がするのかはさておき)。変更例をいくつかあげとくと、
ヴェリース→ヴァリス
スタンニス→スタニス
トンメン→トメン
ジキ→ジクィ
ドスラク→ドスラキ
ルラー→ル=ロール
マイスター→メイスター ※大メイスター=アーチメイスター
エーゴン→エイゴン
ベーリッシュ→ベイリッシュ
ブリエンヌ→ブライエニー
バロン・グレイジョイ→ベイロン・グレイジョイ
ティレル→タイレル
ドラン・マーテル→ドーラン・マーテル
デーナリス→デナーリス
ケイトリン→キャトリン
ジェイム→ジェイミー
サーセイの称号:女王→王母、太后
ブラーヴォス→ブレーヴォス

夜警団→冥夜の守り人
黒衣のブラザー→誓約の兄弟
野生人→野人 or 自由人
執事→雑士
「冬がやってくる」→「冬来たる」 ※他家の銘言も変更あり
高巣城→なんだっけ…ともかく変更
優しいラフ→善人面のラフ
くすぐり屋→一寸刻み
七柱の神々→〈七神〉
ハレンホール→ハレンの巨城(ホール)
教団→大学とか学会とか?カトリックがどうのこうの
鎖→学鎖
以上、僕の曖昧な記憶と2chから。もちろん、これらは膨大な変更分のうちのごく一部です。全体だとどれだけあるのか見当もつかないけど、数百個ぐらい余裕でいきそうな気がする。

改変の是非に関しては、まあ今さら何を言っても後の祭りというやつなのでしょう。第二版以降や文庫化のときにどこをどうするかについては、考える時間はあるので今すぐ結論を出さなくてもよいかと。
それよりも、まっ先に、そして後々まで必要になるのはやっぱり用語変更の対照一覧表じゃないかなあ。まず第一に邦訳読者の混乱をなくすため。今でも十分大混乱になってますから。それと、これまで翻訳を務めてきた岡部氏に対する礼儀とか仁義とかそんなふうなもののため。シリーズの続刊途中で訳者が変わること自体は珍しくないとしても、訳語全般にわたってこれほど大規模な改変を行いながら、あとがきでニ、三の例をあげただけで「ほとんど変えちゃったよ。でもこの方が適切なんだからね。じゃそゆことでよろしくね」って、それで済ましていいことなのかなこれ。前任者の仕事に対してリスペクトなさすぎというか、見ようによっては相当無礼なふるまいなのでは?

このあたり、変更内容の重要性からみても出版社から公式アナウンスのひとつも出てくるのが普通の対応なんじゃないかと思うんですが、早川書房の公式ってこれだからなあ。何百もの固有名詞リストを本に載せるのがしんどければWebでもいいけど、なんかまるでやる気なさそう。そのうち誰かがんばり屋さんの読者が作ってくれるかもしれません。有志がWikiで作るというのもありかも。

■「訳者を岡部宏之に戻せ!」系のクレームについて
これは言ってる人たちも本気じゃないでしょう。岡部氏は現在すでに80歳近い高齢だし、こういうのは失礼かもしれないけど、年齢的な面からいって完結まで仕事をこなしきってもらえる保証はありません。出版社的にはそういうリスクを抱えたままつづけたくないだろうし、読者に叩かれたとしても今のうちに訳者交代しておくほうが、シリーズ最終巻あたりのどたん場でいきなり代わるよりダメージは少ないと判断したのかも。だとしたら、少なくとも岡部氏の降板については納得するしかない。まあ本当の理由はわかりませんが。

■実際のところ、酒井訳での雰囲気はどうなのか
プロローグから少し先まで読んだかぎりの印象ですが、かなりフランクな、くだけた感じの言葉づかいになってるようです。あとルビがやたら多い。岡部訳はまるきり直訳調で、無骨というか突き放したような文体。大まかにいって岡部訳→硬い、酒井訳→柔らかい。ただし酒井訳も所々古風な言い回しを混じえたりはしてて、つまりおおむねハイペリオンっぽいスタイルだと思えばOK。あとは読み手の好みの問題になりそう。岡部訳に慣れてしまっていると違和感だけはどうしようもないけれど、僕の場合、新訳我慢ならん!なんてことはなさそうでした。ひとまず安心。

■名称変更後の印象
いいなと思ったもの、いやだと思ったもの、わざわざ変えた意義がわからないもの、逆になんでこれは変えてないの?というものなど、用語についてはさまざまですね。ネーミングのルールとして、
G・R・R・マーティンの意向>オーディオブックの発音>英語として一般的な発音
のように優先順位づけをして変えたよ的なことが訳者あとがきに書いてあったものの、実際はけっこう場当たり的にやってないか?あんだけ変えといてティリオンだけはティリオンのままとかさ。あと、「読者の意向」をきっぱり忘れとるぜよ。

まあ、そもそもこの記事全部、「買わない奴が偉そうに言うな」って話なんですが。
ごめん!おわり。

(7/30追記)
早川書房の特設ページが更新されました。
酒井昭伸氏による『乱鴉の饗宴』の訳者あとがき、および用語解説全文
『乱鴉の饗宴』の訳語変更に関するお問い合わせについて
変更した訳語は今後も継続して用いる。訳語対照表をWebに掲載する。とのこと
(8/9追記)
特設ページふたたび更新されました。主要登場人物名・用語対照表

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[画像] 〈氷と炎の歌〉 各国のカバーアート
イタリア版とスイス版がかっこいいです。USのMeisha Merlin社版も絵師が豪華でよさげ。
日本語版のイラスト、もし小畑健とかに描かせれば売れゆきはすこやかに伸びるだろう。しかしその座はすでに新しい太陽の書のもの。
[画像] 1/18スケールフィギュア デーナリス・ターガリエン  エダード・スターク by Valyrian Resin
髪の毛が邪魔です
[画像] 鉄の玉座
玉座は剣で出来ている。座り心地は最悪である

[画像] ウィンザー・マッケイの未来のヴィジョン
えすえふアート。超巨大多葉機はともかく、山状都市の発想などは時代を先取りできていた?
(cf. 100万人が住む、火山型の巨大タワー都市構想

野伏せりブログ - フレト
暑さのあまり、フレト※のようなものを自作しちゃったという方。願わくば深い眠りのうちに、この猛暑をしばらくなりと忘れることができますように。
※フレト(タラン)=指輪物語にでてくるロリアンのエルフがつかう樹上プラットフォーム

SF小説の金字塔、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」映画化
「ほんとにできるのそれ?」というタイトルがとみに多いように思える昨今のSF映画業界。ハイペリオンだのエンダーだのデューンだの。そういえば「闇の左手」はいったいどうなったのだろう。
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by umi_urimasu | 2008-07-25 01:27
「剣嵐の大地」(1)-(3) ジョージ・R・R・マーティン
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五百人を超える登場人物が入り乱れる怒涛の戦争譚、血で血を洗う陰謀劇、暴虐と恥辱に彩られたロマンスの狂宴。世界数十ヶ国でベストセラーを記録し、小説賞の受賞歴にいたってはもはや数え切れず――G・R・R・マーティンの〈氷と炎の歌〉という作品は今、この地球上でもっともホットな大河小説シリーズといっても過言ではないでしょう。

しかしどうも、華々しい評価のわりに日本での売れゆきははかばかしくないようです。普通に考えるなら、やはり刊行のインターバルの長さと単行本の価格の高さがハードルになっているのではないかと思われますが。より根本的な理由として、そもそも日本におけるファンタジー系の文芸が寂れ果てたマイナージャンルなため、売りたくても刷れないというのが実情なのかもしれません。

そんな現状を嘆きたくとも、嘆く資格がじつは僕にもなくて、ぶっちゃけ次の「乱鴉の饗宴」は図書館で借りてすませようという魂胆でおります。アイスマンデス。やっぱ、ちょっと値が張るものですからね。邦訳のハードカバー、6000円もするんですよ。うっうー。原書のペーパーバック版なんて900円なのに。日本の出版業界も、単行本と平行でそれくらいの廉価ペーパーバックを出すようなやり方をしてくれたらいいのにな。でなきゃ原書をすらすら読める英語力が欲しい。言っても詮なきことですけれど。

まあ愚痴はさておいて「剣嵐の大地」のことを。
順序としては、これは「七王国の玉座」「王狼たちの戦旗」につづく第三巻に当たります。ネタバレを避けようとするとほとんど何も語れないんですが、これだけは言っておきたい。ストーリーの衝撃度において、「剣嵐の大地」はまちがいなく過去二作を凌駕していると。「王狼」までしか読んでない人が初めてこの「剣嵐」を読んだとき、いかなる狂態をさらすかと思うと、邪悪な笑みがこぼれてしまい周りから白い眼で見られるは必至。そんくらい凄まじいです。おまえらも剣嵐を読んで、絶叫をあげてのたうち回るがよいわ。へー。この俺がそうなったと同じようにな。へー。

〈氷と炎の歌〉は誰が主人公と一概に決められない群像劇形式をとっています。これは裏を返せば、誰を主人公とみなしても作品が成立するということでもあります。もちろん、十分な描写密度がなくてはこうはいきません。実際、視点人物は全員が堂々と物語の主人公を張れるだけの克明な描写をなされていますし、視点人物でなくても主役級の人物にはこと欠きません。いうなれば、「ほぼ全キャラが主人公」みたいなものなのです。これがあながち誇張じゃないってのが恐ろしいとこなんですが。ひとおとり物語を消化したあとは、好きなキャラのマンウォッチングでもしてみて、彼らの人となりをときほぐしてみるのもまた一興でしょう。

あとひとつ、「剣嵐」の余計なお楽しみポイントについて。この巻、じつは「ミステリ」としても読める展開を含んでいます。もちろんあからさまに推理小説的なスタイルで書かれているわけではありませんが、衆人環視のただ中で事件が起こり、真相を明らかにするヒントはすべて、そこまでの本文中でこっそり示されているのです。あとでちゃんと種明かしもされますが、ミステリ好きな人はまず自力で真犯人とその背後にいる黒幕を推理してみるのも面白いんじゃないかと。

以下、おまけ。
結婚式の場面で出てきた全料理リストです。あまりの凝りっぷりに呆れて書きとめておいたもの。

キイチゴとナッツの入ったハニーケーキ
燻製ハム(ガモン)のステーキ
ベーコン
パン粉をまぶしてかりかりに焼いたヒトデ
秋の梨
タマネギとチーズと火のように辛い胡椒をまぶした卵の輪切り
(以上、ドーン料理)

金色のボウルに入った、バターで炒めた蝸牛とマッシュルームのクリームスープ
豚肉と松の実と卵を詰めたパイ
スウィートコーンのフリッター
砕いたナツメヤシの実とリンゴとオレンジを入れて焼いた熱いオートブレッド
野生の猪のリブ
砕いたアーモンドの衣で揚げた鱒料理
鷺のローストとチーズとタマネギのパイ
火のように辛い東方の香料で煮た蟹
ニンジン、干しブドウ、タマネギと一緒にアーモンドミルクで煮込んだ細切れの羊肉を山盛りにした大きな木皿
竈から出したばかりで、火傷するほど熱い魚のタルト
蜂蜜と生姜で味をつけた鶉
腹にナツメヤシの実を詰めた、羽毛つき孔雀の丸焼き
ブランディソリー(牛肉のスープと蜂蜜で甘味をつけた熱いワインを混ぜたものに、湯剥きしたアーモンドと去勢鶏の厚切りを入れた料理)
豆のバターいため
砕いたナッツ
銀の食器に入ったサフランと桃のソースで煮た白鳥
焼きたてのブラッドソーセージ
熟したブルーチーズを詰めたヘラジカ
シナモン、クローブ、アーモンドミルクで味付けした豚肉の薄切り
直径二ヤードの香料入り鳩のパイ・レモンクリームがけ


なんじゃこれ。と思うでしょ。ワンシーンでここまでするかな普通。
あいかわらずの筆の贅沢というか、アホみたいに豪勢な文章書く人だ……。

(追記)
剣嵐まで未読の方は、以下のハヤカワ公式サイトの乱鴉の紹介文を読まないことを推奨します。
かなりネタバレされてますので。
乱鴉の饗宴 上:ハヤカワ・オンライン
乱鴉の饗宴 下:ハヤカワ・オンライン
コメント欄で教えていただいた情報ですが、人物名のカタカナ表記に少なからず変更が加えられているようですね。まあ訳者が替わればそんなこともあろうさ。でも地名や漢字表記の言葉まで同定できないくらい変更しまくってたりしたら、さすがにやだな。

(追記2)
マーティンスレに名称表記変更についての酒井昭伸氏のmixiの文章が転載されました。
7/22付、 更新分(抜粋?)
邦訳読者の大半は発音が正確かどうかなんてどうでもよく、日本語として親しんできた名前の語感とそれに支えられたイメージが損なわれることに憤ってるわけで、この説明では不満が解消されるわけもないでしょうけど。発売されたらますますブーイングが強まりそうな予感。
しかし、ブリエンヌ→ブライエニーか……はぁ

─────
 創作神話について調べています。 - 人力検索はてな
>『ペガーナの神々』『クトゥルー神話』『シルマリルリオン』『天界と地獄』…等に比肩し得るような魅力的で充実した体系を持つ創作神話をご存じでしたらお教え下さい
成長に期待。網羅的なリンク集が欲しいと常々思っていました
↑そういや、マルケスのマコンドものの作品群とかはどうなんだろうな。あれも一種の神話体系といえないこともないような気がするんだけど。はっきりした「神」が出てこないものは除外か。

あの歌が頭の中でループしてつらいので描いてみた
てすかとりぽか 『崖の上のポニョ』 クトゥルー神話
ちょっと観に行きたくなってきた

「カウボーイビバップ」に米国で実写映画化企画が浮上?
やるんだったら「天国の扉」みたいなシリアスなのよりも、データ犬争奪戦の話とかキノコでラリっぱなしの話みたいに笑えるやつにしてほしいと思う。
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by umi_urimasu | 2008-07-19 15:46 | 本(others)
小説化不可能な作品をあえてノベライズ
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日々小説を読んでいると、「映像化不可能!」などという謳い文句がついた作品に出くわすことがたまにあります。しかし逆のパターンで、「小説化不可能!」って言ってる他媒体の作品はまったくと言っていいほど見かけません。もし仮に、「不可能と思われていた○○の小説化に挑んだ野心作」という惹句が似合いそうな○○を考えるとしたらどんなのがありうるだろう。

たとえばテトリスはどうか。シンプルなルール、多様なパターン、高度な抽象性。「そもそもコレの何をどうやって小説にすればいいんだ?」と誰しも途方にくれること必至。それゆえにこそ挑戦しがいのある題材とはいえまいか。でもまあ、本当に書くような酔狂な作家が実際にいるわけはないですね。なので勝手に妄想するにとどめます。円城塔とか適役ではなかろうか。とてつもなく斬新なアルゴリズム小説っぽいのを書いてくれるかもしれないぞ。

とかくだらんことを考えつつ検索してみました。こんなスレッドが出てきました。
テトリスがアニメ化したら
単に萌えアニメのテンプレ体系を移植しただけって感じですが、基本的な発想の姿勢としては悪くないんじゃないかと。「まさかソレを」という意外性を買おう。

他には何かないかな。僕自身はゲーム全般に疎いのでなかなか思いつきませんが。ふがいない。


ゲームなどのノベライズと聞くと、原作の設定や世界観を借りて普通の人間が普通のドラマをくり広げるというありきたりなものが多く、内容も若い読者の需要に合わせた軽いサイドストーリーみたいな、言い方は悪いけど安っぽいメディアミックス商売的なイメージがちょっとあります。
しかし、中には原作の枠を完全に越えて暴走してしまったり、無闇やたらに完成度をあげてしまった「やりすぎノベライズ」的な作品もあるらしい。僕が経験したところでいえば、元ネタがウィザードリィとは思えない古川日出男の「アラビアの夜の種族」がそういうケースでした。あと、伊藤計劃のメタルギアソリッド4も律儀な作風ではあるけどけっこう読み応えがあったし、漫画原作ものでは乙一のジョジョ小説なども私的にはかなりの良品だったかと。

素材がオリジナルでないとか、漫画やゲームが原作というだけで色眼鏡ごしに見られがちなノベライズというジャンルだが、そもそも傑作かどうかということとその作品の属すジャンルには何の関係もない。ゆめゆめ侮ることなかれ……とか、どうもそんなようなことを言いたかった、ような気がする。
そんなわけで、誰か想像を絶するようなテトリスのノベライズを書いたりしてくれないものでしょうか。

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[ニコニコ] 【MAD】ジャイアントロボ Z.O.E 【ANUBIS】
傑作Gロボ動画。SEシンクロが凄すぎる。どんだけGロボ好きなんだ

[ニコニコ] アイドルマスター 音無小鳥 今度は動画をうpしちゃいます!
ののワ地に満つる夢の果ては全て遠き理想郷。ナデナデ。

[小説] 芥川龍之介 「煙草と悪魔」 (青空文庫)
コメント欄で話が出たので読んでみた。ぢやぼかわいいよぢやぼ。

[ニコニコ] ナンバーファイブ 00話 松本大洋
あの松本絵が動きまくるPV風アニメーション。かっこよすぎる!このクオリティで長編アニメ化とか…は、無理だろうけど。
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by umi_urimasu | 2008-07-16 00:07 | まぞむ
トールキン報道、正しいのは二ワンゴニュースだけ
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英解体業者、「ロード・オブ・ザ・リング」作者邸でハガキ発見 | Reuters

ロイターのこの記事、およびそこから孫引きされた日本国内のニュース記事において、二ワンゴ以外のほとんどがとんちんかんな誤記をしています。曰く、
人気小説「ロード・オブ・ザ・リング」の原作者J.R.R.トールキンの英イングランド南部にある元自宅で作業を行っていた解体業者がトールキン宛てのハガキを発見し、高値での販売を希望している。
小説の原作者ってなんだよ。察するに、「人気映画の原作者」か、「人気小説の作者」か、どちらか(おそらく前者)のつもりで書こうとして混乱しちゃったのではないかと思われる。やれやれ。カタカナの「ロード・オブ・ザ・リング」は映画の邦題。原作小説にはもちろん「指輪物語」というよく知られた邦題が存在します。どうしても小説の原題をカタカナ表記で書きたければきちんと「ザ・ロード・オブ・ザ・リングス」とするのが妥当でしょう。

ちなみに、あたりまえですが本国ロイターの元記事の方はまとも。
Builder discovers "priceless" Tolkien postcard | UK | Reuters
はがきの差出人の名はLinとあり、どうやらリン・カーターらしい。文面は
"I have been thinking of you a lot and hope everything has gone as well as could be expected in the most difficult circumstances."
だって。微妙だね。

このニュースの拡散については、Yahooニュースはじめネットの大手ポータル系サイトのほとんどがまちがったロイター日本語版記事をそのままコピペしている中で、なぜかニコニコ動画内のニワニュースだけが淡々と正確な情報を掲載。
トールキン邸解体でハガキ発見
小説「指輪物語」などで知られるJ.R.R.トールキンが、英イングランド南部で1968~72年に住んでいた邸宅から、解体の際にトールキン関係のハガキ3枚が発見されたという。
記事タイトルにも内容にも「ロード・オブ~」表記が出てこないことから、一応元の英語版をチェックしたうえで書かれたのではないかと想像されます。ニュースバリューとしては些細なものであり、間違ってたからって困る人もいないだろうけど、知名度だけで映画のタイトルに食いついたりしないその慎重な姿勢にぼくは敬意を表する。

というわけでニワンゴへの好感度がほんのちょっとだけ上昇しましたとさ。どっとはらい。

─────
ジョージ・R・R・マーティン「乱鴉の饗宴」書影が掲載
画像が小さくてまだよくわからない。下巻の赤っぽいのはメリサンドル?
ちょい大きめの絵。いやだから誰。

大和田秀樹「ムダヅモ無き改革」単行本化決定
にちべい両国の友好関係にとってもビンカンなあの麻雀漫画がついに日の目を見てしまうとな。

津原泰水 WEB連載小説「夢分けの船」|Kawade Web Magazine
まさかと思ったが、なんでも検索してみるもんですね。これが諺にいう「検索は三文の得」。

[ニコニコ] アイドルマスターネタ19 千早蝶尋花(前編) (後編)
千早武士道最新作。人の情が身に染みる
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by umi_urimasu | 2008-07-10 13:47 | ニュース
「妖都」津原泰水
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a0030177_0253099.jpgいやっほう!いいのを引きました。単行本の推薦文がたいへんな絶賛の嵐で、あまりの誉められ方にかえって「ほんまかいな」と疑わしく思えてしまっていたのですが。
実際、いわれるだけのことはあったなと。

津原泰水 - Wikipedia

「世紀末日本のホラー小説界に出現した正真正銘の“怪物”」綾辻行人。
「純粋にホラーを愛する作者によって書かれた、純粋なホラー作品」小野不由美。
「ついに本格ホラーの超新星が現われた」菊地秀行。
「世紀末はその肖像を描きうる、稀なる幻視者と遂に出会えた」井上雅彦。

まあ凄いいわれようです。1997年当時、どういった経緯でか少女小説家・津原やすみの名を捨てて津原泰水としてホラー小説界に参入したこの人が、どれほどの期待と注目をもって迎えられたかが伺えます。
両性具有と噂されるロックシンガー・チェシャの飛び降り自殺を皮切りに都内で続発しはじめた凄惨な怪死事件。それは常人には見えず、しかし確かにそこに“存在”している死者たちの仕業だった。チェシャの出生の秘密に近づく者たちが次々と惨死を遂げる中、街はひそかに変貌してゆく。変わらぬ日常の貌を保ちつつ、来るべき覚醒の時を待ちながら……。
まだ津原作品をこれ一冊しか読んでいないので、あれこれ調べたり比較したりは後日に譲ろうと思いますが、個人的な好みマップに置くとしたらかなりド真ん中近くです。「作風の似ている作家は誰だろう」と考えて、まっさきに頭に浮かんだのが牧野修。小説のDNAというものがもしあるとしたら、この二人はほとんど同じDNAもってんじゃないか、と思うぐらいよく似ています。まるで生き別れの双子みたい。あるいは日本とポリネシアの創世神話みたい。言語実験的な遊びを混ぜ込むスタイル、五感に訴える鮮烈なグロ描写、セオリーに忠実な手堅い「怖がらせ」の手口、いろんなところにDNAの重なりが透けてみえます。「屍の王」とは、イザナギ・イザナミの日本神話ネタの扱い方までもが酷似しているという。
もしかしたら本当にリアル超なかよし作家なんじゃないでしょうか、この二人は?
強いて差をあげるとすれば、牧野修はややブラックユーモア的な皮肉っぽさがあり、津原泰水は耽美成分が強め、という感じかなあ。


文庫版の解説で、「妖都」はホラーなのかという問いについて、映画監督・佐藤嗣麻子はマルケス「百年の孤独」や映画「赤い薔薇ソースの伝説」により近いものを感じると述べています。ホラーよりもマジックリアリズムに近い、と言われるとちょっと首をかしげてしまいますが、「妖都」における死者たちの存在が現実感と非現実感が拮抗してどちらででもあるかのように描かれていることから、ある意味似てるといえなくもないかなと、これは僕自身も作品を読んでみてうなずけたところです。マルケスに近いというなら、百年の孤独よりは 「青い犬の目」収録の死者を描いた作品群のほうが雰囲気としてはもっと近そうですが。
しかし、ホラーというものはやっぱり読者を怖がらせてなんぼであって、「妖都」の見方によってマジックリアリズム的ともいえる部分がどういう効果を最優先にねらったものであるかといえば、これは明らかに「怖がらせ」のためでしょう。やっぱ、何はともあれまずホラーなんだと思いますよ、この作品は。

余談。
僕は自分ではあまりホラー好きな奴ではないと思っていますが、それでもこうしてホラーを嗜んでいる以上、その種のものに誘惑を感じることがあるのは確かです。そしてホラーを摂取して喜んでいる時には、陰惨でグロテスクなもの、忌まわしげな心の暗闇に直結しているもの、そういった深入りするとやばそうな何かを理性で嫌がりつつ本能で欲しがるという二律背反的な衝動がはたらいているのを必ず自覚しています。「必ず」という条件から、つまりその衝動こそがホラーの本質なのだろうか、という疑問がときどきぷかっと浮かんでくるのですが、衝動の正体が何であり、人間はなぜその衝動に身をゆだねたがるのか、などと問いつめていこうとすると、素人仮説をもじょもじょもてあそんでみたりする以上の段階に進むことができません。

まったくホラーの何が楽しいんだか。ねえ君、人類はどうしてホラーが好きなんだろうね。

余談2。
「妖都」が物語の結構として少々投げっぱなしなつくりになっている点については、ネット上の感想でも評価が分かれているようです。確かに、顔見せに出たきり何もしない無為なキャラがいたり、中心人物の動機とか真意が説明されないまま終わっていたりするのは、開けたポートは全部きっちり閉じて欲しいと望む律儀な性格の読者には喜ばれないかもしれません。僕はそういうやり方も嫌いじゃないですけどね。

─────
京極夏彦「魍魎の匣」アニメ化決定
にっこり笑ってほうと云ふ。どういうものになるにせよ、原作とは別モノと割り切ろう
アニメ「魍魎の匣」キャラクター設定画 (原案・CLAMP)
こ れ は ひ ど い 。割り切れてない
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by umi_urimasu | 2008-07-09 00:56 | 本(others)
「さかしま」円城塔
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飛浩隆の「はるかな響き」につづく『answer songs』企画の第二弾。いかにも円城塔らしい人を食った作品でした。連続・離散・無限次元とかそのへんからネタを堀ってきた架空の宇宙論文献とでもいうのかな。離散的な無限のほうが連続的な無限よりも大きな宇宙、もしくは論理が宇宙の基本要素であり運動はその論理パッケージ内におさまるものにすぎないような宇宙では、私たち人間はたいへん肩身のせまい思いをしております。みたいな話でしょうか。
しかしあいかわらずネタが狭い。最低限大学で代数・幾何ぐらいかじってないと、文章の意味を書いてある通りに読みとることすら難しそうな感じ。
「本研究は、文部科学どうせ適当に名前をつけたに決まっている省の支援によって現在もこうして継続中です」
それで研究補助金がおりてしまう話になってるあたりが円城宇宙のふざけっぷりを間接的によく示しているともいえる。まったくひどい文××学省もあったものですね。

余談。
Self-Reference ENGINE」しか読まずに円城塔について語る資格などあるまいと思って「Boy's Surface」も一応通読したのですが、読んだら数理系の元ネタをちゃんと説明するくらいでなきゃ感想なんか書いてもなあ、という気がしてきてエントリ化にはいたらず。誰それの作風に似てるとかわからなくても楽しめるとかどうでもいいから、数学的解題が欲しいです。検索しても出てこないので、誰か親切でヒマで数学のできる人待ちか。

そういえば「さかしま」のような文献パロディ風の小説って、あのMITのでたらめ論文自動生成ソフト SCIgen - An Automatic CS Paper Generator とかに近いおかしみがありますね。あれの日本語版欲しい。

「answer songs」の作品群は期間限定配信のもようです。いずれ単行本にもなるそうですが、タダ読みしておきたい人はお早めにチェックよろしう。

(追記)↑自分で読み返してみたら、なんか誉めてる感がさっぱり感じられない文章になっていたことに気づいた。いったいなぜこんなことに。
もちろん「さかしま」はおすすめです!みんな読みにいくです!

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[ニコニコ] アイマスアドベンチャー
「削除されろ」はこの場合誉め言葉

短編小説「鶫と鷚(つぐみとひばり)」瀬名秀明@TORNADO BASE / answer songs
せっかく無料なのでぱらぱら。パラサイトイブしか読んだことないけど、まあふむふむと。

[ニコニコ] ヤンデレの妹に死ぬほどウザいホームドラマ 俺ヴォイス
久しぶりにランキングを見に行ったらなんと新作が
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by umi_urimasu | 2008-07-01 20:23 | 本(SF・ミステリ)