<   2008年 04月 ( 7 )   > この月の画像一覧
読もう!伊藤計劃 「From the Nothing, with Love」
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_0154467.jpg「From the Nothing, with Love」伊藤計劃 (SFマガジン2008年4月号掲載)。

うわ面白。メタルギアソリッドのノベライズの刊行はまだしばらく先なんですが、虐殺器官につづいてこんなのを書かれるともう、出る前から傑作認定したくなってしまいます。読んでよかった。素直にそう思う。

例えるなら私は書物だ。いまこうして生起しつつあるテクストだ。
私は以下の記述を生み出すよう育てられたアルゴリズムだ。凡百のソフトウェアに比べれば恐ろしく複雑ではあるが、そう機能するよう記述された存在であることに変わりはない。書物を生み出す書物。だから、これから書かれる文章がいささか皮肉めいていて、あるいは感傷的に見えたとしても、そこにはいかなる内面もない。そう解釈できる、純粋な出力があるだけだ。
そのうえでこう言わせて欲しい。
私の魂に安らぎあれ、と。
のっけから円城塔ライク、というより神林長平オマージュな言上ですが、中身はSF+哲学+推理サスペンスの要素を融合させたスパイ小説。スタイルはやはり「虐殺器官」によく似ています。

主人公は、意識をデータ化してバッククアップをとる技術により、何度死んでも別の人間の脳に再生されて任務をこなしつづける英国スパイ。彼がふとしたことから自己の意識の存在そのものについて疑いを抱き、絶望に落ちてゆく過程が、ミステリでいう犯人探しのストーリーラインにうまくシンクロしながら描かれていきます。
己の意識の不在証明を眼前に突きつけられたとき、哲学的ゾンビの生き証人(?)たる彼はどのように苦悩し、あるいはしないのか。イーガンをはじめSF界隈ではわりと今さらな題材なのですが、この作品では「人間は多くの行為をじつは意識に依らずに行っている」ところに話を立脚させているのがミソでしょう。ベンジャミン・リベットの実験のくだりとか、僕などは脳内へえボタン連打しまくりでした。

「虐殺器官」にしても、この「From the Nothing, with Love」にしても、基幹となるアイデアだけを見るならずば抜けて斬新というわけではありません。僕がSF的なスリルを感じるのは、どうも支援ロジックの使いかたとかそのあたりのようです。「思考の装飾」の部分とでも言ったらいいのかな。たとえばウィリアム・ギブスンがありふれた風景やガジェットをまったく異質な言葉で言い換えることによって新しいイメージを生みだす、いわば言語のコラージュ作家だとするなら、伊藤計劃はある考え方を別のさまざまな考え方の組み合わせに置き換える技に長けた、「思考のコラージュ作家」とでも言いましょうか。そこらへんが僕の場合はすごくアンテナに反応するらしい。

あと、伊藤計劃作品といえば広範にわたる元ネタ探しも楽しみどころのひとつですね。今回は舞台と話のカラーに合わせてか、アガサ・クリスティ、モンティ・パイソン、ウィリアム・ブレイク、007シリーズなどなど、かなりイギリスネタに統一されているようです。人格コピーネタが、同じキャラクターの設定なのに主演俳優が変わると姿が別人になってしまう映画の007シリーズのメタパロディになってたりとか皮肉すぎる。

ちなみにこの作品が掲載されているSFマガジン2008年4月号には、円城塔の「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」も載っています。こちらはガイドラインコピペのパロディです。
あえて言おう、テラバカスww

そんなこんなで、伊藤計劃でしんなりして円城塔でコーヒー吹いて後味すっきり。一粒で二度おいしい、よき読書体験でした。

ところで、この「From the Nothing, with Love」とほとんど同ネタで、テッド・チャンも行為が意識に先んじるアイデアを用いた「予期される未来」という作品を書いています(SFマガジン2008年1月号)。こいつがまた、たった2ページの掌編なのに超ド級の傑作なのですが。テッドチャン天才だろ。この日曜天才作家め。せめて発表ペースを半年に一作ぐらいにしてくれと言いたい。

─────
[画像] コナミゲームブックシリーズ メタルギア
これはなんたるむくつけきスネーク

書いた内容を検索可能で、どこに貼ったのかもわかる付せん紙「Quickies」 - GIGAZINE
何か、何かすごいことに使えそうな予感。何かわからんけど。

日本語の弱点ってどこだと思う?:VIPPERな俺
これだからいいんですよ、これが

[画像] 深海生物ダンボ・オクトパス
http://blog-imgs-11.fc2.com/n/e/w/news23vip/uporg874056.jpg
かわい…いのかかわいくないのか? 20cmという微妙なサイズ

[ニコニコ] 菊地真のボンバヘッ!
補完キタ

[ニコニコ] im@s Unkou Survival Championship だいたい15秒決勝
補完待望
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-29 00:35 | 本(SF・ミステリ) | Comments(0)
エキサイトブログ、1年以内に滅亡の可能性
このエントリーを含むはてなブックマーク
思うところあって、2004年から今までのエキブロユーザー数の推移をグラフにしてみました。で、このグラフの2007年以降の減少曲線を未来にまで伸ばしてみました。するとあら大変、フィットのしかたによってはあと1年でユーザー数が0になってしまいます。ついに終わりの時がきたようだな!(ブロリー
a0030177_1945483.jpg
・ 横軸は年月、縦軸は毎月のアクティブユーザー数
・ 赤はブログファン(http://www.blogfan.org/)集計によるデータ (範囲:2004年9月~2008年3月)
・ 青、緑はそれぞれ直線とべき関数での近似曲線 (範囲:2007年5月~2008年3月)
・ ブログファンの過去の集計データはWayback machineから拾ってきたもの。

この「毎月のアクティブユーザー数」の大半は実際には長期放置ユーザー(やスパマー)のようで、ほぼ毎日更新している実動アクティブユーザー数は毎月ユーザー数の~1/5ぐらいです(ブログファンのデータ参照)。この比が常に一定だとすると、毎月ユーザー数が~2万のとき、推定実動アクティブユーザー数は~4千。これより減ると、現在稼動中のブログサービスの中でも最底辺グループになります。現在の勢いでユーザー数が落ち込みつづけた場合、運営側は見切り閉鎖でサービス終了に踏み切るのでは?というのが、図に書き込んである「あきらめ終了?ライン」です。終了時期(曲線との交点)は2008年末~2009年半ばごろ。

ブログサービス引っ越しのタイミングをはかるための手がかりにしようと思って調べたんですが、グラフにすると凋落ぶりがよくわかりますね。うーん、エキサイト潰れたらどこへ行こうかなあ。


─────
今まで読んだ中で一番面白かった小説を教えてくれ:VIPPERな俺
VIPのジャンル嗜好分布の粗いサンプリングになってるのだろうか。しかしこのファンタジーの人気のなさはいったい何事。ミステリ>>純文>>SF>>>>>ファンタジー?

[ニコニコ] ブルースを演奏するベイダー卿 (youtube
[ニコニコ] お茶目なダースベイダー (youtube
ニコニコとyoutubeの両方で受ける動画と片方でしか受けない動画の差って何なんだろう

─────
訃報:桃邪気Pさん。今夜はもうニコニコできそうにない。

─────
ファンタジーとピューリタニズムについて - 三軒茶屋 別館
>多くのアメリカ人(特に男性)がフィクション全般、なかでも特にファンタジーに対して否定的である
フェミ二ズムに意識的なファンタジー作家の代表格だったル=グウィンならばさもありなんという感じですが、いかんせん昔の論説です。現在ではアメリカ人もけっこうファンタジー好きになってきているのではないかと。アメリカ人男性の好きな本の第二位が指輪物語という統計もあるらしいし。→米国人が好きな本、1位は「聖書」

「既存の文学賞が選ばない本を」…大学生たちが新しい文学賞
>候補作は次の通り。▽有川浩「塩の街」▽田中ロミオ「人類は衰退しました」▽桜庭一樹「青年のための読書クラブ」▽佐藤友哉「1000の小説とバックベアード」▽A・C・クラーク「幼年期の終わり」
幼年期吹いた

[動画] Yahoo!動画 - ∀ガンダム
1~3話が配信中です。5月9日まで
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-22 19:30 | まぞむ | Comments(0)
少年漫画と武士道精神
このエントリーを含むはてなブックマーク
ピューリタニズムの天職観念と少年漫画の精神 - ピアノ・ファイア

「覚悟のススメ」がマイブームなところにこのようなエントリを見て。

素人考えなんだけど、少年漫画と近代資本主義の精神に相通ずるものがある、という意見に武士道も付け加えられるんじゃないかっていう話です。「武士道とは死ぬことと見付けたり」「正気にては大業成らず」なんて言葉まであるように、武士の美徳には目標を達成するために文字通り命がけの覚悟で臨むのをよしとする苛烈な面があった、というのが一般的なイメージでしょう。実態がどうだったかはさておき、そうしたイメージ上での理想の武士の姿は少年漫画のヒーロー像にすごく近いものがあるのではないかなと。

覚悟のススメを読んで少年漫画と武士道のあまりの相性のよさに驚愕し、武士道ベースの勧善懲悪の物語を時代順にさかのぼればいずれ八犬伝や忠臣蔵につながるのでは、と思ってぐぐっていたら、こんな話も出てきました。
125 名無し@沢村 :2007/09/09(日) 00:27:23 ID:z86K7Ys6
江戸時代末期に吉田松陰の娘が、「仮名手本忠臣蔵」や「南総里見八犬伝」をいまのストーリー漫画のような形にして近所の子供たちに読ませていたらしい。その原画が、吉田絹記念館に展示されている。恐らくこれが日本最古のストーリー漫画。

戦時中の漫画について語るスレ:アルファルファモザイク
そのものズバリだな。これほんとかなあ。コマ割りとかもあったんだろうか。漫画の歴史的ルーツとかけっこう興味あるんだけど。

脱線余談。
少年漫画というと、ヒロイズムを倫理的に肯定してくれさえすれば土台の考え方は何でもかまわない非常に無節操なもの、というふうなイメージが僕にはあります。融通がきくというか。資本主義だろうが何だろうが、とりあえず正義が勝てばいいみたいな感じ。その程度のいいかげんさで少年漫画は十分に成り立つと思ってたんだけど、僕の少年漫画観は粗雑すぎるのかな。あるいは覚悟のススメに毒されすぎなのか。よくわからない。
まあどうでもいいか。
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-19 14:24 | まぞむ | Comments(0)
「覚悟のススメ」山口貴由
このエントリーを含むはてなブックマーク
読了。ものすごい漫画を読んでしまいました。どうしようこれ。
今日心から思った、漫画が好きで本当によかったと。

感動のあまりまともな言葉がつむげないので
とりあえず内臓吹いとく


因果!



螺旋!



ぎゃばらば!!



今日はもうねよう
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-17 00:04 | Comments(2)
「とある飛空士への追憶」犬村小六
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_0323940.jpgラノベ系書評サイトで軒並み絶賛されていたので読んでみたけど、まったく受けつけなくてぐぼあ。という、最近の僕がよく陥るパターンでした。ライトノベルのもつライトノベル的な要素が無心に楽しめないどころか、ストレスばかりたまってしまう。ラノベアレルギー克服への道のりは遠いです。

ところで、本を選ぶのに書評感想系のサイトを参考にすることの多い僕にとって、頼りにしている人の好みと自分の好みが特定の領域でまったく相容れないことが判明するというのはちょっと悩ましい問題です。特に今回みたいに、みんなベタ誉めしてるのに自分だけ「こんなんクソだろ」とかなっちゃった場合、かなり困る。人の評価にたよらず自力で自分好みのものを選べるように選択眼を磨くという解もあるんだけど、それにはSFでやってきたように、ある程度の量を読んでカンを養わないといけない。ところがラノベの場合、そもそも読むだけでそのストレスに耐えられないという問題が。

今のところ、ラノベアレルギーといっても乙一や桜庭一樹は抵抗なく読めています。でもそればっかりでは、新しいものを摂取して趣味の幅を広げていく楽しみがありません。まあ、こうやって未知のラノベをかじってはぐぼあ、かじってはぐぼあ、とやりながら当たりを引くまで繰り返すのも一興といえないこともないか。

結論=気長に自分向きのラノベを探していきまっしょい。

しかし、「光芒五里に及ぶ」て。あれ笑うとこですよね。美少女も度を越せば珍獣といっしょですよ。おかげで全編ギャグにしか見えん。なんて言ってるから僕はいつまでたってもラノベが読めないんだと思う。

─────
[ニコニコ] アイドルマスター MS.AMAMI
ごっつええ感じでした

[ニコニコ] アイドルマスター M@STER FESTIVAL'08
プロによる華麗な犯行。完全に実売レベルだこれ

[ニコニコ] 北斗のP ケンシロウプロデューサー 千早「運動」
じつは千早さんのほうが凄いのでは。

【お知らせ】「ビアンカ・オーバースタディ」詳報(筒井康隆公式サイト)
>このラノベを楽しむためには、前以て「ダンシング・ヴァニティ」を読んでおいた方がいいでしょう。
>では6月の発刊を楽しみにお待ちください。

そうくるか。さすがは深謀遠慮の笑犬楼。

伊藤計劃「METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS」 6月12日発売予定
MGSノベライズにこれ以上の適役はないでしょう。
なんでか竜騎士07氏のコメントもあり。

伊藤計劃:第弐位相 2008-04-15 「メタルギアソリッド ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」
>分量的には「虐殺」の130パーセント強です。
>ゲームを終えた方も、終えてない方も、1~3をやったことのない方も、ゲームをまったく知らない方も、オールライトカモォンな普通の小説したつもりです

大ボリュームだ。楽しみ
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-14 00:35 | 本(SF・ミステリ) | Comments(6)
現代社会を予言していた!? 江戸時代のSF小説
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_23242152.jpg杉浦日向子「一日江戸人」が超絶面白い。江戸時代の文化風俗に関する小ネタを紹介したいわゆるトリビア本なんですが、「身近度」の高さが尋常じゃないのです。この本があまりにも面白かったので、元ネタの引きうつしそのまんまっていうのはちょっとどうかなあと思いつつも、そのうちのひとつを紹介させてもらいます。興味のある人はぜひ元本を読んでみてください。むちゃくちゃ面白いんで。

さて、この本によれば、江戸時代中期の大衆小説に「未来記もの」という流行ジャンルがあったそうです。何年後に何が実現するとかいうカタイものではなく、とにかくはるか遠い未来のとっぴょうしもない話をして、んなバカなハハハと読み手の笑いを誘う呑気なものであったらしい。ところがその内容が凄いんですね。

1 季節感がなくなる(旬の時期がベラボーに早まる)
2 諸事、高級志向となり、贅をきわめたあとはマニアックな趣味に走るようになる
3 各界での女性の台頭(男性独占の分野がなくなる)
4 自然破壊(山奥まで宅地化がすすみ、神聖な山も俗っぽくなる)
5 プロとアマの差がなくなる(特に芸能関係)
6 今まで家庭で作っていたものが、安直なパックもの、セットものとして売られる(七夕セット、お正月セットなど)
7 草双紙(マンガ)が大人の読み物となり、小難しい本を読む子供が増える
8 子供が辛い食品を嗜好する
9 日本語が乱れ、通言(専門用語)が流行り、ついには得体のしれないカタカナ言葉が横行する
10 遊女(風俗ギャル)が金持ちになり、実業界に乗りだす
11 年寄りの若作り、老いらくの恋が流行り、若者は老人趣味となり、渋いことばかり喜ぶ
12 盆と正月がのべつ一緒に来る(イベント流行り)


もう当たる当たる。なんだこの異常に的確な未来予測。江戸の戯作者、あなどれん。
予測の的中ぐあいもさりながら、三百年もの時間を軽がると飛び越えてその先の風景を空想し、笑っていた江戸時代人の想像力のゆたかさにも驚かされます。コンピュータもネットも自動車も飛行機も何にもなかったのに。なんというか、現代人も及ばない精神的余裕のようなものを感じさせる話でした。

ちなみにその現代では。SFが冬の時代だのライトノベルはもう終わりだの、時間的には目と鼻の先の小説ギョーカイ盛衰談義をまるで天下の一大事のように喧々諤々している評論家っぽい人たちをときどき見かけますが、こういう話のあとでは失礼ながら少々みみっちいように思えてしまうのは致し方のないことでしょう。どうせなら2年5年とせこいことを言わず、300年後の読者をあっと言わせるような未来予測+年代論とかやってみたら面白いのではないかな。今は受けなくても、後世の人々からは重要な史料として高く評価されるかもしれません。
予測が当たってればですが。
a0030177_23441894.jpg
挿絵: 江戸時代人が考えた未来のファッション想像図。ちょんまげの概念からは逃れられなかったと見えます

ところで、この本に満載されている聞いてびっくりネタ話の多くについては、どうしてもソースに興味が出てくるんですが、残念ながら参照資料についての情報は詳しく書かれていません。一般的に入手 or 閲覧可能な範囲で関連書籍のリストとかが付記されていればありがたかったのですが。ちょっと自分で調べてみようかな。
なんか小学校の自由研究みたいな感じになってきた。

─────
[ニコニコ] ドラマ ハチワンダイバー(将棋ニュースプラス版)
そのような過酷な企画があったと黒歴史は語っております

[動画] GONZO+ニトロプラス 「ブラスレイター」PV
板野一郎や恩田尚之といっしょに虚淵玄やにしーの名前がクレジットされてるのって、なんか不思議な感じ。

「ビアンカ・オーバースタディ」詳細発表!(筒井康隆氏についての…)
ラノベ版ガスパールみたいなのが来ると期待してみる

「CLANNADは人生」を3Dで実現 ギャルゲーキャラと暮らす仮想空間、ドワンゴなど開発
ここからさらに一歩進んで、AR空間上で常時キャラクターとキャッキャウフフできるようになった時にどうなるかな。マジでモニターの中に旅立つ二次元オタが続出するかも?と未来予想。
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-07 23:38 | 本(others) | Comments(2)
「ハチワンダイバー」(1)-(4) 柴田ヨクサル
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_2329683.jpga0030177_23292315.jpga0030177_23294484.jpga0030177_23295665.jpg
わが征くは、30cm四方の平面宇宙。賭け将棋にすべてをかける”真剣師”たちの熱き戦いを描く、超ハイテンション将棋バトルコミック!
なんとなくコピーっぽくしてみた。

あちこちでおっぱいおっぱいと騒々しいので剣呑な気がしてしばらくは避けていたんですが、読んでみたらこれが確かにおっぱい本格将棋漫画だったという。いや、すんごい面白いですこれ。とにかく将棋バトルが突き抜けてて、生き生きしててね。格闘技の荒々しさとカーレースのスピード感、爆弾解体のスリルを一緒くたにしたような過剰さが、こう言うのもなんですが、ほとんど将棋漫画とは思えない。
プロ棋士への道半ばにして挫折し、賭け将棋で日銭を稼ぐうだつのあがらない青年・菅田(スガタ)。しかし出張メイドさんにして「アキバの受け師」の異名をとる女真剣師・そよとの出会いをきっかけに、菅田は将棋への情熱を取り戻し、強者たちとの”真剣”勝負に明け暮れることになる。”81マスに潜る男”、「ハチワンダイバー」の通り名と共に――。
ストーリーはゲームバトルものの定石をわりとおとなしく踏襲している感じですが、にもかかわらず「破天荒」と評される所以は、ひとつには絵とセリフによるテンションの高さ。そしてもうひとつ、心理表現のユニークさと豪快さによるものでしょう。
たとえば、主人公が手順を遠く先のほうまで読もうとするときの思考の様子は、息を止めて水中深く「潜る」感覚にたとえて描かれています。水に潜るときに息を止める。誰でもやったことのある平凡な体験ですね。だからこそ、それは読者自身の経験による身体感覚としてありありと想像できます。指数関数的に増えていく膨大な手順を、かぎられた時間でどこまで遠く読めるかという、自己の記憶力に対する極限のタイムアタック。その緊迫感やプレッシャーを水に潜るのにたとえて視覚化するとは、ある種、ジョジョのスタンドの概念にも通じるグラフィカルアイデアの妙。

その他にも、待ち時間なしのノータイム将棋、どちらかがぶっ倒れるまで指しつづけるデスマッチ将棋など、少年ジャンプのノリに近いむちゃくちゃなバトルが次から次へと演じられます。絵づらもなんかまるでボードゲームとは思えないような、むしろ格闘技漫画みたいな雰囲気に。熱いなあ。

第4巻まで一気に読んでみて、(将棋そのものは駒の動かしかたしか知らんのですが)好みだけで私的ベストバウトを挙げるとしたら、対文字山戦でしょうか。プロの漫画家にして真剣師でもある文字山先生のキャラが、どうにもあまりにジョジョ的すぎて笑いがとまんない。変人にもほどがあるわい。危ない人っていうのは安全圏から観察している分には非常に楽しいもんです。

絵についても少し語りたい。
特徴は強弱のある太線、骨太な人物画。細く鋭い眼の描き方が印象のかなめです。キャラの造作などは微妙に不恰好なんですが、人物ごとの個性づけや目つきの凄みを描く技は鮮やか。写実的な意味での上手さよりも、漫画的なパワーをうまく引き出せる絵柄という感じ。好きですね、こういう絵。
作品中ほぼ唯一のお年頃の女性キャラクターであるそよも、やたらたくましくてちょっとデブいめに描かれてますが(足ふと!)、慣れてくるとそのへんもむしろ愛らしく見えてくるから不思議なもので。なんとかもえくぼって言うよなあ。

対局シーンではコマの中に目の一部や口の一部しか映らないぐらいの超寄りすぎカットが連発されたり、セリフとフキダシが大きすぎて絵のスペースがほそいスキマになってしまったりしています。そういうのはけっこうざらなんです。いや、そっち優先なの?普通逆でしょ?みたいな。こうした型破りな表現も含めての「破天荒」なんでしょうかね。

ちなみに絵柄は1巻の時点ではまだ固まっていなかったのか、ごみごみぐちゃぐちゃした荒さが強く出てましたが、2巻以降は急激に整理されてさっぱりした画面になっていきます。洗練されたとも言えるけど、個人的にはちょっと寂しいかな。最初の方の小汚ない雰囲気もけっこう好きだったので。

実写ドラマは5月スタートとのこと。普段テレビドラマはまったく見ないんだけど、これは例外的に見てみたい気がしてきました。時間要素が入ったときにあの将棋バトルシーンがどんなふうになるかっていうのが興味ある。あと、将棋盤と体の間のすきまから覗くようなトリッキーなカットをどうするんだとか、なるぞうくんどうするのとか。

─────
太陽が最期を迎えても地球ごと助かる方法 (A Successful Failure)
ディアスポラ読んでると、そんな先の話よりも近場の中性子星とかの方が剣呑に思えるが。

[youtube] AR空間上に仮想物体を合成表示するデモンストレーション動画
すごい。ノートPCでこれができるってのがすごい。そしてネタに走る科学者萌え

飛浩隆インタビュー@京都SFフェスティバル2006
主にラギッド・ガール談義、創作裏話。興味深い。

[ニコニコ] 逆襲のシャアwithカミーユビダン+(プラス)
新訳版逆襲のシャア。今度はあの人が参戦します。そしてグレネード

絶版ラノベ(やSF)配信サイト、ダイナミックプロが開設
出版不況を利用したリサイクルビジネス。300円という価格設定がうまいと思う

ワーナー、ダン・シモンズの「ハイペリオン」を映画化へ
待てば海路の日和あり。シュライクのデザインは生頼範義っぽいの希望

[ニコニコ] あずマンガ日和⑥ 「亜美・真美」
正気にては大業成らず
[PR]
by umi_urimasu | 2008-04-01 23:36 | アニメ・マンガ | Comments(2)