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荒木飛呂彦の文体について
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a0030177_1957661.jpgウルトラジャンプ11月号「スティール・ボール・ラン」#31のネームがすばらしい。
即物的で淡々としたモノローグが、まるでほんとうにジョニィ自身が書いた旅行記のようです。他のジョジョシリーズでも旅の途中のインターミッション的なシーンで印象的なのはいくつかあるけど、旅という行為の「生活」面についてここまで語り込まれた例はおそらく初めてじゃないでしょうか。

あまりによかったので一部書き出しておきます。
馬が入れる木の下や岩陰を見つけたら
とにかくその場所に防虫対策の簡易ベッドを作って ひたすら寝た
馬は立って眠る
陽が傾きかけたら再出発で 月明りがあれば夜進み
闇夜なら 馬が岩や毒トゲで負傷するリスクをさけ 即刻キャンプの決断をする
ぼくらの馬は水を4日間飲まなくても大丈夫だった

夜のキャンプ時もそれなりに忙しい
馬の毛並みのブラッシングをみっちり数時間してやる
筋肉マッサージの意味もあるが 防虫や病気の危険回避のためだ

進行中 道幅の視界が狭くなり
仮に道端に朽ちた木の十字架が何基かあったら要注意だ
過去に山賊が旅人を虐殺したか それに近い事故が起こった場所の可能性が高い
襲撃に適した「地形」という事だ
敵はいないかもしれないが まわり道するか
または覚悟を決めて 戦闘態勢をとってそこを通り抜けるしかない

でも レース中もっとも神経と体力を使うのは「河」を渡る時だ
それが大きい河だろうと 小さい河だろうと
水に入ると360°無防備状態になるし ブヨや蚊の大群はいるし
もし水の中を泳いでいるマムシに馬が噛まれでもしたら その時点でアウトだからだ

ここまでの旅 いったい何本の「河」をぼくらは渡って来たのだろう……
そしてあといくつの「河」を渡るのだろう……

ジャイロの淹れるイタリアン・コーヒーは こんな旅において格別の楽しみだ
コールタールみたいにまっ黒でドロドロで 同じ量の砂糖を入れて飲む
これをダブルで飲むといままでの疲れが全部吹っ飛んで
驚くほどの元気が体の芯からわいてくる
信じられないくらいいい香りで もっともっと旅を続けようって幸せな気分になる
まさに大地の恵みだ
ジャイロはたまにこれをヴァルキリー(馬)たちにぬるーくして飲ましている
この例にもみられるように、回想シーンなどでの荒木飛呂彦の語りのスタイルは即物的、断定的、肉体的、簡潔、というのが特徴で、ここから僕がまっさきに連想するのがヘミングウェイの文章です。もちろん荒木飛呂彦の場合は絵があってこその表現なわけですが、言葉づかいだけでもけっこう似ている気がします。奇抜な比喩や倒置法を多用するエキセントリックな荒木節がなりをひそめているときの、「素」の状態の荒木文体っていうのは、案外こっちの方なんじゃないかなあ。
まあ実際には戦いや冒険のまっ最中でない場面なんてほとんどない漫画なので、普段の状態という意味でいえば「圧迫祭りよォーッ!」とかやってるときのほうがジョジョ的には素ということになるのかもしれませんけど。

ちなみに今回はジャイロが一着でした。よ~しよしよし。大したやつだジャイロおまえは。

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日本SF大賞候補作リスト 2007
ラギッド・ガールと虐殺器官もあがってますが、本命はやはりSREかと。

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これだからニコニコはやめられん

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イヤッホゥゥゥ! リアル〈数値海岸〉きたー! オープンしたら遊びに行こう!
えろえろしい安奈・カスキがお出迎え! は、してくれない。たぶん。
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by umi_urimasu | 2007-10-30 20:18 | アニメ・マンガ
漫画業界は「先生」から「さん」の時代へ
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a0030177_21144367.jpg漫画雑誌のページの余白には大抵、「○○先生に励ましのおたよりを」という感想募集の文句が書かれています。ところがコミックビームという雑誌では、ここの作家の呼び方が他誌とは少しちがってましてですね。ほとんどすべての雑誌が「先生」という敬称を用いている中で、ビームだけは「○○さん」というスタイルで統一されているんです。森薫は「森薫さん」、志村貴子は「志村さん」。あの竹本泉ですら「竹本さん」です。

これには作家という特殊な存在に対し、読者が親しみをもって応援しやすいようにという配慮の意味があるのかもしれません。でも実際には、呼称をちょっと変えたところで送られてくる感想が劇的に増えたりといった実利的な効果は少なそうに思えます。だとすると、業界のスタンダードから外れ、メリットもない呼称をビームがあえて使っているのはなぜだろう。単なる「人と違うことしたがり」のアピールとしてはあまりにも地味すぎる。

僕はこれを、「作家と読者の立場を上下関係でとらえたくない」というエディター側の思いのあらわれなんじゃないか、というふうに受け取っています。営業上の損得と関係のない、作り手としてのポリシーだというわけですね。

日本で「先生」という呼び方が使われるときには普通、何かを教わる目上の人への儀礼的な尊敬という意味合いが含まれます。ただし、学問的なヒエラルキーとは無関係な人でも知的権威階級(?)っぽい相手を先生と呼ぶケースはあって、たとえば医師や国会議員や税理士を「先生」付けで呼んだりするのがその例です。出版界における「先生」も、たぶんこれらと同じ社会的慣習の範疇に含まれるものとみていいでしょう。この意味で使われる「先生」とはつまり、この人は偉いんだよ、おまえら読者より上なんだよ、無条件で敬えよ、というタグなわけです。

けれども僕は最近、この種の権威づけが現在の漫画界にまるでそぐわなくなってきているような気がしています。というのも、市場の巨大化、ネットの発達、同人と商業の接近などによって漫画家のすそ野が急激に広がり、プロとアマとただの読者の間にあった壁が崩れかけているように見えるからです。商業誌と同人誌のかけもちが激増したり、素人のWebコミックがプロをしのぐ注目を集めたり、雑誌からWeb上へと交流の場がシフトしたり。
こうした時代の変化にともない、若い漫画家と読者たちは、どちらからともなく互いの立場をきわめて近しいものと考えるようになってきたのではないでしょうか。そして雑誌の制作サイドもそれに応じて、今までの作家=上、読者=下というヒエラルキーを捨て、両者をより親密で対等な存在として扱おうとし始めているんじゃないでしょうか。

もちろん、時流に合わないからといって大した害もない現行ルールをいきなり廃止する意義もあまりないので、大多数の漫画雑誌はいまだに「先生」という呼び方を守りつづけています。しかしいずれは、形骸化した権威のタグなどもう要らんという作家たちが第一線を占めるときがくるかもしれない。その流れにいちはやく気づき、古い因習からの脱却を(欄外でこっそりと)はかり始めたコミックビームの奥ゆかしい先見性を、僕はほんのり好感をもって眺めているのです。もしかしたら、ジャンプやサンデーやマガジンもそのうち「○○さん」表記に変わっていくのかなあなどと想像しながら。

ちなみに上のリンク先のビーム公式サイト内の文章にも(ファンの書き込みは別として)「先生」はひとつもなく、敬称は全部「さん」のようでした。やつらけっこう徹底的っぽいぞ。

(追記)
なんかあちこちの個人ニュースサイトにとりあげてもらえたみたいです。ワンダフル。

(追記2)
コミックビーム編集者へのインタビューとか読むとリアルでも「さん」で通している模様。めっぽう熱い人たちらしい。この熱意が本当なら、ビームの「さん」は時代性がどうとかそんな理由じゃなくて、純粋に編集者本人の作家に対する信頼や同志意識のあらわれと考えたほうがよさそうです。しかし熱いなあ。

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[ニコニコ] アイドルマスター 「団結」 IM@S ALLSTARS  youtube版
[ニコニコ] 塊アイドル (二番煎じ)
恐るべきはちんこうP一族
[ニコニコ] アイドルマスターでキャプテン翼
これは伸びる。

[ニコニコ] 【MAD】地球へ… 「ジョミーのためなら死ねる」  youtube版
「地球へ…」が無性に見たくなる良作。「ネギとか!」のためにもニコニコ推奨です
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by umi_urimasu | 2007-10-24 22:20 | アニメ・マンガ
NHK「日本SFの50年」
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ETV特集 21世紀を夢見た日々~日本SFの50年~

観ました。内容は浅かったけど、星新一の幻の貴重映像や小松左京+筒井康隆+石川喬司の鼎談インタビューといったレアソースのおかげでありがたみだけは無駄にある番組でした。小松左京よぼよぼだー。あんなにタバコ吸ってて大丈夫なんだろうか。

面白かったのはやはり、発足当時のSF作家クラブの会合記録や回想録ですね。原子力研究所を訪問して見学させろさせないでもめた話だの、その際に星新一がこぼした原子力(はらこつとむ)ジョークだの、筒井康隆だけがなぜか放射能チェックにひっかかっただの、むちゃくちゃな入会資格だの、火星から地球まで宇宙服で飛び降りるスポーツの話だの、なんかもうノリがそこらの大学の遊び系サークルと変わりません。あの偉いSF作家も、みんな昔子供だってねーと。

しかしそうした結束感や熱気も、SFが文芸ジャンルとしての市民権を獲得するにつれてうすれていってしまいます。あたかも体を寄せ合い氷嵐に耐えていたペンギンたちが、嵐のあとではゴロ寝体勢に戻ってくつろぐように。作家たちのもつエネルギーが不変でも、領土を広げると温度が下がる。なんか断熱膨張みたいだな。

期待したような個別の小説作品についての紹介はほとんどありませんでしたが、小松左京「復活の日」、星新一「声の網」、石川喬司「SFの時代」あたりにはけっこう強いフックを感じたので要チェック。特に「復活の日」は表紙がいかにも古くさそうで今までスルーしてきたけど、ウィルス+人類滅亡ものと聞いてプライオリティが一気にアップしました。
ただ、筒井康隆っていうとみんなすぐ、まるで代表作であるかのように時かけばっかりクローズアップするのはいい加減どうにかならないか。他にあるだろう、他に!

あと、これ見てたらNHKレベルのソース収集力でもって作られた海外先端SFの紹介番組を見てみたい願望がふつふつとわいてきました。イーガンやチャンにロングインタビューして、ワームホールの建造とかヘプタポッド言語についてがっつり説明させて、本職の学者たちに検証させるの。超見てえ。まあ実現は無理っぽいけど。でも、DiscoveryとかA&Eとかケーブルの専門チャンネルでもっと広めのテーマでなら、まったく不可能ということもないのでは……。だめかなあ。

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最も美しいオープニング。 (Something Orange)
あんまりクラークベタ誉めすぎてなんかもぞもぞしてきたのでちょっと引き気味な「幼年期の終わり」評もひっぱり出しておきます。未読の人がバランスを取る参考にでもなれば。
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ヱヴァ「破」のコンテが佐藤順一らしい。見せ場優先のせいかツギハギ感の強かった「序」より自然な心理描写が見られるかも。
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by umi_urimasu | 2007-10-22 23:26 | まぞむ
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」桜庭一樹
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a0030177_22122214.jpgまずは反省。「本を見かけで判断しちゃダメ」といういい教訓でした。出版レーベルや文庫版の装丁などから勝手に先入観の壁をつくって今まで読もうとしなかったこと、かなり後悔しています。もしこの作品がハードカバー化されず、いかにもライトノベルっぽい体裁のままで売られていたとしたら、僕はたぶん決して自分から手に取ろうとはしなかったでしょう。なんというもったいないおばけ。食わず嫌いベリーよくない。なんでもトライしてみるもんですね。

どんな小説かひとことで紹介しろ、と要求されると言葉に詰まるんですが、「青春暗黒ミステリー」と言ったところで未読の人に伝わるのかな。もっとわかりやすくぶっちゃけると、愛していた親に殺される子供とただ傍観することしかできなかった子供の物語です。世の中は無力な子供が生きやすいようには全然できてなくって、運悪く死ぬ子がいれば運よく生き残る子もいる。そんな残酷な世界で、親や学校の庇護という建前の皮をかぶせられて逃げることも抗うこともできないままあがきつづけ、斃れていく少女たちを「実弾を持たない兵士」にたとえた、レクイエムというかゴッドスピードというか、まあそういった小説であると。

少女と大人の世界の対比の残酷さもさりながら、僕にとって珍しい方向からの衝撃だったのは、およそ停滞というものの感じられないそのスピードでした。ラノベの文庫一冊分に収まる必要最小限の登場人物とイベントに絞りこみ、成長と通過儀礼のドラマパターンから美しさとむごさだけを抽出した無駄のなさ。痛みにおびえて立ち止まるには、この小説はあまりにも短すぎ、あまりにも読みやすすぎるのです。こういうところを「ライトノベル的」なスタイルとみなしていいかどうかはわかりませんが、この作品のインパクトの幾分かは確かにその短さと読みやすさに負っているように思えます。
しかし、文庫版のファンシーなイラストといい、いかにも甘ったるそうなタイトルといい、そもそもこんな過激な作品が剣と魔法でぴよぴよ系のラノベレーベルから出ていることといい、なにかトラップめいたものを見てとってしまうのは邪推なんだろうか。

僕の場合、典型的なライトノベルというものにいろいろとネガティブなイメージを抱いていたせいかもしれませんが、文章が端正でおかしな癖がないのは非常に助かりました。思春期の少女相応の繊細さの表現にかなり気をつかっているらしい点も好印象です。一人称文体の中に、主人公のリアリストぶりを示す語り口のそっけなさと、美男のくせにひきこもりの兄を貴族にたとえたり海野藻屑の奇言奇行を「砂糖菓子の弾丸」と形容したりするちょっと詩的なセンスが同居していて、「13歳」というキャラクター性が強烈に立っていたりとか。「平易な文章」がかなり上手い人だと思います。

この少女心理描写の巧みさだけで、個人的にはもう十分元を取らせてもらいました。あえて瑕を探すとすれば、「この話、ミステリ要素要らないのでは?」という突っ込みぐらいか。野暮かな。「富士ミスだから」という実もフタもない理由だとしたら文句を言ってもしかたないし。ただ、この作品を読むかぎりでは、桜庭一樹というひとはあんまりミステリが得意分野ではなさそうな印象でした。一応ジュニアミステリがメインの人らしいんだけど。

いつぞやライトノベルから一般文芸への越境現象がどうのこうのと話題になってましたが、あれはまさにこういうもののことを言ってたのか!とこれを読んでようやく合点がいきました。なるほど確かに越境してきてる。これなら読む。僕だって喜んで読む。あんまりラノベっぽすぎなければもっといい。そんなわけで直木賞候補作「赤朽葉家の伝説」が期待度急上昇中。

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メタフィクションという「技法」
メタフィクション特有の快楽を存分に味わいたければ、普段はむしろ非メタ的なフィクションにこそ漬かってたほうがよさそうだな。という気がする。

[ニコニコ] 【エヴァンゲリオン】 『 使徒ラミエル : ? 』
笑い死ぬかと思った。実写パートが神すぎる

[ニコニコ] 朝比奈ミクルの冒険(ハリウッド版)
T2+ハルヒ。このくだらなさこそ手製MADの醍醐味
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by umi_urimasu | 2007-10-18 23:11 | 本(SF・ミステリ)
「楽園の知恵―あるいはヒステリーの歴史」牧野修
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a0030177_1652443.jpgひとことで言うなら「言語実験と幻想ホラーの度胸合体大乱交パーティ」みたいな短編集。毒性の高さ、容赦のないブラックユーモア、悪夢や狂気の黒ぐろしさ、哀れな死者たちに向けるやさしい視線、まるで往年の筒井康隆のようなオールラウンダーぶりです。日本SF大賞受賞の「傀儡后」もすばらしい作品でしたが、あの戦慄的なテクノゴシック・イメージの洪水ですら、牧野修がたくわえている武器弾薬の総量からすればほんの一部分にすぎないらしい。ということが、ようやく僕にもわかってきました。でもって、最高傑作と名高い「MOUSE」を読むのがめちゃくちゃ楽しみに。

ところで、約15年という長い期間の中から拾いあげられた作品群にもかかわらず、こうして一冊にまとめたときにまったく散漫な感じがしないというのはなにげに凄いことのような気がします。筆運びがじつに危なげないというか、基礎をがっちり固めた上で悠揚として言語実験に挑んでいる風にみえるというか。
この「楽園の知恵」には比較的尖った作品ばかりが選ばれているようですが、長編「屍の王」(1998年)なんかはごくオーソドックスなホラーだったし、Wikipediaによれば牧野修はバイオハザードやかまいたちの夜などの映画やゲームのノベライズもたくさん手がけています。その手の定石的・典型的なものを誰にでも読みやすい形で書きこなせる安定した技術的土台をもっていることが、そこからどれだけ逸脱したものを書いてもとっちらかった印象を与えずに済む理由なのかもしれません。

ちなみに牧野氏はプロ作家になる前は同人誌「ネオNULL」の常連だったそうで。なるほどさもあらん。あの筒井っぽさはただごとじゃねーと思ったんだよ。

以下、印象深かった収録作寸感。

「演歌の黙示録 エンカ・アポカリプシス」
オカルト昭和演歌史パロディ。アイドル演歌歌手が紅白歌合戦で突如「ふんぐるい~」と歌い出して触手で観衆を狩りはじめます。ドアホすぎる。こういうの大好きだ。たとえるなら筒井康隆「イチゴの日」+荒俣宏「帝都物語」+菊地秀行「妖神グルメ」。参考:薔薇十字団

「インキュバス言語」
猥語変換SF。やってることはエロ小説のガイドラインとあんま変わらない。とはいえ、やはりプロの小説家が書いたものはそれなりのクオリティです。

「逃げゆく物語の話」
物質化されたテキスト〈テキスティック〉で造られる「人形をした書物」〈ラングドール〉。彼らは人間そっくりに喋り、思考し、動くことができ、今では本に代わるコレクションの対象となっていた。しかし表現規制法の激化により、公衆良俗に反するホラーやポルノのラングドールの廃棄処分が決定される。彼らは当局に追われながらも〈約束の地〉――いずこかにあるという、ドールたちのための大図書館――を目指そうとするが、仲間が次々と殺されてゆき……。
設定だけならこれがいちばん好きかも。ブラッドベリ「華氏451度」のバリエーションみたいなディストピア話ですが、こちらは燃やされる本のほうが主人公という変わり種です。言語の消失といえば「残像に口紅を」なんかが思い浮かぶけど、まあさすがにそこまでのことはなく。

「夜明け、彼は妄想より来る」
公衆便所で意味もなく刺されたホームレスの女が孤独な死の間際にみる夢。どちらかというと物語よりも絵的なインパクト先行の収録作品が多いなか、ストーリー性の高い一篇。

「踊るバビロン」
バイオテクノロジーの暴走によって生まれた家具人間たちが住む異形の世界〈屋敷島〉の見聞録。捏造言語文化の不条理パロディ的面白さと生理的嫌悪感のダブルアッパー。

「バロック あるいはシアワセの国」
時間=神と定義した王国の興亡を描くドラッグの神話。なんかボルヘスにこんな話あったよね。ネットスラング文体ならではの都市伝説的恐怖の演出がいい感じ。

「ドギィダディ」
キリスト生誕の逸話をぎったぎたのウルトラ・グロテスクに変換。そこまでするか。

その他、「いかにして夢を見るか」「憑依奇譚」「或る芸人の記録」「召されし街」「中華風の屍体」「付記・ロマンス法について」。計13篇、バラエティ豊かな秀作ぞろいの一冊。SFに格別のこだわりのある読者でなければ、「傀儡后」よりもまずはこっちをおすすめしたいです。あと、筒井好きは必読ですね。

[アイヨシ][プチ書評] 『楽園の知恵』 (三軒茶屋 別館)
僕のよりずっと濃い書評。筒井「虚人たち」や酒見賢一「ピュタゴラスの旅」への言及もあり

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ETV特集 21世紀を夢見た日々~日本SFの50年~ (NHK教育 10/21)
見忘れないようにしよう
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たまってた電脳コイル消化。第20話のアクションが痛快でした。後のラミエルだな。

[ニコニコ] 攻殻機動隊 - Vectorman  youtube版
かっこいい。ニコニコだとすぐ権利者削除食らうかも

[ニコニコ] WHAT'S UP GANG?【ジョジョ+爆れつハンター】完成版  youtube版
無意識のうちに敬礼のポーズをとってしまうほどの傑作MAD。ディ・モールト・ベネ!!

[画像] 街中の巨大メタルスライム  巨大物体スレより。これどこなんだろう
[画像] ロシアの森林にある謎の巨大球体  センスオブワンダー
[画像] 巨石まっぷたつ
[画像] 大天使のブラ
[画像] A Smoke Angel  あんまり嬉しくない煙の天使
[画像] 廃船
[画像] Shooting the stars  美麗なボディペイント
[画像] Tiny puffer fish  てのりフグ。かわゆす
[画像] 凄いことになっている世界中の奇妙な木 (らばQ)

画像系サイト、Best Pic Ever これはいいところだ。
Staten Island: Boat Graveyard  これもいい。廃船写真がたくさん
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by umi_urimasu | 2007-10-13 21:28 | 本(SF・ミステリ)
「夢の棲む街・遠近法」山尾悠子
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a0030177_23225027.jpg美しく、美しく、ただとこしえに美しく。
僕にとって「母親の胎内にも等しい、世界でもっとも居心地のよい幻想の深み」がどこかにあるとしたら、それは今のところ山尾悠子の作品の中しか思いつきません。ひとつの文字から次の文字への、「この一字しかありえない」という完璧な連結。完璧な単語、完璧な文章、完璧なことばの箱庭宇宙。日本語を構成する文字の総数は一般に五万以上といわれていますが、その五万字からなる膨大な組み合わせパターンの中から、いったい何をどうすればこれほど美しい配列を生成することが可能なのでしょうか。

「夢の棲む街・遠近法」(三一書房)は、山尾悠子が20年以上に及ぶ沈黙に入る前の作品群を収めた1982年の単行本。150ページたらずの薄い本なので読み切るのは簡単ですが、読み終えた人はその物理的な薄さに小さからぬ衝撃を受けることでしょう。つまり、こんなにも多彩で緻密なイメージが、たったの150ページで表現されているという事実に対してね。

個人的にめちゃ好きなのは表題作の「夢の棲む街」。どことも知れないすり鉢状の街のディテールに関するさまざまなイメージをつなげて、シュールレアリスム的な小宇宙をつくりあげている作品です。いくつか例を挙げてみると、
人々が眠る白昼に街の噂を集めて夕刻にそれらをばら撒く〈夢喰い虫〉。
足だけの畸形人のダンサー〈薔薇色の脚〉たちの劇場からの脱走。
娼館の鳥籠に住む嗜眠症の侏儒が見る遠い海の夢。
天井裏にみっしりと詰めこまれた畸形の天使たちに起こる異変。
街の夜空を占領し、それ自身の意志や感情をもって活動する巨大な星座。
開かずの部屋の中、撃たれてのけぞった姿勢のまま十年間も静止している女。
風のない夜、街一面に雪のように降りつもる白い羽根。
はるか上空に棲むという透明な巨大浮遊生物。
円形劇場における阿鼻叫喚。すべての破滅。
まるで無意識の深みから直接汲みあげてきたかのようなこれらのイメージ群のえもいわれぬざわざわ感、筆舌につくしがたいものがあります。「ラピスラズリ」同様、感触としてはミヒャエル・エンデの「鏡の中の鏡」に近い気がするんですが、文章レベルでの快楽度はこっちのほうが断然上。

「遠近法」では無限につづく塔の内壁世界とその住人たちを支配する一種SF的な円筒宇宙観を、「傅説」では無限の廃墟を踏破してゆく愛人たちの道程の音楽的な表現を、というふうに、作品ごとにいっぷう変わったアイディアや手法を実験したりもしています。とにかくことばに対するこだわりははんぱじゃありません。

幻想文学の中でもシュールっぽいのが好きなひとにはぜひともトライしてみることをおすすめしたい作品です。SF者にも存外波長が合いそう。
ただし、残念ながらどの本も書店では入手しにくくなっています。Amazonで検索してみると「山尾悠子作品集成」は当然のごとく品切れ、復活新作の「ラピスラズリ」以外の作品すべてにかなりのプレミアがついていて、蒐集家でもないかぎりおいそれと手を出しづらい雰囲気バリバリです。面倒でも図書館を利用するなどしたほうがよさげな感じですね。

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サイトの右側にGoogleの検索リンクを張ってみた。主に僕が自分で使います。この方はどなたでしたかな…・というときなどにちょっと便利。
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[ニコニコ] ちょっとでもニヤニヤしたらふるぬっこ
zipが俺を呼んでいる
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by umi_urimasu | 2007-10-09 23:29 | 本(others)
「虐殺器官」伊藤計劃
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a0030177_2112612.jpg円城塔と共に期待の大型新人として鳴り物入りのデビューを果たした伊藤計劃の第一作。これはあちこちで騒がれるのも納得ですね。
テレビゲームのように痛みも感情もともなわない、近くて遠い戦争と殺戮。そこには核の冬や世界水没といった古典的な終末観の影はもう残っていない。けれど、マクドナルドやスターバックスのある「こちら側」の世界の人間を包みこむリアリティの喪失は、どうやら別の意味で陰惨きわまる終末につながっているらしい。それは、アフター911のこの世界で平和な日常を謳歌している僕たちが逃げようのない、恐ろしく怠惰で空虚な世界の終わりのかたち。

「虐殺器官」は決して空想の物語ではありません。この作品はたぶん、今この瞬間にもあなたの家のリビングルームに出現しつつある暗黒の終末を、ありのままにレポートしてみせているだけなのです。もっともそれは、痛みも苦しみも周到にフィルターアウトされ、あえて直視しようとしないかぎり気づくことのない平穏な終末なわけですが。しかも、気づいたって何にもならないというイヤすぎる皮肉。

作品概要はこのへんとか

SFとして読むならば、「虐殺器官」の楽しみどころはやはり「人間が進化の過程で獲得した『器官』である言語の中に、大量虐殺を誘発する因子が隠されていたら?」というアイデアのロジカルな展開でしょう。しかしこの作品の魅力は、それだけでは終わってないところ。軍事サスペンスとしてのストーリーがSFの部分と乖離せず、最後の最後までしっかり緊迫感を保って貫かれていて、純粋に娯楽小説として読んでもかなりポイント高いです。
世界中の紛争地域に必ずその姿ありといわれ、数々の暗殺作戦をことごとくかわしつづける謎の人物、ジョン・ポール。彼の真の目的は何なのか?なぜ捕縛できないのか?そもそも彼は実在するのか?どうやって大量殺人を扇動しているのか?これらの謎を解くためには「虐殺器官」そのものの正体に迫るほかはありません。アイデアSFにとどまらず、より一般的な娯楽性をもたせつつ、どちらに偏るでもなく両方きちんと処理しきっているのが凄い。これが第一作めとはとても思えない、非凡な構成力を感じさせます。

「虐殺器官」のアイディアや設定から連想される既存の作品を思いつく範囲でいくつかあげるとしたら、たとえば川又千秋の「幻詩狩り」、ジョージ・オーウェル「1984」、コッポラ「地獄の黙示録」、押井守の劇場版「機動警察パトレイバー」、そしてコナミの「メタルギアソリッド」シリーズあたりでしょうか。中でも特殊部隊の描写については、MGSっぽいキーワードやガジェットがこれでもかとばかりに登場します。特に3ネタは相当露骨かも。伊藤計劃氏自身もけっこうなMGSフリークらしくて、ゲームそのもののノベライズではないにせよ、かなり近い雰囲気をもったMGSへのオマージュとして読むこともできると思います。

あと、作品の核となるアイディア「虐殺の文法」にからめた文化論なども読みごたえのあるところ。「ことばは単なる器官である」とか「戦争は啓蒙である」とか「情報とは資本主義の商品である」とか、ラディカルな警句が満載です。戦争や死や罪についての話題は陰鬱でニヒリスティックなのが多いけど、枝葉の部分には哲学的な思考の遊びに近い軽さがあって、ブルーになりっぱなしじゃない。「レミングの集団自殺は都市伝説にすぎない」だの「IBMの計算機がナチスによるユダヤ人大虐殺を可能たらしめた」だの、知らないと素で感心してしまうようなトリビア的な話もたくさん仕込まれていて、議論の追跡にも飽きを感じさせません。いろいろうまいなあ。


最後に、どうあがいてもろくな答えの出ないあの問題についてちょっと。
911のあとでは避けるに避けられない非常にイヤな問いかけが、この作品にはひとつ織り込まれています。これに関していえば、「虐殺器官」は「『世界の中心で愛を叫んだけもの』の進化論的再解釈」と表現できるかもしれません。

a0030177_3453835.jpg人は愛するがゆえに殺す、ハーラン・エリスンの咆哮から一向に進歩のない愛のカバレッジ問題。自分さえ、自分の愛する世界さえ平和なら、そのために他の全世界を地獄と化してもいいのか。べつにエリスンは進化論でアガペーを説明してのけようなんて考えてもいなかったでしょうが、社会学も哲学もこの世界が直面している現実を前にしてはまるっきり役に立たないようだし、遺伝子生物学というのはもしかしたら悪くない切り口なのかもしれません。ま、どっちにしろ解決にはならないんですが。

そういえば「トップをねらえ」を見てるとき、自分の銀河系の大部分をひねり潰すということが意味する大量虐殺に登場人物たちは良心の呵責を感じないのか?っていう疑問が頭からはなれなかったっけ。

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伊藤計劃&円城塔トークショー (8/25)
Self-Reference Engineの構造の話が興味深い。やはり小説ってよりもプログラマの人なのかな。「どう考えてもプログラム言語向きでない小説というフォーマットでプログラム書くのに近いことをやってみたらSREデター」みたいな?

著者インタビュー 円城塔 (Anima Solaris)
SFよりも面白いと思う自然科学系の論文、SF系で好きな本、などなど

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[ニコニコ] THE IDOLM@STER SOLID  【スネークプロデューサー】
[ニコニコ] IDOL M@STER SOLID  【Chapter001】
いいセンスだ。続編に超期待。

[ニコニコ] アイドルマスターネタ8 千早輝嬢様
[ニコニコ] アイドルマスターネタ9 千早美禍星
千早武士道シリーズのつづき。アイマス漫画系動画の中では一番贔屓なんですが
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by umi_urimasu | 2007-10-04 02:17 | 本(SF・ミステリ)