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「へうげもの」山田芳裕
a0030177_12385074.jpgパイナップルのボウルに桃、柿、ビワを盛りあげ練乳とヨーグルトであえる、戦国時代究極の贅沢珍味「安土盛り」。戦勝宴でこの常軌を逸した怪デザートを出された徳川家康は激怒し、得意顔の接待役に切腹を迫ったという。


もちろん家康は料理の味にけちをつけたわけではなくて、彼なりの倹約主義にもとづいて過度の贅食に対する怒りを表明したまでなのでしょうが。というかそもそもこの逸話自体たぶん創作なんですが。

それにしても、こうした「数寄」を愛する数寄者とはいったいどういう人たちなのか?
辞書を引くと「茶の湯や和歌など、風流風雅を好む人のこと」とあります。これだけ聞けば特に珍しい人種という印象ではありません。ただし、時代が戦国時代となると………それはそもそも、現代と同じ感覚で語れる「趣味」なのだろうか。戦争がさほど日常から遠くない領域の出来ごとだった400年前の日本で「趣味人」たらんとすることの意味は、もしかしたら現代の「趣味」とは比較にならないほど重いものではなかったのだろうか。

本来なら生存競争に勝つためにのみ消費すべきリソースを茶碗だの茶室だの傾きファッションだのに注ぎこみ、集めたコレクションを眺めてはニヤニヤしていた戦国武将たち。達観の極なのか、はたまた単なる刹那主義なのか。彼らの精神において、生と死と趣味、それぞれの価値のバランスはどのようになっていたのだろう。うーむ。
いったいどのようにしてか、乱世ならではの無常観と子供じみた物欲とを武士としてのアイデンティティの中に矛盾なく融合させて生きていた戦国時代の芸術オタク=「数寄者」たちの姿は、僕の目にはなにやら無性に魅力的に映ってしかたがないのです。面白おかしいやつらがいたもんだなあ、って。


ちなみに上のパイナップルのエピソードで、早すぎた料理センスが災いしてあやうく首を飛ばしかけたお茶目武将の名前は古田佐介さん。織田信長や豊臣秀吉ほどの強烈な個性はありませんが、このひとが一応「へうげもの」の主人公です。のちの名は古田織部。当代随一の数寄者として千利休に茶道を師事し、有名な織部焼きの開祖としても名を残した人物です。「へうげもの」の「へうげる→ひょうげる」は「おどける」ってこと。
よいか等伯殿……これは合戦ぞ
その方はその筆鉄砲で見事狩野派を打ち破られい
そしてそれがしはこの目利き刃をもって 並み居る大大名を劈き……
数寄の天下を獲る!
この啖呵、しびれる!
彼の革新的なひょうげっぷりはパイナップルの件をはじめとして本編の中で存分に語られていますので、興味をもたれた方はぜひご一読を。

あと、日本史の伝記漫画に堅苦しくてとっつきにくそうなイメージをもってる人がいるかもしれないけど、この作品に限ってそれはないです。笑いあり泣きあり燃えありのパワフルなストーリー、史実とは一味違う個性的なキャラクター、緻密な歴史考証のすき間をかいくぐる大胆な"裏"歴史の面白さ、骨太で精密な作画などなど、消化しきれないぐらいに読みどころ山盛りなんで。
実際、4冊合計2000円少々でこの満腹感はありえんって。
もう強力にプッシュしてしまいますよ。買え! 買い求めおろう! そして漫画読みの至福を味わえ!


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最近の連載漫画でがんばって追いかけてるのはこの「へうげもの」とSBR、それ町、ヴィンランドサガぐらい。不精者なのでたったこれだけでも全チェックはしてないんですけど。

それ町はいいです。異常なまでに和みます。アニメ化されないのが不思議。

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冲方丁『ばいばい、アース』文庫になって復刊
おお。中古がバカ高でずっと買えずにいた作品だ。食指が動きます。表紙の天野義孝絵はそのままの方がいいかな。

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時をかける少女がすて6にまるごと上がってるよ。いけないこ。

[ニコニコ] 【らき☆すたMAD】ジンギスカン Ver1.01
あと一歩で化けそうなのに…という微妙な歯がゆさ。

[ニコニコ] ソ連兵による革命的コサックダンス
宣伝の方向性に疑問はあるけど、とにかくすごいです。
[ニコニコ] 赤軍合唱団コサックダンス inバチカン公演
舞台演舞として洗練されたバージョン。かちょいい。

[ニコニコ] がんばれプレストン
ガン=カタMAD。やはり本家最強。しかしなんだこの再生数は。

[ニコニコ] 【なのは】【MAD】なのはさんでいいよ
応用範囲広そう

[ニコニコ] リバーダンス LIVE FROM NYCより『リバーダンス』
足技系音楽。タップのドライブ感が癖になります。
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by umi_urimasu | 2007-06-24 12:46 | アニメ・マンガ | Comments(0)
「太陽の塔」森見登美彦
a0030177_7452726.jpg天賦の言語能力によって非モテ京大生の大いなる妄想世界を文章化した、痛々しくも面白おかしい半現実/半幻想失恋小説。百年遅れてきた明治の文豪かおまえは、とツッコミたくなる古風な文士調でいつ果てるともなくつづく自分語りがついに尽きても、結局そうたいしたことは起こらない。まるで投げっぱなしの空気投げ。だがそれがいい。
これは笑える。あまりのスケールの卑小さにわが身を顧みて笑わずにはいられない。
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。
しかし全編にあふれるユーモラスな自虐は、人一倍傷つきやすく自尊心の強い青年の煩悶の深さをカムフラージュしようとする必死の迷彩でもある。愛する人から永久に拒絶された事実に向き合い、その悲しみを受け入れるのにほとんど全身全霊をかけて妄想と奇行のかぎりを尽くさなければならなかったとは、この主人公、いったいなんというナイーブなおのこのこ。
これは泣ける。あまりのいじらしさにわが身を顧みて目頭を押さえずにいられない。

何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
そして、まあ、おそらく私も間違っている。
君よ知れ、たとえ喪男であろうとも、否、喪男だからこそ美しく終わる恋のあることを。むろん妄想の中の話だが。妄想して何が悪いか。 妄想なめんなよ。

ガラスの心臓をかばいながら冷酷非情な現実に抗いつづける若者たちのアンセムとして後世に語りつぐべき珠玉の青春小説、第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞、定価よんひゃくえん。しんちょうぶんこ。
おすすめですー。

ちなみに森見登美彦氏のはてなダイアリーは「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」。才能の無駄づかいとはこのことだ。タダで読んじゃっていいのかなこれ。
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by umi_urimasu | 2007-06-19 07:50 | 本(others) | Comments(0)
SFを読むようになったきっかけは?
時節柄、こういう話題はライトノベルでやったほうが広がると思うけどまあそこはそれ。あっちの方とかで。

僕の場合、SFに転んだ最大のきっかけはたぶんこれじゃないかと思うのは、小学生のころの「2001年宇宙の旅」でした。まんまだぜドララー。まあいいではないか。人それぞれさ。
厳密には初めてではなかったと思うけど、地球からの遠さや孤独感、人為を超えた巨大なスケールの現象に対する畏怖など、小説で宇宙の凄みみたいなものを味わった最初期の記憶はやっぱりこの作品に結びついているようです。さすがはクラーク先生ってとこか。「幼年期の終わり」もたぶん初読はそのころ。
ジュール・ヴェルヌやウェルズ、アシモフ、ブラウン、ハインラインあたりも軽くあたっているものの、クラークに比べるとかなり記憶があやふやな感じです。ま、このへんは再読した回数とも関係あると思いますが。

児童書などは読んだとしてもタイトルも内容もすっかり忘れてしまった作品が多いなか、なぜかいつまでもタイトルを忘れられないのがロシアSF文学の始祖・ベリヤーエフの「ドウエル教授の首」。これは当時の僕にとってはホラー以外の何ものでもありませんでした。今ではなんていうか、かけるべき言葉も思いつかないありさまなんですがね。
ライトノベル化する児童文学 (ゆーずー無碍たる日記)では古典のなんちゃってラノベ化現象には言及してないみたいだけど(追記:言及記事ありました)、これはその生きた実例。涙をふきなよ、岩崎書店さん……もういいよ、あんたはよくやったよ……。

あと、人類滅亡・災厄SFの古典としてネビル・シュートの「渚にて」とジョン・ウィンダム「トリフィド時代」をあげとこっと。僕の滅亡SF大好き病の罹病原因はたぶんまちがいなくこの二作。火の鳥とかAKIRAとか、破滅後の再生まで視野に入れた作品も悪くはないですが、やっぱりこういうのは完膚なきまでに滅亡するからいいんですよ。もうこれっきりっていうあの寂しさがさ。
何を力説しとるんだ。ところで「百億の昼と千億の夜」は滅亡ものだったっけか。ラスト忘れたんでわからない。
SF板該当スレのまとめ:人類滅亡を扱ったSF作品あたりを見ると、その数に今さらながら驚かされます。みんな好きだな滅亡SF。

記憶もおぼろげなこれら懐かしの作品群を今読み返したら、僕はいったいどんなふうに感じるのだろうか。これはなかなか誘惑的だ。でも買うとまたぞろ積み本の山が高くなる。なのでやっぱり見合わせる。
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by umi_urimasu | 2007-06-13 01:02 | 本(SF・ミステリ) | Comments(2)
ただ読みオンライン漫画
Yahoo!コミック無料立ち読み
一冊につき数10~100ページをブラウザで読めるオンラインサービス。登録不要。買うかどうか迷ってる作品の内容確認などにはかなり使えますね。ただ、実際買うとなれば電子書籍でほしいという気はまったく起こらないけど。
同様の電子ブックためし読みサービスは最近ではたくさんあるみたいで、ebook japanとかもそう。

[漫画] 山田芳裕「へうげもの」 超おすすめ。

a0030177_2221471.jpgすげえ最高。めちゃ面白い。
我はついに手に入れたぞッ今年のマイベスト漫画を!
賛同者大募集中。ばんばん布教しましょう。未読の人にはとりあえずオンラインサンプル(45p)を。単行本は既刊第4巻まで、週刊モーニングにて連載中です。ゆーますちぇけら。


[画像] 黒田硫黄「大日本天狗党絵詞」フランス語版 表紙1表紙2
仏版表紙かっこいい。柿色と黒のコントラストがなんともいえぬ。保存しとこ。


[漫画] おがきちか「Landreaall(ランドリオール)」

a0030177_2244827.jpg玉砕しちゃいました。シナリオ構築の技に限れば非凡なものがあると思うんですが、美形お兄ちゃん以下メインキャラのスカしっぷり(死語)と少女漫画系アニメ風絵柄、それにファンタジー世界設定の適当さかげんに対する拒絶反応に屈した。これが漫画じゃなく小説媒体だったなら、純粋に物語だけを楽しむこともできるからまだしも耐えられそうなんだけど。
僕と同じような人がどれだけいるかわかりませんが、少女漫画アレルギー体質の読者がいきなりこれに特攻するのはちょっと危なっかしいような気がします。


[漫画] 芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」14巻(完結)

a0030177_2252992.jpg物置から出てきた子供のころの宿題を今になって終わらせたみたいな懐かしさと寂しさを噛みしめつつ、しんみり読了。黄昏の時代を迎えた人類世界のゆるい空気を最小限の情報量であらわそうとした、まるで俳句のようなSF。かなり嫌いじゃない。ページあたりのセリフの少なさに関しては、日本の雑誌連載漫画のなかでもトップレベルかと。

[画像] ついでに超ナイスなココネさん画像はっけん。うめーと思ったら電脳コイルにも参加しているプロのアニメーターさんだった。おお、「BECK」のコユキが走っとる。たいへんな仕事だなぁ。


アニメに適さない題材、ファンタジー
ファンタジーのほうからすれば、アニメなんて最初から眼中にないと思うんだけど。それはともかく、ファンタジーの本質に言及した最後の引用部分はメモしておこう。
「『緑の太陽』という言葉を口にするのはやさしい、と彼(引用者注:トールキン)は言う。しかし、それが存在する世界をまるごと作り、読み手の頭の中にその世界が浮かぶようにしたいと思ったら、緻密な思考力と、職人的な手間仕事、それに加えて『妖精の技ともいうべき特別な技』が必要である。光が常に緑だとしたら、草木はどう育ち、花々はどう見えるのか。それが人の心にもたらすのは、どんな違いなのか、もし取り立ててちがいがないとしたら、それはファンタジーを生み出す核になるほどの『非現実の仮定』ではなかった、ということだ」(『魔法ファンタジーの世界』脇明子、岩波新書)

[小説] 森見登美彦「太陽の塔」読みかけ。おもしろい。
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by umi_urimasu | 2007-06-08 22:27 | ニュース | Comments(0)
4話も凄い「電脳コイル」
メガネのネットが学校を被い、電子や光が駆け巡っても、いたずらが消えてなくなるほど子供たちが管理されていない近未来。
この時代、小学校でのいたずらや虐めの主流手段は電脳戦であった。悪童たちはなけなしのおこづかいで購入した違法ソフトを用いて他の子にハッキングをしかけ、仮想空間における仮想武力の応酬によってクラスの覇権を争っていた。腕ききのハッカーは彼らにとってまさしく英雄だったのである。

なんだかなあ。しかしあいかわらず凄い作画だ。


第4話「大黒市黒客クラブ」では、引っ込み思案な優子と一匹狼の勇子のあまり穏やかでないセカンドコンタクトが描かれます。「こういう話をやるのかな」という方向性は今回で見えてきたようで、正反対な性格の二人がやがて互いに歩みよっていくという、まずまず穏便な路線を提示しようとした感じ。
ありきたりといえばありきたりですね。

しかしそういうことならなおさら、平凡な話にどんなふうに電脳や仮想現実を組み込むかといった部分に斬新な発想を期待します。単に絵面的にシュールな小道具の域にとどまらない、物語に不可欠でかつ誰が見ても意外な利用法、ていうのを見てみたい。電脳ネタをわざわざメインにもってきた以上は、何かそれ系の凝ったしかけがあると思いたいんですが。もし釣りだったら僕ならちょっとぶーたれるかもしれない。


ネットやコンピュータ系のネタを扱った子供向けのアニメ作品としては、たとえば細田守のデジモンアドベンチャー劇場版・ぼくらのウォーゲームなんかが思いつきますが、あれは対象年齢が低いせいか、扱いかたが電脳コイルよりもはるかに単純でした。デジタルワールドへ入りこむ描写は一応あるものの、基本的に現実と電脳空間はきっちりわけられた別の世界という関係でしか描かれてなくて。
「電脳コイル」がちょっと高度なチャレンジをしているなぁと思うのは、仮想空間をただの異世界にせず、「現実に仮想現実を重ね合わせる」という奇妙な感覚をかなり露骨に見せてきているところです。しかもそれは珍しいものでもなんでもなくて、みんなごく普通に日常の一部として受け入れてる。ヴァーチャルペットもリアルペットとまったく同じように愛されているし。国営放送のアニメ作品だから安全な面しか描かれてないけど、これってラギッドガールと同じくらいヤバイこともやろうと思えばやれる設定のはずなんですよね。

まあそもそもそういう危ない設定をいじって盛り上がるような作品じゃないんだといえばそれまでだが。

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余談。
フミエのペットのオヤジの色形がわいせつすぎる件。全裸ですがなにか。仮想現実を言い訳にして国営放送局の倫理規制網をぬけぬけとかいくぐってのけるデザイナーの度胸、ぼくは敬意を表するッ!

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余談+α。
10歳まではネットを使わせるべきではない
今敏監督「いい加減バーチャル込みの現実が前提にされるべき」
どっちの言い分もそれなりに妥当。いずれ後者はあたりまえになるだろうけどもうちょい先の話だろうし、子供に濫用させた場合の悪影響を教育者が恐れる気持ちもわからなくはない。自動車と一緒で、便利な道具は使うリスクも大きいよってことかな。

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余談+β。
電脳コイル見てたら久しぶりにヴァーチャルライト三部作を読み返したくなってきた。ニューロマンサーはついに映画化されるらしいし。そういえば昔、SF板にいろんな小説を黒丸尚文体に変換するスレってなかったっけ。あと鼻血少女萌えの元祖ってやっぱアンジイじゃないっけ。

ウィリアム・ギブスンの新作Spook Country(幽霊の国?)は7月に出るそうです。どうやらパターン・レコグニションの続編みたいな話らしいです。あいかわらずだなー。

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こひるぎじゃないよ、おこのぎだよ。給料いくらだー!

ところでなぜ空の境界劇場版のPVのBGMはデモンベインなのだろう。

[ニコニコ] 無法少女リリカル霧香 【NOIR ヤンマーニMAD】
1:00過ぎから衝撃的な展開へ。この霧香ならファントム倒せる。

[ニコニコ] MGS2の正しい遊び方 PART1
まさかここまで奥の深いゲームだったとは。
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by umi_urimasu | 2007-06-04 23:01 | アニメ・マンガ | Comments(2)