カテゴリ:本(others)( 106 )
「わが悲しき娼婦たちの思い出」ガルシア・マルケス
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_13102435.jpg
たちの悪いいたづらはなさらないで下さいませよ、眠つてゐる女の子の口に指を入れようとなさつたりすることもいけませんよ、と宿の女は江口老人に念を押した。
――川端康成「眠れる美女」
たまにはおのれのサイト名に応分の本も読まねばということで、久しぶりにマルケスに挑戦してみました。90歳の爺さんが14歳の処女娼婦に死ぬほど惚れ込み、浮かれたり悩んだり妄想したりもじもじしたり嫉妬でブチ切れたり自転車で爆走したり猫を育てたり殺人事件に巻き込まれたりするという、なんとも初ういしい(?)老人純愛ストーリー。「老いらくの恋」と聞くと、枯れた味わいの淡白なお付き合いだとか、あるいは本作のインスパイア元である川端康成の作品のように暗く耽美な死のイメージを連想しがちなものですが、どうも地球の裏側では事情が全然違うらしい。パワフルで騒々しくて、切なくてもどかしい、日本人の想像を絶するほど濃密な老いがここにはあります。
人間には死期が近づいてようやく自由になる心の部分というのがあって、そこまで来たらもういろいろ取りつくろってもしょうがない。わずかな残り時間、自分に素直に生きるのが一番いいのではないか。そんな老いの境地にたどりつき、91歳にして一生の恋にめざめたお爺さんの余生が今始まる。
わしたちの恋はこれからだ! マルケス先生の次回作にご期待ください。


おまけ。解説に書いてあった話。
「お話をどう語るか」(邦訳「物語の作り方」)の中でマルケスは、35年間郵便ポストの底に入っていて配達されなかった手紙の話を披露しています。
――子供も孫もいる老女のもとに、ある日一通の手紙が届いた。差出人は彼女がかつて心から愛していた男性であり、水曜日の午後五時にどこそこの喫茶店で待っていると書いてあった。女性がまさかと思いながらも店に行ってみると、なんとその男性が彼女を待っていた。つまり彼は35年間、毎日欠かさず彼女を待ち続けていたのだ――。

で、マルケスいわく、「こういうストーリーは、現実というのはどの程度までたわめ、歪めることができるのか、本当らしく見える限界というのはどのあたりにあるのかといったことを知ることができるので、わたしは大好きなんだ。ただ、そういう限界があることはわきまえておかないといけない。ちょうど、チェスをするようなものだ。視聴者、あるいは読者とゲームの規則を決めておく。つまり、ビショップはこう動き、ルークはこう、ポーンはこう……といったようにね。で、いったんその規則ができあがったら、もう変えてはいけない。一方が途中でそれを変更しようとしても、もう一方は受け入れてくれないからね。すべてのキーは大いなるゲーム、つまりストーリーそのもののうちにあるんだ。相手が君のゲームを受け入れてくれれば、なんの問題もなくゲームをつづけていけるというわけだ。」

なるほど。ありそうでありえない、「超現実すれすれ」の物語を好むマルケスらしい考えかたかも。

─────
[ニコニコ] 銀河英雄伝説的な特攻野郎Aチーム
むしろ銀河声優伝説。トールハンマーだけは勘弁な。

[ニコニコ] アイドルマスター with 地球防衛軍3
アイマスMAD+男の歓声という新境地。この発想はなかった
[PR]
by umi_urimasu | 2007-11-07 14:48 | 本(others) | Comments(4)
「夢の棲む街・遠近法」山尾悠子
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_23225027.jpg美しく、美しく、ただとこしえに美しく。
僕にとって「母親の胎内にも等しい、世界でもっとも居心地のよい幻想の深み」がどこかにあるとしたら、それは今のところ山尾悠子の作品の中しか思いつきません。ひとつの文字から次の文字への、「この一字しかありえない」という完璧な連結。完璧な単語、完璧な文章、完璧なことばの箱庭宇宙。日本語を構成する文字の総数は一般に五万以上といわれていますが、その五万字からなる膨大な組み合わせパターンの中から、いったい何をどうすればこれほど美しい配列を生成することが可能なのでしょうか。

「夢の棲む街・遠近法」(三一書房)は、山尾悠子が20年以上に及ぶ沈黙に入る前の作品群を収めた1982年の単行本。150ページたらずの薄い本なので読み切るのは簡単ですが、読み終えた人はその物理的な薄さに小さからぬ衝撃を受けることでしょう。つまり、こんなにも多彩で緻密なイメージが、たったの150ページで表現されているという事実に対してね。

個人的にめちゃ好きなのは表題作の「夢の棲む街」。どことも知れないすり鉢状の街のディテールに関するさまざまなイメージをつなげて、シュールレアリスム的な小宇宙をつくりあげている作品です。いくつか例を挙げてみると、
人々が眠る白昼に街の噂を集めて夕刻にそれらをばら撒く〈夢喰い虫〉。
足だけの畸形人のダンサー〈薔薇色の脚〉たちの劇場からの脱走。
娼館の鳥籠に住む嗜眠症の侏儒が見る遠い海の夢。
天井裏にみっしりと詰めこまれた畸形の天使たちに起こる異変。
街の夜空を占領し、それ自身の意志や感情をもって活動する巨大な星座。
開かずの部屋の中、撃たれてのけぞった姿勢のまま十年間も静止している女。
風のない夜、街一面に雪のように降りつもる白い羽根。
はるか上空に棲むという透明な巨大浮遊生物。
円形劇場における阿鼻叫喚。すべての破滅。
まるで無意識の深みから直接汲みあげてきたかのようなこれらのイメージ群のえもいわれぬざわざわ感、筆舌につくしがたいものがあります。「ラピスラズリ」同様、感触としてはミヒャエル・エンデの「鏡の中の鏡」に近い気がするんですが、文章レベルでの快楽度はこっちのほうが断然上。

「遠近法」では無限につづく塔の内壁世界とその住人たちを支配する一種SF的な円筒宇宙観を、「傅説」では無限の廃墟を踏破してゆく愛人たちの道程の音楽的な表現を、というふうに、作品ごとにいっぷう変わったアイディアや手法を実験したりもしています。とにかくことばに対するこだわりははんぱじゃありません。

幻想文学の中でもシュールっぽいのが好きなひとにはぜひともトライしてみることをおすすめしたい作品です。SF者にも存外波長が合いそう。
ただし、残念ながらどの本も書店では入手しにくくなっています。Amazonで検索してみると「山尾悠子作品集成」は当然のごとく品切れ、復活新作の「ラピスラズリ」以外の作品すべてにかなりのプレミアがついていて、蒐集家でもないかぎりおいそれと手を出しづらい雰囲気バリバリです。面倒でも図書館を利用するなどしたほうがよさげな感じですね。

─────
サイトの右側にGoogleの検索リンクを張ってみた。主に僕が自分で使います。この方はどなたでしたかな…・というときなどにちょっと便利。
─────
[ニコニコ] ちょっとでもニヤニヤしたらふるぬっこ
zipが俺を呼んでいる
[PR]
by umi_urimasu | 2007-10-09 23:29 | 本(others) | Comments(2)
柳生十兵衛死す(上)(下) 山田風太郎
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_2142971.jpga0030177_2145230.jpg昭和を代表する娯楽小説の巨匠・山田風太郎、その生涯最後の作品。いつか読もうと心に決めてはいたんですが、思ったより早く機会がめぐって来てしまいました。そして上巻半分あたりまで読み進んだところででんぐり返ってコーヒー吹く。まさかのタイムスリップもの! さすが山風、最後の最後まで俺たちにできないことを平然とやってのける……。


柳生ノ庄付近の河原で見つかった隻眼の男の斬殺体。そのうすら笑いを浮かべた死顔は、まごうことなき剣豪柳生十兵衛のものであった。だが死にざまよりも奇怪なのは、彼の本来開かない方の眼がかっと開かれ、開いているべき方の眼が閉じていたことだ。剣にかけては天下無双の十兵衛を、かくも鮮やかに斬り捨てたのはいったい誰か?そして隻眼の怪異の真相は? 希世の能楽師の魔力によって室町時代へ翔んだ慶安の十兵衛三厳と入れかわり、慶安の世に翔ぶは室町の十兵衛満巌。片や慶安の都で、片や室町の京で、時を越えて交錯する剣客二人がたどる数奇な運命の物語。
俗に柳生三部作と呼ばれるうちの前二作、「柳生忍法帖」「魔界転生」の発表から三作めの「柳生十兵衛死す」が書かれた1991~92年までの間には、約三十年ものブランクがあいているそうです。もちろん忍法帖シリーズ自体はその間にもたくさん書かれているものの、後期になるにしたがいその数は減っていきました。つまり「十兵衛死す」一作だけが、忍法帖シリーズ全体から見るとぽつんと離れた時点に生まれたということになります。そのせいか、この作品は他の忍法帖とは基本的な作風からしてかなり趣きが異なっているようで。
たとえば、あの匂いたつような過剰なエロスがまったくないこと。また、超人的忍術の類がほとんど出てこず、ほぼ尋常の剣術戦に終始していること、など。盛大なエロと奇想天外な忍法戦こそが目玉だった以前の忍法帖からすれば、かなりストイックな方向に舵を転じた作品といえるでしょう。

しかし、だからといって出来が物足りないというわけではありません。抑制して描かれた情念の苦味、ムアコックのエルリックのごとき破滅的な一面をそなえたあやうげな十兵衛像、「幽玄」という形容が似合うサイレントな剣戟。色気や頭脳戦の興奮とはまったく異なるデカダンスの香気がこの作品には満ちています。特に、清水寺の舞台や相国寺七重塔といったいかにも能楽にふさわしい戦いの場から、過去と現在のせめぎあう異空間へなだれ込んでいくタイムスリップの描写は圧巻。風太郎ならではの簡潔な美文に絢爛たるビジュアルと能のイメージがあいまって、情景そのものが後期黒澤映画を思わせる絵画的な美しさをもつに至っています。従来の忍法帖とは一線を画する新境地。というか齢七十、人生最後の小説でこれって。どんだけ天才なんだよ。

でも、何十年たとうと独特のユーモアはいつまでも健在とみえてときどきこんなフレーズも。
「ただし、こちらの場合は、向うで呼んでくれねば未来に出現することはできませぬ」
「ふうん。あちらがこちらに翔び移る。こちらがあちらに翔び移る。途中で衝突しやせんかな」
まるでスカッド・ミサイルVSパトリオット・ミサイルみたいなことをいう。
ガチンコ時代劇の真っ最中にいきなりこういうすっとぼけた注釈を入れても世界観がまったく崩れないあたり、さすがは山風といったところでしょうか。

さて、次は何を読もうかな。そろそろ明治ものやミステリ系にも手を出してみたくなってきました。プライオリティが高いものとしては「信玄忍法帖」「海鳴り忍法帖」「妖説太閤記」「八犬伝」「明治断頭台」「妖異金瓶梅」「警視庁草氏」ぐらいか。


─────
[ニコニコ] さよなら逆転先生  youtube版
逆転裁判+絶望先生OP。オバチャンの衝撃的な艶姿

[ニコニコ] アイドルマスター 彼を返して 春香 あずさ
懐かしい。葉鍵最萌Tを沸かせた伝説のネタをここでまた見ようとは。

森見登美彦『有頂天家族』(幻冬舎) 「毛深い子、生まれました。」
毛深い狸たち、京都上空を飛行する天狗たち、天狗を足蹴にする半天狗、狸を食べてしまう人間たち、彼らがそれぞれ暴れ回る。登美彦氏史上、もっとも毛深く、もっとも大風呂敷を広げた大活劇。」
むむむ。おもしろそう。

─────
スクールデイズにつづいてひぐらし解も放送中止らしい。思ったより大事になってるね。→まだ皆殺し編なのに富竹さんが死亡フラグを(メタな意味で)折っちゃったのでこれにて終了説
[ニコニコ] 07/9/19(水)ムーブ!(朝日放送)  youtube版
普段バラエティ系情報番組とか見ないんで認識不足でしたが、聞きしにまさるひどさですな。ひぐらしとばっちりもいいとこ。
[PR]
by umi_urimasu | 2007-09-19 23:18 | 本(others) | Comments(0)
「王狼たちの戦旗」Ⅴ ジョージ・R・R・マーティン
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_16505126.jpgジョージ・R・R・マーティンという稀代のストーリーテラーは今、文字通り空前にして絶後の小説を筆一本で創造しつつあります。いまだかつて、ひとりの人間によってこれだけの規模の異世界戦史劇がこれほどの堅密さで書かれたためしがあったでしょうか。げに恐るべきはマーティンの化け物じみた生産力。
このひと、ほんとに単独作家なんだろうか?じつは総勢30人ぐらいの覆面作家チームとかなんじゃないの?


七王国の覇権をめぐる骨肉の闘争をつぶさに描く大河ロマン〈氷と炎の歌〉は、ある意味では「王狼たちの戦旗」の完結をもってようやく真のスタートラインにたどり着いたといえます。信じがたいことですが、ここまで文庫にして10冊分を費やした凄絶な物語は、あれでもまだプロローグにすぎなかったと思わなければなりません。たぶん、この作品が本当に凄くなるのはここから先。

次巻「剣嵐の大地」では、王家の末裔デーナリスと彼女の竜を乗せた船団がついに七王国にやってくるでしょう。また、マンス・レイダー率いる野性人の大軍が夜警団の守る北の防壁へと攻め寄せてくるでしょう。その中には〈異形人〉の謎に迫るためにあえて造反したジョン・スノウの姿もあるでしょう。矮躯の策略家ティリオンと狡猾な女王サーセイは、今度こそ鉄の玉座と互いの命をかけた陰謀をめぐらし合うことになるでしょう。新たに〈王の手〉となったタイウィン公のラニスター軍と北の若き狼ロブ・スタークの対決は避けられず、さらなる殺戮を重ねてゆくことになるでしょう。王都脱出を夢みるサンサ、故郷を目指す幼いアリア、傷心のケイトリン、裏切り者のシオン・グレイジョイ、魔女メリサンドル、その他何十人もの登場人物の、今まで別々の道に分かれていた運命の糸が一気につながり、もつれ合い始めることでしょう。そして、遠からずほんとうの冬がやってくるでしょう。

機は熟しました。善悪、美醜、愛憎、生死、この世界で意味らしい意味をもつあらゆるものを描ききる用意は整いました。以後、読者としての僕は評価することを放棄し、物語を味わう悦びと苦痛の奴隷となります。この偉業の担い手と同じ時代に生まれたタイミングのよさを、トト神と、ギレアンと、菅原道真と、その他すべての書物の神々に感謝しつつ。
ありがたやあ。

ところでここをわりと読んでくれてる人で、氷と炎の歌が未読っていう人、います?
なら提言しよう。今すぐ買いにいけ!
千円札数枚とひきかえに、新しい人生が十個買えるぞ。ついでにエロい幼女もついてくる。

ちなみにネットの風評によると、「剣嵐の大地」はスケールでもテンションでも前二作を軽々と上回っているらしいです。冗談じゃありません。僕の想像力のおよぶ限界を完全に越えています。これより上位の領域なんてもの、僕にはどうしても理解できないんですが。

─────
余談。
サンサはサンダー・クレゲインフラグ立てすぎだと思うんだ。もう結婚しちゃえおまえら。癇癪王子の方はめでたく破談になったんだからいいだろ。

とかいってほんとにくっついたら笑い話ですむんだけど、たぶんどちらか、あるいは二人とも、物語の最後まで生きてはいられないだろうなあ。
[PR]
by umi_urimasu | 2007-09-02 17:08 | 本(others) | Comments(0)
「王狼たちの戦旗」Ⅳ ジョージ・R・R・マーティン
a0030177_20391265.jpgぴぎいぃぃぃっ!
と、超音波域で悲鳴をあげてしまった。何なんだこの凄まじすぎる展開。ジョージ・R・R・マーティンが「そういう」物語作家だということは重々承知していながら、やはり心のどこかで「さすがにそこまではしねーだろ、いくらなんでも」なんていう甘えを捨てきれずにいた僕を、この巻はふたたび絶望のどん底に叩き落してくれました。冷酷! 残忍! オレの精神テンションは今、「七王国の玉座Ⅴ」のあの時代に戻っているッ! 北の政所さま涙目!

で、涙に暮れながら第五分冊を開くとあら不思議、目次欄にあの人の名が……。これはいったいどういう意味なのでしょうか。いくつもの可能性が考えられるので、その場にたどりつくまではなんとも言えないのですが。ていうかそこにたどりつく前に僕の応援する策士ティリオンの命が現在進行形でヤバいのですが。待て待て待て待てマーティン! それやったらあんたほんとに悪魔だよ! ど、どんだけえー!

未邦訳の続編を原書で読んでしまう人が続出するのもむべなるかなです。引きの強さが異常すぎる。「剣嵐の大地」は〈氷と炎の歌〉シリーズ中最高傑作という評判だし、冗談ではなく明日はわが身かもしれません。あなおそろし。

もう少しいろいろ書こうかと思ってたのですが、そんなことより実物を読むほうが数千倍面白い。というわけでとりあえずだだっと五冊めを終わらせてきます。ホーダー。

George R. R. Martin's Official Website
アイコンが七王国の各家のエンブレムになってる。無駄にかっこいいな。
ワールドコン2007への参加は結局キャンセルされたらしい。残念……。

─────
[ニコニコ] ドナルド大暴れ コンビニ店員とバトル youtubeはこっち

おっぱい論
「ローマ人はロリコン」まで読んだ
[PR]
by umi_urimasu | 2007-08-29 20:12 | 本(others) | Comments(0)
「王狼たちの戦旗」III ジョージ・R・R・マーティン
a0030177_2352513.jpg大変だ大変だ。毎回大変なんですが、第三巻もやっぱり大変でした。陣幕の惨劇、人為か祟りか偶然か? 手口がはっきりわからないのがよけいに恐怖を煽りたてる。いったいどうしてくれようか、この手がつけられんほどの面白さ。

これまでのように普通の人間どうしの戦いにとどまらず、魔法や呪術のような正体不明の力が登場人物に向かって直接ふるわれ始めたことにより、物語の緊張感はさらに高まってきました。何千人もの兵を従え難攻不落の城に拠っていても、邪な魔術にかかれば剣を抜く間もなく瞬殺されてしまうときては。この巻でも、まさかあの人が、あんなにもあっけなく……。うわーん! 怖すぎる。さぞかし無念だったでしょうっていうか、ほんとにもう暗殺魔法は自重してください。お願いします。純粋に怖いので。

〈氷と炎の歌〉シリーズの徹底的なキャラクター平等主義については前にもちょっと書きましたが、とりわけ、アリアとサンサのデッドラインすれすれの立ち居振る舞いには毎度冷や汗をかかされています。この二人はマジで、いつ何のまちがいでコロッと殺されてもおかしくない。これまでのストーリーからもわかるように、ジョージ・R・R・マーティンという人は子供だからとかメインキャラだからという理由で贔屓してくれるようなかわいい作家ではありません。死ぬときは誰であろうと、虫ケラのようにあっさり死にます。だからこそ、切実に願わずにはいられない。頼むからアリアとサンサはどうか助けてあげてくれ。あとブランも。この子たちまで死んだりしたら、あまりに寝覚めが悪すぎる。
近所にウィアウッドの木は生えてないので、代わりにそこらの桜の木にでもスターク一家の家内安全を祈っておいてあげようと思います。なむなむ。

また、第三巻ではあのダークホースがついに下克上のために動き出しました。恩を仇で返すか、シオン・グレイジョイよ。乱世だなー。まだはっきりと描かれてはいないものの、どうやらシオンの狙いはあっち方面らしいです。あっちですあっち! これは非常に雲行きが怪しいぞ。ロブ シキュウ カエレ ブラン キキ セマル! ホーダー! ホーダー!

大変だ大変だ。大変なまま、文庫版第四巻につづく。ホーダー!


─────
[ニコニコ] 逆転裁判 ―The Hell Song―
これは熱い!! 逆裁ファン必見の燃え系PV。低画質なのが惜しい。

[画像] Mathias Verhasselt氏のサイト
SFっぽい風景画やメカ絵いっぱい。

SFワールドコン2007@横浜 企画出演者リスト
国内外の著名なSF作家がずらっと。T.チャンとかL.ニーヴンとかD.ブリンとかR.シルヴァーバーグとか。なにげにG.R.R.マーティンも参加者名簿に載ってたり。行ってみたいなあ。行かないけど。
[PR]
by umi_urimasu | 2007-08-22 23:19 | 本(others) | Comments(0)
「サウンドトラック」(下) 古川日出男
a0030177_22475954.jpg舞城王太郎に「ピンチランナー調書」みたいな話を書かせたら、あるいはこういう小説になるのかもしれないなあ。とふと思ったんですが、たとえとして適切かどうか自信はありません。古川日出男の小説を、「誰それの作風に似てる」という言い方で説明するのはとても難しいのです。
たとえば、やたら攻撃的な文体を使うスタイルに町田康や舞城王太郎に通じるものを見いだすことは、まあ可能かもしれない。でも文体そのものはまったく似ていないし、それ以外でも共通点は特にない。村上春樹が原点だともいわれるけれど、作品自体はやっぱり村上春樹とは似ても似つかない。饒舌のルーツをボルヘスやマルケスあたりに求めてもいいけれど、古川日出男のポップな部分はそういう枠にも収まらない。
「サウンドトラック」の中で、ヒツジコのもとに生まれも育ちもさまざまなダンス少女たちが結集して西荻窪独立戦争を起こすにいたる流れなどには、ポップというか、ある種ライトノベル的な思春期的全能感までもが表現されていたりします。こうなるともはや何でもありと言ったほうがいい。なかなか手におえない代物なのです。

どこかに適切な「たとえ」を使った古川日出男評をしている人はいないものでしょうか。「古川日出男みたいな小説をもっと読みたい」という欲望のはけ口を求めて、こういった「似たもの探し」をしようとしている人は、僕だけではなかろうと思うんですが。

古川氏はこのところ、かなりのハイペースで作品を発表しつづけています。さらに文章を書くだけでなく朗読ギグなんていう活動もしているようです。なんとアクティブな。のんびり読んでたらたぶん永遠に追いつけません。この生産力が頼もしい。
皆川博子と古川日出男と飛浩隆とイーガンとジョージ・R・R・マーティンがいれば、族長の初夏はあと十年は戦える!


─────
円城塔「Self-Reference Engine」と伊藤計劃「虐殺器官」を買ってきました。楽しみだー。ベスターの「ゴーレム100」は見つからずじまいでしたが。しょぼん。

ひぐらしのなく頃に 実写映画版キャスト
やっぱりアイドル映画でパンピー相手にひと儲け的思惑の産物なのかなあ?

[動画] Clip: Atomic Bomb
[動画] Atomic/Hydrogen/HE Bomb Compilation
核爆弾の爆発映像集。やばい怖すぎる。クラゲのようなグロテスクな美しさがあって、なんかもういろいろ耐えがたい。ヘタなホラー映画よりこっちのほうが素で怖いかも。

リメイク版「椿三十郎」 ft. 織田裕二
二の句がつげない凄まじさ。黒澤版とはまったく別の映画なんだし、気にしなければそれでいいんでしょうけどね。

若手イケメンで「風魔の小次郎」実写化
もう何が実写化されても驚かない。
[PR]
by umi_urimasu | 2007-08-17 22:51 | 本(others) | Comments(4)
「サウンドトラック」(上) 古川日出男
a0030177_9485223.jpg東京に破滅の足音がしのび寄る! 暗黒舞踏少女が学園の秩序を打ち砕く! 豚が滅ぶ! カラスが栄える! 犬は喜び猫駆けまわる! 現代神話をいらんと言っても押しつける! 日常言語ブレイカー・古川日出男の怒りの言霊を込めたアナーキック・バビロニアン・アドレッセンスノベルが今、おごそかに爆走を開始する。


もはや「古川語」としかいいようのないあまりに扇動的な文体と、ディテール主義をきわめながらも現実には絶対に起こりえない物語。どちらを期待する古川ファンにも、この作品は存分に応えてくれることでしょう。見ようによっては醜いとも取れる饒舌とアンバランスな構成のせいで読み手を厳しく峻別しそうな作品ですが、そういうところもまるごと含めて、僕はこういうごてごてした小説が大好きです。これはもう、「百年の孤独」に出会ったあのときからずっとそうです。我ながら一途だなあ。
無人島に漂着した幼い少年と少女は、保護されたのち兄妹として育てられた。音楽を「殺す」特異感覚の持ち主・トウタと、見る者の精神を「揺らす」ダンスの技を生得していたヒツジコ。二人は成長し、ひそかに都市の生活に溶け込んでゆく。一方、男と女、二つのジェンダーの間を自在に行き来するレニは、烏のクロイに出会い、〈傾斜人〉の棲むトンネルで映像の啓示を受ける。ヒートアイランド現象により熱帯都市と化した不法移民の坩堝の中で、三人の鬼子たちはそれぞれに、滅ぼすべき「敵」の姿を見い出しつつあった───。
というわけで、まあ、いつものように古川節が吹き荒れます。日常的な言語感覚に対して戦争でもしかけるつもりかといわんばかりな勢いです。ぶ厚い本のすみからすみまでびっちりとそんなテンションの語りが詰まっているので、文章の読みにくさによるストレスを厭う読者にとってはたまったものじゃないでしょうけれど。好きな人にとっては、これは麻薬にもひとしい快楽なのですよ。
特にヒツジコのダンスの描写は、日常風景のなかにおとずれる魔術的な瞬間を表現するにはもうこの文体以外ありえん、と思わせるほど。

やっぱこの人はとんでもない異能の作家だという確信を新たにしつつ、下巻につづく。

─────
[プチ書評] 『ゴーレム100』 (アルフレッド・ベスター/国書刊行会)
めちゃ面白そうでござる。読みたすぎるでござる。

WEB本の雑誌 【本のはなし】 作家の読書道
乙一、森見登美彦、町田康、古川日出男、恩田陸、伊坂幸太郎、東野圭吾、他多数。あとでちまちま読む。

─────
ひぐらし実写映画化決定て。アホスww
[PR]
by umi_urimasu | 2007-08-12 09:58 | 本(others) | Comments(0)
「屍の王」牧野修
a0030177_8333146.jpg「読み手を怖がらせる」という明確な意図をもって書かれた純然たるホラー小説。「傀儡后」とちがい、ホラー耐性のない読者でも「これはこれで見ようによっては綺麗かも」と思えるような救いの余地は、この作品にはまったくと言っていいほど残されていません。もちろんSFっ気もありません。血だの膿だの蛆だの蝿だの、生理的にやばげな連中が「これぞ我が領分」とばかりにどろどろぐちゃぐちゃトグロを巻いている感じ。ひぐらし程度のソフトなものでも狼に睨まれた子兎みたいになってしまう僕にとっては、かなりハードルの高い小説でした。峻険なりホラー道。
愛娘を通り魔に惨殺され、生き甲斐を失って落ちぶれた元エッセイスト・草薙の元に、旧知の編集者から小説の依頼が舞い込む。だが「屍の王」と名づけたその小説を書き始めたとたん、彼の読者を名乗る謎の男から奇怪な電話がかかり始めた。作品にかかわる人間が次々と怪死を遂げ、自らも悪夢に苛まれながら執筆をつづけるうち、草薙は己の記憶がまったくの偽物であることに気づく。失われた過去を探して現実とも幻ともつかない田舎町に迷い込んだ彼が、恐怖の果てにたどり着いた真実とは……。
ホラーに馴れた人から見ると少々ありきたりに思われそうな、日常から怪奇への転落のストーリー。日本神話を下敷きにした現代版の「黄泉くだり」ネタも土俗系ホラーでは定番みたいなイメージがあり、独創性という意味ではやや弱い気がします。とはいえ、僕はその「定番」すらほとんど読んだことがないので、そもそも比較評価する資格もないんですが。
こういうのをホラー好きな人はどのあたりに位置づけするんだろう。

──────
余談。作中でもうひとつの「屍の王」の著者として紹介される伊佐名鬼一郎という作家は、どうやら実在した人物らしいです。自殺したってのも事実だとか。もし最初からそうと知っていたら、僕はこの作品をさらに怖く感じるはめになったでしょう。知らなくて幸いだったよ。
[PR]
by umi_urimasu | 2007-07-23 08:56 | 本(others) | Comments(0)
「太陽の塔」森見登美彦
a0030177_7452726.jpg天賦の言語能力によって非モテ京大生の大いなる妄想世界を文章化した、痛々しくも面白おかしい半現実/半幻想失恋小説。百年遅れてきた明治の文豪かおまえは、とツッコミたくなる古風な文士調でいつ果てるともなくつづく自分語りがついに尽きても、結局そうたいしたことは起こらない。まるで投げっぱなしの空気投げ。だがそれがいい。
これは笑える。あまりのスケールの卑小さにわが身を顧みて笑わずにはいられない。
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。
しかし全編にあふれるユーモラスな自虐は、人一倍傷つきやすく自尊心の強い青年の煩悶の深さをカムフラージュしようとする必死の迷彩でもある。愛する人から永久に拒絶された事実に向き合い、その悲しみを受け入れるのにほとんど全身全霊をかけて妄想と奇行のかぎりを尽くさなければならなかったとは、この主人公、いったいなんというナイーブなおのこのこ。
これは泣ける。あまりのいじらしさにわが身を顧みて目頭を押さえずにいられない。

何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
そして、まあ、おそらく私も間違っている。
君よ知れ、たとえ喪男であろうとも、否、喪男だからこそ美しく終わる恋のあることを。むろん妄想の中の話だが。妄想して何が悪いか。 妄想なめんなよ。

ガラスの心臓をかばいながら冷酷非情な現実に抗いつづける若者たちのアンセムとして後世に語りつぐべき珠玉の青春小説、第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞、定価よんひゃくえん。しんちょうぶんこ。
おすすめですー。

ちなみに森見登美彦氏のはてなダイアリーは「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」。才能の無駄づかいとはこのことだ。タダで読んじゃっていいのかなこれ。
[PR]
by umi_urimasu | 2007-06-19 07:50 | 本(others) | Comments(0)