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「忍法さだめうつし」荒山徹
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a0030177_21291914.jpgおや、これは荒山徹にしては少々穏便な……と思っていたらガンダムとガメラが出てきたでござる。何を言ってるのかわからねーと思うが以下略。
最近、ようやく理解が実感に追いついてきた。この人は、「まさかそこまでバカげたことを本当に書くはずがない」と誰もが考えるバカげたことを「絶対に書く」人なのだ。

戦国時代や江戸時代に舞台をおくことの多い荒山作品ですが、本作はちょっと珍しく、鎌倉~室町時代を扱っています。当時の朝鮮半島は高麗末期~李氏朝鮮初期にあたり、特に王朝の変わり目では政情が安定せず、暗殺や粛清が横行していました。このころの日韓史における最大のイベントが、二度の元寇、およびその後盛んになった倭寇の跳梁です。ここに収録された四作品は、そうした国際的ないがみあいの歴史に日韓両サイドのさまざまな史料から光をあてつつ、その根底に流れていたであろう民族感情──ありていにいえば、民族的優越感ゲーム──を描き出そうと試みています。
しかし、こんな1000年オーダーでの近親憎悪という度しがたいものがいったいなぜ生まれてしまったんだろう。地理的にきわめて近く、海で分断されていて、しかもすぐ隣の超大国に対する立場が微妙にちがう、とかいった「立地条件」にも関係があるんだろうか。う~ん。めんどい。

ちなみに作中の小ズルすぎる朝鮮像は、いうまでもなく荒山徹ならではの高度にねじくれたツンデレ表現であって、荒山氏自身が無類の朝鮮文化好きであることは歴史文献の半端でない読み込みぶりからも明らかです。好きすぎて思わずいじめちゃうなんて、まるで素直になれない小学生ですね。ハハハ。愛いやつめ。

忍法活劇としてみるなら、本作はそれほど派手な内容ではありません。剣豪や忍者の活躍もじつはあまりありません。忍法妖術の中にはひどい(←誉め言葉)ものもありますが、普段の荒山徹の作風からすれば、比較的おとなしい方だと思います。それよりも特徴的なのは、時間を越えて歴史そのものに干渉するタイプの術の登場により、史実と虚構の混ぜ方が複雑になってきていることでしょう。新妖術「溢以死部隊」と「忍法さだめうつし」、これらはどちらも歴史伝奇的ツールとして非常に便利なもので、「処刑御使」ともども今後の作品に使いまわされていく可能性があります。あまりに便利すぎるので、使いすぎを心配してしまうくらいです。まあ、荒山徹のことだから心配無用だとは思いますが。どうせこちらの予想のはるか斜め上を行かれるに決まってるんで。

以前どこかで聞いた話だと、山田風太郎は忍法帖シリーズにおいて「一度やった忍法は再利用しない」というルールを自らに課していたとか。同じパターンにたよることで自作のコピーを作ってしまわないための予防策だと考えれば、もっともな逸話です。荒山徹の場合は、ひとつの術を複数の作品に使いまわすことで別々の物語どうしがつながる面白さがかなり大きいので、むしろ積極的に再利用してもらったほうがいいような気もしますが。

余談。
朝鮮妖術で過去へも未来へも行き放題、ということになると、せっかくだから柳生メンバーもタイムトラベルさせてみたいものです。柳生一族を歴史から抹消すべく時間遡行した処刑御使に対し、日本の剣豪たちも同じく妖術で時を越えまくり、剣聖上泉伊勢守、疋田ぶんごろう、ジンゴイズ伯爵、石舟斎、柳生三兄弟らが一堂に会して、足利義輝の御前試合で朝鮮花郎剣士団と全面対決。とかいうヨタ話を妄想した。アホらしい。でもお祭りみたいで楽しそうではある。誰か、荒山設定準拠で「やる夫の柳生ターミネーター」みたいなオリジナル歴史伝奇を書いてくれる物好きな方はおりますまいか。

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小川一水、十巻計画の新長編「天冥の標」(てんめいのしるべ)第一巻脱稿
「西暦2803年、惑星連合の臨時総督に統治された植民地で始まる話です。ただの宇宙開拓史ではなく、多数の勢力の絡み合う複雑な話になるでしょう。」とのこと。やっほい。それにしても偶然なのか、「○○の○」型のタイトルが多い人です。「復活の地」、「導きの星」、「天涯の砦」、「時砂の王」。

[画像] Lovecraft memorabilia
クトゥルー神話関連の珍画像多数。となりのクツルがちょっとよい。この名状しがたき生物は、まだ日本にいるのです?

[ニコニコ] アイドルマスター 社長の奇妙なアイドル紹介 【ネタ☆MAD3rd】
ジョジョ+アイマスでいい感じ。シブイねェ…この一時停止ギミックまったく渋いぜ

谷口悟朗監督作など名作アニメが低価格DVD-BOX化
スクライドとリヴァイアスが共に15750円。これは逃せない。ここは買い込む場面です!

[youtube] "INFINITY" CITIZEN x WOW
無数の浮遊するブロックから都市のビルができていくという幻想的&未来的なCGアート風ショートフィルム?。妙に気持ちいい映像。なんとはなしにブロックの流れを見つめてしまう

エヴァ破、見てきました。話が王道すぎ、人物もいい子すぎて、予想以上に物足りなく感じてしまいました。もっと不健全な方向に突き抜けたものを見たい気持ちが強かったみたいです。でもそれはそれ、これはこれ、映像はおいしくいただきました。動きの遅さのせいか、アングル?のおかげか、巨大なものの巨大感が尋常じゃない。丹田あたりがケイレンする。怖い!でもきもちいい!
ループネタ?はちょっと、普通にやるだけでは今さらっぽいかもなあ。あとメガネがいらん子すぎて不憫だった。次ではもう少しちゃんと補完してあげてほしい。ループとかラブリー眼帯とかはブラフでもいい。

古川日出男 WEB小説 「4444」連載中 - 河出書房新社公式サイト
掌編を毎週更新。「gift」みたいにとらえどころのない話がいろいろ出てきそうな予感

SF作家、ヒューゴー賞とった回数ランキング
小説部門で、カッコ内がトータル受賞回数。5位以上はこうなっておりました。

   1位(10) コニー・ウィリス
   2位(7)  ポール・アンダースン
          ハーラン・エリスン
   3位(6)  フリッツ・ライバー
          ロジャー・ゼラズニイ
   4位(5)  ヴァーナー・ヴィンジ
          U・K・ル=グウィン
          マイク・レズニック
          マイクル・スワンウィック
          ロイス・M・ビジョルド
          ラリー・ニーヴン
          ジョー・ホールドマン
   5位(4)  ロバート・A・ハインライン
          アイザック・アシモフ
          ジョージ・R・R・マーティン

ま、なるほどなあ、という感じですか。高齢の人ほど多いのはあたりまえで、活動年数や作品数で割れば受賞率がわかるかも
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by umi_urimasu | 2009-07-15 21:43 | 本(others) | Comments(0)
荒山徹「柳生黙示録」第2回
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a0030177_23494985.jpgオランダ商船が長崎に持ち込んだ謎の積荷をめぐり、柳生一族と神聖ハポン騎士団の間で死闘が始まったことなどつゆしらぬ柳生十兵衛は、宮本武蔵気分で巌流島クルージングを満喫していた。そこへ突如わき出す奇怪な霧!爆発四散する軍船!出たな、神聖ハポン騎士団!忍術ファイト、レディーゴーッ!受けてみよ、忍法かなぺうむ!来るか、極東十字軍!?何やつ、黒い戦闘菩薩!?何を言ってるのかわからねーと思うがおれもわからない。荒山徹の最新作「柳生黙示録」は季刊誌「小説トリッパー」にてむちゃくちゃ連載中。

朝鮮いじりにかけてはもはや天下無双といってもよい荒山徹ですが、本作では「西洋」に目が向けられているのが新鮮です。「黙示録」というタイトルが示す通り、題材はキリシタン。時代は寛永年間、島原の乱が起こるころ。舞台は豊前小倉藩。十兵衛の敵となるのは島原の乱の指導者、森宗意軒。どっちを見てもキリシタンネタがいっぱいです。さらに太平洋を越えてマニラの話までからんできて、世界スケールに広がる可能性もあり。ただし荒山徹のことゆえ、あるいはストーリーそっちのけで朝鮮キリシタン差別ネタを掘りまくる方向に突き進んでしまうかもしれませんが。どうなるにしろ、先の展開がとても楽しみな作品です。早くつづきが読みたい。

「柳生黙示録」は「柳生薔薇剣」&「柳生百合剣」につづく続編で、前作ではシスコン廃人ニートと化していた十兵衛が、歳相応に貫禄がつき、仕事も一応まじめにやっています。えらいぞ十兵衛。これも柳生百合剣をきわめたればこそか。でもあれマジでやったらいくら剣豪でも死ぬよな。腎虚で。

史実では柳生十兵衛は一時期、徳川家光の機嫌をそこねたか何かで小姓をクビになり、柳生庄にこもっていたとされていますが、じつはその間、公儀隠密として日本中を飛び回っていた──というのは伝奇小説では定番のネタです。「黙示録」もその設定で書かれているんですが、伝奇はおいといて、まじめな話として実際には十兵衛は何してたの?という疑問については、「やる夫で学ぶ柳生一族」の神無月久音さんが考察されたりしています。
やる夫で学ぶ柳生一族(やる夫板版4)
ふむふむ。まあ、おとなしく新陰流の研究してたってのがやっぱり妥当でしょうなあ。

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伊藤計劃の遺稿「屍者の帝国」プロローグをようやく読みました。お、面白い……。むちゃくちゃ面白そうな世界だ。それだけにますます悔しい。

殺陣基本講座 刀の構え
剣豪小説によく出てくる正眼(青眼)や八双(八相)などの基本ポーズを写真つきで示した紹介ページ

偉人たちの偉大な一言 - ぶらりずむ黙契録 (冲方丁)
・「家のことは奥さんに全部任せている!」 モンテスキュー
・「ぐだぐだ言わずに、ページをめくれ」 ゲーテ
・「陛下、予算が足りません」 ワーグナー
・「やあやあ君たち、私がベートーベンだよ」 ベートーベン
・「わかってるんだ、君たちにも理解できないということは」 ウィトゲンシュタイン
偉大で、そして変な人たち。

[ニコニコ] 逆転裁判春香 第2話「逆転花嫁」1日目探偵A
待望の続編開始!前作よりもさらにクオリティ上がってるのがすごい。今回は本家の成歩堂も登場。検事は誰がくるんだろう

[画像] 20世紀初頭 日本の雑誌表紙、 書籍表紙
何だか知らんがとにかくよし

[ニコニコ] 珈琲を淹れさせてみたのだが・・・
やばい超かわいい。ヒューマノイドロボットKHR-2HV、近藤科学製。価格は90000円くらいだそうです。

大英図書館、19世紀の新聞200万ページ分をネットで公開
British Newspapers - Home
これはよい。日本もやってほしい
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by umi_urimasu | 2009-06-18 00:37 | 本(others) | Comments(0)
「八犬傳」(上・下) 山田風太郎
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a0030177_23125428.jpga0030177_23131024.jpg作家も人間なので、もてる時間は有限です。畢生の大作を書きあげてから死ぬ作家もいれば、不運にも道なかばで時間が尽きてしまう作家もいます。未完の原稿を抱えたまま、残り時間の少なさを自覚したとき、作家はみんな自問するかもしれません。というか、己に問わない作家はいないでしょう。「自分は何のために書くのか」と。

滝沢馬琴は膨大な日記を残していて、それによると彼の作家人生はお世辞にも幸福とは言いがたいものだったようです。意にそまぬ戯作の仕事に人生の大半を費やし、息子を早く亡くし、暖かい家庭も、金銭的余裕も、日々の楽しみをわかちあう知己もなく、失明した後は息子の妻の手を借りた口述筆記による執筆の日々。「南総里見八犬伝」はそうした不断の苦しみの果てに書きあげられたものでした。そうまでして、そこまでして、なぜ彼は書くのをやめなかったのか。
この苦しみの中に、しかし馬琴ははじめて、自分が「八犬傳」をかきつづけるのは、生活のためでも孫の未来のためでもなく、人に頭を下げずに生きるためでも現実から逃避するためでもなく、それどころか小説を完結させようという目的のためですらなく、ただおのれの内部からあふれてくる物語自体のためであることを知った。
最終章のこのくだりが、馬琴の生涯に風太郎が見た、究極の「書く理由」だったのではないかと思います。それはもう、ひとりでに湧いてきてしまうものだから、どうしようもないんだと。すべてを失ってもなお創作だけはやめなかった晩年の馬琴と、その言葉を書き取りつづけたお路、二人の力を合わせた八犬伝終盤の壮絶な執筆のありさまを、風太郎は「聖戦」と形容しています。同じ伝奇の道を歩むものとして、風太郎にも何か心中思うところがあったんだろうか。とか、ちょっと考えてしまいました。

以下ちょっと関連というか連想。
先日若くして亡くなった伊藤計劃のMGSノベライズ版に、こんな一節があります。
人間は消滅しない。ぼくらは、それを語る者のなかに流れ続ける川のようなものだ。人という存在はすべて、物理的肉体であると同時に語り継がれる物語でもある。スネークの、メリルの、ここに集う兵士ひとりひとりの物語を誰かが語り続けるかぎり、ここにいる誰ひとりとして消えてしまうことはない。
ここからは、「死んだあとに確かに残る何かを残しておきたい」という作者の強い思いが感じ取れるような気がします。それも彼の「書く理由」の一端だったのだろうかと。おそらく残された時間の少なさをずっと意識しつつ作品を書いていたであろう伊藤計劃のそれは、なんというか、重いですが。

まあそこまで切迫したケースじゃなくても、すべての本はつながっているで書いてたみたいに、言葉なり物語なりを介して他者とつながってる実感を得られると本能的(?)に安心する、というのはありますわな。誰かの書いたものがそれを読んだ人の中に残って、それがまた別の人に何らかの形で伝わって、というプロセスが延々とくり返されてきた結果として、今日の言葉の世界があるわけで、つまり言葉が存在すること自体が「君は一人じゃないよ」って証明してくれてるんだよ。みたいな。

ともあれ。馬琴の存在なくして山風の登場はありえなかっただろうし、もしかしたら荒山徹も出なかったかもしれない。そう考えると馬琴が八犬伝を書いてくれて本当によかった。ともかくサンキュー馬琴。

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[ニコニコ] smooooch・∀・ × ジャイアントロボ
九大天王がかわいくない梁山泊など敵ではないわ!十傑集もこれ、この通り
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荒山徹「柳生百合剣」を読み始めました。あいかわらずむちゃくちゃでよい。や~い、十兵衛のゆめもらし。
→ これ続編じゃん。しまったー。「柳生薔薇剣」を先に読むべきだったのか。不覚をとった。

山尾悠子を読む夜。 - Something Orange
絶筆ってふざけんなよバーロー。という趣旨のコメントを送ったのはわたくしです

[youtube] 映画『チョコレート・ファイター』予告編
見に行こうか迷うなあ。「マッハ」も「トムヤムクン」も基本的には大好きなんですが、痛快とか爽快とかいうレベルを通り越したあの超激痛アクションがちょっと怖い。見たい、でも痛いのイヤ。臆病者のジレンマ。

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伊藤計劃スレで非常に珍しいものがろだにあげられてます。2005年に伊藤氏が発表したメタルギアソリッド3の同人作品「フォックスの葬送」です。当事者が著作権を主張しない限りにおいて無償複製してもよいとのこと。

二次創作小説「フォックスの葬送 (A Funeral of FOX)」はMGS3の後日談にあたる物語で、東南アジアの密林を舞台にビッグボスとフランク・イェーガー(グレイフォックス)の戦いを描いたもの。「地獄の黙示録」のMGS版というのがぴったりな感じです。プロデビュー以前の作品ですが、すでに素人のレベルじゃない。

プロとして発表された作品群の尖りぐあいに比べれば、「フォックスの葬送」はだいぶ無難な内容です。でもこれが「虐殺器官」の原石なんじゃないか、これ磨きまくったらちゃんと虐殺器官になるぞ、と思わせるものがたくさん詰まっています。「すべての人が武装し独立した世界こそが理想郷だ」という、アウターへブンにつながる思想とかも、めぐりめぐって虐殺器官やハーモニーを生み出すためのこやしになっていそうだし。ほんとに芯からMGSっ子だったんだな……。
いっしょに収録されているイラストや漫画も、MGS好きがひしひしと伝わる丁寧なものです。まだ亡くなってから日が浅くて、読んでも笑ったりするより悔しさがぶり返してしまうばかりですが。
とりあえず、いろいろと感謝。
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by umi_urimasu | 2009-05-27 23:24 | 本(others) | Comments(4)
「処刑御使」荒山徹
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a0030177_189454.jpgこれはひどい。いや、もはや一周してかっこいい。
まともな神経をもった人間の所業とは到底思えない話なのに、呆れ果てて絶句するしかない荒唐無稽さなのに。なぜ、どうして、こんなにも美しく虚実のつじつまが合ってしまうのか。「もうこれ正史でいいんじゃね?」と一瞬でも思ってしまった僕は、たぶんすでに脳が冒されているのにちがいない。荒山菌という奇病の虫に。

黒船来航より三年後。若き長州藩士・伊藤俊輔は、海原に忽然と降ってわいた美女にいきなり命を狙われた。女は名乗った───「処刑御使」と。この一件を皮切りに、次々と身におぼえなき凶刃が伊藤を襲う。しかも怪異きわまることに、謎の刺客たちは絶命すると一瞬にして跡形もなく屍体が消えてしまうのだ。彼らはなぜ、一介の雑役夫にすぎぬ少年をかくも執拗に狙うのか?その理由とは、驚くべし、後の世において大韓帝国に災いなす怨敵・伊藤博文を、子供のうちに暗殺するためであった!時空を越えた暗殺者と守護者の間で、前代未聞の妖術戦が始まる。
うわあい。もう手のつけようがないよ!
先に朝鮮柳生の作品集を二つばかり読んで、柳生もので有名な作家ならそれ以外の話はちょっと地味なのかな、と思ってたけど甘かった。とんでもない誤解でした。柳生以上に自重してなかった。朝鮮妖術のはっちゃけぶりもますますひどくなっていた。中でも特に秀貌の妖術師・風伯のあやつる術がひどいです。その名を!その名を!その名を!

G(ジャイアント)・不動!! もとい、「大武仏」!パンチだ、不動!

まあそれはそれとして。
ハイテンションな伝奇活劇に加え、朝鮮史と日本史の「学校で教えてくれない」つながりを娯楽小説にあるまじき詳しさで披露してくれるのも荒山作品ならではの楽しみといえるでしょう。大韓帝国の排日派が伊藤博文を暗殺するほど憎んだわけを、単に国家の主権をうばわれたからという利害の問題だけに帰するのではなく、千年におよぶ歴史をひもといて理にかなった理由を再構築してみせる手際のあざやかなこと。
そういえば、劇中での印象的な科白にこんなのもありました。
「雪蓮のこの肉体を、大韓帝国とこそ思し召しください。どうか、大韓を慈しみくださいますよう……」
これは二国間にわだかまる怨恨の歴史を深く調べた作者ならではの、それなりに切実な感情が込められた言葉なのかもしれません。もし国と国とが損得勘定だけでむすばれるのでなく、もっとこう、ラブラブな関係になることができたなら、今ほど悲惨ではない歴史の可能性もあるいはありえたのではないかという。まあそれができないからこそ現実には戦争の歴史ばかりになってしまうんでしょうけど。それにしても地球人て仲悪すぎだよね。

伝奇の鬼才として山田風太郎に比べられることもある荒山徹ですが、いくつか作品を読んで、まったく別の面も見えてきたように思います。歴史への目線とかそういうところで、山風的な虚無感とはむしろ逆なもの、愛憎一如の念を煮つめたような熱さが、ほうぼうに出ているのではないかなと。ストーリー以外でも、ドラマの帰趨に影響しない朝鮮史のディテールをやたらこまかく書き込んだり、国のために命をなげうつ国士タイプの人物がよく出てくる(そして大抵非業の死をとげる)ことなどもそのへんに関係あるのかなあ、とか思っているんですが。インタビューとか読んでみたら何かわかるかな。

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万国『宇宙消失』博覧会 - 本とか音楽とかニュースとか
イーガンの「宇宙消失」世界各国のゆかいなカバーイラスト集。ロシア版はまさに腰くだけ。竹刀やめい。イギリス版の「かに道楽」も地味に深手。

仏のデベロッパCyanide,ファンタジー小説「氷と炎の歌」のゲーム化権を獲得
マーティンマーティン、頼むから本編の執筆だけに専念してくれろ。って言いたいけどあんまり急かすとまたキレるかもしれないので言わない。ところでそのゲームはゾンビにクラスチェンジとかできるのかね。

[ニコニコ] 【蝉丸Pの】ニコニコ仏教講座4・「仏壇あれこれ」【一問一答】
ニコ衆生の一部に大好評の電脳辻説法。蝉丸Pの生説法を聞いてみたいです

ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」がブログに
とりあえず僕は日本語版を読まなきゃ。でもかなりのボリュームで、なかなか手を出す決心がつかない

P・K・ディックの「流れよ我が涙、と警官は言った」映画化へ
いったいこのおっさんと警官どっちが主人公なんだよ?と、前半と後半のギャップに困惑しながら読んだ記憶があるなあ。SF映画としては地味な絵の、見た目普通の日常不条理ドラマっぽい感じになるかも

「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
買ってしまったでござる。文庫本としては普通ぐらいの厚み。そのわりに値段は1100円とやや高め。しかしこれでマキリップ分をたんまり補充できると思えば悔いはない。大事に読みます。

「チンギス・ハン」はどこの人? 韓中蒙で大論争 オンラインゲームめぐり三つ巴の“国際問題”に発展
そのどれでもないノッカラ義経説を推す
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by umi_urimasu | 2009-05-14 20:05 | 本(others) | Comments(0)
萩尾望都「ポーの一族」、他ヴァンパイアもの
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a0030177_15314872.jpgようやく、ようやく「ポーの一族」を読み終えました。これまで幾度となく読破を試み、そのたびに挫折してきましたが、ついにやりとげた。これが人生で三つめの、きちんと読了できた少女漫画作品です。とりあえずよくがんばった自分。

僕は昔からなぜか少女漫画が超苦手で、自分でもなんでここまでひどいのかと不思議に思うくらいの少女漫画アレルギーです。そんなに嫌いなら無理して読むなよといわれそうですが、少なくとも萩尾望都作品についてはただ絵柄が受けつけないだけで、ストーリーや語り口などはむしろ大好きなくらいです。なので簡単にあきらめるわけにもいかず、これまでも難儀してきました。できれば読みたい、でも絵の敷居が高すぎて読むに読めない。いかんともしがたいジレンマ。いったいどれほどの男性読者が、僕と同じような分裂の苦しみを味わっているのでしょうか。食物アレルギーなのにそのアレルギーをひき起こす食べ物が好物だという人も、こんな心境なんでしょうか。つらい境遇です。ぐぬぬぬ。

ちなみに、これまでの三つの読了作品のうち他の二つは「11人いる!」と「バルバラ異界」。いずれも萩尾望都作品。一般的な少女漫画ジャンルの有名な作品として、「地球へ…」、「ぼくの地球を守って」、「ベルサイユのばら」あたりに挑戦しようとしたこともあるんですが、まったく歯がたたず挫折しました。ほんとに、なんでこんなに病的に苦手なんだろうな。なんかトラウマでもあるのかな。

そんな僕でも「ポーの一族」をどうにか読み切れたのは、ヴァンパイアテーマであるという点も効いていたと思います。もともと伝奇は好物なんですが、やはりその中でも吸血鬼という題材にはちょっと特別な魅力を感じます。人目を忍びつつも人に混じらなければ生きられず、永遠の命をもつゆえに人とのかかわりをもてないという宿命的な孤独、はかなさ、寂しさ。そこにしびれるそそられる。ホラーへの苦手意識についても、読む範囲を広げるうちに少しずつ抵抗力がついてきました。いい傾向だと思います。

ヴァンパイアは皆、哀れな「百代の過客」なのだろうか
以前に↑こんなエントリを書いてからも、いくつか吸血鬼ものの小説を読みました。

a0030177_1535252.jpg特に気に入っているのはGRRマーティンの「フィーヴァードリーム」。それまでは南部アメリカでヴァンパイアものと聞くと「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のイメージが強かったせいか、なんかもうしっちゃかめっちゃかな印象しかなかったんですが、これはそれとはまったく異質な重量感満点の作品。こってり油っこく、どろりと頽廃的、活劇に冒険に犯罪、企業戦っぽいノリまであって、さらにそれらすべてを圧して蒸気船乗りの友情と執念が煮えたぎりほとばしる、異様にクソ熱い話になっとります。男の子なら燃えるぜこれは。

アメリカの料理というのは基本的に繊細な味を好む日本人にはあわないものだと思うんですが、フィーヴァードリーム号の上でアブナー老人がしょっちゅうがつがつ食べている食事のうまそうなことといったらないです。なんであんなうまそうなの。ありゃ異常だって。アメリカ人の食いもんがそんなにうまいわけないって。

a0030177_15375199.jpgダン・シモンズの作品集「愛死」の中の「バンコクに死す」というヴァンパイアストーリーも、なかなか衝撃的な作品でした。フェ○○オで人の血を吸うヴァンパイアの高級娼婦にエイズをうつして暗殺してやる!という暗い復讐の念にとりつかれた男の回想物語で、キモイ、エロい、グロイの三拍子そろった「怖さ」重視のホラー。こういうえぐい直球ホラー指向はやはりダン・シモンズらしいというべきでしょうか。
吸血鬼といえばだいたいヨーロッパが根城と相場が決まっているなかで、亜熱帯アジアを舞台にした湿度の高い吸血鬼ものというのも新鮮な切り口ではないかと思います。こういうのもっと読んでみたい。ここまでホラー度が高くなくてもいいけど。

あと、そろそろストーカーのドラキュラも読んどくべきかなあ。吸血鬼好き好きといいながらいまだに肝心の原点を避けてばかりいる不心得者にて。あああ。

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3,000ポンドでこんなの作るなよ、すごすぎる――ある名作の二次創作
例の指輪物語の自主制作映画、The Hunt For Gollum が本日ネット公開とのこと。アラゴルン(とガンダルフ)のゴクリ探索行については、原作でも「荒地の国を端から端まで探し回った」程度のあっさりした記述しかありません。どのように補完したか興味深いところ。

“ゲームの神様”遠藤雅伸氏がMMORPGに言いたい放題。「ドルアーガの塔」からケータイゲームまで
作って売る側のものの見方が面白い。「ゲームの本質とは何か」という質問に対する氏の答えは「インタラクティブな要素があって満足感が得られるものは全部ゲームだと思っている」。Google Earthもニコニコ動画もゲームだそうです。

事の重大さをあまり理解してない感じのする画像スレ
ワラノート 事の重大さをあまり理解してない感じのする画像スレ
笑。コラかと疑うようなのもあるけど

[画像] ドラゴンに授乳するデーナリス・ストームボーン
氷と炎の歌のあのシーンを描いたものらしい。あくまで小説に忠実に、頭もチリチリに

[ニコニコ] ほめ☆すた
[ニコニコ] 【第2回MMD杯本選】ホメ春香&やよいのスイーツ教室
狂気の沙汰ほど面白い。これも一種の不気味の谷?

[動画] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 予告編&特報映像 (YouTube
新キャラ、新エヴァ、新使徒、そしてアスカ来日や三号機戦のあたりも佐藤順一コンテでリメイク……それはつまり、ほとんどまるごと佐藤順一のターンということではあるまいか。久しぶりにサトジュン祭りの予感。これであと、絵に「序」のラミエル改ぐらいのインパクトがあれば言うことなしですが。

日本人の習慣の由来 「ビーバップ!ハイヒール」より
正しいのかどうか自分では判断のしようもないけれど、聞けば一応「なるほどそうかも」と思える説の数々。しかしひとつの疑問の解決はまた次の疑問を生み、由来の連鎖にはきりがないのであった

[画像] 世界のユニークな建築物
旧ソ連のなんともいえないレトロフューチャー?感が好き

小川一水「復活の地」漫画化 / 「第六大陸」コミック発売
細かいストーリーに縛られる漫画媒体よりも、イラスト集とかイメージボードみたいなものの方が個人的には嬉しかったかなあ、という気がしてきました。大友克洋並の描き込みで、異世界都市がぶっ壊れる図を見てみたい。

あの頃のSFで漫画向きの作品っていうと、マルドゥックスクランブルとかすごく漫画にしやすそうな気がするけど。意外となってないもんですね。

CAPCOM 「逆転検事」 WEB体験版
巧舟氏が制作にタッチしていないらしいと聞いて、物語やキャラクターの質的な変化を心配してたんですが、これをやってみたかぎりではキャラ描写に違和感もないし、逆転裁判らしさも健在な感じ。もしかしたら4よりキャラゲーとしては楽しそうかも

[ニコニコ] No,No,works.【アイドルマスタ-/テクノでコント】
ちくわ三本分の輝きをもつ練り物アイドル見参。それにしても凄いセンスだ。この人、プロなのかな

やばい処刑御使超面白い。止まらん。
→ ジャイアント不動デター!人目のあるところでマジ吹きしてしまった……
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by umi_urimasu | 2009-05-03 15:58 | 本(others) | Comments(3)
「柳生陰陽剣」荒山徹
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a0030177_19432074.jpgこの人の作品に対して、「これはひどい」はそのまま誉め言葉なんだろうなあ。いっそすがすがしいほどに突き抜けてた。普通の小説家はたとえ思いついても実際に書いたりしない。ヘタすれば正気を疑われる。でも荒山徹はためらいなく書く。「フィクションとして面白ければ何やってもいい」という創作姿勢の徹底ぶりは「覚悟のススメ」にも通じるものがあります。「あ、いいんだ。ここまでやっちゃっていいんだ」と。本当にここまでやっちゃって大丈夫なのかどうかよくわかりませんが、まあ小説が面白いので気にしないでおこう。

収録作の「恨流」でひとつ気になったのが、へその緒をたどって武寧王陵の玄室への霊的通路をひらく「胞衣返しの秘術」です。あれって、棺姫がやったのとまったく同じ術を友景もやったわけですね。ということは、「術の間はあさましき姿を晒しますれば」云々というのは、つまり友景も、棺姫と同じそういう状態になってたということになるんだろうか。想像したくない図だな。

「柳生逆風ノ太刀」では狂おしいほど一途な母の愛情を描いておいて、オチがそれかよ!この外道!と凄絶な結末に涙しましたが、じつは淀君の最期には明確な証拠がなく、生存説もあったことをあとで知りました。これをいい方に考えれば読後感も少し変わってきそうです。まあ外道な話であることには変わりないけど。

収録作の中でも特にお気に入りなのは「第十一番花信風」。人間から人間へ憑依(寄生)をくりかえして大奥に忍び込んだ妖術師を、あくまで秘密裏に始末しないといけない。でもいったいどうやって?という、制約つきのトラップ合戦がスリリング。こういう山風っぽいの大好きです。決闘場面も切なくて泣ける。でもってオチがまたひどい。

この作品集、荒唐無稽といえば全編そうなんですが、「八岐大蛇の大逆襲」あたりから相対的にカオス度が増していってる気がします。ベルサイユのばらとか、怪獣映画とか、チャングムの誓いとか。最後の「杏花の誓い、柳花の契り」などはまさに狼藉のかぎりを尽くしていて、征東行中書省の本拠が邪悪なカルト教団の地下宮殿みたいだったり、友景が朝鮮の歴史的偉人たちを片っぱしから惨殺しまくったり。ほんとむちゃくちゃやってます。韓国の人に読ませたらどうなるんだこれ。嫌いだからじゃないんです。むしろ好きすぎてこうなったんです。日本のいわゆる TSUNDERE がちょっと度を越しただけなんです。って言ったら納得してくれるのかな。

それにしても「十兵衛両断」と「柳生陰陽剣」の二作で「柳生面白い」との確かな手ごたえを得たのは僥倖でした。荒山徹からさかのぼって柳生ものや日本伝奇を読んでいくのに、五味康祐、隆慶一郎、柴田錬三郎の三人はいずれ押さえたい。もちろん山風ももっと読みあさりたいし。先は長いですね。

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[ニコニコ] 【蝉丸Pの】ニコニコ仏教講座【一問一答】
[ニコニコ] 【蝉丸Pの】ニコニコ仏教講座・其の二【一問一答】
[ニコニコ] 【蝉丸Pの】ニコニコ仏教講座~其の三【一問一答】
煽り荒らしの跋扈するネットライフに疲れた者はこの人のありがたい説法動画など見てしばしニコニコするがよい

FLASHゲーム:無限テトリス
こ、これは……ごく普通のテトリスのはずなんですが。このやるせなさはいったい何。

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a0030177_1853326.jpg映画「スカイ・クロラ」のDVD見ました。「上官が痴女」の噂は本当だった……。

機体のおしりにプロペラが付いてる戦闘機ってSFではおなじみだけど現実ではまず見ないよなあ、と思いつつぐぐってみたら、旧日本軍がとっくに開発してました。仕事はやっ。実際の震電と、アニメの散香。まんまだなこれ。
第一次~第二次大戦期のドイツ軍なども後世に残る珍兵器を次から次へ開発していたと聞きますが、戦争に負ける軍隊は珍兵器を開発する、というのはもう経験則みたいなものなんだろうか。というかむしろ珍兵器ばかり作ってるから戦争に負けてしまうのか。それならなんか納得できる。

[画像] 建設中の巨大テトリス
積み方ヘタすぎなのがかえっていい感じ。(alltelleringet.com

[画像] 木の上に造られた茶室「高過庵」
古田織部になった気分で風流なお茶が飲めるかも。でもちょっと怖い。いやかなり怖い

[ニコニコ] タグで動画検索 熊峰P
期待のほっこり動画メイカー

[画像] 名作ゲームブックの萌え化 悲劇的ビフォーアフター
ホビージャパンよりゲームブックが復刊! ゲームブックっていいよね!
挿絵なども容赦なくリフォームされたらしいです。ここまでやるなら、もういっそ「モンスター誕生」を萌え化復刻してみてはどうか。全部美少女モンスターに改変、ただし内容はそのままで。もちろん倒した敵は食うの。猟奇なの。
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by umi_urimasu | 2009-03-12 20:40 | 本(others) | Comments(0)
「綺譚集」津原泰水
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a0030177_2357172.jpg「心が折れる」小説とはこういうものだろうか。倫理と生理を総動員しての拒絶反応と幻想がもたらす快楽の板挟みによるサブミッション攻撃。津原泰水という人は、美しいものを醜く、あるいは醜いものを美しく表現する悪魔的な文才の持ち主なのだろうか。この異形のことばたちの前では、あの「妖都」もただの習作に思えるほどです。
しかもこの作品集、収録作15本のほぼすべてがそれぞれ異なる文体で書かれているという凝りよう。短編一本ずつに、ここまでするのか……。たまげ申した。

「天使解体」
幼女の死体を綺麗な写真が撮れるように「解体」しようとする男の壊れた精神を、純朴な語り口で描いた作品。圧倒的です。淡々とした描写と凄惨な光景のギャップが凶悪すぎる。ほんとうに嘔吐したくなりました。

「サイレン」
動物を殺すことで性的興奮をおぼえてしまう少年が、ふしだらな姉に祖父殺害を誘われる話。どろっとしたエロくささで窒息しそう。この手の昭和の香りゆたかな田舎幻想ホラーはまさにお手のものという感じ。

「夜のジャミラ」
級友にいじめられて自殺した少年が変わり果てた姿で友だちを楽しげに惨殺します。筒井康隆の「二度死んだ少年の記録」もそんなふうな話だったけど、こちらはあからさまに怪物的なイメージ。

「赤假面傅」
愛した対象の美しさを絵に写しとる代わりに生命力を吸い取って殺してしまう、呪わしい力をもって生まれた画家の数奇な生涯。いかにもポーや乱歩あたりが書きそうな怪奇譚です。やっぱり好きなんだろうなあ。なんとなく「ドリアン・グレイの肖像」も連想したり。旧字文体に半端でないこだわりが感じられます。

「玄い森の底から」
レイプされたうえに絞殺、そのまま放置され腐乱してゆきながら、書道と師匠への愛にささげた半生を追想しつづける女性書家。適度に壊れた文体がいかにも死者の思考っぽくて、それが滑稽でもあり哀切でもあり。小説における文体の威力を見せつけられました。

「アクアポリス」
海に浮かぶアクアポリスを見に行った日、貯水場に落ちて即死したのに、なぜかその後も毎日きちんと登校してくる女の子。戸惑う級友たち。ノスタルジックな田舎言葉が不条理な悲話になごみを添えています。方言は幻想小説によく合うなあ。

「脛骨」
とあるバンドマン、事故で切断された知人の女性の右足を偶然見つけて大切にもっていたが、持ち主に返す機会もないままとうとう数十年が過ぎてしまった。余命いくばくもなくなり、ようやく自分の右足に再会した彼女ははにかみながら言う。「若い骨ね。なんだか恥ずかしいわ」そんな寂しくも微笑ましい、ふしぎな後味の物語。グロホラー専門かと思いきや、こういう小説も巧みとは驚きです。

「聖戦の記録」
自然保護の名目のもとに公園で兎を放し飼いにしている「兎派」と、おれの属する「犬派」との諍いは日ましにエスカレートし、ついにおれの罪なき愛犬までもが犠牲になった。よろしいならば戦争だ。かくして筒井ばりのご町内バトルロワイヤル開幕。文体ももちろん筒井風、登場人物の名前はなぜか実在のタレントのパロディで、ヒロスエリョウコやスズキキョウカがめっためたに惨殺されちゃう。とことんえげつない。

「黄昏抜歯」
苛だたしい歯痛と共に陶子の脳裏によみがえってくる罪の記憶。命にかかわるわけでもない些細な苦痛の描写がどれだけホラーに近づきうるか実験してみた、とでもいうような、うーんなんだろうこれは。読むだけで歯が痛くなってきそうな鈍痛の描写が不快すぎます。

「アルバトロス」
白い兵隊たちに占領された南国の集落で、実の姉妹と、白人の将校と、夜昼の別なく睦事にふける少年のただれた日々の果て。全編ぐちょぐちょの超ドエロ。しかしそれすら上手いから困る。

「ドービニィの庭で」
ゴッホの絵の風景を庭園に再現するという執念に取り憑かれて破滅してゆく資産家と装飾家のグロテスクな愛憎劇。美のためならどこまで堕ちてもかまわないという狂気は「赤假面傅」にも通ずるものがありますが、その美とやらがほんとうに破滅に値する美なのかどうかも怪しく、しかも結局は劣化コピーでしかないというこちらの話の方がより陰惨でしょう。ちなみに↓これが
[画像] ゴッホ作「ドービニーの庭」
このおぞましい物語を読んだあとでは、もはや緑色の不気味なものがうごうごとざわめいている狂った絵にしか見えません。

「隣のマキノさん」
不可解が服を着たような怪人物・マキノさんとの、絶望的なまでに噛みあわないやりとり。こういうとぼけた狂気を軽妙に描いてのける手腕からして、じつはギャグ系も上手いっぽい。ほんとうに底が知れない人です。ちなみにマキノさんの名前の元ネタは牧野修らしい。

以下オミット。疲れた。それにしても、文体好きにとっては極上の買い物でした。満足感プライスレス。

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[画像] 過重積載
それでもくじけないトラック

[画像] 空中都市
エンディミオンとかに出てきそう?なSF風景

[画像] 水の高速撮影写真10点
美しき流体の世界

[画像] レゴブロックでつくったFSSの「破烈の人形」 (from y.m.g.t. Tumblr
うめー。少ないパーツで永野メカの特徴をよくあらわしてる。頭が太いのでちょっとAトールみたいにも見えますが

グレッグ・イーガン「暗黒整数」 SFマガジン2009年3月号に掲載
「ルミナス」の続編らしい。JGeek Logによれば
>「あっ!そんなおっきな数の計算しちゃらめぇ~!うちゅう壊れちゃう!」て話
だとか。楽しみだフヒヒ。ちなみに原著の電子版はフリーで読めるようです。英語強くなりたい……

物語への深い尊敬と強い期待について。――『魔法ファンタジーの世界 (岩波新書)』
著者はル=グウィンやマキリップほか多くの海外ファンタジー作品を翻訳している脇明子教授。昨今のファンタジーの過剰な商業化傾向への危機感なども書かれている本らしいです。いつごろからそうなのかな。ドラクエ以降?ハリポタ以降?
>比較的リアリティのある物語を読むことと、ファンタジーを楽しむこととでは、想像力の働かせ方が違うのではないか、というのが著者の主張
これも興味のある問題。準創造の効能、とかそんな感じかな。

[ニコニコ] コミュMAD アイドルマスターヤヨイ 『借金』
やよいがエスポワール号に乗ります。全編フルボイス&フルモーション、驚愕の13分間

米国Vizの日本SF小説翻訳レーベル、第一弾ラインナップ予告
おいおい、Haikasoru本気らしいぞ!もっとライトノベルっぽい志向のレーベルなのかなぁと勝手に思ってたんですがちがった。第一弾は小川一水「時砂の王」、桜坂洋「All You Need Is Kill」、乙一「ZOO」、野尻抱介「太陽の簒奪者」という顔ぶれだそうです。日本の現代SF(+α)は英語圏の人々にどんなふうに評価されるんだろう。これは楽しみな展開になってきました。いずれ飛浩隆や伊藤計劃もラインナップに加わりそうかな。
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by umi_urimasu | 2009-01-22 00:40 | 本(others) | Comments(8)
「十兵衛両断」荒山徹
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a0030177_2336469.jpgこの人こそ21世紀の山田風太郎だ!
というのが読了直後の偽らざる感慨でした。山風並にイカれた伝奇小説を書く現役の作家が今どきそうそうたやすく見つかるわけがない、とあきらめて探そうともしなかった僕が単にまぬけだったのですが。やはり何ごともすぐあきらめてしまってはいけない。面白い小説を探すための努力もまた然りであります。

荒山徹といえば有名なのが“朝鮮柳生”説。彼の作品のほとんどは、朝鮮の歴史文化に関する該博な知識を活かしたこの独自の設定群にもとづいて書かれているそうな。これは歴史伝奇ファンの間では基礎知識も同然のものらしいです。僕は浅学にして知りませんでしたが、読んでみて一発でその魅力の虜となってしまいました。というか爆笑した。これは狂気の沙汰だ。
「柳生新陰流が朝鮮半島にも伝わっていた」という発想だけならまあ、そんなに大したことではないでしょう。しかしこの人のは掘り下げの深さが尋常でない。柳生新陰流は徳川将軍家のオフィシャルな剣術として認められた流派であり、いかさま日本の発祥に疑いのあるはずもなし。ところが朝鮮からやってきた使者は、例の調子でウリの起源ニダーと言い張る。さあ困ったことになった。新陰流の起源いずれにありや?その秘密は、これはもうとんでもない真相なのですが、ここでバラすわけにはいきません。あの柳生十兵衛が、柳生宗矩が、まさかそんなことやあんなことに。むちゃくちゃすぎる。民明書房もまっ青だ。しかし、基点がむちゃくちゃなウソでもそこからきっちり筋の通った展開をする法螺話は、時としてホントの話よりもはるかに面白くなり、ホントの話以上に長く広く知れわたる。伝奇の魅力、その核というべきものも、あるいはそのあたりに本質があるのかもしれません。

なにはともあれ、山風とかが好きな人ならこれは必読の一冊でしょう。基本的にがっちり史実を踏まえたうえで、そのスキをうまく突いて伝奇成分を織り込むという王道スタイル。剣術バトルもめったやたらにテンション高い。そして投入されるアイデアの荒唐無稽さ、奇天烈さは限度知らずの天井知らず。あそこの毛が伸縮自在の刺突武器になったり、巨大な式神が怪獣ばりの空中戦をやらかしたりなんてのは序の口です。集団ノッカラノウムとかもうどういうこと!頭おかしいだろ!

かくて、僕も荒山徹作品をコンプするしかない仕儀と相なりました。次はどれを読もうかな。「柳生大戦争」もタイトルが振るっていて面白そうだけど、「魔風海峡 死闘!真田忍法団対高麗七忍衆」とかのあからさまな忍法帖っぽさも捨てがたい。まあいずれ全部読みます。

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テッド・チャンの最新短編「Exhalation」が(毎度のことながら)ものすごい傑作だというので評判になってるらしい。読んだ人うらやましい。Eclipse 2: New Science Fiction and Fantasy所収。安いな。でも背伸びして洋書買っても、すぐにSFマガジンとかに翻訳が載るだろうし……。おとなしく待つか。

複雑な状況を「物語」として理解する:DARPAがAIシステムを開発へ
ダーパが〈プリマー〉を作りそうな勢いと聞いて。連中はなぜあんな夢のある研究ばかりやっとるのか。

[ニコニコ] アイマス新年会~27時間無礼講SP~ - 番組表
外野なりに楽しく見物させてもらいました。参加者たちが心底楽しそうなのがよい
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by umi_urimasu | 2009-01-18 23:59 | 本(others) | Comments(0)
「山尾悠子作品集成」(途中)
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a0030177_21303166.jpgかれこれ2ヶ月近くも小刻みに読んでは休みをくり返し、ようやく半分消化。もうなんかいろいろだめになるほど美しいです。この世界に浸りきっていると、現実に戻るのが異様に億劫になってしまいます。これは癖になっちゃいけない気がする。だから一度に少量ずつ、付かずはなれずの間合いで読む。そうこうしているうちに月日は過ぎて、ふと気がつけば新作が出版されていてヒャッハー!という寸法である。

とはいえ、その新作も今年の夏には出ているはずだったのが、だいぶ怪しくなっています。折からの出版不況という事情も考えるとまったく楽観はできない。で、しかたなく似た感じの小説を他で探そうともしているのですが、「山尾悠子みたい」と評判になるような最近の小説家の噂というのは、これまたさっぱり見当たりません。これほどまでにいないものかな。というより、幻想小説というジャンルそのものが人気ないのかな。うーん。

備忘録。収録作品の初出リストをTomePage 平成12年6月の記事から転載。

 「夢の棲む街」(SFマガジン, 昭和51年7月号) (a)(b)
 「月蝕」(SFマガジン, 昭和51年10月号) (a)
 「ムーンゲイト」(SFマガジン, 昭和51年12月号) (a)
 「堕天使」(カッパまがじん, 昭和52年早春号) (c)
 「遠近法」(別冊新評, 昭和52年7月号) (a)(b)
 「シメールの領地」(SFマガジン, 昭和53年2月号) (a)
 「ファンタジア領」(SFマガジン, 昭和52年7月号) (a)
 「耶路庭国異聞」(SFマガジン, 昭和53年7月号)
 「街の人名簿」(SFマガジン, 昭和53年10月臨時増刊号)
 「巨人」(SFマガジン, 昭和54年1月号)
 「蝕」(小説怪物, 昭和54年1月号)
 「スターストーン」(スターログ, 昭和55年6月号)
 「黒金」(SFアドベンチャー, 昭和55年12月号)
 「童話・支那風小夜曲集」(奇想天外, 昭和55年4月号)
 「透明族に関するエスキス」(奇想天外, 昭和55年10月号)
 「私はその男にハンザ街で出会った」(奇想天外, 昭和56年10月号)
 「遠近法・補遺」 (b)
 「パラス・アテナ」(奇想天外, 昭和55年1月号)
 「火焔圖」(奇想天外, 昭和55年3月号)
 「夜半楽」(奇想天外, 昭和55年5月号)
 「繭」 (b)
 「支那の禽」(ソフトマシーン, 2号, 昭和55年)
 「秋宵」(ショートショートランド, 昭和56年夏号)
 「菊」(ソムニウム, 3号, 昭和55年)
 「眠れる美女」(綺譚, 5号, 昭和58年)
 「傳説」(小説現代, 昭和57年2月号) (b)
 「月齢」(NW-SF, 昭和57年12月号)
 「蝉丸」(小説現代, 昭和59年1月号)
 「赤い糸」(ショートショートランド, 昭和59年9月号)
 「塔」(小説現代, 昭和59年春季別冊)
 「天使論」(ショートショートランド, 昭和60年3&4月号)
 「ゴーレム」
(a) ハヤカワ文庫JA『夢の棲む街』に収録
(b) 三一書房『夢の棲む街 遠近法』に収録
(c) コバルト文庫『オットーと魔術師』に収録
余談。
「作品集成」の最初には佐藤亜紀、野阿梓、小谷真理による推薦文が載っています。そして本の最後の後記を読むと、山尾悠子からも、特に名指しで野阿梓へのメッセージが書いてあります。「もしも言葉が力を持つものならば、あなたの名が星月夜の砂漠を越えて届く百合の香の如くありますように。幸運が暖かい雨のように降りそそぎますように。新鮮な酸素を湧かす舟路がいつも共にありますよう、花降る巷をゆく時の足拍子がいつも軽やかでありますように。」だって。どんだけファンなんだよ。

余談2。
「童話・支那風小夜曲集」の中の小編「支那の吸血鬼(ヴァンピール・シノワ)」は、中国の吸血鬼のけだるい恋物語。この吸血鬼はキョンシー映画みたいなやつじゃなくて、むしろドラキュラ伯爵のような貴族的なイメージで、とてもいい感じです。中華吸血鬼いいなあ。でも日本ではあまりフィクションの題材にもされてないような。ちょっともったいない気がする。伝奇的にもおいしそうなんだが。実際にやってるのって菊地秀行ぐらい?

備忘録2。山尾悠子スレからサルベージ。
648 :名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/18(水) 17:30:42
★山尾悠子が選ぶ〈異界〉小説十選
ミヒャエル・エンデ「鏡のなかの鏡」
ウィンザー・マッケイ「夢の国のリトル・ニモ」
スティーヴン・ミルハウザー「イン・ザ・ペニーアーケード」「バーナム博物館」
ジュリアン・グラック「シルトの岸辺」
マルグリット・ユルスナール「東方綺譚」
ホルヘ・ルイス・ボルヘス「ボルヘスとわたし」
澁澤龍彦「高丘親王航海記」
マーヴィン・ピーク「ゴーメンガースト」三部作
イタロ・カルヴィーノ「見えない都市」
ソースは昔のbk1の特集ページで、山尾悠子のエッセイも載っていたらしい。読んでみたかった。

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『Phantom』アニメ化に際して
「ニトロプラスはホワイトベースだった」 by 虚淵玄。また虚淵監督でノベルゲーム作ってほしいです。ダークナイトみたいなやつ。

伊藤計劃「ハーモニー」ゲットしてぱらぱら。なんか文章にtexとかhtmlみたいなタグが入ってる。難読苗字の御冷ミァハは「みひえ」、霧慧トァンは「きりえ」でした。しかしなんともはや、ゆりゆりだな。

自分用: やる夫柳生@やる夫観察日記のまとめリスト
やる夫で学ぶ柳生一族 まとめ
やる夫で学ぶ柳生一族(その2)
やる夫で学ぶ柳生一族(その8・続)
やる夫で学ぶ柳生一族(その9)
やる夫で学ぶ柳生一族(その10)
キャラAAのチョイスも毎回楽しみにしています。春日局=ハルヒはいわれて納得
やる夫で学ぶ柳生一族(その11)
やる夫で学ぶ柳生一族 ~幕間~
柳生一族史おもしれえ。「十兵衛両断」に進む前の予習にもちょうどよさげ。
追加
やる夫で学ぶ柳生一族 外伝「新陰流の剣士たち」
やる夫で学ぶ柳生一族 外伝「新陰流の剣士たち」・続
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その12)
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その13)
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その14)
やる夫観察日記 やる夫で学ぶ柳生一族(その15)

[ニコニコ] 日本ののワばなし2
まっすぐとAnd You! さえ出せば何やっても許されると思ったら……だいたい許される

「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」6巻 重大発表
なにやら声優がどうとか。アニメ化?

太陽は資源のかたまり、技術さえあれば
いい感じで話が始まったのに……じ、自暴自棄になっちゃいけない

物語という嘘で真実に近づく 『電脳コイル』で日本SF大賞 磯光雄さん(アニメ監督)
>「物語を作るとは、いわば嘘をつくこと。しかしその嘘が、人が真実に近づくために機能すれば、それは真実を含んだ嘘。むしろ嘘が交じってないと、人間は世界を面白く認識できないのではないか。そんな物語の力を、私は信じています」
いいことを言う。12話がまた見たくなる。

Amazon.co.jp: ホアズブレスの龍追い人 (創元推理文庫): パトリシア・A. マキリップ
これは気になるなあ
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by umi_urimasu | 2008-12-18 22:31 | 本(others) | Comments(0)
「聖家族」古川日出男
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a0030177_1946359.jpgごろり。どすん。メメタァ。擬音であらわすならそんな本。書き言葉よりも肉声の語りに近い倒置文体はまるで弾丸のよう。枉げぬ、倣わぬ、まつろわぬ、これが俺の言葉だ文句あるか、と言わんばかりの熱い文章が、ニ段組730ページにぎっしりと刻まれています。物語は時系列や人物の視点が錯綜していて全貌の把握は困難なのですが、それでも読み終えたときの「途方もなくでかい世界に立ち会った」という満腹感はすさまじいものがありました。

この作品を、作者自身がキャリアの集大成にしようと意図して書いたかどうかはわかりません。でも実際のところ、わりと素直な「古川日出男総まとめ」になってるんじゃないかと思います。たとえばここには「13」のような、幻想にしては現実的な(マジックリアリズム的?)異能者たちがいるし。「ベルカ、吠えないのか?」のような異族の目線からみた歴史、動物たちの怒りもあるし。「アラビアの夜の種族」のようなどぎつさ、滑稽さもあるし。「サウンドトラック」」のような都市型アウトサイダーの描写もあるし。僕が買っておいてきちんと読み終えていない本の中からも、「沈黙/アビシニアン」のように大河サスペンスっぽい話やロマンスっぽい話、「gift」のように攻撃的でシュールで妙に笑える(?)話、「ハル、ハル、ハル」のようにスピード感あふれる文体――「ハル、ハル、ハル」の文体はもうほとんど「聖家族」そのままといってもいいかな。そんなふうに、それぞれの作品から何かしら「聖家族」に取り込まれている要素があるように思えます。やっぱり最初から、一切合財ぶち込んだらー!というつもりで書かれたのかもしれない。もっと細かく各作品と比較してみたらなんか面白い発見があるかも。

「聖家族」は伝奇・異聞集的な物語の性格上、各エピソードが断片的で、人物の総入れ替えや作中時間の前後が頻繁におこります。なのでぼんやり読んでいると何日もしてから「これ誰だっけ」「今どこだっけ」と混乱してしまうおそれが少なからずあります。そういうときは適宜公式サイトなどを活用して情報を整理するとよいのではないかな。と読み終わったあとで思ったが遅きに失した。とりあえず公式の人物相関図はけっこう役に立ちそうです。

読了後、作家の読書道: 古川日出男などをまた見ていたら、「言葉って体からできてくるから、体を鍛えたらどんな文体になるのかと思って格闘技をはじめてみた」という発言がありました。本当にやってたんかい。「聖家族」で異彩を放っていた戦闘描写も、あるいはそういう実体験が下敷きになってるんだろうか。

余談。将棋まめちしき。
「聖家族」の作中には、山奥の断崖の岩の上で将棋を指す場面が出てきます。そこでは「麒麟」「鳳凰」「猛豹」など、普段あまり聞かない駒が使われています。はじめは作者の創作かと思ったんですが、そうじゃなかった。昔の将棋には中将棋とか大将棋とかいろいろな種類があって、麒麟や鳳凰の駒も実際に使われていたらしいのですね。日本将棋のルーツは、もともと中国から朝鮮を経由して伝わったと長いこと考えられていたのが、最近では東南アジアにもっとよく似たゲームがあることがわかってきて、こちらの方が先に日本に伝わり広まったという説が有力である、という話も出てきました。
参考:
   山形県天童市 将棋資料館
   江戸時代以前の将棋
   盤上遊戯の世界

むむむ。ゲームの歴史も奥が深いのお。と感心したことである。
古代ゲーム史の研究ってのもなんか楽しそうですね。将棋やチェスは現代までほぼ原型を残したまま伝わっていて、文献もたくさんありそうだけど、歴史の闇に埋もれて忘れられてしまった幻のゲームとかがじつはたくさんあったりして。例の古代ローマのサイコロだって、祭祀用でないとすれば何かのギャンブルゲーム用のものだろう、ということまでは容易に想像できても、詳細なルールとなると専門家でもわからないらしいですしね。

余談の余談。サイコロ - Wikipedia を読んだら100面体ダイスとか球面ダイスとか何それってのがいっぱいあってびっくりした。奥が深い。

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「エンジン・サマー」ジョン・クロウリー 復刊
飛浩隆氏もおすすめのようなので読んでみる。TAPはあとまわしにしよう。

上橋菜穂子原作・アニメ「獣の奏者 エリン」(NHK教育)
1月10日~放送予定 全50回 制作:Production I.G。見るかもしんない

続々・桜庭一樹 読書日記【第8回】(2/3)
>皆川博子先生が先月、新作の取材旅行でアラン島に行かれたらしい
もうそろそろ80歳ぐらい?なのに。タフだ。アイルランドもので聖女の島みたいなガールズバトルで中世史っぽい話とか読んでみたいです

[画像] Trouble in Paradise
ちょっとグラン・ヴァカンス風?

アニメ映画「サマーウォーズ」2009年夏公開予定
時かけスタッフ。夏休み公開の青春アニメは夏休みの話にしないといけない決まりってやっぱりあるのかな

ニトロプラス原作「ファントム」TVアニメ化決定
監督・真下耕一。ノワールでヤンマーニなアニメができあがりそうな予感

スウェーデンの研究者、「人体入れ替わり」の錯覚実験に成功
電脳化しなくてもシムステイムみたいなものは実現できるってことか。
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by umi_urimasu | 2008-12-04 20:11 | 本(others) | Comments(2)