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「ブラッド・メリディアン」 コーマック・マッカーシー
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「ブラッド・メリディアン」 コーマック・マッカーシー_a0030177_19532151.jpg「純粋殺戮小説」とでもいったらいいのかな。人の命が砂粒より軽い西部の荒野、あらゆる善悪や倫理が削り落とされた世界で、果てしなくくり返される何の意味もない虐殺。それを淡々と眺める物語。こと残虐描写に関しては、マッカーシー作品の中でもダントツでしょう。

中でもインディアン狩り部隊の参謀格、通称「判事」のインパクトが激烈でした。やさしげに連れてあるいていた子供を次の瞬間いきなり殺す。わざわざ金を払って買いとった哀れな子犬もいきなり殺す。苦楽を共にした仲間もあっけなく殺す。別に正気を失っているわけではなく、高い知性と膨大な教養をそなえ、朗らかで饒舌で、生命力とカリスマに満ちあふれている。それでいて平気で殺戮に及ぶ。やむにやまれぬ理由とかそんなものが一切ない。小説の登場人物でここまで怖い人間には久しぶりに遭ったかも。

この恐るべき判事の信念っぽいものを彼自身が述べているシーンは一応あって、それによれば、
人間は遊戯をするために生まれてきたのであり、その遊戯で賭けられる究極のものは命である。なぜなら死は取り消し不可能で絶対的なものだからだ。殺すか殺されるか二つに一つの選択肢でどちらが選ばれるかは運命によって決まる。その運命を占う究極の遊戯が戦争である。戦争は二つの意思を試し統合する。ゆえに戦争は神だ。
まあだいたいこんなようなことを言ってます。なんかいまひとつ要領をえませんが。運命論にするのはいいとして、いったいどこまで本気の発言なのか。
僕としては、判事個人の欲求ないし行動原理は結局、「人殺しが好きだー!戦争してえー!」ってだけだったのかもしれないなあ、という気もします。内面描写が皆無なので単なる想像にすぎないけど。この人、もしかしてヘルシングの少佐の同類なんじゃないの。
諸君 私は戦争が好きだ
いいお友達になれそうでよかったね、判事さん!

「ブラッド・メリディアン」はコーマック・マッカーシーの最高傑作ともいわれています。でも個人的にはやっぱり「越境」や「「すべての美しい馬」みたいな路線の方が好きです。この作品は僕にはちょっと残虐すぎてメンタルゲージがあっぷっぷい。

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鬼才結集、3Dモデリングの梁山泊

浅倉久志氏=翻訳家 : おくやみ : 社会
この人がいてくれなかったら、僕も今こうしてSFを読んではいませんでした。祈冥福。

[画像] 大仏 ネタ的な画像
牛込大仏、仙台大観音。バブル時代の金と力の働きを受け、その二つの像は、往時茫々たる歳月の風雨に耐えて、はじめて彫られた時の威風堂々たる姿を今もとどめていました。

観光大仏、今や無用の長「仏」? 遠のく客、倒壊懸念も
管理者がいなくなって放置状態のものも少なくないとか。あと何十年か手つかずで残しておければすばらしい廃墟物件になりそうだけど、その前にみんな解体されてしまうかもしれない。惜しい。

「竹島御免状」荒山徹 | 角川書店
もうタイトルだけで吹く

文庫版の虐殺器官の解説を読んだらmixiの友人限定公開という生前の日記が紹介されててぐったりしてしまった。そらそういうのを読みたい人だっておるかもしらんけどね……。内容からしても、おそらくそれは故人のきわめて私的な心情を、ほんとうにやむにやまれず知り合いだけに吐露しようとしたものだったんじゃないかと想像します。もはや確かめようがないこととはいえ。なんつーかなあ。つい去年亡くなったばかりの人の作品解説に載せて、みんなで読もうよっていう、そういうもんなのかなあ。あとカレーうんぬんの話も。
by umi_urimasu | 2010-02-15 20:22 | 本(others)


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