またすごいのきた。「NOVA 1 書き下ろし日本SFコレクション」に収録、飛テイスト全開の google-twitter 言語SF。もう好きすぎて好きすぎてとにかくひたすら好きです。ノスタルジックな昭和の香り、液体金属的(?)なビジュアルイメージ、抑制のきいた官能性と残虐性。とてつもなくおいしい。今回もごちそうさまでした。
読ませるだけで人が死ぬ殺人言語をあやつる作家、言語によるカタストロフィ、というとネタ的には幻詩狩りみたいですが、読んだ感触では「自生の夢」は「象られた力」の系列に並ぶ作品のような気がします。ラストはなんとなくグランヴァカンスのうさぎのエピソードを連想。わずか一文で心をえぐられる。文章うまいなあ。 作中に出てくる思考言語化支援ツールは、twitterの超すごい版。それを蓄積する巨大情報検索ライブラリはグーグルのすごい版。これらのツールによってこの世のありとあらゆるものが言語化・関連付け・描写される世界の中では、情報知性体が生まれ、死んだ人間の仮想人格までもが自在に再現される。……とかいうところまでいくとちょっと空想的すぎるかもしれない。でも、仮に実際にそんな高機能な言語ツールがあったらどんなことが起こりうるか、それほどのツールをもってしても言語化できないものがあるとしたらそれは何か、っていう考えは面白そう。特に後者はその存在を忘れられてしまいがちな気がするので、こうしてちゃんと拾ってくれる作品は貴重かも。 たとえばあるテクノロジーが普及したせいで使われなくなり忘れられてしまった感情や意識の一部があった場合、それは消滅したわけではなく単に起爆待ちの状態にあるだけかもしれない。ひょっとしたらtwitterやgoogleに慣れすぎた人類は何かヤバイものをうっかり忘れてしまい、あとで困った事態に陥らないともかぎらない。技術革新の際の忘れものには気をつけましょう。 あと、余談だけどウェブサービスに知性が宿るという発想がらみで思い出したのがいつぞやのgoogle叛乱ネタ。 Rauru Blog ≫ Blog Archive ≫ 人工知能の叛乱 もしグーグル先生に自分で考える機能を与えたら、彼は人間をどんなふうに認識するのか。ひょっとしたらデータベースの質を下げるようなふるまいをするだけの「消せるなら消したいノイズ源」としかみなさないんじゃないか。それはもう雪風のジャムに近い存在だ。googleが思いつく殺人プランとかリアルに考え出すとかなり怖いです。 ───── [画像] Amazing Artwork from GRRM’s A Song of Ice and Fire 「氷と炎の歌」の風景画4点。キングズランディングの町並の圧迫感がいい感じ 「ムダヅモ無き改革」 公式ホームページ 監督:水島努、脚本:大和田秀樹。完成の暁には海外の視聴者の反応がどうなることやら グレッグ・イーガンの「アバター」評 少々皮肉なコメント。「話はお粗末だけど現時点でのCG技術の到達点を見たい人はどうぞ」ということらしい。 更新: VIZ Haikasoru 英訳日本SF 刊行予定タイトル 伊藤計劃「ハーモニー」が追加されました。できればギブスン-黒丸風文体はギブスン調に逆翻訳してくれるといいな。そんなことできるのかどうかわかりませんが。他に野尻抱介「ロケットガール」、林譲治「ウロボロスの波動」、乙一「夏と花火と私の死体」も。
by umi_urimasu
| 2009-12-16 21:20
| 本(SF・ミステリ)
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