年とるとライトノベルが読めなくなる
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なぜか唐突に、「たまにはラノベっぽいラノベでも読んでみるか」という波がやってきました。で、何冊か読みあさってみました。そしたら以前よりさらに苦手の度合いがひどくなっていて、自分の嗜好がこういうものから完全にかけはなれつつあることを痛感するはめになって意気消沈しちゃったという話。

a0030177_202498.jpg「少年テングサのしょっぱい呪文」 牧野修
典型的ジュヴナイルにグロコメディ風の味つけ。でも変態っぽさが全然ない。物足りない。牧野修なのに。ティーンズ向けだからって手加減しないで傀儡后や楽園の知恵やMOUSEみたいなギタギタの変態SFをやっちゃえばいいのに。というのは無責任な読み手の的はずれな要求であって、ラノベを読んで変態度が足りないと不平をいうのは、たぶん八百屋の軒先で魚が売ってないとごねるようなものなんでしょう。

a0030177_2024236.jpg「ANGEL+DIVE〈1〉STARFAKE」 十文字青
ハーレム、魔法、超能力、中二病の黄金方程式。忍耐心の折れる音が聞こえたような気がした。登場人物の胸ぐらをつかんで「いったい何が言いたいんだこの野郎」とどやしつけたい衝動にかられてしまう自分も大人げないですが。それにしても300ページ以上もこれといった大事件が起こらずキャラ紹介的な日常が延々とつづく展開は、ノリが合わない身にはきつい。いくらつづきものだからとはいえ、ちょっと悠長すぎやしないか。

a0030177_20243859.jpg「迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル?」 林亮介
現代日本を舞台にしたウィザードリィ青春群像劇。細かく作ってるわりにいいかげんな設定が気になりました。迷宮探索者の一日の収入が平均4万円で、死亡率が14%とかどういうことでんねん。仮にそんなのが一般的な職業として成立する架空の日本がありえたとして、わざわざ好んでそんな仕事につく人はたとえ死んでも完全に自業自得なわけで、いくら悲しそうに死なれても同情のしようがない。しかし、この程度の理不尽さをスルーできない人はそもそもラノベ読みに向いてないんだといわれればそれまで。

a0030177_20244934.jpg「化物語(上)」 西尾維新
「美少女とオタク漫才を楽しむ」というストレートな目的のみに特化した小説。なんだか妙な懐かしさを感じます。葉鍵時代の二次創作小説などに近い感触か。ダジャレ半分オタネタ半分のおしゃべり文章芸だけで何十万部も売れる本というのは出版業界広しといえどもほんの一握りのはずで、じつは相当すごいことなのかもしれない。個人的に戯言シリーズのころはまだ抵抗感も少なく読めていたような記憶があるけど、もう無理。まるで受けつけられなくなってる。

a0030177_2025044.jpg「オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White」 冲方丁
マルドゥック・スクランブルの見てくれをよりラノベ向きにした修正版という感じ。社会悪の犠牲になった不幸な少女たちが命がけの戦いをへてトラウマを克服し、残酷な世界で生きぬく意志を育てていく、というパターンは共通。ただし主人公は元気でパンクな不良少女風、衣装やガジェットもかなり狙ったデザインに。コスプレだパンツだと扇情的な描写がくどいのは話の背景のへヴィさにそぐわない気もしますが、そういうギャップこそがラノベらしさか。あと、ヴェロシティ文体はやっぱり読みにくいです。慣れるまでがたいへん。

a0030177_20481581.jpgこうしてほうほうの態でラノベ界から逃げ戻り、バランスをとろうと小川一水「天涯の砦」を読み始めました。そして驚愕。なにこの居心地のよさ!圧倒的な安心感!自分がこれほどまでにSF体質になりきってしまっていたとは。この傾向が今後自分の読書人生にどんな影響を及ぼすのか、漠たる不安をおぼえます。年をとるにつれて好きなもの以外読めなくなり、どんどん許容範囲がせばまっていくんじゃないかと。まあ今でもすでに十分狭すぎるくらいですが。これ以上狭くならないように、苦手なものでも我慢してときどき読むことを自分に課すべきかな。むむむむ。

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ハイルブロンの怪人 - Wikipedia
プラヴォ・ヤズディ - Wikipedia
ホントにあったウソみたいな架空の犯罪者ネタ。世界警察史うっかり大賞にノミネートしたい
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by umi_urimasu | 2009-11-27 20:52 | 本(others) | Comments(8)
Commented by ub7637 at 2009-11-28 00:54 x
迷宮街、オイレンあたりもダメですか。ANGEL+DIVEの一巻の感想は、まあ……。最後残り10ページになって、ようやくのイントロみたいなもんですし。
Commented by takano at 2009-11-28 01:37 x
はじめまして。
いつも参考にしていますが、今回の記事では、嗜好があまりに真逆で、夜中にえらい笑ってしまいました。
ラノベは……まあ確かに、萌えと中二設定のかたまりのジャンクフードですが、その大量のジャンクの山の中に時折、ベタだの荒削りだの言われながらも、問答無用に読者を引き付けて離さない、強い物語の力を持つ作品が見うけられます。その力は、今の日本SFが失って久しいものです。
その予期せぬ出会いを楽しみに、ラノベを読み続けています。
小川一水は確かにハズレがないですが、自分はそれだけでは足りないですね。
Commented by antak at 2009-11-28 08:38 x
はじめまして。
いやまぁ…正直傍から見てると、「嫌いなら読まなくてもいいんじゃないか」と思いますが。
というか設定に対して突っ込みたいときとか、ヌルさに関して一言物申したい
ときにラノベという定義を使用してる時点で向いてないんじゃないかと思われます。
物語の欠点とかを指摘するときに逐一そのジャンル自体にまで話を広げてご自分を納得させようとしてる時点で、
そのジャンル自体への強烈な忌避感がにじみ出ているように思えますが、どうでしょうか。
そういった視点で「ラノベっぽいラノベ」を読もうとするとそりゃ意気消沈するわな、といった感想です。
確かに、強烈であることを念頭に置いたキャラクターやインパクト重視の設定も
多いのは事実ですが(もっともこれはSFにも言えることだと思いますが)
私にとってはラノベもSFも時代劇も、ジャンルが違うだけで同じ物語なのですが…ね。
Commented by umi_urimasu at 2009-11-28 20:03
ub7637さん
今回トライしてみた中ではオイレンシュピーゲルが一番、僕でも大丈夫そうな感じでした。マルドゥックの続編が待ちきれなくなったら、次はスプライトシュピーゲルに挑戦してみるかもしれないです。

takanoさん
はじめまして。ライトノベルを楽しく読まれているようでなによりですね。僕も普段読んでいる本の中にないものを探したくて、ときどきこの方面に手を出すのですが、いつも玉砕してしまいます。

>その力は、今の日本SFが失って久しいもの
SFでは王道的な物語よりも新しい発想による驚きとかが重要視されることが多いので、必然的にそうなってしまったのかな、と思います。僕自身は主に後者を楽しみにしてSFを読んでいるせいか、日本SFにもさほど物足りなさは感じていません。すごい物語の方は海外SFの大物たちにおまかせということで。
Commented by umi_urimasu at 2009-11-28 20:12
antakさん
はじめまして。どうも僕の書き方がうまくなかったのかもしれませんが、「自分が楽しめなかったのを作品がダメなせい or ジャンル全体がダメなせいにしてしまおう」みたいなつもりは、金輪際ありません。僕が読んだごく狭い範囲の本がたまたまどれも自分の好みには合わなかった、それが残念だ、と言ってるだけです。
僕は実際ラノベにかなり抵抗がありますし、ただの感想としてネガティブな印象も正直に書きますが、そこにジャンル批判の意図なんかこれっぽっちも込めてないです。また、そんな筋のとおらない理屈で自分を納得(?)させる必要性も感じません。ラノベ嫌い=ラノベ批判みたいに短絡されてしまうのはちょっと心外ですね。
Commented by ub7637 at 2009-12-01 00:40 x
ちなみに、捕捉しておきますと、オイレンとスプライトはどちらも2巻からが本番というか、同じ事件を二つの別の視点、別の物語から追いかけるというクロスオーバーが醍醐味ですな。

あと、ANGE+DIVEは、一巻でハーレム、魔法、超能力を散らつかせておきながら、そのどれもが本質ではなく、最後は難病純愛ものの心情小説に落とすという斜め上っぷりが、ラノベのコードを理解して(なおかつ楽しめ)る人には面白いと思われ。(中二病ではある)三巻最終章100ページのために、残りの1200ページがあるという偏りすぎな構成なので、評価は三巻を最後まで読んで人と、それ意外ですっぱり分かれてますな。
Commented by ub7637 at 2009-12-01 01:00 x
あと、ラノベにかぎらず記号やコードに対して受容できるかは、人それぞれですからねぇ。逆に、時間封鎖の「地球が膜で包まれた」みたいな設定や、某アイスナインみたいな存在しない物質は、たとえ科学的に考察されてるからといっても、SF的価値観を持たない人間にとっては、「迷宮街」レベルに突っ込みどころ満載だと思いますよ。
Commented by umi_urimasu at 2009-12-01 23:24
ub7637さん
補足、どうもありがとうございます。シュピーゲルもANGEL DIVEも、続巻に手を出すかどうかは時の運とモチベーション次第ということになるかもしれませんが。今後ともいろいろおすすめなど教えてくださると嬉しいです。

> 記号やコードに対して受容できるかは、人それぞれ
基準として頼れるものが自分自身の感性と経験しかないというのが、むずかしいとこですね。僕の場合、迷宮街の平均日収は許せなくても、猫のゆりかごは科学的な厳密さを問うべき作品じゃないと自然に納得できてしまいます。科学風刺のための寓意的な設定だってことがはっきりしてるからかな…。
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