「越境」コーマック・マッカーシー
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a0030177_2153581.jpgこれはものすごい。圧倒されました。メキシコの荒野をひとりで放浪する少年の体験を、まるで自分自身の体験と錯覚しそうなほど、リアルというか実感のともなった孤独感がもうなにこのすごいのわけわからない。いつも思うんですが、古今の高名な小説家たちはどうしてただの文章で、文章だけでこんなとてつもない芸当ができるんだろう。まるで魔法だ。高度に練達した文章技術は魔法と区別がつかない。

あらすじはシンプルで、牧童の少年ビリーがアメリカからメキシコへ旅をしていろいろなものを見たりいろいろな人に出会ったりいろいろな揉め事を起こしたり、という話です。「ザ・ロード」や「血と暴力の国」同様、どことなく神話的な趣のあるロードノベルという感じ。

作中のサブエピソードの中で特に印象的なのは、「崩れそうな教会に住んで神に議論を挑む男」、「眼球を吸いだされて盲目になった元革命軍兵士」、「山の上に墜落した二機の飛行機を運ぶジプシーの男」、の三つです。どれも神話的というか、なにやらマジックリアリズムっぽいような、超時間的な幻想性があります。でも何を言わんとしているのかは正直よくわかんない。「世界の真の姿とはいったいなんぞや」という哲学の領域の話なんだけど、とりあえず論理的に議論を追うことはできても、 「言葉」でなく「心」で理解できたッ!とまではいかない。僕が日本人で神の概念とかがあいまいなせいもあるのかもしれないけど、そこまで厳しく自己と世界の境界を線引きしなければいけない切実さが、荒野という舞台の地形効果を加えてもいまひとつ実感できないようでして。哲学って苦手だ。まあ、この本はおそらくマルケス並に「一生のおつきあい」になりそうな気がするので、いつかそのうちわかるようになればいいかなあと。

「越境」は四部構成になっていて、毎回ビリー君がメキシコに不法侵入をくりかえしてはそのたびにどんどん世捨て人レベルが上がって孤独になっていくんですが、個人的に一番好きなのは第一章です。傷ついた狼をメキシコの山へ返してあげるために家を捨てて長い旅に耐えて、そしてあの残酷な結末。もうこの一章ラストが好きすぎて言葉にならない。文章の美しさも含めて、今まで読んだマッカーシー作品三つの中で一番気に入っている箇所です。いやはや美しい。

次はどれを読もうかしらん。「すべての美しい馬」にしようかな。

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もしも、関ヶ原で東軍が勝っていたら
歴史上、関ヶ原で西軍が勝ったことになっている架空の日本の2ch住民が「もし東軍が勝っていたら」と妄想するありさまを実際の2ch住民が妄想するというややこしいスレ。ちょっとSF的な逆転構造だ。なるほど、「高い城の男」っぽいかも。こんなふうに日本の首都が京都にあったり、徳川幕府じゃなくて豊臣幕府だったり、明治維新でそれを倒すのが伊達×最上の奥州藩連合だったりするような世界をガチで描き込んだ小説がもしあったら読んでみたいです。あるかなあ。

<ルー=ガルー>京極夏彦のSF小説、劇場版アニメ化 2010年公開
京極作品としては最大限アニメ向きな素材だと思うけど、それでも長々しい薀蓄やら雑学やらはまるごと削られて結局すっきりさっぱりしたものができてしまいそうな予感。

G.R.R.マーティン 「氷と炎の歌」第5巻 執筆状況
今までにできあがった部分が原稿枚数1100ページで、すでに「王狼たちの戦旗」に近い分量になっているとのこと。ちなみに「剣嵐の大地」で1521ページ。こんなペースでほんとにシリーズ完結まで行けるのか。近頃だんだん不安が現実味をおびてきて、気が気でない。

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by umi_urimasu | 2009-10-05 22:13 | 本(others)


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