「ザ・ロード」コーマック・マッカーシー/他
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最近読んだ本など。ゲームにかまけて長文感想を書くタイミングを逸してしまいましたが、どれもよいものでした。

a0030177_23284213.jpg「ザ・ロード」コーマック・マッカーシー
もしヘミングウェイが西暦2050年生まれだったら、あるいはこんな小説を書いていたかもしれない。文明崩壊後のアメリカをあてもなく彷徨する父子の旅をこまごまと、それはもうこまごまと描いた作品で、世界が「終わった」実感、未来のなさ、寂寥感がすごいです。徹底して心理描写を排除し、句点とかぎ括弧をまったく使わない文体が印象的。滅亡SF好きにはこたえられない逸品かと。分類としてはSFよりも主流文学の方に入りそうですが。


a0030177_2330492.jpg「血と暴力の国」コーマック・マッカーシー
いっぷう変わった犯罪小説。出来心で大金を盗んだ男にかかわった人々がそれを追う殺し屋の手にかかって次々と殺戮されてゆき、老保安官が社会の変化を嘆くという、一見ノワールのお手本っぽい話なんですが……。普通の悲劇形式の物語では、登場人物がどういう行動をするにしろ、なんらかの形で行為に対する帳尻合わせがなされることによってカタルシスが生まれます。しかしこの作品では無辜の人々がなんの意味もなく惨殺されて、ほんとにそれっきり。一切のフォローなし。純粋なる理不尽。まるでアンチ古典悲劇のモデルケース。「ひでえ!最悪すぎる話だ!」と心底ぐったりしたあとで、人間の生死についてひとしきり考え込んでしまうこと必定。


a0030177_2329362.jpg「柳生非情剣」隆慶一郎
徳川治世のもとで剣のみに生きた、太平の世の剣鬼とでもいうべき男たちの生きざまを描いた短編集。柳生厳勝、宗冬、義仙など、小説では十兵衛や宗矩にくらべて脇役的なポジションを振られることの多い人々が想像だにしなかった魅力的な顔を見せてくれてもうウッハウハでした。これぞ歴史伝奇の愉楽というもの。特に「跛行の剣」はシグルイの「出来る 出来るのだ」というあのナレが似合いそうな奇剣で、殺陣シーンがむちゃくちゃカッコイイ。あと、「柳枝の剣」は漫画「SAMON」の原作ですね。これは純愛悲劇なのに笑えてしょうがない話。仮に一石を現在の10万円とすれば、尻ひとつで100億円だ。家光スゲー。


a0030177_23291491.jpg「青年のための読書クラブ」桜庭一樹
「百年の孤独」+「マリア様がみてる」といえば、当たらずとも遠からじ。お嬢様学園社会を舞台にライトノベルっぽいおかしな名前をもつ少女たちがくり広げるドタバタの歴史を、その時代ごとの読書クラブ部員がノートに書き残して後世に伝えたクラブ史、という体裁の物語です。ノート方式で女学院ものでメタでミステリというと皆川博子の「倒立する塔の殺人」なんかも思い浮かびますが、あんなに優雅&淫靡な雰囲気ではなくて、コメディ少女漫画のパロディのような、一歩ひいた笑いのテイストを常に含んでいるあたりが桜庭一樹っぽい。


a0030177_23294490.jpg「オルタード・カーボン」リチャード・モーガン
いま読んでるやつ。サイバーパンク仕立てでオーソドックスな冒険小説をやってみた、という感じ。SF的な新味はあんまりなさそうです。設定を細かく作りこんだ近未来が舞台の「探偵もの」を読みたい、それ以上でも以下でもなくていい、というのが望みなら、十分に満足できる内容だろうと思うけど。クローン技術と意識のデジタル化によって肉体の取り替えが利くという設定は一応SF。あとはダイハードなタフガイがセックス、バイオレンス、ガンファイト、ガンファイト。なんというか、いかにも映画向きな内容ですね。実際に映画化の企画も進んでいるらしい。

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[ニコニコ] 中学星 予告編+本編
なんでかクセになって何度も見てしまう。厳密な秒区切りで進むあのテンポのせいか。

a0030177_2329042.jpg爪バトルが見たくて、久しぶりに映画館に詣でて「ウルヴァリン X-MEN ZERO」を観賞して参り候。まあ期待通りの内容でした。でもなんか妙に物足りない。で、帰ってからわざわざ第一作目を見直してしまいました。う~ん、満足だ。やっぱり一作目が一番好きだ。CGもワイヤーアクションも今の技術に比べたらてんでショボいし、話も地味だし、二作目以降と比べてそんなに突出した出来ってわけでもない気がするんだがなあ。自分の満足度の基準がどうもよくわからん。

[画像] シドニー・インターナショナル・フード・フェスティバル
各国の食べ物でそれぞれの国旗を表現した広告。BENTO BOX ARTにも通じるものがある

[ニコニコ] フロドが「キラメキラリ」を踊ったよ
アマンの地ではイスタリとのこうした団欒はよくあること

[画像] トールサイズ版「ニューロマンサー」の表紙
ついに新しくなるもよう。なんか白くなりましたな。サイバーというよりも歯車や内燃機関っぽいイメージか。
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by umi_urimasu | 2009-09-12 00:16 | 本(SF・ミステリ) | Comments(6)
Commented by ub7637 at 2009-09-12 11:35 x
最近だと、長谷敏司の『あなたのための物語』が面白かったですよ。帯の宣伝文が、「イーガン、チャンを経由し 伊藤計劃に肉薄する SF至上、最も無機的で最も感傷的な"死"の情景」「編集長として、世に問いたかった作品 前SFマガジン編集長 塩澤快浩」

twitterで大森望や円白塔も傑作評価してましたね。
http://twitter.com/nzm/status/3858703972 とか。
Commented by umi_urimasu at 2009-09-12 22:21
> 『あなたのための物語』
これは宣伝文の作家名の羅列で「またかよ」と思ってしまい、スルー中でした。いずれは読んでみたいですね。大森氏の評価は、好みの違いもありますが、セールストークっぽいと感じたときは参考にしないようにしています。twitterとかでもそうなのかわかりませんけれど。
Commented by enzi at 2009-09-17 07:08 x
『ニューロマンサー』はなんだか、人物が入っていない真鍋氏のイラストみたいですね。懐かしい。
Commented by umi_urimasu at 2009-09-17 22:43
いわれてみれば、ちょっとそういう抽象的なレトロっぽさがあるかも。いかにもな電脳空間の絵とかよりは風化しにくそうですね。僕はやっぱり旧版のほうに愛着を感じますが。
Commented by Mr.Parrot at 2010-06-23 13:47 x
たしか「ザ・ロード」映画化するんですよね。
滅亡SF好きとしては是非とも観たい!w
Commented by umi_urimasu at 2010-06-23 22:18
アメリカではたぶん去年に公開されていたかと思います。僕は映画館で暗い内容の映画を見るのにはかなり抵抗がありまして、見るとしてもDVDですね。
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