「TAP」グレッグ・イーガン
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a0030177_072846.jpg「へー、こんなホラーとかも書いてたんだ」という驚きは、しかしそれ以上の深い感動に育たず、「いつものイーガンおくれー」という欲求やみがたし。そういう意味では、一番最後の表題作がもっとも「いつものイーガン」的な作品でした。人間の定義を変えてしまうような技術と道徳の競合についての精密な考察。これよこれ。こういうのが読みたかった。

TAPのような完璧な言語が使えるようになったとき、感情や感覚に今まで同様ただ身をゆだねるだけでよしとするか、それともその仕組みのすべてを完全に解析・理解し、人間性などと呼ばれていたブラックボックスを今後一切なくしてしまうか。人間にとって、どちらがよりしあわせなんだろう。もしTAP言語が実際に使えたとして、さらに僕に子供がいたとして、「あなたのお子さん、どちらの言語で育てられますか」と聞かれたら、まず即答は無理だろうなあ。TAPインプラントがいつでもどこでも着脱自由だったら、あんまり悩まなくてもすみそうなんですけど。まあ、それはできないってあらかじめ作中で説明されてるんですけど。

ところで、イーガンという人はどうも、探偵とか空き巣とか潜入捜査とか、こっそり忍び込んで秘密を調べる的なストーリーに(必要以上に)したがる傾向があるみたいですね。今回の収録作品だと「TAP」と「銀炎」がそう。最近の作品だと「暗黒整数」もそう。昔の長編、「宇宙消失」や「万物理論」もそう。すぐには思い出せないけど、既刊の短編集にもいくつかあったかも。読者の方からすれば、正直イーガン作品にその手のサスペンスはあまり求めてないから体裁とかどうでもいいよ、っていう人が多いのではないかと思いますが。何かよほどのこだわりでもあるんでしょうかな。じつは大の探偵ドラマファンだったとか。ないよなあ。

以下おまけ。「TAP」で特に気に入ったくだりをちょっと抜き書きさせてもらいます。
「グレイスさんは、自分の頭の中に景色を書くこともできたんだ。どこの一千万ドルの夜景だっておそれ入るようなやつをね」
「なぜそうしなかったのかしら?」
「グレイスさんが“現実”をどう定義していたか、知っているかい?」
「いいえ」
「ほかのあらゆるものが存在しないと立証できても、それでも立証できずに残る一万ビット」
もうひとつだけ。
「もし、本をひらくたびに、書いた人のいっていることをなにもかも鵜呑みにしなくちゃならないとしたら、どう思う?文の途中で読むのをやめて、『これは……でたらめだ』って思えないとしたら。一語一語を自分の頭の中で論証する能力がなくなっちゃったら」
「そんなのはごめんだわ」
ミックはいった。「それがVRの未来なんだよ。もしTAPがなかったら」
これよこれ!いやあ、イーガンってほんとにいいもんですね。

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a0030177_2301632.jpg柴田ヨクサル「ハチワンダイバー」11巻。あいかわらずむやみにテンション高くて楽しい。エキサイトしすぎて互いに相手の頭をぶん殴り合いながら指すとか、盤を100枚一列に並べて100面指しとか、盛り上げ方がむちゃくちゃすぎて笑える。もっとも、プロ棋士になるとリアルでも、素人相手の50面指しや100面指しを余芸としてこなすぐらいの腕前は普通にもってるらしい。うへえ。現実が漫画のようだ。

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私たちの銀河には高々 10 以下の知的文明しか存在しない?
いうまでもなく地球文明はその10個のうちに含まれない下等文明です。とほほ。日本語訳記事にはミスがいくつかあってコメント欄で指摘されてる。
関連: ドレイクの方程式 - Wikipedia
はっきり決まらないパラメータばっかり。宇宙広すぎ萎えた…

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しばらく見ないうちに新作が大量に追加されてた。このホチキスならツンケンされても許せる。
そういえばずーっと昔、葉のホワイトアルバムか何かのキャラで虚航船団ネタをやってる絵チャ漫画みたいなのをどっかで見かけたような気がするんですが、あるいはこの方の作だったのかもしれない。思いちがいだろうか。記憶が非常にあいまいだ。
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by umi_urimasu | 2009-07-31 01:15 | 本(SF・ミステリ)


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