民明書房のウソに隠されたホントの話
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漫画「魁!!男塾」の中で「民明書房刊」などとしてしばしば引用される怪しげな故事伝承。あれは言うまでもなく明らかにフィクションです。しかし、じゃあ100%捏造なのかというと、「そうだ」とも言い切れない部分が意外とあります。たとえば「一文字斬岩剣」の由来については、
世に燈篭切りといふ 江戸時代 剣聖とうたわれし一文字流 神泉正宗が
家康に請われ 一度だけ御前にて石燈篭を一刀両断 世間を驚かせたといふ
以来三百余年 剣道界に於いて幻の業とされ これを極めたるものなし
余談ではあるが 不可能を可能とする意の「魂剣石をも斬る」といふことわざはこれをいふなり
   一九○五年 民明書房刊「剣史記」より
この神泉正宗というのはもちろん架空の人物ですが、モデルは剣聖と呼ばれた戦国時代の剣豪、上泉(神泉)信綱でしょう。この苗字と、名刀で有名な正宗をミックスしたような名前です。信綱自身は、記録では徳川家康にじかに剣術を披露してはいません。実際に家康に呼ばれたのは、信綱の弟子でもあった柳生宗厳(柳生新陰流の開祖)であり、宗厳が見せたのは灯篭切りではなく「無刀取り」という技でした。ただしこれとは別に宗厳が刀で岩を両断したという伝説もあり、奈良県の天乃石立神社には言い伝えの元になった一刀石が祀られています。あと、「一文字流」は架空の流派ですが、これは鎌倉時代の刀匠・則宗の作になる名刀の呼称「菊一文字」あたりから取ってきたのかも。また「石灯籠をも切った」という評判については、正宗と並び称される名刀・虎徹の切れ味がそうやって派手に喧伝されたりもしていたらしい。

こうしてみると一文字斬岩剣の由来もまったくの捏造ではなく、それなりに関係の深い実在の人や物の情報をつぎはぎして作った一種のコラージュではないか、という見方ができそうに思えてきます。他の民明書房ネタにも、同様の手法がひそかに使われている可能性は十分ありえる。だとすると、「民明書房の本にはウソしか書かれていない」と思っていた少年ジャンプ読者たち(含む僕)は、もしかしたらあまりにも迂闊な読み手だったのではないでしょうか。あの膨大なネタの中にじつはどれだけのホントの情報が隠されていたか、今の僕の乏しい知識では想像もつきませんが。

ちなみに、実際の歴史から借りたパーツを組み合わせて虚実半ばする物語を作り出すというやり方は、「伝奇」の正統的な手法です。つまり男塾は時代を先どりした学園伝奇だったんだよ!まさに先駆け!男塾。誰うま。

なお、上で挙げた新陰流の知識の大半はやる夫柳生シリーズのおかげで仕入れたものです。作者様に感謝。

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「インターネット文学」の可能性について
僕もまったく同じことを考えてまったく同じところで思考停止しましたね。
2chやニコニコ動画のコメントがたまたまストーリー性をもった群集会話文のような感じになることがあって、あの現象をうまく制御できれば小説っぽい何かが作れるんじゃないかなあ、とかちらっと考えたことはある。でもGetNicoNicomentでニコニコのコメントログを書き出してみたらカオスすぎて速攻で断念しました。

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by umi_urimasu | 2009-02-11 20:54 | まぞむ


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