「暗黒整数」グレッグ・イーガン
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天上天下数学無双でした。ノーパソ一個で宇宙滅亡とか、いったい何食えばここまで豪快なSFが書けるの。
ルミナスの事件から十年後、「境界」の彼方側と極秘裏に通信をつづけていたブルーノたちに、先方への領域侵犯を検知したとのメッセージが届いた。こちら側の何者かが、〈不備〉領域にまでたどりつくほどの計算を実行したためらしい。ブルーノはその犯人をつきとめ、彼方と此方のこじれかけた仲を修復しようと試みるも亀裂は埋まらないまま、ついに未曾有の危機が……。
隣人と意思疎通する唯一の手段が、同時に致命的な攻撃手段でもありえた、だから永遠に封じるしかなかった、というのはとても皮肉な話に思えます。なんと不幸なファーストコンタクトだったのだろうと。

でもこういうことは、あらゆるコミュニケーション手段に必ずつきもののリスクなのかもしれないですね。対話という行為が対話者を傷つける可能性は、対話をやめないかぎり決してゼロにはならないから。普通は言葉をかわしたぐらいで世界が滅びたりはしないのですが、相手がたまたま宇宙そのものをささえている数学を通じてしか話せないようなひとだったら、対話はいきおい緊迫したものにならざるをえないでしょう。突きつけあった銃口を手旗信号がわりに振って通信するようなもので、これは疲れるにちがいない。でももし数学が危なくてつかえないとしたら、他の手段はもうないのか。この宇宙に絶対安全なコミュニケーションの方法はひとつも存在しないのだろうか。あきらめないで探してみてはどうだろう。ひょっとしたらそれはそれでSF的に面白い問題にならないでしょうか。虐殺言語の反対で温和言語なんつって。

読んでてわかんなかったところ:
1、キャンベルの領地越えは実際にどういうことをやってたのか?ゲラルドトフートとやらのモデルでプランクスケールがどうこうって話をしてたけど、それがでかい計算にどう影響するんだっけ。
2、閉じた壁をつくるために境界面をなめらかにしたりとかいろいろしてたけど、形にどういう意味があるのか?数学定理空間の遠近や連続不連続って実際にはどういうことなの。
3、4096ビットの整数計算ってどのくらいでかいのか?最小サイズがプランクスケールだとして宇宙のサイズもぶっちぎれる?
ヒマと気力があったら再読したり調べたりするかも。

余談。
パニック・スペクタクルな展開もイーガンらしくて楽しめましたが、それはそれとして、〈不備〉の境界をひたすら数学的につつきまわしてるだけのような話も読んでみたかった。夫婦喧嘩とかはもういいや。
暗黒整数がとても理系な話だったので、TAPはもうしばらくいらんかなという気になってきました。ハードSFは肩がこるのお。

「暗黒整数」はSFマガジン2009年3月号に掲載されてます。

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by umi_urimasu | 2009-02-06 19:49 | 本(SF・ミステリ)


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