「十兵衛両断」荒山徹
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a0030177_2336469.jpgこの人こそ21世紀の山田風太郎だ!
というのが読了直後の偽らざる感慨でした。山風並にイカれた伝奇小説を書く現役の作家が今どきそうそうたやすく見つかるわけがない、とあきらめて探そうともしなかった僕が単にまぬけだったのですが。やはり何ごともすぐあきらめてしまってはいけない。面白い小説を探すための努力もまた然りであります。

荒山徹といえば有名なのが“朝鮮柳生”説。彼の作品のほとんどは、朝鮮の歴史文化に関する該博な知識を活かしたこの独自の設定群にもとづいて書かれているそうな。これは歴史伝奇ファンの間では基礎知識も同然のものらしいです。僕は浅学にして知りませんでしたが、読んでみて一発でその魅力の虜となってしまいました。というか爆笑した。これは狂気の沙汰だ。
「柳生新陰流が朝鮮半島にも伝わっていた」という発想だけならまあ、そんなに大したことではないでしょう。しかしこの人のは掘り下げの深さが尋常でない。柳生新陰流は徳川将軍家のオフィシャルな剣術として認められた流派であり、いかさま日本の発祥に疑いのあるはずもなし。ところが朝鮮からやってきた使者は、例の調子でウリの起源ニダーと言い張る。さあ困ったことになった。新陰流の起源いずれにありや?その秘密は、これはもうとんでもない真相なのですが、ここでバラすわけにはいきません。あの柳生十兵衛が、柳生宗矩が、まさかそんなことやあんなことに。むちゃくちゃすぎる。民明書房もまっ青だ。しかし、基点がむちゃくちゃなウソでもそこからきっちり筋の通った展開をする法螺話は、時としてホントの話よりもはるかに面白くなり、ホントの話以上に長く広く知れわたる。伝奇の魅力、その核というべきものも、あるいはそのあたりに本質があるのかもしれません。

なにはともあれ、山風とかが好きな人ならこれは必読の一冊でしょう。基本的にがっちり史実を踏まえたうえで、そのスキをうまく突いて伝奇成分を織り込むという王道スタイル。剣術バトルもめったやたらにテンション高い。そして投入されるアイデアの荒唐無稽さ、奇天烈さは限度知らずの天井知らず。あそこの毛が伸縮自在の刺突武器になったり、巨大な式神が怪獣ばりの空中戦をやらかしたりなんてのは序の口です。集団ノッカラノウムとかもうどういうこと!頭おかしいだろ!

かくて、僕も荒山徹作品をコンプするしかない仕儀と相なりました。次はどれを読もうかな。「柳生大戦争」もタイトルが振るっていて面白そうだけど、「魔風海峡 死闘!真田忍法団対高麗七忍衆」とかのあからさまな忍法帖っぽさも捨てがたい。まあいずれ全部読みます。

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テッド・チャンの最新短編「Exhalation」が(毎度のことながら)ものすごい傑作だというので評判になってるらしい。読んだ人うらやましい。Eclipse 2: New Science Fiction and Fantasy所収。安いな。でも背伸びして洋書買っても、すぐにSFマガジンとかに翻訳が載るだろうし……。おとなしく待つか。

複雑な状況を「物語」として理解する:DARPAがAIシステムを開発へ
ダーパが〈プリマー〉を作りそうな勢いと聞いて。連中はなぜあんな夢のある研究ばかりやっとるのか。

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外野なりに楽しく見物させてもらいました。参加者たちが心底楽しそうなのがよい
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by umi_urimasu | 2009-01-18 23:59 | 本(others) | Comments(0)
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