『十兵衛ちゃん2 シベリア柳生の逆襲』
デ、デカルチャー……。 ちょっと本気で感動しました。ここまでやれるのか、リミテッド演出って?! あなどってた。省エネなどというレベルをはるかに凌駕した、異常に洗練されたテンポに驚愕。原作・脚本・監督は大地丙太郎氏。気になるお人です。 素人でも容易に想像できることですが、アニメーションで人物に芝居をさせるのはとても手間のかかる作業らしいです。だからTVアニメでは特に、小さな動きなどを極力省略して可能な限り静止画ですませるという演出方法が工夫されてきました。日本のアニメ制作スタイルのネックともいえるリソースの貧困を補うために発展した方式なのでしょう。しかしこの作品に詰め込まれているのは、そんなネガティブな成因など微塵も感じさせないとぎすまされたテクニックの集大成です。 基本的な手法は、急加速と急停止のくり返し。それ自体はありふれた省エネの発想ですが、切れ味の良さが半端ではありません。めまぐるしいカット割りで勢いをつけ、絵、音、声、言語、実写映像、各種一発ネタ、その他考えつくありとあらゆるギミックを織り交ぜて畳みかけ、そして何事もなかったかのように一瞬でドラマ本編へと回帰し、悠々とストーリーを進めていく。省略と誇張によって作られるテンポそのものが快感となるように計算されているかのようです。かと思えば、いざという瞬間には今まで節約した分を投げうってダイナミックなカメラワークで動かしまくることも辞さない。 こうした対比の技術が、大多数の省エネ型TVアニメでも同じレベルで使われているのだとすれば、僕の目はフシ穴だったということになります。が、おそらくここまで技巧に長けた例はそれほど多くないと思う。 ただし、人によっては「めまぐるしすぎる」と感じるかもしれません。確かに、過剰なハイテンションギャグにちょっとついてくのがつらいかなー、という所もありました。個人の好みの問題ですけれど。 リミテッドアニメーション演出の肝は、「個々の場面そのものではなく、場面と場面との間の『落差』で見せる」という発想ではないかと思います。絵をフルタイムで動かせないなら動かせないなりに、「間」で見せる技を磨きあげるアイデア勝負の世界。そういう工夫の部分に面白みを感じたことは今までほとんどありませんでしたが、ここまで徹底されればいやでも目が行きます。結果として、この「十兵衛ちゃん2」は、個人的にとても新鮮で価値ある作品となりました。 ストーリーはシンプルな、いわゆる親子の絆の王道ドラマ。後半ではかなりシリアスに偏重していくものの、瞬発力のあるギャグのおかげで救われています。そして、描くべきところはそれなりに時間を取ってきちっと描いてくれました。最終回は泣けます。おそらく前作(『ラブリー眼帯の秘密』)を見ていればさらに泣けるはず。 時代設定は少し独特でした。明らかに現代よりも古い。携帯もポケベルもなかった時代、昔なつかしい昭和の田舎を舞台にしているようです。設定としては1970-80年代ぐらいかな。あんみつ屋とか裏山とか、皆で放歌高吟しつつ下校したりとか、バンカラガキ大将とかその手下共とか剣道部のヤサ男っぽい御曹子とか。これって、何かデジャヴを感じるなー。何だっけ。二階堂? ま、そんな感じかも。たぶん古き良き時代の学園コメディを意識したんでしょうかね。 なお、より的確なレビューはこちらのサイトに。本来は守備範囲外だった「十兵衛ちゃん」のような作品を見てみようと思ったきっかけもここ。自分で良質なアニメーション作品を探す根気は全くないので、こういうのがあると非常にありがたいです。
by umi_urimasu
| 2004-07-29 09:33
| アニメ・マンガ
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