「信玄忍法帖」山田風太郎
このエントリーを含むはてなブックマーク
a0030177_215386.jpg奇想にみちた強烈なエログロと、あまりに端麗な文章。山田風太郎の小説は、普通なら相いれるはずもないこの二つが完璧に融合しているのが特徴です。どす暗く、それでいてすがすがしい、美醜一如の極致ともいうべき異形の文章美。これがもたらす快感は山風ならではのもので、ほかではまず味わえません。僕の場合はそれが半分癖みたいになっていて、山風の文章を読んでいるだけでなんかもうやたらしあわせな気分になってしまい、ちょっと大丈夫か自分。と時折自分で自分が心配にならないでもないのですが。
武田信玄、死せりや否や!? 徳川家康の密命を受け、信玄病没の噂の真偽を確かめるべく甲斐に潜入してきた伊賀の忍者集団に対し、武田の軍師・山本勘助は主君の死を知られまいと七人の影武者を擁して立ち向かう。兵法と忍法の激突、虚々実々の情報戦を制し、天下に覇を唱えるのは果たしてどちらの陣営か。
忍法帖シリーズ中での「信玄忍法帖」は、実際の歴史との接点が常になく強調されている点が特色とされています。「甲陽軍鑑」や「甲乱記」などの史料がことあるごとに引用され、実在の人物に史実に忠実な行動をとらせるなど、いわゆる普通の歴史劇っぽい方向性が本作ではかなり強く出ています。そのせいか、あいかわらずのむちゃくちゃな忍法バトルをやってるわりに作品全体のトーンは不思議と落ちついているように感じられます。黒澤明の「影武者」とかにけっこう近い雰囲気かもしんない。

「信玄忍法帖」には風太郎自身自己評価でAを与えており、ファンの評価もおしなべて高いものの、甲賀や柳生や風来などに比べるとキャラのインパクトが弱く、キャラクター強度的な面でバランスを欠いているという批判もあるようです。ゲストキャラ的なポジションの上泉伊勢守や八重垣姫らの活躍に比べて、武田方のメインキャラたちがいまいち目立っていない、とか。個々のエピソードを区切ってそれぞれを楽しむような短編集的な読み方をすれば、さほど気にならないんですけどね。

登場した忍法の中で個人的に印象深かったのは、なんといっても「春水雛」。これは凄いです。今までに読んだ忍法帖シリーズの全忍法のなかでも一、ニを争うほどのアホらしさ!

しかし、このような山風忍法の滑稽さは例外なく惨死をもたらす滑稽さであり、もしかしたらそれもまた風太郎の死生観に根ざしたものなのではないか、と思うことがあります。バカだアホだと笑ってたらあっ死んだ、というあのうすら寒さ。人の死なんてくだらんもんだよ、というあの虚無感。考えてみれば、現実の世の中でも大抵の死はアホみたいな理由によってもたらされているのであり、こうして笑っている僕たちだっていずれは「なんでそんなアホなことがきっかけで」と呆れられるような理由で死んでゆく定めを負っているのです。バカだアホだと笑えばそれが自分に返ってくる、だからこそ決して美化されない死への視線。風太郎の忍法は、そうした「笑い」と「死」のむすびつきを重視しているために、あれほどまでにネタっぽいのかもしれません。

まあ、純粋に受けをねらって「圧迫祭りだイヤッホオォォウ!おっぱいおっぱい!」みたいなノリで書かれていた可能性も十分ありますが。

─────
「からくりサーカス」全43巻読了。カーテンコールで涙腺決壊……。絵柄はやっぱり苦手だけど、それをさし引いても大好きな作品になりました。特にパンタローネが好きじゃ。

─────
SFマガジン 2008年11月号
イーガン「グローリー」だけ読んだ。意識意識ってうるさくない比較的ふつうのファーストコンタクトもの。面白さも比較的ふつう。文明成長の意欲や目的みたいなのがメインテーマらしいんだけど、それよりナノマシンの針を光速で恒星に撃ち込んで現地人と同じ体をつくってコンタクトしたりとか、図形で表された数学の定理群の遺跡とか、ブラックホールの屈折光でメッセージ読むとか、小ネタの方がおいしそうな気がじゅるり。

「ニコニコ動画(秋)」にバージョンアップ、黒字化へ向けて広告枠を3.5倍に
サムネ表示数減、自動再生されない、動画タイトルやうp主コメが省略される。最悪だ。

[ニコニコ] 【名作Flashアニメ】 次郎長三国志 【H.264高画質】
初めてこれを見て以来、次郎長三国志を読もう読もうと思いながらいまだに果たせていない
[PR]
by umi_urimasu | 2008-10-01 21:05 | 本(others)


<< 「フリーランチの時代」小川一水 「からくりサーカス」をアニメ化... >>