永遠とも思える間降りつづいた長い、長い、とてつもなく長い雨がある日ついに止み、圧倒的なまでの静寂に包まれたとき、人はいったいどんな気持ちになるものでしょうか。
もし僕自身の身にそんな出来事が起こったとしたら、おそらく「しあわせ」に近い感情を抱くのではないかと想像します。ただし、それは単にハッピーとかラッキーとかいった気分ではなくて、寂しいとか悲しいとか虚しいとかやるせないとか、そういう微妙な成分も同時に含んでいて、肺の空気を全部吐き出して超特大のため息をつきたくなるような、そんな感情なのではないだろうかと。 もちろんそこまで神秘的なシチュエーションは現実にはまず起こりません。でも、もう少し現実的な例として、たとえば空からカエルが降ってきたとか、たまたま皆既日食を見たとか、台風の眼の中に入っちゃったとか、道の片側が晴れているのにもう片側には雨が降ってたとか、そのくらいのことでもいい。宗教や信仰とは関係なく、なにかしら奇跡的な出来事というものは、もしかしたらただ単に「きわめて珍しい」というだけで、時と場合によっては誰かの人生に消し去りがたい一瞬として刻み込まれてしまうほどの力を持ちうるのではないでしょうか。一生に一度あるかないかの出来事に巡りあうという体験は、願ってもできることじゃない。だからこそ巡りあえただけで幸運といっていい。しかしそれは同時に、自分の人生に「ある有限の時間の幅」としてのスケールを与えてしまう残酷なイベントでもありうる、みたいな。 ということを、本書所収の「マコンドに降る雨を見たイサベルの独白」を読んでいたらつらつらと考え始めてしまいました。マルケスが濃密なディテールを与えて描きだす現実と非現実の交錯、長い時間経過、村や大家族の歴史……これらはいつも、ぴったりした言葉を見つけられない強い感情を僕から引き出してくれます。でもそれが何なのかをきちんと説明しようとすると、結局こういうまわりくどい文章になってしまうのです。かといって、無常感とか孤独感とかいうありきたりな言葉では到底言いあらわした気になれない。何なんだろうなあ、あれは。 作品の内容からはほど遠い話になってしまった。でもマルケスについて書きたいなと思ってた話が書けたので今回はもうこれでいいことにします。よくないんだけど。全然レビューにも何にもなってないんだけど。 補足情報。 こないだ新しく出た新潮社版は「落葉」、および「ママ・グランデの葬儀」から「土曜日の次の日」が一緒に入って「落葉 他12篇」というタイトルになっているようですが、僕が読んだのは古いバージョンでした。リアリズムっぽい成分と幻想指向っぽい成分の配分ぐあいは作品によってまちまちという感じ。全体に死のイメージが強く、ブラックな味わいの作品が多めです。個人的にはやはり後半のシュールな作品群、「誰かが薔薇を荒らす」「天使を待たせた黒人、ナボ」「イシチドリの夜」とかが好みですね。表題作「青い犬の目」は異様な文体で書かれた夢幻的な作品で、インパクトは相当なものですが、わけがわからずなんかエロくさいなあ、というアホな感想しかひねり出せませんでしたうぐぅ。 あと、マルケス作品としては異色なのが会話文主体の「六時に来た女」。レストランのコックと娼婦が交わすとりとめのない会話の行間に、男の戸惑い、女の未練、殺人についての含み、とさまざまな情報がほのめかされています。この婉曲さはまるっきりマルケスらしくないスタイルだと思うんですが、どういうつもりでこんな書き方したんだろう。会話小説のテストとか? ───── 吉報2。絶対可憐チルドレン、アニメ化決定の由。ほどほどにいい出来だったらいいな。 ───── [ニコニコ] アイドルマスターアカギ - 闇に舞い降りた天才P 高木に電流走る…! [ニコニコ] IDOL M@STER SOLID 【Chapter005】前編 6:48の「?」米で吹かされた [ニコニコ] IDOL M@STER SOLID 【Chapter005】後編 堂々の完結。凄かった [ニコニコ] ちん刊アイドルマスターランキング 1月第1週 無限の才能を無限に浪費しつづける。それがちんこうPあちちゅーど [ニコニコ] 【総集編】 ブラックラグーン × ファンタ = ブラックファンタ ファンタCM系MAD。あまりのテンポの良さに思わずリピートしてしまう [ニコニコ] くまうた動画巡礼用リンク なかば自分用ですが。初音ミクやリンレン動画のクオリティインフレに疲弊した心をまぬけ演歌が癒してくれます。意外と中毒性高いなこれ。 ───── 凶報?1。ガンスリのアニメ第二期がかなりあわわな出来ばえらしい件。第一期の暗さが微塵もないとて前作ファンからは大不評の模様です。 http://kissho.xii.jp/1/src/1jyou23644.jpg ↑キャラ絵も激変。一期が好きなのでちょっと期待してたんだけど、これはきついか。
by umi_urimasu
| 2008-01-05 20:48
| 本(others)
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