日米合作のアニメ「バンパイアハンターD」を見て、原作小説とからめつつその感想を書こうとして、「自分は"D"という作品のどこが好きなのか」を説明しようとしていたところでぽろりと出てきた疑問です。
とりあえず、そのとき書いていたのは次のような文章でした。 "D"のシリーズは華麗なアクションや古典ホラーとSFのミックスが売りの娯楽作品であり、そうしたイメージでとらえられがちなのは当然です。しかし、それだけがすべてではありません。活劇が表の顔だとすると、その裏には必ず、人間よりもはるかに長い時間を生きる者たちの深い悲哀や諦観が込められています。ほとんど無限の寿命をもちながら、人と変わらない感情の生き物であるヴァンパイアやダンピールは、人間の敵とか味方とかいった区別を越えて「時の流れの中に取り残される」宿命を背負った悲しい存在なのです。僕がDシリーズを気に入ったのは、バトルやSF伝奇的な興奮以上に、この「永遠の旅人」的な寂しさが丁寧に描かれていたところに強く反応したからだったように思います。 そういえば「ヴェドゴニア」も人より長生きする吸血鬼の嘆きの物語ですね。「ヘルシング」にさえそういう成分は微量ながら含まれている(いたと思う、たぶん)。 あれ?不死の悲哀っていうのはもしかして、吸血鬼ものではあって当然の基本的なネタなんだろうか? と、いうのが経緯です。で、検索してみたらこんな記事が出てきた。 とある海外コラム「なぜ日本でヴァンパイアは優遇されるのか」 (お茶妖精) つまりキリスト教と神道・仏教の差、宗教的なバックグラウンドのちがいが日欧のヴァンパイアの扱われかたに影響を与えているというんですね。 ただ、この記事からだと実際に優遇されているのかどうかが判断しづらく、事実優遇されていたとしてその理由を宗教のちがいに帰するという見方がどれくらい妥当なのかも今いちよくわかりません。もちろんネタにマジレスって可能性も。なのでこの記事自体は参考程度にとどめおき、日欧のちがいはまた別の機会に考えることにして。 とりあえず目下の興味は、吸血鬼もののフィクション全般において不死ゆえの悲哀、彼らへのシンパシーといった物語要素がどのくらい定番的なのかということです。これはこれで、詳しく調べてみたら面白いんじゃなかろうか。 ……でも残念なことに、僕はもともとホラーが苦手で、国内外を問わずその種の小説や映画にほとんど当たってみたことがないのでした。なのでサンプルをたくさんあげて比較対照するってことがとてもすぐにはできない。したがってこの話は考察を始めすらしないうちに行き詰まりを迎えてしまいます。ヒドス。 とはいっても別にこのまま投げっぱにするつもりでもありませんので、気長に吸血鬼小説を読んでサンプルを蓄積していけばそのうち見通しが立ってくるだろうと楽観しています。もちろん、もし菊地秀行氏や荒俣宏氏に直接質問できたら「それは君こうだよ自明なことだろう」と言い渡されて即解決しそうな話ですが、まあそんな機会があるわけないし。 とりあえず吸血鬼ものの所有・既読リストを書き出してみます。○=不死の悲哀を描いている、×=描いていない、?=保留、未=未読、すなわち積み本。 ○ 「吸血鬼ハンターD」菊地秀行なんともいえんなあ。我ながらもう少し格調高いものを挙げられんのかと思いますが。ちなみに海外の作品については国内以上にまったく皆目知識なし。ちょっと検索してみて面白そうなのが見つかれば優先的に読んでみようかという程度です。ま、あくまで日々の読書の延長ですね。 (補足) 吸うか吸われるか -吸血鬼文学逍遙-(奇妙な世界の片隅で) 海外の吸血鬼系小説まとめ紹介。これはありがたい。参考にしよう。しかしジョージ・R・R・マーティンてほんとに何でも書いてるなあ……。 おすすめの吸血鬼アニメ(漫画、小説)を教えてください 主にアニメ、ラノベ、コミック。 吸血鬼を題材にした作品の一覧(Wikipedia) Vampires : Horror & SF - coco's bloblog 定番の名作からマニアックなものまで幅広いまとめ。書影付きなのが嬉しい。 ───── [ニコニコ] [PC] Oblivion - Shivering Isles 番外編 Morroblivion Balmora雑草生えすぎ [ニコニコ] 公安九課のばら【攻殻機動隊手書きMAD】 攻殻SACでベルばらパロ。想像以上のインパクト
by umi_urimasu
| 2007-12-15 22:06
| まぞむ
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