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「The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day」乙一
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「The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day」乙一_a0030177_18461527.jpgよくもまあ、文章だけでここまでジョジョっぽい雰囲気が出せるもんだなあ……。
小説形式であるにもかかわらず、ここにあるのはまぎれもなく「ジョジョの奇妙な冒険」の世界そのものです。原作の連載開始より20年、あのあまりに独特な作品世界を、同じ漫画形式ですら真似のできる人間はいなかったというのに。ジョジョのノベライズとして、現状でこれ以上を望むのは強欲というものでしょう。うむむ、乙一の精神の爆発力!認めよう!「本」のスタンドの思いつき、すばらしいものがあったことも認めよう!


設定やあらすじについては既にいろんなサイトで書かれているので省略して、キャラクター造形における原作とのちがいについて少し。
これに関しては、荒木飛呂彦があえて深く踏み込むことを避けた「共感を呼ぶ悪役」を物語の中心においたことが第一にあげられると思います。これにはいい面もあり、また微妙な面もあると思うんですが。
「The Book」の蓮見琢馬には、不幸な生いたちにまつわる明確な憎悪の理由と復讐の動機が与えられていて、彼は読者が心情的に共感できるタイプの悪役として描かれています。しかも復讐の対象が同情の余地のない悪党なので、よけいに琢馬に同情票があつまる構図になっています。このおかげでかつてなくウェットな味わいの新鮮な「ジョジョ」外伝が生まれたわけで、そのことは評価していいと思う。
でもその一方で、物語が求めた「かわいそうな悪役」というキャラ付けにしばられすぎたためか、蓮見琢馬は最後まで吉良吉影のように「普通さ」を裏返した圧倒的な怖さをまとうにはいたりませんでした。このせいで、琢馬はディオやカーズや吉良といった原作ジョジョの絢爛たる悪役に比べるといかにも「おとなしい」印象を与えます。「こんな化けものに絶対勝てるわけねえ」という、主人公がぶつかって倒すべき敵としての重みにはやや乏しいのです。やはり悪役の存在感にかけては、荒木飛呂彦のほうが一枚も二枚も上手ということなんでしょうか。
まあ、あのディオを生み出した人にそこんとこで張り合えというのは酷かもしれないし、こちらはこちらで乙一らしくて気に入ってはいるんですが。


原作のパロディやメタフィクション的な遊び以上に、乙一自身のジョジョ好きっぷりが感じられて読んでてニヤニヤしてしまったのは、シチュエーションづくりにかかわる部分ですね。こいつ荒木飛呂彦の脳みそ移植してもらったのか!? って思うほど、日常に潜む恐怖を引き出すシチュが異様に「ジョジョっぽい」。コンビニにふらりと現われる全身血まみれの猫だとか、狭いビルの隙間の空間に一年間閉じ込められていた女性の話だとか、密室の中で「車にはねられて」死んでいたという女性怪死事件とか、身体に傷跡のある生徒を探しだすのにスタンド能力を利用するやりかたとか、っていちいちあげていたらきりがない。むしろジョジョっぽくないシチュエーションを探すほうが難しいくらいです。乙一わかりすぎてる。
猫に餌をやるシーンでは露伴先生が今に「味もみておこう」って言い出すんじゃないかとひやひやでした。味はみなかったものの、なにくわぬ顔で睡眠薬とか入れてました。「やっぱり露伴先生だ」と思いました。

あと、あまり言われてないみたいだけどけっこう凄いのがクライマックスのバトルシーン。
乙一氏は対談で「戦闘の描写は苦手でてこずった」みたいな発言をしていましたが、あれはかなりの謙遜だったのでしょう。「ゴゴゴゴ」という擬音がほんとうに聞こえてきそうな張りつめた空気といい、スタンドの特徴と戦場の状況を活用しまくったトリックの応酬といい、まさにジョジョ、これこそジョジョの戦いだと思います。燃えるのなんの。とりわけ億泰&ザ・ハンドのかっこよさは異常。
子供のころから原作といっしょに育ってきた僕たちがあまりにも深くなじみすぎて、ともすれば「いるのがあたりまえ」のように感じてしまうスタンドが本来もっているはずの神秘性や圧倒的な暴力の凄まじさ、そういうものにあらためて気づかされる、非常に新鮮な「文章ならでは」の描写でした。
ちなみに本の装丁は作中の本のスタンドを思わせるデザインなので、手にとるとどうしても「The Book」ごっこをしてみたいという誘惑がおさえがたい。子供か。

物語のラストでは罪深く、痛切な、しかし一抹のさわやかさも添えた生命讃歌が高らかにうたわれ、原作版ジョジョのメインテーマの美しい変奏となっています。コミックのノベライズって聞くとなにやら軽薄なものを思い浮かべて敬遠してしまう人もいるでしょうが、そんなこと全然ありませんから。グレートな仕事ですよこれは。

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荒木飛呂彦×乙一JOJO対談
小説版を読んでから読むといちいち頷ける。
by umi_urimasu | 2007-12-09 18:46 | 本(others)


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