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「わが悲しき娼婦たちの思い出」ガルシア・マルケス
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たちの悪いいたづらはなさらないで下さいませよ、眠つてゐる女の子の口に指を入れようとなさつたりすることもいけませんよ、と宿の女は江口老人に念を押した。
――川端康成「眠れる美女」
たまにはおのれのサイト名に応分の本も読まねばということで、久しぶりにマルケスに挑戦してみました。90歳の爺さんが14歳の処女娼婦に死ぬほど惚れ込み、浮かれたり悩んだり妄想したりもじもじしたり嫉妬でブチ切れたり自転車で爆走したり猫を育てたり殺人事件に巻き込まれたりするという、なんとも初ういしい(?)老人純愛ストーリー。「老いらくの恋」と聞くと、枯れた味わいの淡白なお付き合いだとか、あるいは本作のインスパイア元である川端康成の作品のように暗く耽美な死のイメージを連想しがちなものですが、どうも地球の裏側では事情が全然違うらしい。パワフルで騒々しくて、切なくてもどかしい、日本人の想像を絶するほど濃密な老いがここにはあります。
人間には死期が近づいてようやく自由になる心の部分というのがあって、そこまで来たらもういろいろ取りつくろってもしょうがない。わずかな残り時間、自分に素直に生きるのが一番いいのではないか。そんな老いの境地にたどりつき、91歳にして一生の恋にめざめたお爺さんの余生が今始まる。
わしたちの恋はこれからだ! マルケス先生の次回作にご期待ください。


おまけ。解説に書いてあった話。
「お話をどう語るか」(邦訳「物語の作り方」)の中でマルケスは、35年間郵便ポストの底に入っていて配達されなかった手紙の話を披露しています。
――子供も孫もいる老女のもとに、ある日一通の手紙が届いた。差出人は彼女がかつて心から愛していた男性であり、水曜日の午後五時にどこそこの喫茶店で待っていると書いてあった。女性がまさかと思いながらも店に行ってみると、なんとその男性が彼女を待っていた。つまり彼は35年間、毎日欠かさず彼女を待ち続けていたのだ――。

で、マルケスいわく、「こういうストーリーは、現実というのはどの程度までたわめ、歪めることができるのか、本当らしく見える限界というのはどのあたりにあるのかといったことを知ることができるので、わたしは大好きなんだ。ただ、そういう限界があることはわきまえておかないといけない。ちょうど、チェスをするようなものだ。視聴者、あるいは読者とゲームの規則を決めておく。つまり、ビショップはこう動き、ルークはこう、ポーンはこう……といったようにね。で、いったんその規則ができあがったら、もう変えてはいけない。一方が途中でそれを変更しようとしても、もう一方は受け入れてくれないからね。すべてのキーは大いなるゲーム、つまりストーリーそのもののうちにあるんだ。相手が君のゲームを受け入れてくれれば、なんの問題もなくゲームをつづけていけるというわけだ。」

なるほど。ありそうでありえない、「超現実すれすれ」の物語を好むマルケスらしい考えかたかも。

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by umi_urimasu | 2007-11-07 14:48 | 本(others)


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