柳生十兵衛死す(上)(下) 山田風太郎
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a0030177_2142971.jpga0030177_2145230.jpg昭和を代表する娯楽小説の巨匠・山田風太郎、その生涯最後の作品。いつか読もうと心に決めてはいたんですが、思ったより早く機会がめぐって来てしまいました。そして上巻半分あたりまで読み進んだところででんぐり返ってコーヒー吹く。まさかのタイムスリップもの! さすが山風、最後の最後まで俺たちにできないことを平然とやってのける……。


柳生ノ庄付近の河原で見つかった隻眼の男の斬殺体。そのうすら笑いを浮かべた死顔は、まごうことなき剣豪柳生十兵衛のものであった。だが死にざまよりも奇怪なのは、彼の本来開かない方の眼がかっと開かれ、開いているべき方の眼が閉じていたことだ。剣にかけては天下無双の十兵衛を、かくも鮮やかに斬り捨てたのはいったい誰か?そして隻眼の怪異の真相は? 希世の能楽師の魔力によって室町時代へ翔んだ慶安の十兵衛三厳と入れかわり、慶安の世に翔ぶは室町の十兵衛満巌。片や慶安の都で、片や室町の京で、時を越えて交錯する剣客二人がたどる数奇な運命の物語。
俗に柳生三部作と呼ばれるうちの前二作、「柳生忍法帖」「魔界転生」の発表から三作めの「柳生十兵衛死す」が書かれた1991~92年までの間には、約三十年ものブランクがあいているそうです。もちろん忍法帖シリーズ自体はその間にもたくさん書かれているものの、後期になるにしたがいその数は減っていきました。つまり「十兵衛死す」一作だけが、忍法帖シリーズ全体から見るとぽつんと離れた時点に生まれたということになります。そのせいか、この作品は他の忍法帖とは基本的な作風からしてかなり趣きが異なっているようで。
たとえば、あの匂いたつような過剰なエロスがまったくないこと。また、超人的忍術の類がほとんど出てこず、ほぼ尋常の剣術戦に終始していること、など。盛大なエロと奇想天外な忍法戦こそが目玉だった以前の忍法帖からすれば、かなりストイックな方向に舵を転じた作品といえるでしょう。

しかし、だからといって出来が物足りないというわけではありません。抑制して描かれた情念の苦味、ムアコックのエルリックのごとき破滅的な一面をそなえたあやうげな十兵衛像、「幽玄」という形容が似合うサイレントな剣戟。色気や頭脳戦の興奮とはまったく異なるデカダンスの香気がこの作品には満ちています。特に、清水寺の舞台や相国寺七重塔といったいかにも能楽にふさわしい戦いの場から、過去と現在のせめぎあう異空間へなだれ込んでいくタイムスリップの描写は圧巻。風太郎ならではの簡潔な美文に絢爛たるビジュアルと能のイメージがあいまって、情景そのものが後期黒澤映画を思わせる絵画的な美しさをもつに至っています。従来の忍法帖とは一線を画する新境地。というか齢七十、人生最後の小説でこれって。どんだけ天才なんだよ。

でも、何十年たとうと独特のユーモアはいつまでも健在とみえてときどきこんなフレーズも。
「ただし、こちらの場合は、向うで呼んでくれねば未来に出現することはできませぬ」
「ふうん。あちらがこちらに翔び移る。こちらがあちらに翔び移る。途中で衝突しやせんかな」
まるでスカッド・ミサイルVSパトリオット・ミサイルみたいなことをいう。
ガチンコ時代劇の真っ最中にいきなりこういうすっとぼけた注釈を入れても世界観がまったく崩れないあたり、さすがは山風といったところでしょうか。

さて、次は何を読もうかな。そろそろ明治ものやミステリ系にも手を出してみたくなってきました。プライオリティが高いものとしては「信玄忍法帖」「海鳴り忍法帖」「妖説太閤記」「八犬伝」「明治断頭台」「妖異金瓶梅」「警視庁草氏」ぐらいか。


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むむむ。おもしろそう。

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[ニコニコ] 07/9/19(水)ムーブ!(朝日放送)  youtube版
普段バラエティ系情報番組とか見ないんで認識不足でしたが、聞きしにまさるひどさですな。ひぐらしとばっちりもいいとこ。
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by umi_urimasu | 2007-09-19 23:18 | 本(others) | Comments(0)
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