「サウンドトラック」(下) 古川日出男
a0030177_22475954.jpg舞城王太郎に「ピンチランナー調書」みたいな話を書かせたら、あるいはこういう小説になるのかもしれないなあ。とふと思ったんですが、たとえとして適切かどうか自信はありません。古川日出男の小説を、「誰それの作風に似てる」という言い方で説明するのはとても難しいのです。
たとえば、やたら攻撃的な文体を使うスタイルに町田康や舞城王太郎に通じるものを見いだすことは、まあ可能かもしれない。でも文体そのものはまったく似ていないし、それ以外でも共通点は特にない。村上春樹が原点だともいわれるけれど、作品自体はやっぱり村上春樹とは似ても似つかない。饒舌のルーツをボルヘスやマルケスあたりに求めてもいいけれど、古川日出男のポップな部分はそういう枠にも収まらない。
「サウンドトラック」の中で、ヒツジコのもとに生まれも育ちもさまざまなダンス少女たちが結集して西荻窪独立戦争を起こすにいたる流れなどには、ポップというか、ある種ライトノベル的な思春期的全能感までもが表現されていたりします。こうなるともはや何でもありと言ったほうがいい。なかなか手におえない代物なのです。

どこかに適切な「たとえ」を使った古川日出男評をしている人はいないものでしょうか。「古川日出男みたいな小説をもっと読みたい」という欲望のはけ口を求めて、こういった「似たもの探し」をしようとしている人は、僕だけではなかろうと思うんですが。

古川氏はこのところ、かなりのハイペースで作品を発表しつづけています。さらに文章を書くだけでなく朗読ギグなんていう活動もしているようです。なんとアクティブな。のんびり読んでたらたぶん永遠に追いつけません。この生産力が頼もしい。
皆川博子と古川日出男と飛浩隆とイーガンとジョージ・R・R・マーティンがいれば、族長の初夏はあと十年は戦える!


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円城塔「Self-Reference Engine」と伊藤計劃「虐殺器官」を買ってきました。楽しみだー。ベスターの「ゴーレム100」は見つからずじまいでしたが。しょぼん。

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by umi_urimasu | 2007-08-17 22:51 | 本(others) | Comments(4)
Commented by つな at 2007-08-18 00:05 x
はじめまして。
「物語三昧」からのリンクをたどって、少し前から拝読させておりました。
古川日出男は、本当に「古川日出男風」としか言いようがありませんよね。
「サウンドトラック」における疾走感には、umi_urimasuさんも言及されておられる舞城王太郎を思い出したのですが…。

少し前に、「朗読ギグ」が目覚ましテレビで紹介されていました。
見ているこちらがちょっと恥ずかしくなる程の、熱をもった朗読でした。
そうでなくても、古川日出男の本は、他の本と比べて、ダイレクトに五感を刺激すると思うのですが、実際にあの場にいたら、どう感じるのかなぁと思いました。
少なくとも、恥ずかしがってちゃだめですよね、きっと。

*「上」「下」の両方に、トラバさせていただきました。
Commented by つな at 2007-08-18 00:09 x
再度、失礼いたします。
読み直したら、コメントがおかしかったので、訂正をば。
×拝読させておりました
○拝読させていただいておりました
です。
削除用パスワードを設定したものの、使い方が分からず・・・。
初めてのコメントからこんなので、すみません…。
Commented by umi_urimasu at 2007-08-18 07:08
「サウンドトラック」終盤の文章などは、たしかに「疾走」と形容したくなるようなスピード感がありましたね。舞城王太郎の文体とはまた違う感じなんですけど。
「サウンドトラック」は「さあこれから壊すぞ~」ってところで唐突に切れて終わる結末がやたら開放感にあふれているのが気に入ってます。あと動物が異様に賢いとことか。

>「朗読ギグ」
その方面のプロによる朗読とか、サウンドドラマみたいなものだったらガチで聴いてみたい気もします。
Commented by umi_urimasu at 2007-08-18 07:13
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