「サウンドトラック」(上) 古川日出男
a0030177_9485223.jpg東京に破滅の足音がしのび寄る! 暗黒舞踏少女が学園の秩序を打ち砕く! 豚が滅ぶ! カラスが栄える! 犬は喜び猫駆けまわる! 現代神話をいらんと言っても押しつける! 日常言語ブレイカー・古川日出男の怒りの言霊を込めたアナーキック・バビロニアン・アドレッセンスノベルが今、おごそかに爆走を開始する。


もはや「古川語」としかいいようのないあまりに扇動的な文体と、ディテール主義をきわめながらも現実には絶対に起こりえない物語。どちらを期待する古川ファンにも、この作品は存分に応えてくれることでしょう。見ようによっては醜いとも取れる饒舌とアンバランスな構成のせいで読み手を厳しく峻別しそうな作品ですが、そういうところもまるごと含めて、僕はこういうごてごてした小説が大好きです。これはもう、「百年の孤独」に出会ったあのときからずっとそうです。我ながら一途だなあ。
無人島に漂着した幼い少年と少女は、保護されたのち兄妹として育てられた。音楽を「殺す」特異感覚の持ち主・トウタと、見る者の精神を「揺らす」ダンスの技を生得していたヒツジコ。二人は成長し、ひそかに都市の生活に溶け込んでゆく。一方、男と女、二つのジェンダーの間を自在に行き来するレニは、烏のクロイに出会い、〈傾斜人〉の棲むトンネルで映像の啓示を受ける。ヒートアイランド現象により熱帯都市と化した不法移民の坩堝の中で、三人の鬼子たちはそれぞれに、滅ぼすべき「敵」の姿を見い出しつつあった───。
というわけで、まあ、いつものように古川節が吹き荒れます。日常的な言語感覚に対して戦争でもしかけるつもりかといわんばかりな勢いです。ぶ厚い本のすみからすみまでびっちりとそんなテンションの語りが詰まっているので、文章の読みにくさによるストレスを厭う読者にとってはたまったものじゃないでしょうけれど。好きな人にとっては、これは麻薬にもひとしい快楽なのですよ。
特にヒツジコのダンスの描写は、日常風景のなかにおとずれる魔術的な瞬間を表現するにはもうこの文体以外ありえん、と思わせるほど。

やっぱこの人はとんでもない異能の作家だという確信を新たにしつつ、下巻につづく。

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[プチ書評] 『ゴーレム100』 (アルフレッド・ベスター/国書刊行会)
めちゃ面白そうでござる。読みたすぎるでござる。

WEB本の雑誌 【本のはなし】 作家の読書道
乙一、森見登美彦、町田康、古川日出男、恩田陸、伊坂幸太郎、東野圭吾、他多数。あとでちまちま読む。

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ひぐらし実写映画化決定て。アホスww
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by umi_urimasu | 2007-08-12 09:58 | 本(others)


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