「王狼たちの戦旗」I ジョージ・R・R・マーティン
a0030177_14114988.jpgドラゴンや異形人なんていませんよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから。というリアリストたちのためのリアリスティック異世界戦記〈氷と炎の歌〉第二部、開幕篇。


「王狼たちの戦旗」の原題は"A Clash of Kings"。その名の通り、本作では第一部「七王国の玉座」から激化の一途をたどる血みどろの王位争奪戦の模様が描かれていきます。ひとつの玉座をめぐって四人の王が(デーナリス姫も加えれば、次からは五人?)、さらに彼らを取りまく何十人もの登場人物がくり広げる果てしない陰謀劇。いったい誰と誰が手を組み、誰が誰を裏切り、誰が生き残って誰が死ぬのか、フタを開けてみないとわからない。たとえ主人公格のキャラクターであろうとも、端役の人物とまったく同様に命の保証はありません。
甘ったるい「お約束」の通用しない作品であることは、すでに「七王国」を読んだ人ならおわかりでしょう。ジョージ・R・R・マーティン、やるときは断固としてやる男だ。

しかし、ティリオン大丈夫かなあ。シェイの存在がいかにもアキレス腱っぽい気がしてならんのですが。


「七王国」では基本的に謀殺やら内乱やらの現実的な人間ドラマに重きがおかれ、超自然的なできごとはあまり表だっては出てきませんでした。「王狼たちの戦旗」でも、文庫版一巻の段階ではそんなに派手な動きはありません。しかし、そういったファンタジーの領分に近いものごとが徐々に重要になっていくという含みを感じさせる部分は、わずかずつ増えてきているような気もします。
たとえばブランの超能力(?)の描写とか。長い昏睡状態からうぐぅ並みに奇跡的な生還を遂げた彼は、最近、夢のなかで森に放たれた狼と意識をシンクロさせているらしい。これは単なる子供の夢なのか。それとも冬の到来や伝説の「森の子供たち」と何か関係があるのだろうか。うーん。わからんが気になる。
あと、第二部で新登場のメリサンドルの件もありました。全身赤色づくめのこの女司祭は、毒入りワインを飲まされたというのになぜかぴんぴんしており、いかにも魔性の女っぽい感じ。

これらファンタジー風の要素が、もともと現実的な路線の物語のなかにどのようにからんでくるのか、そのあたりのさばき方も個人的に楽しみなところです。つづきが待ち遠しい。


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ネタバレ補足。
おそらくシリーズ中もっとも読者の共感厚きキャラクターであろう醜少女(ぶしょうじょ?)ヒロイン・アリアですが、彼女はヨーレンにつかまって虎刈りにされたうえ、今は犯罪者の群れといっしょにナイツウォッチ方面へ護送中です。すごいよアリアさん。齢十歳にして並みの大人の数十倍はハードな人生送ってますよ。でも暴君ジョフリーの手に落ちていた場合の悲劇的な運命を思えば、むしろいい境遇と言うべきなのかな。
無事にジョン兄に会えるといいね。ジョンはその頃、壁の向こうへ遠征に行ってて不在かもしれないが。


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氷と炎の歌、HBOでドラマ化決定
出来がよければ見てみたい。ただしゲド戦記みたいなこともままあるらしいからあんまり過度の期待はしない。
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by umi_urimasu | 2007-04-07 14:41 | 本(others)


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