「ハイペリオン」+「ハイペリオンの没落」をオンアボキャァッとかエスクレメントォッとか吠えつつ読み進めるかたわら、箸休め代わりに消化した本をいくつか紹介しておきます。というか、場つなぎ的にでも更新しておかないと平気で二週間放置とかいうことになってしまうので。
そもそもハイペリオンが読みごたえありすぎるんだよ。 「DDD 1」奈須きのこ 「空の境界」と似た路線の現代猟奇サスペンス。隻腕のフリーター青年が街にはびこるサイコパスな殺人犯をやっつけたり、畸形で異能者の美少年と密室でキャッキャウフフしたり、男ットコ前な美人警視にいじめられたり。要するにいつものきのこワールドのバリエーションです。「従来の奈須の作品群とは一線を画している」みたいな評価をあちこちで見かけますが、いやー。同じでしょこれ。 確信というほどではないんですが、奈須きのこ作品におけるキャラクター設定などの表層部分が常にライトノベル的・少年漫画的であるのに対して、キャラを乗せているストーリーや語り口の部分は、1980年代の伝奇バイオレンス小説の遺伝子をわりあい素直に受けついでいるように思えます。そのルーツと呼べそうな候補のひとつが、菊地秀行。もうひとつは最近ちょっと読みかじった笠井潔の「ヴァンパイヤー戦争」。これらの80年代伝奇エンターテインメントと少年ジャンプの要素が、奈須きのこの中にはだいたい半々ぐらいずつ入っていそうな感じがします。 西尾維新とのちがいもそのへんにありそうな気がする。西尾維新の場合、材料がほとんど少年ジャンプのみなんじゃないかなー、と。 あ、あと小道具は今回もナイフです。あなた、それ以外の得物は頭にないのですか。 「サイコロジカル」「ヒトクイマジカル」「ネコソギラジカル」西尾維新 「戯言使い」シリーズ、コンプリート。 総じて非常に作りの粗い、最後まで混乱したまま走り切った作品という印象でした。それが良いか悪いかについては、なんとも言いかねるんですが。とりあえずミステリとしてはボロボロでしたけど……。「クビシメロマンチスト」あたりはまだしも、「サイコロジカル」ぐらいになるともはやトリックがトリックっていうレベルじゃないというか、あんたそれネタでやってるだけだろというか、そんな感じ。引っぱりつづけた伏線も豪快にスルーしてくれたし。 いかにもな萌えキャラたちが登場するはしからズバズバ惨殺され、忍法帖+ドラゴンボール化していく超人バトル。マンネリ化しながら執拗に再現されるマンガ的な過剰性。その混沌たるやっつけぶりを「粗い」「ぞんざい」と見るなら、この作品への評価はネガティブなものになるでしょう。でも、そういうふうにしか感じないのは単に僕がライトノベルのレセプターをろくにもたない読者だからかもしれない。そのへんの判断基準として信用できそうなものが、まだ僕の経験の中には存在しない。 つまり、ひとことで言うと「よくわかりませんでした」。ひどっ。 「ヴァンパイヤー戦争」1-2巻 笠井潔 超古代に宇宙のかなたから飛来した神々の末裔の力をめぐる各国のスパイや秘密組織の壮絶な戦いを描いたSFバイオレンス巨編。これをSFと呼ぶのはちょっと抵抗ありますが……。正直、かなり笑えました。何から何まであまりに直球。超ベタ。王道すぎて恥ずかしい。これぞB級スパイアクションの鑑、ただし主演は阿部寛、みたいな。 設定の電波ぶりもすさまじく、銀河を二分する超種族どうしの黙示録戦争とか古代ムー大陸文明の三種の神器が日本に隠されていたとか、激しすぎるネタが満載です。80年代娯楽伝奇のバブリーな雰囲気にあてられてのぼせてみたいという向きには、案外おすすめかと。 最近刊行されたバージョンでは武内崇がカバーイラストを担当してますが、ブックオフで100円で売ってるのは大抵、昔の天野喜孝バージョンですね。ま、どっちでもええんちゃうやろか?
by umi_urimasu
| 2007-02-05 21:53
| 本(others)
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