「マルドゥック・ヴェロシティ」2 冲方丁
a0030177_815023.jpgはじめちょろちょろ中ぱっぱ。爆発してもフタ取るな。
孤高の兵士の精神をさいなむ虚無と良心の葛藤を極限のテンションで描く、冲方丁渾身のSF三部作。


第二巻では前巻のサスペンスムードから一転、のっけから人外武芸帖が炸裂します。襲い来るは凶悪無比の傭兵部隊〈カトル・カール〉。これがもう、なんていうかなあ。とにかく非人間的なまでに品のない超変態集団で。両腕人間、タイヤ人間、鹿人間、先行者、ゴスロリ乳母車、ゴキブリ人間などなど、怪しい現代アート並みにねじくれた容貌の殺戮狂どもがフォー・レター・ワードを連呼しながら問答無用で飛びかかってくるわけですよ。
おーい誰かガッツの行方を知らんか?

こうしたC級ホラー映画顔負けの狂騒は、いささかやりすぎの感もある。あるんですが、それがかえって作品全体のテンションを高めるのに一役買っているようにも思います。硬派な社会サスペンスのまっただなかに明らかな異物であるモンスターバトルを挿入し、その異物感をあえて放置するこの乱暴さ。その計算されたアンバランスがどうにかしてプラスに働けば、作品全体を包む攻撃性へと転化できる。もちろんうまくいったらの話ですが。
そういえば前作「マルドゥック・スクランブル」も、三部作のうちのほぼ一巻分近くをギャンブルシーンのみに費やすという型破りな構成を持ち、そのバランスの崩れが妙な迫力を生み出していたものでした。
リスクも大きいが実入りも大きい。これが冲方丁のファイトスタイルなのかもしれません。

物語はスクランブル-09機関の栄光と凋落を、そしてマルドゥックシティの覇権をめぐる巨大な陰謀を、膨大な情報量で描き出しつつあるところ。ギャングの抗争の裏にかくされた企業と法政界のスキャンダル。謀略の罠に巻き込まれる09のメンバーたち。しのびよる破滅の足音。そしてボイルドの良心を喰らいはじめる虚無のビジョン……。次巻、激震必至の予感。
ちなみに第三巻のテンションは三部作中で最高潮のものとなり、「スクランブルを越えた」と高く評価している人も少なくないらしい。期待しておこう。

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蛇足。ボイルドとナタリアの赤ちゃんの運命がけっこう気になるんだが、平穏無事に生まれるのだろうか? 名前が付くとしたらやっぱり卵がらみなのか? ていうか、もし女の子でボイルド似だったらどうすんだ?
いらんことばかり気にしつつ完結編へつづく。

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パプリカの映画見てきた。ハ、ハラショー!!
筒井康隆もバーテンダー役で出てたよ。
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by umi_urimasu | 2006-12-17 08:22 | 本(SF・ミステリ)


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