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「吸血鬼ハンターD」菊地秀行
「吸血鬼ハンターD」菊地秀行_a0030177_22542125.jpg核戦争によって荒廃した西暦12000年代の世界を舞台に、人に仇なす吸血鬼を狩るさすらいの狩人・"D"の活躍を描くSFファンタジーホラー活劇。

内容はとにかく活劇また活劇。「SF版忍法帖」という形容がしっくりきそうな作風ですが、山田風太郎の血を受けつつ、ごく最近の伝奇バトル系ノベルゲームやライトノベルに近い部分もかなりあるのが面白い。両極端しか経験していない僕にとっては、ようやく山風の直接的なフォロワーのひとりに出会うことができたぞ、という実感を得たところです。

しかし伝奇小説の道はけもの道。ローマは一日にしてならず。もっといろいろ読み比べてみねば。

ちなみに、文字通りのキワモノ小説「妖神グルメ」に比べると、娯楽小説としての一般性の高さはそれこそ月とスッポンです。この「D」なら、広い読者層に受けるのもうなずける。

菊地秀行が一世を風靡したのは1980年代。
僕自身は当時その人気にまったく気づいていませんでしたが、「D」シリーズは80年代を通じてかなりのヒット作だったようです。なにしろ日米で別々に映画化までされたぐらいだから、相当なものでしょう。そういえば小学校ぐらいのころ、本屋でよく見かけたという記憶だけは確かにある。
むしろ、今から思えば読まなかった理由がわかりません。エルリックサーガやアルスラーン戦記を楽しんでいたのなら、イラストレーターつながりで手に取っていても全然おかしくなかったはずなのに。それでも読んでいないということは、おそらく意図的に避けていたとしか考えられない。なぜだ。うーん。
自分のことながら皆目わからん。
普通に面白いのになあ。


一万年後の超未来に刀剣で吸血鬼ハンティングという、少々おっちょこちょいな設定について。
「D」の時代の地球は、はるか昔の核戦争によって人口が激減し、科学文明もすっかり後退しています。そこでこれ幸いと人類を蹴落として支配者の座を手にいれたのが、古代よりひそかに生きつづけてきた吸血鬼たちでした。超科学を手にした彼らは人類を奴隷化し、自らは「貴族」になってやりたい放題。しかし彼らも永い年月のあいだに種としての活力を失い、やがてふたたび勢いを盛り返してきた人類に追いつめられ、滅びの時を待つばかりとなりました。とはいえ、一人ひとりの吸血鬼の力はやっぱり強大で、普通の人間では手も足も出ない。そこへ登場するのが、人間と吸血鬼のあいのこ(ダンピール)として生まれ、吸血鬼に対抗する力と技をもった吸血鬼狩りの専門家、吸血鬼ハンターというわけです。昼でも歩ける"デイウォーカー"。人からも吸血鬼からも疎まれ、安息の地を探し求める放浪者。「ヴェドゴニア」のモーラや映画のブレイドもこのお仲間なのですね。
ただし本作の主人公"D"はダンピールのなかでも特別で、由緒ある血統の吸血鬼よりもさらに古い何者かを体のなかに飼っているという設定が与えられています。しゃべる人面疽が手のひらに現われて、斬殺されてもすぐに生き返るし。そのあたりの謎は、第一巻ではあまり明らかにされませんでした。Dの本当の正体については今後のお楽しみということか。
でもシリーズは17巻もあっていまだに続いているので、全部フォローするのは正直きついかも。


菊地秀行と山田風太郎のあいだを埋める作品を別にさがすか、または山風からさらに時代をさかのぼる方向へ足を伸ばそうかとも思っています。日本伝奇小説の歴史については、時代順にまとめられた伝奇ゲームファンのための日本伝奇入門がものすごく参考になる。これをガイドに歴史を漁ってみるも一興ならん。


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ヴァンパイアつながりで、萩尾望都「ポーの一族」にも挑戦してみました。とてつもない作品で、むちゃくちゃ読み疲れする。第二巻なかばでぐったり。休憩中。

平行して、永野護「ファイブスター物語」も再読開始。長命種族の孤独と悲哀というテーマでつなげられなくもないんですが、これまたとてつもない作品で以下同文。12巻に到達するまでにどれだけかかるやら知れたものではありません。

そして特に何のつながりもないけど、「シグルイ」にも挑戦中。とてつもない以下同文。すげえ!

それにしてもヘヴィな漫画読みすぎ。「よつばと」の反動かなあ。


次の小説は小松左京の「日本沈没」。とてつもないので以下同文。さすがだな。
by umi_urimasu | 2006-10-14 23:24 | 本(others)


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