アトラク=ナクア
a0030177_516477.jpg「身の程を知るのね、豚」 ばりばり。

「殺してあげましょうか? 望むなら、あなたの目の前で」 もぎゅもぎゅ。

学校に一匹の蜘蛛が棲みついた。人を惑わし引き裂いて喰らう、化生の蜘蛛が。
蜘蛛神の名は初音。惑わされた少女の名は奏子。彼女たちが紡ぎあげる永く哀しい物語の名は、「アトラク=ナクア」。
ちなみにクトゥルー神話とは何の関係もない。



この作品は僕にとっては、なんというか、かなり新しい世界でした。まず百合小説自体をそんなに知らん。谷崎潤一郎ぐらいしか読んだことねーわけですよ。さらに容れものは学園伝奇ホラーなのに中身はガチ百合、しかも轟々たる情念系、となるとまったく初めての体験。今までに読んだノベルゲームはどれも、そういう意味ではごくニュートラルなものばかりだったんだと気づかされた次第です。人気のあるヒット作しか読んでないってことは、地雷を踏む危険もない代わりに、すごく狭い範囲のものしか読めてないってことにもなるわけだ。いい勉強になったよ。


それにしても姉様はすごい。色々な意味で。
いわゆる萌えからは程遠いが、これこれ は正直かなり心に響いた。姉様おきてー!


アトラク=ナクアは分類としてはノベルゲームで、物語を読ませることに重きを置くというスタイルにおいて「痕」「月姫」「phantom of inferno」などと方向性を同じくしています。実際、テキストだけ取り出せば普通の小説とまったく変わりません。

作品の最大の売りどころはすでに大勢のユーザーが評価している通り、シナリオの質の高さ。筋は定型的ですが、初音と奏子の情愛関係に焦点を絞った上で奇麗に話が収束していて、無駄らしい無駄がどこにもありません。文章も整っていて、伏線の散らし方、拾い方も上手い。そして何よりも、「終章」の盛り上がり方がハンパじゃない! それまでの流れがゆったりしている分、終盤の急展開のインパクトは強烈でした。
まさか、あそこで「兄様」と言わせるとは………。恐るべきは死を前にしてむき出しになる女の情念。その心理はもはや到底男の理解の及ぶものじゃない。って、いいのかな。ギャルゲーなのに。

学校での嫉妬や陰口、村八分構造など、ティーンエイジの女子描写が生なましいのもアトラク=ナクアの特色のひとつでしょう。この手のゲームにしては珍しいなと思ったら、シナリオライターはじつは女性でした。少々びっくり。そして納得。女性キャラの心理描写の細かさに比べて男性キャラの造形がおおざっぱだとは薄々思ってたんですが、これもあるいはライターが女性だからだろうか。


アトラクはたいそう古いゲーム(1997年)なので、絵や音は最近のものと比べるとやはり見劣りします。でもシンプルな演出で大きな効果をあげている箇所もたくさんあって、テキストだけの小説ではないデジタルノベルならではの読みごたえはしっかり感じられました。回想シーンで初音の笑顔がカラーになるところや、「ホコロビ」から「終章」で絶妙のタイミングで音楽が変わるところなどがその好例。
今のゲームのエフェクトに慣れた目で見ると、もう涙ぐましいほどショボい工夫なんですけどね。しかし、こうした先達の努力の上に今のファントムやFateやマブラヴがあるわけだ。ゆめゆめ、おろそかにはできませんのですよ。


次はうたわれかデモンベインをやろうと思う。
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by umi_urimasu | 2006-08-28 07:29 | ゲーム | Comments(0)
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