んっふっふ、すみません。しばらく更新が滞っていたのはこのせいです。
こいつは……こいつはちょっとした魔物でした。Fateの余波で軽い気持ちで始めたつもりが、気づけばすでに半徹一週間。初めて「月姫」をやった時にも似た「同人ノベルでここまでやる!?」という衝撃と興奮、そしてサウンドノベルごときに日常を蹂躙される恐怖と快楽を味わい尽くし、今、ようやく終わったという満足感と虚脱感に浸っているところ。 でもじつは、これでもまだ半分しか終わってないんですけどね。この後まだもう一枚のCDが、「目明し編〜皆殺し編」が控えているのです。やばいですこれ。ハマるなキケン。 作品の中身をひとことで言えば、猟奇殺人事件を扱ったライトノベル的なミステリ、となるんでしょうか。素材的にはそんなに珍しくないものです。 ただし、謎から解まで一本道の普通のミステリ小説と「ひぐらし」が根本的にちがうのは、ひとつの物語だけではほとんど謎が明かされないという点。「ひぐらし」ではいくつかの異なる筋の物語があらかじめ用意されていて、それぞれが互いに複雑に組み合わさり、文字通り「謎が謎を呼ぶ」迷路のような仕組みのなかで事件の全貌が明らかにされていくという構成になっています。そしてこれが、なかなか根性座った複雑さなわけで。 主人公もさまざま、起こる事件もさまざま、結末もさまざま。でも共通の糸もたくさんあり、もちろん中にはブラフもある。同じ事件を別の視点から見たらまったく別の物語だった、というザッピング視点的なトリックもあちこちに仕掛けられている。何重ものトリックを孕んだ、似かよった物語が二度三度と繰り返されるうちに、やがて個別の物語を包含したより大きな物語構造が見えてくる。 ノベルゲームでよく使われるマルチシナリオスタイルの一形態と考えてもいいし、このスタイルがもともとミステリ向きなのでしょうが、こんなメチャクチャと言っていいほど複雑な構成は、ゲームの畑ではちょっと他に見たことがないくらいです。普通のミステリ小説でももちろんありません。普通の小説では通常、マルチシナリオ構成自体が許されない場合がほとんどだからあたりまえなんですが。 物語の中身についてのことも書きたいんだけど、暇がないのでとりあえずこのくらいで。というよりすでに「目明し編〜皆殺し編」への誘惑がこらえがたい。呼んでるんだ次のCDが。 どうしましょうねえ。 ミステリというジャンルは「ミステリはこうあるべき」というルールにとても強く縛られる小説形式だと僕は思っていて、読みながらそのルールを窮屈に感じることが今までもたくさんあったんですが、そこを仮に「何でもあり」にしてみると、ミステリというのはかなり野方図なことになるようです。もちろんルールを緩めれば、体裁とか統一性とか伏線ミスとか、奇麗じゃないところも増えるかもしれない。でもそれはそれでアリではないかと。極言すれば、何らかの意味で「謎に挑戦する」小説でさえあれば、それらはすべてミステリだと言ってもいいんじゃないかなぁ、と。 そんなわけでデジタルノベル形式ならではの、ミステリの新しい楽しみ方に少しだけ目覚めかけた気分。 「目明し編〜皆殺し編」でのさらなる野方図ぶりに期待します。 つづく。
by umi_urimasu
| 2006-05-18 00:55
| ゲーム
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