燃える! 骨まで炭化するほどに燃える!
推定読者数12億人ともいわれ、「西のトールキン、東の金庸」と並び称される巨星・金庸が放つ超絶武闘派ラブロマンス。 というわけでバトルロワイヤル・イン・チャイナです。 悠久の昔、天下に名だたる英雄豪傑たちが自らの信ずる正義を賭けて演じた戦いの顛末記。こう書いてしまうと「あー、そういうのもういいや、おなかいっぱい」と思われるだろうか。しかしそんな文句は、この作品に対してだけは言わせたくありません。というか口が裂けても言わせない。 戦乱がつづき人心荒ぶ宋代末期。全真教の道士・丘処機は、悪党の手にかかって殺された友人の妻を探し出す旅の途上、「江南七怪」を名乗る侠客と心ならずも戦うことになってしまった。血気にはやる相手に、丘処機は意外な提案をもちかける。双方が連れ去られた二人の妻を見つけて彼女らの子供に武芸を仕込み、成長した二人を相戦わせて勝負を決しようというのだ。 話に乗った七人の侠客がモンゴルの地で見い出した少年の名は郭靖。蒙古の英雄・ジンギスハーンの下で仁義に篤い好青年に成長した郭靖は、ついに約束の対決へ向けて旅立つことになる。一方、丘処機が育てたもう一人の子、楊康は…… 甘やかされて育った結果、腕はたつけど女癖の悪いダメ男くんになっていた。 おおい。だめじゃん丘処機。 いやいや。冗談はともかく、すごいですねこれは。 先を読ませない奇抜な展開、めまぐるしく入り乱れる魅力的なキャラクター、そして彼らがおりなす波瀾万丈の大活劇。一人の青年の数奇な成長物語であり、運命的な恋物語であり、壮大無辺の大河ドラマであり、抱腹絶倒のシチュエーション・コメディであり、「北斗の拳」も裸足で逃げだすほどのウルトラバトルアクションでもある。まさにオールマイティ・エンターテインメントです。 この手の娯楽小説はそれこそ星の数ほどあるけれど、厳しい生存競争に耐えて生き残った作品というのは、やはり相応の強靭さをそなえているものらしい。 作品全体に通底する"図太さ"のようなものは、大陸的な民族性なのか、やはり日本の小説の雰囲気とは一線を画しているように思われます。でもそれがかえって新鮮な感じを与えてくれる。情念とか仁義とか、人間関係にこだわり出すとすぐじめじめと暗くなる和製ヒストリカルロマンとちがって、なんかこう、陽性のエネルギーにあふれているのですな。 香港アクション映画一般、特にツイハーク系列。 国内小説でいえば山田風太郎。 アニメでいえばジャイアントロボ。 ゲームでいえば鬼哭街。 このあたりの作風に理解のある読者には、絶対の自信をもっておすすめします。 GロボやGガンダムはそもそもが金庸へのオマージュらしいけど。 射雕英雄伝の第2巻は、今読んでるとこ。3巻も積んであります。テッド・チャンまた後回しだな。イーガンのディアスポラも買っちゃったんで、もう当分のあいだ後回しかもしれません。悪く思うな。
by umi_urimasu
| 2005-11-21 01:46
| 本(others)
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