みんなー、くとぅるー神話が始まるよ〜。
くとぅるー神話を読むときは……部屋を暗くして…本からはなれて…そして…そして…… 人類発祥よりはるか昔、地球の覇権をかけて壮絶な戦いをくりひろげた〈旧神〉と〈旧支配者〉。彼らは現在、永きにわたるご休憩中である。ある者は海底でフジツボまみれになって眠りこけ、またある者はどこぞの星間宇宙をほっつき歩いていたりする。よほどヒマらしい。 しかし中には耳ざといのも居て、フォマルハウト星にひきこもっているツァトゥグアなどは、呪文を唱えると25光年も離れた地球にわざわざやってきて「てめーは俺を怒らせた」とか言って何もしてないナイアルラトテップをいじめるという。ついでに森林破壊にも加担してしまう。 人類こそいい迷惑である。 ちなみにこれがHSTで撮られたフォマルハウト星の写真です。ふへぇ。 収録作品のうち、ラヴクラフト以外ではオーガスト・ダーレスのものがなかなかよさげな感じでした。ラヴクラフト本人の古風な怪奇譚スタイルに比べると、ダーレスのはより近代的なアプローチとでも言うのかな。「闇に棲みつくもの」ではナイアルラトテップとクトゥグアが、「風に乗りて歩むもの」ではイタクァがそれぞれ登場し、デモンベインの元ネタ巡礼という意味でも興味深いラインナップになってます。 あと、こうして数冊読んでみて思ったんですけど、クトゥルーってちっとも怖くないよ。リングとからせんとかみたいな通俗的なホラーと同じものだと勝手に思い込んでいた僕の誤解はいったいどこで植えつけられたんだろう。不思議だ。 思うにクトゥルー神話の「怖さ」とは、いわゆるふつうの恐怖、純粋な防衛本能に根ざす恐怖ではなくて、スケールの大きな未知への漠然とした畏怖ではないでしょうか。海底の深淵とか宇宙の果てとかいった理性の及ばない領域に対する畏怖と同じような。 これはホラーの定番であるゾンビや幽霊などとはまるで別種の怖さだという気がします。ゾンビや幽霊は、殺意とか怨念とかのマイナス感情が防衛本能につながるから、つまり「よく理解できる」からこそ怖いのであって、もしそういうつながりがなかったとしたら、単に滑稽なアトラクションにしか見えないんじゃなかろうか。 もちろんクトゥルーの眷属にだって、人間に害をなすという意味で「理解できる」怖さはありますよ。でもそんなのは微々たるものです。実際の被害発生率で言えば、交通事故よりはるかに低いんだし。 つまるところ、クトゥルーの怖さとは、ドン引きしないですむ程度のソフトなグロテスクが約30%、「つんつんしてみたい」と思わせる知的好奇心が約70%ぐらいの比でブレンドされたものにすぎないんじゃないかなあ。 ならばいかに見た目がグロかろうと、それは既に「幻想」である。 あえて言おう、怖くないと! むしろ何だか気分が落ちつく。以後、なごみ系ホラーと分類しよう。
by umi_urimasu
| 2005-09-24 00:56
| 本(others)
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