再読。また泣いたー。もう何度でも読めそうだ。
冒頭の御前勝負のシーン、甲賀弦之介が瞳術を初めて使う所(むちゃくちゃかっこいいッ!)、朧の目つぶし、そして強烈な無常感を叩きつけてあっけなく終わるラスト。好きなシーンを挙げはじめたら、結局全ての場面を挙げることになってしまう。 たったこれだけの量の作品にこれほどのものが詰まっていたんだと、改めて気づいて愕然となりました。 しかしもうひとつ気づいたことがある。気づくべきじゃなかったかもしれないが。 ──じつは一番のヘタレって、薬師寺天膳? 冷静に見るとこいつ、生き返る以外に何の能もないやんと。 他の忍者たちは皆、それぞれ己の特異体質を活かした忍法を備え、その能力で敵を倒すことができるのに、天膳はといえば。 生き返ってびっくりさせるだけ それをいっちゃあもう、ぶっちゃけアレだが。 ま、何度も読み返されている方ならとうにご承知のことでしょう。それに、少々まぬけでも無敵であることには変わりないし。いわばじゃんけん勝負での「あと出し」に等しい能力なわけだから。 なに卑怯? 笑止。忍者同士の戦いに、卑怯という言葉はないのですよ。勝てばよかろうなのだ。 あ、そういえばネタバレですねこの話。御免。 ──── さてもう一冊。 「かまいたち」宮部みゆき うーん。これ、現代も江戸時代もあんまり関係ないように見えるなあ。「江戸時代らしさ」のようなものは期待したほど濃くなくって、単に宮部みゆきワールドが舞台装置をすげ替えて展開されているだけのような印象を受けました。 すらすらと謎を解いて「そうだったのか」とオチがついてめでたしめでたしという、こざっぱりした読後感は不変だし。人物も必要不可欠な役柄にぴったり合わせたキャラクターで、それ以上でも以下でもないって感じ。パズルとしてはとても奇麗なんだけど、個人的には整理整頓が行き届きすぎているように思えてものたりない。しかし好きな人にとってはそこが好みの所以なのかもしれず。 まあ「火車」の例もあるからね。まだ終わらんよ。諦めないで次にアタック。
by umi_urimasu
| 2005-05-23 01:17
| 本(others)
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