第2巻。やっぱいい!
原典のネームバリューに負けない、堂々たるリメイク。巨匠・手塚治虫の代表作をここまで自分のものにしてみせたというだけでも凄いけど、そんなことに関係なく、単品のSFサスペンスとして出色の出来じゃないでしょうか。おすすめ。 浦沢直樹という人は、犯人の顔が見えない怖さ、「セブン」や「羊たちの沈黙」のようなサイコ系の恐怖を表現するのがほんとに上手いと思うのです。さらに、政治・戦争ネタをからめて、単なる猟奇犯罪ものにとどまらない社会派サスペンスとしての怖さを出すのも上手いと。「PLUTO」での、アメリカ・イラク紛争を元ネタにしたらしい部分は、露骨すぎてちょっと勇み足では?という気もするんですが。 世界最高の能力と知性をもつ7体のロボットたちが、一人、また一人と殺されていく不可解な殺人(?)事件。時を同じくして、中東での戦争にかかわっていた「ボラー調査団」のメンバーが同じ手段で殺害されていく。事件を追う捜査官ゲジヒトの前にちらつく国家権力の影。ゲジヒトのメモリの中で見たものに涙する少年アトム。殺戮者の正体は人間なのか、ロボットなのか、それとも……? 先が非常に気になります。定石通りに行けば、いずれアトムにも同じ危機が迫ることになるはず。いかにもメカっぽいロボットならともかく、あのぷりちーなデコ助アトム君が生死をかけた壮絶な戦いを演じなければならないのかと思うと、とてもじゃないが目が離せん。 第二巻でもアトムやウラン、お茶の水博士など、予想以上にリアリスティックな容姿を与えられた手塚キャラたちが登場して「差分」の楽しみを与えてくれました。特にアトムの造形が良い。普通さを逆手にとった見た目のインパクトだけでなく、「ロボットなのに人間らしい」ということが、ちゃんと物語上で大きな意味をもつようになってたりして。的確な描写って言葉はよくいうけど、ほんとに的確。 しかしメモリチップのスロットがあんなところに付いてるとは予想外だった。 さりげなく目立たない親切設計。 人型ロボットってのは神秘の塊ですな。いろんな意味で。
by umi_urimasu
| 2005-04-30 10:54
| アニメ・マンガ
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