柳生忍法帖(上)山田風太郎
a0030177_1941244.jpg山田先生、これダメです!かっこよすぎます!

この作品ってもしかして、いわゆる少年マンガやそれを踏襲した少年向けライトノベルといったものすべての元祖に近いものなんじゃなかろうか?初出は1962-64年頃だそうですから。今の世にある大抵のマンガよりもはるかに古い。いわんや少年ジャンプにおいておや。

男子禁制の尼寺に押し入り、20人以上もの女たちを瞬時に"解体"してのけた残虐非道の剣客、人呼んで「会津七本槍衆」。彼ら七人に一族郎党ことごとくを惨殺され、復讐を誓った武家の女たちもまた七人。でもさすがに相手が悪すぎる。
この望みなき仇討ちに、恩師の要請で助勢することになった柳生十兵衛。いつものようにヤギュー・ジョークなど飛ばしつつ軽くOKしたものの、今回はちょっと様子が違う。なにしろ年端もいかない娘から貞淑な色香漂う人妻までよりどりみどり、両手どころか総身に花のハーレム状態。しかも、必ずしも健気な花ばかりでもなくて、泣くわ怒るわケンカするわ懸想するわ嫉妬するわ。果ては「いっしょに死んでー!」とか迫られるし。
十兵衛先生さすがに少々凹んでます。今回のテーマは「女難」とみた。

飄々として奔放、冷静沈着ながら稚気に溢れた快男児・柳生十兵衛というキャラクターの魅力を存分に描いている点では、これは「魔界転生」にまったくひけをとらない傑作でしょう。いや、ひょっとするとあれ以上かも。
さらに本作は、なんつーか、まにあっくな意味でも魔界転生をしのぐディープさ。もうあまりにヤバすぎて、書くだけでにんしんしちゃうぅ!みたいな濃ゆいぷれいの展覧会だ。入れ替わり立ち替わり、夜となく昼となく、上にしたり下にしたり縛ったり吊るしたり、果ては人目もはばからずあんなとこやこんなとこでギシアン(AA略

そして何よりも、忍法小説の醍醐味は「常人の域を超越した武芸や幻術といかにしてわたり合い、撃破するか?」という虚々実々の駆け引き。これぞ風太郎の真骨頂。超絶的なおもしろさです。
読む前は、まさか魔界転生クラスの作品がそうポコポコあるわけねーだろとたかをくくってたんですけど、甘かった。僕が愚かでした。

ただしひとつだけ、上巻ではどっちかというと十兵衛がオブザーバー扱いなのが残念といえば残念かな。やっぱり彼自身がドラマの中心人物となって、剣の勝負で強敵をなぎ倒してほしいというのが読み手の偽らざる本心なんですが。その辺はまあ、下巻に期待と。

柳生忍法帖〈上〉山田風太郎(講談社文庫)

それにしても十兵衛先生はおちゃめでよいな。
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by umi_urimasu | 2005-01-19 20:19 | 本(others) | Comments(2)
Commented by nego10 at 2005-01-20 18:11
柳生十兵衛というと、ラブリー眼帯の似合う女の子!…などという、トチ狂ったボケはともかくとして。

山田風太郎氏の小説は、『忍者月影抄』という一冊だけ読んだことがありました。菊地秀行氏が激賞していたのですが、今ひとつピンと来なくて。
やはり代表作を読んでみたほうが良さそうですね。レビューを拝見すると気軽に楽しめそうですので、いずれ手に取ってみたいです。
Commented by umi_urimasu at 2005-01-20 21:55
>nego10さま
あー、ラブリー眼帯の方も別の意味でよくできた作品だと思います……。ただ、「日本的な」アニメーション文法のカタマリみたいなものなので、そっち方面に親しみのない人にはあまり理解を求められない気もしますけれど。

>忍者月影抄
傑作と名高い作品も、ピンとくるかどうかは人それぞれかもしれません。僕は娯楽小説っぽい世界も手法もけっこう好きなので、無批判に楽しんでしまってますが。あと、ニンジャとかも好きだし。

でも、ギブスンの「ニューロマンサー」にサムライとか手裏剣とかでてきたときは「あんたそれ、絶対日本を誤解してるよ」とツッコミ入れたくなりました。
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