「嗤う伊右衛門」京極夏彦
a0030177_1250298.jpgイエモンといってもイエローモンキーとは何の関係もない、京極流時代劇。アバタもえくぼで貴方ひとすじ、純愛+情念=恨み節。切なさ炸裂!
我ながら何言ってるのかわかりませんが、とりあえずおすすめだ。

下敷きになっているのは有名な「四谷怪談」ですが、古くささは微塵も感じさせません。むしろ「江戸時代ってこんなんだったのか、へぇ〜」という新鮮な驚きがいっぱいで。
僕はもともと、提灯お岩ってあのちょうちんに目鼻がついてるお化け?とかその程度のイメージしかもってなくて、途中まで四谷怪談ネタということすらわからずに読んでいました。わかったところで元ネタのストーリーも知らないんだから一緒だけど。それどころか、四谷怪談と気づいてからも「番町皿屋敷」の話と少し混同してて、皿を割るシーンてなかったっけ?などというかすかな疑問を抱きつつ読んでたし。
儂だけか。儂だけか。

感心したのは、エンターテインメントとしての間口の広さ。恋愛小説として、怪談として、ミステリとして、古典をモダン化する試みとして、歴史の裏話としてなど、さまざまな読み方が可能で、しかも予備知識ゼロでも全然大丈夫。じつに巧妙に計算されてます。敢えてどろどろした情念話の中で美しいものを描こうとするやり方は敬遠する人も多いかもしれませんが、僕はわりと好きですな。対比効果抜群ってやつ?

登場人物の中ではやはり、美しさと醜さが心身両面に同居したお岩のキャラが印象的でした。昔から貞淑な女性の典型とされていたお岩さんが、ここでは亭主を罵る殴る蹴るの蛮行三昧。ゴシップ誌的にいうなら、

「御行は見た!美人妻、白昼の狂態」
離婚夫が衝撃の真相を告白!
「全ては拙者の不徳のいたすところです」


伊右衛門、本気だから始末が悪い(w

ただしこの「お岩」新解釈は、原典をふまえて見れば革新的・現代的ということにもなりますが、「元ネタが古典」という先入観なしに読めば特に違和感がないようでもあり。江戸時代だって平安時代だって、こうしたキレやすい女性が物語に登場しておかしいわけはないし、実際たくさんいただろうから。その意味では、元ネタ知らない人にとっては革新的というより、オーソドックスなラブストーリーと映るかもしれません。少なくとも僕はそうだった。

まあ、解釈の新旧はこの際置いといて。
くどいようですが、何も知らなくても本当に楽しめます。ちょんまげ時代の雰囲気をたっぷり含んでいるくせに中身はちっとも古くない、切れば清水がほとばしる「新鮮な昔話」。水木しげる系のレトロ怪談好きはもちろん、「時代劇はどうもな〜」という現代派の方にも自信をもってお勧めいたしまする。
amazon 「嗤う伊右衛門」京極夏彦(角川文庫)


おお。
関係ないけど、テレビで「サントリー緑茶 伊右衛門」のCMを見かけました。
本木雅弘と宮沢りえ………それなりにイメージ近いかも。

ちなみに僕は未見ですが、映画化もされていたらしい。映画「嗤う伊右衛門」主演は唐沢寿明&小雪。ご参考まで。
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by umi_urimasu | 2004-12-06 12:57 | 本(others)


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