「ガダラの豚」中島らも
『バナナキジーツにうってつけの日』

a0030177_20321036.jpg本日のおすすめ「ガダラの豚」。今年7月に亡くなった中島らも氏による、文庫三冊にわたる娯楽大作です。恥ずかしながら、らも作品はこれしか読んでないんですが、とりあえずもうこれだけでお腹いっぱい。映画化すれば「リング」や「らせん」をも軽くブッ飛ばしかねないA級エンターテインメントだと個人的には思ってます。

じつは今回で読むのは二度目。でも初めて読んだときの状況など、かなりよく覚えていました。異常に忘れっぽい僕にしてはほんとうに希有な例です。その頃はいわゆるホラー系の小説なんて全くといっていいほど読んだことがなく、経験の浅さが幸い(災い?)したのか?よほど強烈なインパクトだったらしい。

あれは大学に入学したての頃──。当時「ガダラの豚」は人気があったのか、生協書籍部に平積みになっていました。表紙の手塚フォント(写真参照)にフラッときてほとんどジャケ買いで買い込んで、宵のうちに軽い気持ちで読み始め、それっきりどうしてもやめられずついに徹夜。もう怖くて怖くて、とても途中で中断できる状態じゃなかったんで。朝よ早く来い!と本気で念じましたから。

朝、朝、朝、朝朝朝朝!
朝はまだかッ!
朝になればオレが勝つ!
朝になればこの恐怖は終わる!朝になれば!
朝朝あさ朝アサアサあさーっ!


ま、それぐらい怖かったと。

経験した順番でいえば「痕」の方がずっと後なんですけど、そういえばよく似た感覚だったかもしれません。結末にたどり着くまでどうしてもやめられない切迫感とか。

そんなわけで、ストレス溜まったウサギみたいにがたがたぶるぶる震えながらついに読み終えて無事に朝日を拝んだ後、もう二度とリピートすまいと決心して迷わずダンボール箱に封印し、実家へと追放しました。
作品がつまらなかったからではなく、その反対。非常に面白くて、そしてむちゃくちゃ怖かったからです。この体験は忘れようにも忘れられず、ある種の後遺症となってしまいました。

なんかしらんがその後しばらくして、「怖いのに面白い」というジレンマをやたら欲しがるようになっちゃったみたいなのです。これは、娯楽小説などに対して「読みたい」という衝動がどれぐらい強いかを判断するための基準としてのジレンマですね。「怖い」というハードルがあって、にもかかわらずその壁を乗り越えて読んでいける作品こそが自分にとって真に面白いものだという実感を得られるんです。
ちょうど「恐怖」と「面白さ」を対立項としてとらえ、二つを天秤にかけている感じか。

それってなんか歪んでない?とか思わんでもないが。
ともあれ、永久追放のはずが結局また買ってきてしまった。そしてやっぱり今度も徹夜だった。バカかも。

ガダラの豚〈1〉中島らも(集英社文庫)

さりげなく「ガダラの豚 考察編」へつづくつもり。
[PR]
by umi_urimasu | 2004-11-30 21:35 | 本(others)


<< 「ガダラの豚」中島らも② 宮崎駿の理想の『子供』 >>