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「亡国のイージス」福井晴敏 2
一言でいうと、

『東京湾で戦争しちゃおー!』

というお話。日本人の平和信仰にいっちょ喝を入れたれという気概みなぎる軍事・犯罪アクション小説です。自分の中でのこの作品の置き場は、「シュリ」「パトレイバー2」の下あたりでしょうかね。あと「沈黙の艦隊」もか。

発想もかなり「シュリ」に近いです。犯人側にもやむにやまれぬ事情があって、そこでドラマが組まれていたり。題材的にはありきたりと言えるかもしれませんが、読み進ませる力はかなり高いと思いました。話に説得力をもたせる上では、護衛艦の乗員たちの実際的な行動が細かく書かれているのが効果的。テロリストと防衛庁の緊迫した駆け引きやリアルな艦隊戦もなかなかの迫力。

ただ、状況が加熱してダイハード的なアクションがエスカレートするにつれ、読み手であるこっちは逆に冷めていくというジレンマが僕には最後まで解消できませんでした。これはそういうジャンルの小説なんだからと自分に言い聞かせても、「そんな都合のいいことあるわけねー」という批判的な視点がどうも捨てきれない。ブルース・ウィリスみたいな脳天気なタフガイ像があまり好みに合わないっていうのもあるのでしょうが。

そして「亡国のイージス」作中でかなり熱く語られる、人生論や生きがいについての主張。筆致からも明らかに感動を求めるべく書かれた部分とわかりますが、これも冷淡にスルーしてしまいました。「生きるモチベーションを何に求めるか」とかそういう語りに全く同調できず、押し付けがましいと感じただけで終わってしまった。この辺は共感するかしないかで個人差があるでしょうし、それが肌に合わないからといって娯楽作品としての評価まで下がるわけではありませんが。
とりあえず、それ以外の部分はけっこう好き。純粋に犯罪アクションとして見れば「かなり面白い」とはっきり言い切れます。

製作中の映画の方は、なんかこの原作を素直に映像化すると単なる「和製シュリ」が出来あがりそうな予感。ただし小説では「おコメの国が黒幕だった」(ネタバレのため反転)っていうオチなんですけど、その辺どうすんだろ。なんかちょっと露骨な感じが……。

【補足】
キャストを見てみたら、先任伍長・仙石役が真田広之だって。うそおん。んー、何かもう少し三枚目っぽいのを無意識に想像してました。まあ映画だし、カッコよければそれでいいのかも。
そして如月行役には勝地涼という若手俳優さん。お写真はこっち。なるほど。ちなみに僕の脳内如月イメージは藤原竜也とかそんな感じだったですよ。どーでもいいことですが。
by umi_urimasu | 2004-10-20 15:45 | 本(others)


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