昔から「幻想都市」というものが妙に好きです。現実世界の都市はすみずみまで合理的にできていて、おおむね「なるべくしてそうなった」形態になってるんですが、幻想の都市にはそうした制約がありません。だから現実の街にはない奇妙なところが多分にあってもかまわない。むしろ奇妙であればあるほどおいしい。ただし空想的なら何をやってもよいというわけではなくて、わざとらしさが過ぎてもいけません。現実にはありえない、それでいて実際に住めそうな現実味があること。魅惑的な幻想都市とは、そんな一見相反する条件をクリアし、なおかつ目に美しい景観をもそなえているのが望ましいであろう。と勝手に思っています。
ビジュアルイメージとしては、まあたとえばこんな感じのとか。 The Rock City by Sergey Skachkov Perdido St Station by Alberto Gordillo 8.jpg 12.jpg 2chのSF板だとこんなスレがありました。 一生に一度は行ってみたい空想都市 ラピュタ、ゴーメンガースト城、タネローン、ダイアスパー、コニシポリス、順列都市、広くとらえてファンタージエンやナルニアなどなど、いろんな例が挙げられていました。生身では行けないところや一度行ったら帰ってこられないところもありますが。オンブリアなんかはヨーロッパの古都や城塞都市系が好物な人間にはたまらないものがありましょう。 上で挙がってなかったところで思いつくものを挙げてみると、中つ国の定番でミナスティリス。ギブスンの千葉シティ、橋三部作のベイブリッジ。電脳空間もありなら「スノウ・クラッシュ」に出てくるメタバース内のストリート。クトゥルーなら「狂気の山脈にて」の南極の巨大廃都とか無名都市とか。 幻想小説の方では、僕はあんまり詳しくないですが、山尾悠子だったら「夢の棲む街」みたいな。ゲームの舞台まで含めれば、「ICO」の廃城も行ってみたい場所です。写真撮りに。 そして最近読んだ小説でたまげたのが、チャイナ・ミエヴィル「ペルディード・ストリート・ステーション」。鈍器にもなりそうな分厚い本の中身の大半が、ストーリーそっちのけで架空都市〈ニュー・クロブゾン〉のディテール描写についやされているという、ほとんど空想の街への執着だけでできちゃったみたいな作品でした。あらすじ的には他愛のない冒険譚だけど、街の描きこみが正気じゃないレベル。じつはここしばらくこのブログの更新が滞っていたのも、必死こいてこの本を読んでいたからなのです。いやはや。くたびれましたわ。 あと、洋書の絵本で大好きな一品として、オーストラリアのイラストレーター Shaun Tan(ショーン・タン?)の「The Arrival」も挙げておきたい。 これはマジで神絵本。 作者のHPでサンプルが見られます。 Picture books - The Arrival ご覧になったことのない方はぜひ。 ───── 「からん」の高瀬雅に見る「シグルイ」流れ星理論の話 雅のあまりに計算づくな「腹黒的いい人」ぶりには常々危ういものを感じていましたが、どうやら第5巻あたりで(満を持して?)問題が表面化しそうな気配らしいです。楽しみだ。盛大に炎上し、しかるのちまるく収まってほしい。 「マルドゥック・スクランブル」新情報解禁トークショー - GIGAZINE [youtube] マルドゥック・スクランブル 予告編 陰影のきつい映像。ちょっと川尻善昭チックかも。「圧縮」とあるのでアニメも三部作構成なのかな 「製鉄天使」 桜庭一樹 ひとことでいうと、劣化赤朽葉? 「赤朽葉家の伝説」の不良少女パートのさらに一部分を、大筋はそのままにキャラ名だけ変えて、よりコミカル、ファンシーなタッチで仕立て直したもの。でもプロットがほぼまんまなのでインパクト全然ないです。マンガ的な描写でマンガ的な世界を作ってる感じの文章はまあ面白かったけど。あまりガチな期待をしないで、赤朽葉のセルフパロディ的なネタ作品と思って読むが吉ではないかと。 Ted Chiang, The Lifecycle of Software Objects キターーー! テッドチャンの作品としては過去最大のボリュームという新作。めちゃ面白そう。 Subterranean Press から7月発売予定 SFマガジン2010年5月号をぱらぱら流し見。マルドゥック新長編のタイトルは「マルドゥック・アノニマス」ですと。えー。もしかして名もなきキャラの話なんだろか。 津原泰水氏は生まれつき目がお悪い、という話は初めて知りました。味覚や嗅覚方面の喚起力がやたら鋭いあの文章にそんな理由があったとは…… 「はヤぶさ」に知能?「さむい」「なう」とつぶやく まあ確かにかわいいが。そして大気圏突入時の「あつい」「なう」で号泣と あいうえお順「元号・西暦対応年表(江戸時代編)」 - 平民新聞 世の歴史小説好きたちのためにと親切な方がつくってくれました。ありがたや。 上田文人氏、『ICO』のPS3移植や映画版『ワンダと巨像』についてコメント 移植については「興味がある」と発言。トリコの反響次第ではもしかしたら?
by umi_urimasu
| 2010-03-25 22:01
| 本(SF・ミステリ)
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